英語の長い文が急に読めなくなるのはなぜ?|目の動きの研究でわかった「戻っていい返り読み」

左は英語 (ABC) の本を開いて読んでいる男性のイラスト、右は机で本を広げペンを持ち集中して勉強している男性のイラストが並ぶ。長い英文を読み進める場面を表している。 認知言語学

英語の長い文が急に読めなくなるのはなぜ?|目の動きの研究でわかった「戻っていい返り読み」

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

単語帳も文法書もやったのに、長い英文になると意味が消えるんです。

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

気持ちはわかります。読むことの研究では、それは知識の量とは別の場所で起きている問題として扱われているんですよ。

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

同じ行を何度も往復してしまって。僕の読み方が変なんでしょうか。

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

多くの人が同じところで止まります。心理言語学では、読んでいる最中の頭の中で何が起きているかを、長く測り続けてきたんですよ。

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

研究で分かると言われても、僕みたいな挫折組に直せますか?

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

その不安は自然です。研究は上手い下手の話ではなく、読み方のどこを直せば楽になるかという設計の問題として整理していますよ。

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

だとしたら、僕は何から見直せばいいんでしょう。

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

この記事では研究11本を順にたどり、長い文で意味が消える仕組みと、今日から変えられる読み方まで解説していきます。

結論: 心理言語学の研究では、読むことは語を順に足す作業ではないと整理されている。どの語がどこに掛かるかを、読みながらその場で決める作業だとされる。目の動きの研究では、うまく読めている人でも視線の1割強は前に戻っている。つまり返り読みは一律に悪ではない。第二言語では文の骨組みより語の意味と語順に頼りやすく、離れた語を結ぶ処理で負担が増える。ただしこの読み方は、熟達度とともに母語話者に近づくと報告されている。

この記事でわかること

  • 「単語も文法も分かるのに読めない」の正体が、知識不足ではない理由
  • うまく読めている人でも前に戻っている、という目の動きの研究の中身
  • 戻っていい返り読みと、崩れている返り読みの見分け方
  • 長い文で迷子になりにくくする、研究に沿った読み方の手順

単語も文法も分かるのに読めない、その正体

単語帳を一冊終えた。文法書も通した。それでも一文が長くなると、意味が急に消える。この状態を、努力不足として片づける必要はない。

心理言語学 (= 人が言葉を理解するときの頭の中の働きを調べる学問) では、読みを積み上げ作業とは考えていない。

読むとは、目に入った語を順に足して意味を完成させる作業ではない。読みながら、どの語がどこに掛かるかをその場で決めていく作業である。

この作業を構文解析と呼ぶ。文という建物を、部品が届くそばから仮組みしていく作業だと思えばよい。

たとえば次の文を見てほしい。

The man who lives next door works at a hospital.

who から始まる部分がどこまで続くのかは、読んでいる途中では確定していない。works にたどり着いて初めて、文全体の主語が the man だったと確定する。

つまり読み手は、文の最後を待たずに構造を仮決めしている。長い文で意味が消えるのは、この仮決めが追いつかなくなる瞬間にあたる。単語を知っていることと、その語を文のどこに置くか即座に決められることは別である。

なお、頭の中で日本語に置き換えてしまう癖は、これとは別の問題として整理できる。英語を英語のまま理解できない理由と直し方で扱ったのは、訳す手順が自動化されていない側の話だった。本記事が扱うのは、訳す前の段階で起きている組み立ての作業である。

ここまでのまとめ: 読むとは語を順に足す作業ではなく、どの語がどこに掛かるかを読みながら決める作業とされる。長い文で詰まるのは知識ではなく、この処理の問題にあたる。

目は文を一気になめていない——止まって飛ぶの繰り返し

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

返り読みって、やっぱりやめないとダメなんですよね?

