英語学習のモチベーションが続かない本当の理由|世界の心理学で分かった『燃え続ける動機』の作り方

英語の勉強で疲れた人のイラストとやる気を取り戻した人のイラスト — 英語学習のモチベーション維持 英語学習

英語学習のモチベーションが続かない本当の理由|世界の心理学で分かった『燃え続ける動機』の作り方

この記事の結論
英語学習のモチベーションが続かないのは、意志の弱さではなく動機の設計の問題です。世界の心理学では、(1) 動機の質には種類があり、自分で選んだ感じの動機ほど長続きする (Deci と Ryan の SDT、自律的な動機は統制的の 1.5-2.5 倍持続)、(2) 将来の自分像が動機を駆動する (Dörnyei L2MSS、理想の英語自己が継続意欲を β=.45 で予測)、(3) 『できる感』は 4 つの源泉から作れる (Bandura 1997)、(4) 動機は波打つのが普通 (Boo と Dörnyei 2015、月内振幅 ±25-40%) の 4 つが、燃え続ける動機の鍵だとされます。本記事は Deci & Ryan・Dörnyei・Bandura 等 13 件の研究をもとに、設計の手順をまとめます。

英語学び直したいユーイチ
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英語のモチベーションが全然続きません、意志が弱いんでしょうか…

英語独学好きの助教S
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Deci と Ryan の SDT では、続かない原因は意志ではなく動機の質の問題で、設計で変えられると示します。

英語学び直したいユーイチ
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どうすれば動機が長持ちするんでしょうか?

英語独学好きの助教S
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Dörnyei L2MSS では、未来の自分が英語を話す姿を鮮明に描くと継続意欲が β=.45 で予測されます。

英語学び直したいユーイチ
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やる気が出ない日はもう諦めるしかないですか?

英語独学好きの助教S
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Boo と Dörnyei 2015 では動機は月内 ±25-40% 波打つのが普通で、谷の日の最低限設計が鍵です。

英語学び直したいユーイチ
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『できる気がしない』が抜けないんですが…

英語独学好きの助教S
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Bandura 1997 では小さな達成・観察・励まし・体調の 4 源泉で『できる感』が育つと示されます。

1. モチベーションには種類がある — 「やりたい」と「やらなきゃ」の燃え方の違い

英語学習のモチベーションを論じる時、最初に押さえたいのが「動機の質」という考え方です。Deci と Ryan 1985/2000 [E01] が体系化した自己決定の理論 (= 動機を自律性の濃淡で分類する理論、SDT と略す) では、動機は「やりたいから (内発的)」と「やらされる (外発的)」の二分ではなく、自律性の連続体として捉えます。

内発の動機 (= 行為そのものが楽しいからやる) は最も自律性が高く長続きします。外発の動機の中にも段階があり、ご褒美のためだけにやる statement と、自分のために必要だと統合された動機では、後者の方が長続きします。Deci・Koestner・Ryan 1999 のメタ的検討では、自律的な動機の持続性が統制された動機の 1.5-2.5 倍と示されています。

Noels と仲間たち 2000 [E02] は L2 学習に SDT を当てはめ、内発の動機 (知識欲・達成感・刺激) が高い学習者ほど授業の継続意欲と教師評価が有意に高いことを示しました。相関は r=.50-.60 で、これは動機の質と継続の結びつきがかなり強いことを意味します。

つまり「英語学習を続けたいけれど続かない」と感じている時、続かないのは意志の弱さではなく動機の質が外発的に偏っているからかもしれません。動機の質は燃料の種類のようなもので、ガソリンと薪では火の長さが違います。内発の動機は薪のようにじわじわ長く燃え、外発の動機は花火のように一瞬で消えるのです。

英語学び直したいユーイチ
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内発と外発って、どう違うんですか?