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

そこが誤解されがちです。Rayner のレビューでは、うまく読めている人でも視線の1割強は前に戻っていました。10歩に1歩の引き返しです。

読んでいるとき、視線は文字の上を滑らかに流れている感じがする。ところが計測すると、まったく違う動きが出てくる。

Rayner (= 読むときの目の動きの研究を20年分まとめ直した心理学者) のレビュー論文がある。そこでは、視線が止まっては飛ぶを繰り返していることが整理されている。

止まっている状態を固視と呼ぶ。1か所に平均200-250ミリ秒、つまり0.2秒ほど目が留まる状態をいう。まばたき1回とほぼ同じくらいの長さである。

次の位置へ跳ぶ動きをサッケードと呼ぶ。数文字先へ一気に飛ぶ、飛び石を渡るような動き方である。

そして、読み終えた場所へ視線が戻る動きもある。これを回帰と呼ぶ。いわゆる返り読みにあたる目の動きである。

重要なのはここからだ。回帰は下手な読み手だけのものではない。うまく読めているときでも、視線の移動のうち1割強は前に戻っている。10歩進むうちに1歩以上は引き返している、という割合になる。

この知見を最新の研究まで含めて更新したのが、Rayner (2009) の基調講演レビューである。回帰は読解の失敗そのものではなく、複雑な構文に出会ったときの修復作業の一部として起きることが多いと整理されている。「返り読みは全部悪い」という前提は、ここから作り直す必要がある。

ここまでのまとめ: 視線は固視とサッケードを繰り返し、うまくいっている読みでも1割強は前に戻っている。返り読みそのものは失敗の証拠ではない。

戻っていい返り読みと、崩れている返り読み

では、すべての返り読みを許してよいのか。研究の知見をもとにすると、実用上は二種類に分けて考えられる。

一つは修復としての回帰である。掛かり先があいまいな箇所に当たり、直前の数語を確かめに戻る動きをいう。地図を一瞬だけ見返して、また歩き出すのに近い。

もう一つは崩れている回帰である。戻る先が定まらず、同じ行を何度も往復してしまう状態をいう。こちらは処理そのものが破綻している合図になる。

見分け方の目安を整理する。

見るところ 戻っていい返り読み 崩れている返り読み
戻る範囲 直前の数語まで 文頭まで毎回引き返す
回数 同じ箇所につき1回程度 同じ行を3回以上往復する
目的 掛かり先の確認 単語の意味の思い出し
戻った後 前へ進んで読み終える また同じ場所で止まる

表にある範囲や回数の数字は、研究がそのまま示した値ではない。上に挙げた研究をもとにした、実用のための整理である。判断の軸は「戻ったあと前に進めたか」である。進めたなら、その回帰は修復として働いている。

一方で、頻度そのものが警報になる場合もある。文の構文的なあいまいさや語の難しさが増すほど、固視時間は伸び、回帰も増える傾向が報告されている。

回帰が急に増えたときは、読み手の力ではなく素材の重さを疑うほうが早い。

返り読みをゼロにする訓練は、この線引きを無視している。潰すべきなのは、意味を思い出すためだけに文頭へ戻る往復のほうだ。

ここまでのまとめ: 掛かり先を確かめる短い回帰は修復として働くが、文頭への往復が繰り返される回帰は破綻の合図とされる。回帰の急増は素材が重すぎるサインでもある。

長い文で急に分からなくなる瞬間に、何が起きているか

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

途中まで分かってたのに、最後で急に崩れるんです。

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

その瞬間は実験で捉えられています。Frazier と Rayner の研究では、読み手はまず一番単純な道を選び、外れると組み立て直していました。

読んでいて、途中まで分かっていたはずの文が突然崩れることがある。この瞬間は実験で捉えられている。

Frazier (= 文の組み立て方の研究で知られる言語学者) と Rayner は1982年、あいまいな文を読むときの目の動きを計測した。

あいまいな文の代表例として、よく引き合いに出されるのがこれである。

The horse raced past the barn fell.

多くの読み手は raced を「馬が走った」という述語として読む。ところが最後の fell に来て、その解釈では文が成り立たないと分かる。

正しくは「納屋のそばを走らされた馬が倒れた」となる。読み手は、いったん作った構造を壊して作り直すことになる。

このような文をガーデンパス文と呼ぶ。庭の小道を案内されるまま進んだら行き止まりだった、という比喩から来た呼び名である。

なぜ最初に間違えるのか。Frazier と Rayner は minimal attachment (= 最小付加の原則) という考え方で説明した。新しく出てきた語を、作りかけの構造にできるだけ単純な形でまず組み込もうとする傾向をいう。

分かれ道で、まっすぐな道をとりあえず選んでしまう癖に似ている。単純なほうを先に試すので、たいていは速く読める。ただし外れたときの代償が大きい。

この作り直しの負荷は、データにも現れていた。問題の語で固視時間が伸び、前へ戻る視線の動きが増えていた。

「長い文で急に分からなくなる」という体感は、この作り直しが起きている瞬間そのものである。読み手の集中力が切れたわけではない。

ここまでのまとめ: 読み手は新しい語をまず一番単純な形で組み込もうとし、外れると解釈の作り直しが起きる。長い文で急に崩れる感覚は、その作り直しの瞬間にあたる。

第二言語の読みは、骨組みより語の意味と語順に頼りやすい

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

文法は答えられるのに、読むと使えてない気がします。

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

Clahsen と Felser はそれを浅い構造の仮説と呼びました。細かい文法の骨組みより語の意味や並び順を頼りに読む状態で、地図より方角で歩く感じです。

ここまでは、母語話者 (= その言葉を生まれたときから使っている人) にも起きる話だった。第二言語の読みには、さらに別の特徴が加わる。

Clahsen と Felser (= 学習者の文処理研究をまとめた二人の言語学者) は2006年、多数の実証研究を統合した。

そこで提示されたのが shallow structure hypothesis (= 浅い構造の仮説) である。学習者は文の細かい文法的な骨組みを、その場で十分に使い切れていないという考え方をいう。

代わりに何を使うのか。語の意味、語の並び順、話の流れといった手がかりである。地図の細部を見ずに、だいたいの方角だけで歩いているようなものだ。

ただし、これは文法知識が「無い」という話ではない。文法は答えられる。それでも読んでいる最中に、その知識を優先的に使えていない。知識の有無ではなく、処理のときの使い方の違いとして説明されている。

結果として、構造が複雑な文やあいまいな文で差が出る。母語話者ほど素早く構造の情報を使えず、誤解や遅れが生じやすいとされている。「単語も文法も分かっているのに読めない」という違和感には、ここに理論的な裏づけがある。

ここまでのまとめ: 学習者は文の細かい骨組みより、語の意味や語順に頼って読み進めやすいと整理されている。文法知識の欠如ではなく、処理の優先順位の違いとされる。

離れた場所にある語同士を結ぶ読みは、特に重い

長い文が苦しくなるもう一つの理由が、語と語の距離である。

Marinis ら (= 学習者の読み時間を測った研究チーム) は2005年、self-paced reading という手法を使った。自分のペースで文を少しずつ表示させながら読み進め、区切りごとの所要時間を測る方法をいう。

調べたのは long-distance dependency (= 離れた場所にある語同士の文法的なつながり) である。疑問詞と、それを受け止める動詞が離れている文などが対象になる。

Who did the nurse think the doctor helped?

who は文頭にあるが、実際に結びつく相手は helped の後ろの空所である。helped の後ろには、本来 who が入るはずの席が空いている。読み手はこの二つを頭の中で結ばなければならない。