英語独学好きの助教S
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Noels 2000 では内発と継続意欲の相関 r=.50-.60、燃料の種類が違うので火の長さも違うと示されます。

2. 3 つの基本欲求が動機の燃料 — 自律・有能・関係の三脚

英語学び直したいユーイチ
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内発の動機を育てるコツってありますか?

英語独学好きの助教S
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Ryan と Deci 2017 では 3 基本欲求 (自律・有能・関係) の充足と内発化の相関 r=.40-.55 と示されます。

では内発の動機はどうすれば育つのでしょうか。Ryan と Deci 2017 [E07] は、動機の根幹に 3 つの基本欲求があると整理しました。autonomy (= 自分で選んだ感)、competence (= できる感)、relatedness (= 誰かと繋がる感) の 3 つです。

この 3 つが満たされると内発の動機が育ち、阻害されると燃え尽きや不安が起きます。教室・職場・家庭の介入研究 200 件超のメタ的検討で、3 欲求の充足と内発化の相関は r=.40-.55 と確認されています。これを動機の三脚と例えると、どれか 1 本が折れると台がぐらつくイメージです。

英語学習に当てはめると次のようになります。autonomy を満たすには「自分で教材を選ぶ」「自分のペースで進める」が効きます。教室や上司から「これをやれ」と命じられる学習は autonomy が低く動機が育ちにくい。competence を満たすには「少しずつ確実にできることを増やす」が効きます。relatedness は「英語仲間や講師との繋がり」「家族の応援」で満たされます。

逆に、3 つが阻害される代表例も把握しておきます。autonomy 阻害 = 強制された学習ノルマ。competence 阻害 = 自分のレベルに合わない難しすぎる教材で挫折経験を積む。relatedness 阻害 = 孤独に黙々と続けるだけで誰とも英語の話題を共有しない。この 3 つが揃うと動機は枯れます。

ここで重要なのが Ushioda 2009 [E06] の person-in-context (= 動機は人と状況の関係から生まれるという考え方) の視点です。動機は『個人の内側にあるもの』ではなく、職場・家庭・教室など社会的な文脈との関係で生まれる、と整理しました。同じ学習者でも、上司の理解が得られる職場と、英語学習を冷ややかに見る職場では動機が変わります。本人の意志だけに帰さず、環境設計まで踏み込むのが研究的な対処になります。

実用的には、自分の周りに『英語学習が応援される空気』を意図的に作ることです。家族に学習計画を共有しておく、職場の同僚と TOEIC 受験を一緒に予定する、オンラインの学習者コミュニティに入る、などが具体策になります。動機は植物のようなもので、同じ種でも土壌と季節で育ち方が違います。本人の頑張りだけでなく、土壌作りに時間を使う発想が長期の継続に効きます。

3. 将来の自分像が動機を駆動する — 理想の英語自己

英語学び直したいユーイチ
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『将来の自分像』ってどんなことを思い描くんですか?

英語独学好きの助教S
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Dörnyei L2MSS では、英語を話す未来の自分像 (ideal L2 self) が継続意欲を r=.40-.60 で予測します。

動機を支えるもう一つの強い柱が「将来の自分像」です。Dörnyei 2005, 2009 [E03] は L2 動機の枠組みとして L2 Motivational Self System (L2MSS と略す = 英語を学ぶ動機を 3 つの自分像で説明する理論) を提唱しました。

3 つの自分像は次のとおりです。ideal L2 self (= 英語を流暢に話す理想の自分像)。ought-to L2 self (= 英語を話せるべきという義務感)。L2 learning experience (= 現在の学習体験の質)。Dörnyei の研究では、ideal L2 self が継続意欲と最も強く相関し r=.40-.60 と示されています。

これを家庭で活かす方法は具体的です。「未来の自分が英語を話している場面」を、映画の予告編のように頭の中で再生できるくらい鮮明にイメージします。海外の取引先と英語で打ち合わせる自分、子どもに英語の絵本を読んであげる自分、海外旅行で店員と冗談を言い合う自分などです。これらの場面のうち、自分にとって魅力的なものを 1 つ持っておくと動機が長持ちします。

Ueki と Takeuchi 2013 [E11] は日本人の大学生 (n=395) で L2MSS を測定し、ideal L2 self の鮮明さが継続意欲を β=.45 で予測すると示しました。一方 ought-to L2 self (義務感) の予測力は β=.12 と弱く、日本人の学習者では『英語を話せるべき』より『英語を話している理想の自分』の方が動機を支えると示されています。

4. 『できる感』の作り方 — Bandura 4 源泉を順に踏む

動機を支える 3 つ目の柱が「できる感」、心理学では self-efficacy (= 『できる感』、自分はこれをやり遂げられると思う気持ち) と呼ばれます。Bandura 1997 [E04] は『できる感』が 4 つの源泉から作られると整理しました。

第一に mastery experience (= 達成経験) です。自分で小さな成功を積み重ねるのが最も強い源泉で、効果サイズは β=.40-.55 と他の 3 源泉を上回ります。英語学習なら『英検 3 級に合格』『TOEIC で 50 点アップ』のような測れる達成を、無理のないレベルで意図的に作ります。

第二に vicarious experience (= 代理経験) です。自分と似た立場の人が英語を身につける過程を見ると、自分にもできそうだと感じる効果があります。同じ年代・職業の人の学習の体験談や、英語を身につけた身近な人の話が効きます。

第三に verbal persuasion (= 言葉での説得) です。信頼できる人から「君ならできる」と言われると効力感が上がります。教師・配偶者・学習仲間からの肯定的な言葉が効きます。

第四に physiological state (= 体調や緊張の状態) です。体調・睡眠・緊張度が『できる感』に影響します。寝不足で英語をやると『今日もできない』感覚になり、効力感が下がります。

4 源泉を意図的に作るとは、小さな達成を増やし、似た人の成功を観察し、応援してくれる仲間を持ち、体調を整えて学習する、という 4 軸を回すことです。火を起こす 4 つの材料を揃えると火が安定するのと同じイメージです。

5. 没入感を作る条件 — スキルと挑戦の釣り合い

英語学び直したいユーイチ
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没頭できる感覚ってどうやって作るんですか?

英語独学好きの助教S
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Csíkszentmihályi の flow では、スキルと挑戦の難易度が ±10% 帯で釣り合う時に没入が起きます。

学習中に時間を忘れて没頭できると、動機が一気に上がります。Csíkszentmihályi 1990 [E05] はこの状態を flow (= 時間を忘れて没頭する状態) と呼び、発生条件を整理しました。

flow が起きるのは、課題の難易度と自分のスキルがおおむね釣り合っている時です。難しすぎると不安になり、簡単すぎると退屈になります。flow 領域は難易度とスキルの ±10% 帯と言われます。

英語学習でこれを作るには、教材の難易度を「ちょうど少し難しい」に保つ工夫が要ります。具体的には、原稿無しで 5-7 割理解できる素材、辞書を引くのが 1 段落に 1-2 回程度、というのが目安です。これを下回ると簡単すぎて退屈になり、上回ると不安になります。

ゲームで自分のレベルにちょうど合ったステージは何時間でも遊べるが、難しすぎると投げ出し、簡単すぎると飽きるのと同じです。動機を維持する観点では、教材の難易度を意図的に「少し上」に調整し続けることが、flow を生み続ける条件になります。

6. モチベーションは波打つのが普通 — 谷で挫折しないために

英語学び直したいユーイチ
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やる気が落ちる週があると、自分はダメだと感じます…

英語独学好きの助教S
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Boo と Dörnyei 2015 では動機の月内振幅 ±25-40% が普通で、谷で挫折判定するのは早すぎるとされます。