母語話者は、その途中にある手がかりを処理の最中に活性化させて使っていた。長い距離を一気に渡るのではなく、途中の中継点を踏んで渡っているイメージになる。

一方、学習者はこの中継点を十分に使えていなかった。特に熟達度が低い場合に、その傾向がはっきり出ていた。

中継点を使えないと、離れた二点を一本の線で結ぶ作業になる。長い修飾がついた英文で迷子になりやすいのは、この負担が乗るからである。

ここまでのまとめ: 離れた語同士を結ぶ読みでは、学習者は途中の手がかりを使いにくいと報告されている。長い修飾がつくほど、結びつける作業の負担が増す。

読めない原因が、記憶からの取り出しの混乱にあることもある

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

文法は分かるのに、この一文だけ読めないんです。

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

Cunnings の整理では、似た語が近くにあると記憶から別の語を引っぱってしまうとされています。似た顔の知人を呼び間違えるあれと同じです。

文法も分かる。構造も追えている。それなのに、この一文だけ意味を取り違える。

Cunnings (= 母語話者と学習者の文処理を比較したレビューを書いた研究者) は2017年、干渉という考え方で説明している。

干渉 (= 記憶から語を取り出すときに、似た別の語を誤って引っぱってしまう現象) は、文処理の研究で広く扱われてきた。

似た顔つきの知り合いが近くに何人もいると、探していた人を取り違えて呼びかけてしまうことがある。あの取り違えが、文を読む最中にも起きている。

文中に意味や性質の似た名詞が複数あると、読み手は正しい語ではなく別の語を引っぱり出すことがある。その結果、一時的な誤解や読み時間の増加として観測される。

そして学習者は、母語話者よりこの干渉を強く受けやすい傾向が複数の研究で報告されている。

この現象は、文法規則を知っているかどうかとは関係がない。記憶システムからの検索の精度の問題として説明されている。

つまり「文法は分かっているのに、この文だけ読めない」という体感の一部は、文法の勉強では埋まらない。似た語が近くに並んでいないかを疑うほうが実用的である。

ここまでのまとめ: 似た語が近くにあると、記憶から誤った語を引っぱり出して一時的に誤解が起きるとされる。これは文法知識の有無とは別の原因にあたる。

一生このままではない——読む力は熟達度で変わる

ここまで読むと、第二言語の読みには越えられない壁があるように思えるかもしれない。研究の示す像は、そこまで固定的ではない。

Hopp (= 上級学習者の文処理を長年調べてきた研究者) は2010年、高い熟達度に達した学習者を対象にした研究を報告した。

そこでは、文法的な手がかりの処理において、母語話者と似たふるまいを示す学習者がいることが示された。

先に紹介した離れた語を結ぶ研究でも、同じ示唆が出ていた。熟達度の高い学習者では、母語話者に近い処理のパターンが見られる場合があった。

自転車の運転が最初はぎこちなくても、練習でだんだん滑らかになるのと同じである。今の読み方は、生まれつきの制約ではなく通過点にあたる。

変化を起こす材料は経験の蓄積である。英語の多読は本当に力がつくのか、効果と限界で整理したとおり、読む量には効く範囲と効かない範囲がある。

つまり「今できないから一生できない」は、研究の示す像とは違う。処理の癖は、経験によって変わっていく発達的な現象とされている。

ここまでのまとめ: 高い熟達度に達した学習者は、母語話者に近い処理を示す場合があると報告されている。読む力は固定された制約ではなく、変化する発達的な現象とされる。

予測しながら読む——練習の設計と、素材選びの目安

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

結局、明日から何をすればいいんですか?

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

Kaan のレビューでは、先を見当づけながら読むと負荷が下がるとされています。意味のかたまりで区切る練習が、その見当づけの助走になります。

最後に、ここまでの研究を練習に落とす。鍵になるのは予測である。

Kaan (= 予測しながら読む処理のレビューをまとめた研究者) は2014年、この分野の知見を統合した。

予測処理 (= まだ出てきていない語や構造を、あらかじめ見当をつけながら読み進める働き) がうまく回ると、読みの負荷は軽くなるとされている。

先の展開をなんとなく予想しながら映画を見るのに似ている。

学習者は母語話者に比べ、予測処理の使い方が弱かったり遅れたりする場合がある。ただしそれは知識が無いからではなく、処理に使える余裕の制約が一因だとされている。

だとすれば、余裕を作る練習が有効になる。以下の四つは、いずれも研究の知見に対応している。

手順1: 意味のかたまりで区切って読む

単語を一語ずつ訳しながら読む癖から離れ、意味のまとまりごとに区切って読む練習がある。読解指導の定番書では、この技術が読みの速さと理解を両立させる橋渡しとして扱われている。