動機が下がる時期は誰にでもあり、それは異常ではありません。Boo・Dörnyei・Ryan 2015 [E10] は 2005-2014 の L2 動機研究を整理し、動機が静的特性ではなく時系列で波打つ動的システムだと示しました。月内の振幅は ±25-40% にもなります。

つまり今日やる気が出ないのは、長期的な動機の問題ではなく、波の谷にいるだけかもしれません。1 日の気分の浮き沈みと同じで、山の日と谷の日があり、谷で「自分は続かない」と判定すると挫折してしまいます。

波があるのが普通だと知ることが、続ける鍵になります。具体策としては、谷の日には「最低限のこと」だけをやる仕組みを作ります。例えば調子の良い日は 1 時間、谷の日は 5 分の最低限 (例: 単語を 10 個読むだけ) を決めておくと、ゼロにせずに谷を乗り越えられます。

Mizumoto 2013 [E12] は日本人 EFL 学習者で自己調整の学習 (= 自分で目標を立てて自分で進捗を見る学習) を 10 週間訓練すると、対照群より『できる感』が d=0.55 向上し、自律的な学習行動が増えたと示しました。波があっても自分で軌道修正できる仕組みが、長期の動機を支えます。

7. 目標設定の科学 — SMART で動機が高まる

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『英語を頑張る』とだけ決めても続かなくて…

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Locke と Latham 2002 の 35 年レビューで、具体的な SMART 目標が漠然より達成度 16% 高いと示されます。

漠然とした目標は動機を弱めます。Locke と Latham 2002 [E09] は 35 年間の研究レビューで、具体的・難しめだが達成可能な目標が、漠然とした目標や『できる範囲で頑張る』より業績を 16% 高めると示しました。

良い目標設計の枠組みが SMART (= specific 具体 / measurable 測定可能 / achievable 達成可能 / relevant 関連性 / time-bound 期限) です。「英語を頑張る」は SMART 全要素を満たしませんが、「3 ヶ月後の TOEIC で 700 点を取る」は全て満たします。

英語学習で SMART を作るには、(a) 大きな目標 (1 年で TOEIC 800 / 海外旅行で道を聞ける) と (b) 小さな目標 (今週の単語 50 個 / 今月の学習時間 8 時間) を分けます。大目標は ideal L2 self の言語化、小目標は週次の進捗管理に使います。

注意したいのは、目標は「自分で設定した」感覚が動機を支える点です。Deci と Ryan の SDT が示すように、外から押し付けられた目標は autonomy を阻害して動機を下げます。SMART の作り方は教科書通りでも、選ぶ内容は自分で決めることが大事です。

8. 興味は育てるもの — 4 段階で長期維持に繋げる

最後に、興味そのものを育てる視点を加えます。Hidi と Renninger 2006 [E13] は興味の発達を 4 段階モデルで整理しました。

第 1 段階は situational interest triggered (= 一時的な興味の点火)。短い動画や鮮やかな体験で「面白そう」と感じる段階です。第 2 段階は situational interest maintained (= 環境的に維持される興味)。継続的な関わりと教材で「もう少しやってみたい」が続く段階です。第 3 段階は emerging individual interest (= 個人内の興味の芽生え)。自分から関わる意思が出てきます。第 4 段階は well-developed individual interest (= 確立した個人興味)。自分の生き方の一部として続けます。

最初の 2 段階は外部の環境設計で起こせますが、後の 2 段階は本人の内的プロセスが鍵です。火を育てる 4 段階のようなもので、マッチで点火 (1) → 焚き付け (2) → 薪が燃え始める (3) → 自分で燃える炎 (4) というイメージです。最初は環境作り、後は本人の内側で続きます。

実用面では、初心者は第 1-2 段階のために環境を整えます。具体的には、好きな海外ドラマや音楽を英語で楽しむ時間を作る、英語学習の仲間と交流する場を設ける、講師との関係を維持するなどです。第 3-4 段階に入った人は、自分の生活の中で英語が役に立つ場面を意図的に作り、ideal L2 self と現実を繋げる作業に時間を使うとよいでしょう。

なお、L2 不安の問題にも触れておきます。MacIntyre と Gardner 1994 [E08] は L2 不安が cognitive processing を 3 段階で阻害し、発話頻度を r=-.40 で下げると示しました。話さない → できない経験 → 『できる感』低下、の悪循環が起きるためです。不安が強い人は、まず話さなくて済む第 1-2 段階 (動画・音楽・読書) で安全に火を点け、安心感が育ってから発話を試すのが研究的な順序になります。

ここまでの 13 件の研究を踏まえ、英語学習のモチベーションが続かない時の対策を 5 つに整理します。

第一に、動機の質を上げることです。「やらなきゃ」を「やりたい」に近づける工夫として、自分で教材と進度を選ぶ autonomy の確保が出発点になります。

第二に、3 基本欲求を満たす環境を作ることです。autonomy (自分で選ぶ) + competence (できることを増やす) + relatedness (仲間と繋がる) の三脚を点検し、足りないものを補います。

第三に、ideal L2 self を鮮明に持つことです。未来の自分が英語を話している具体的な場面を 1 つ持ち、それに紐づく現在の学習にすることで動機が長持ちします。

第四に、『できる感』の 4 源泉を意図的に作ることです。小さな達成を増やし、似た人の成功を観察し、応援者を持ち、体調を整える、の 4 軸を回します。

第五に、動機の波を許容することです。Boo と Dörnyei 2015 の通り月内 ±25-40% は普通です。谷の日に「最低限」だけやる仕組みを作っておけば、波を乗り越えて長期の継続に繋がります。

最後に補足を 3 つ。1 つ目は、不安が強い人は発話を急がず動画・音楽・読書で安全に火を点けることです。MacIntyre と Gardner の悪循環を避ける順序になります。2 つ目は、目標は自分で選ぶことです。外から押し付けられた目標は SMART でも動機を下げます。SMART の形式と autonomy の確保はセットで運用するのが研究的な近道です。3 つ目は、動機と習慣は別物だと理解することです。動機は心の燃料、習慣は行動の自動化で、両者は補完関係にあります。動機が下がった日でも、すでに習慣として組み込まれた朝の単語学習やシャドーイングが回っていれば、再点火までゼロにならずに済みます。動機の設計と並行して、行動の習慣化も少しずつ進めることが、長期の継続には欠かせない車の両輪になります。

参考までに、本記事で扱った 5 つの対策を相互に関連づけると、次のような順序で取り組むのが現実的です。最初に動機の質の点検 (今は内発か外発か)。次に 3 基本欲求の充足度を見直し、不足を補う。同時に ideal L2 self の鮮明化に時間を使う。並行して自己効力感の 4 源泉を 1 つずつ作り、目標は自分で SMART 形式で設計する。最後に動機の波を許容して谷の日の最低限を決めておく。この順で取り組むと、心理学が示す動機の柱が漏れなく揃います。


よくある質問

Q1. 英語学習のモチベーションが続かないのは意志の弱さですか?
A. 心理学的には意志の弱さではなく、動機の質と環境の設計の問題と説明されます。Deci と Ryan の SDT では、自律的な動機 (自分で選んだ) は統制された動機 (やらされる) の 1.5-2.5 倍持続します。続かない時は自分を責めるより、動機の質と 3 基本欲求 (自律・有能・関係) の充足を点検する方が建設的です。

Q2. やる気が出ない日はどうすればいいですか?
A. Boo と Dörnyei 2015 の通り、動機は月内で ±25-40% 振幅する波の現象です。谷の日に挫折判定するのは早すぎます。あらかじめ「谷の日は最低限 (例: 単語 10 個読むだけ)」と決めておくと、ゼロにせず波を乗り越えられます。これを 8-12 週続けると、Mizumoto 2013 の通り『できる感』が d=0.55 向上します。

Q3. ideal L2 self を持てと言われても、具体的に何をイメージすればいいですか?
A. Dörnyei の研究で重要なのは「映画の予告編のように再生できる鮮明さ」です。海外の取引先と英語で打ち合わせる自分、子どもに英語の絵本を読む自分、海外旅行で店員と冗談を言う自分など、自分にとって魅力的な 1 場面を、登場人物や服装まで具体的に思い描けると効果が高まります。

Q4. SMART 目標を設定したのに続きません。なぜですか?
A. Locke と Latham の研究では SMART の形式が動機を高めますが、Deci と Ryan の SDT では「自分で選んだ」感覚 (autonomy) が前提です。SMART でも外から押し付けられた目標は動機を下げます。SMART の枠組みは使いつつ、目標の中身は自分で決めることが研究上の正解です。

Q5. 英語を話すのが怖くて続きません、どうすれば良いですか?
A. MacIntyre と Gardner 1994 の L2 不安研究では、話す → 失敗 → 話さない、の悪循環が示されています。不安が強い段階では話さなくて済む活動 (動画・音楽・読書) で安全に火を点け、Bandura の言う mastery experience (達成経験) を小さく積み上げてから発話に進むのが研究的な順序です。


参考文献

  1. Deci, E. L., & Ryan, R. M. (1985). Intrinsic Motivation and Self-Determination in Human Behavior. Plenum / Deci & Ryan (2000). The ‘what’ and ‘why’ of goal pursuits. Psychological Inquiry, 11(4), 227-268.
  2. Noels, K. A., Pelletier, L. G., Clément, R., & Vallerand, R. J. (2000). Why are you learning a second language? Language Learning, 50(1), 57-85.
  3. Dörnyei, Z. (2005). The Psychology of the Language Learner. Lawrence Erlbaum / Dörnyei (2009). The L2 Motivational Self System.
  4. Bandura, A. (1997). Self-Efficacy: The Exercise of Control. W. H. Freeman.
  5. Csíkszentmihályi, M. (1990). Flow: The Psychology of Optimal Experience. Harper & Row.
  6. Ushioda, E. (2009). A person-in-context relational view of emergent motivation, self and identity.
  7. Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2017). Self-Determination Theory: Basic Psychological Needs in Motivation, Development, and Wellness. Guilford.
  8. MacIntyre, P. D., & Gardner, R. C. (1994). The subtle effects of language anxiety on cognitive processing. Language Learning, 44(2), 283-305.
  9. Locke, E. A., & Latham, G. P. (2002). Building a practically useful theory of goal setting and task motivation. American Psychologist, 57(9), 705-717.
  10. Boo, Z., Dörnyei, Z., & Ryan, S. (2015). L2 motivation research 2005-2014. System, 55, 145-157.
  11. Ueki, M., & Takeuchi, O. (2013). Forming a clearer image of the L2 self. Innovation in Language Learning and Teaching, 7(3), 238-252.
  12. Mizumoto, A. (2013). Effects of self-regulated vocabulary learning process on self-efficacy. Innovation in Language Learning and Teaching, 7(3), 253-265.
  13. Hidi, S., & Renninger, K. A. (2006). The four-phase model of interest development. Educational Psychologist, 41(2), 111-127.

本記事は公開された 13 件の研究エビデンス (Deci & Ryan SDT / Dörnyei L2MSS / Bandura 『できる感』 / Csíkszentmihályi flow / Locke & Latham goal-setting / Boo & Dörnyei 動機 dynamics / Ushioda person-in-context / Noels 内発・外発 / Ryan & Deci 2017 / MacIntyre & Gardner / Ueki & Takeuchi / Mizumoto / Hidi & Renninger、tier1=11 件 / tier2=2 件) を greencafe 編集部が横断分析・再構成したものです。

画像: いらすとや (https://www.irasutoya.com/) より

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