レンガを一個ずつではなく、ブロックごと持ち上げるイメージになる。区切る位置は、前置詞の前や関係詞の前など、掛かり先が切り替わる場所に置く。

手順2: 同じ文章を繰り返し読む

Taguchi ら (= 日本人学習者を対象に読みの速さを調べた研究チーム) は2004年、ある練習を検証した。音声を聞きながら、同じ文章を繰り返し読む練習である。

その結果、理解の正確さを保ったまま読む速度が上がる効果が報告されている。同じ道を何度も歩くと迷わず歩けるようになるのと同じ理屈である。

手順3: 切れ目で先を予測してから進む

区切った位置でいったん止まり、次に何が来るか見当をつけてから読み進める。予測が当たれば負荷は下がり、外れた箇所が自分の弱点の記録になる。

手順4: 素材の難しさを合わせる

素材が重すぎると、回帰は一気に増える。目安として、文章中の語の98%程度を知っていると無理なく読めるとされている。

100粒のうち98粒が見慣れた具のスープ、という程度の割合である。1ページに知らない語が10個以上あるなら、その素材は今の練習には重い。英単語は何個覚えれば読めるのか、目的別の目安で扱った数字が、素材選びの物差しになる。

ここまでのまとめ: 意味のかたまりで区切り、同じ文章を繰り返し読み、先を予測しながら進む練習が研究の知見に対応する。素材は語の98%を知っている水準に合わせるとよい。

よくある質問

Q1. 返り読みは、やはりやめるべきですか。

一律にやめる必要はない。うまく読めているときでも、視線の1割強は前に戻っていると報告されている。潰すべきなのは、文頭まで毎回引き返して訳し直す往復のほうである。掛かり先を確かめる短い戻りは、修復として働いている。

Q2. 単語も文法もやったのに読めません。何が足りないのですか。

知識ではなく、読みながら構造を決める処理の可能性がある。学習者は文の細かい骨組みより、語の意味や語順に頼って読み進めやすいと整理されている。文法書をもう一冊増やすより、区切って読む練習のほうが対応する。

Q3. 長い文になると、どこで切ればいいか分かりません。

掛かり先が切り替わる場所が目安になる。前置詞の前、関係詞の前、接続詞の前などがそれにあたる。意味のまとまりごとに読む技術は、読解指導で広く採用されてきた。

Q4. 何度読んでも同じ文で止まります。

似た意味の語が近くに並んでいないか確認したい。似た語があると、記憶から誤った語を引っぱり出して誤解が生じることがある。それでも解けない場合は、素材が今の力に対して重すぎる可能性がある。

Q5. この読みにくさは一生続きますか。

続くとは限らない。高い熟達度に達した学習者が、母語話者に近い処理を示した例が報告されている。熟達度が上がると処理のパターンが変わることは、読み時間の実験でも観測されている。

まとめ

英語の長い文が読めないのは、読み方が下手だからではない。読むという行為が、その場で文を組み立てる作業だからである。

目の動きの研究では、視線が止まって飛ぶを繰り返していることが示されている。そしてうまく読めているときでも、1割強は前に戻っている。返り読みは、それ自体が失敗の証拠ではない。

長い文で急に崩れる瞬間には、最初に飛びついた単純な解釈の作り直しが起きている。加えて学習者は、文の骨組みより語の意味と語順に頼りやすい。離れた語を結ぶ処理では負担が増え、似た語が近くにあると記憶から誤った語を引き出すこともある。

どれも「文法知識が足りない」とは別の原因である。だから文法書を積み増しても、この詰まりは解けない。

そしてこの読み方は固定されていない。熟達度が上がると、母語話者に近い処理へ寄るとされる。

やることは二つに絞れる。意味のかたまりで区切って予測しながら読む練習を重ねること。そして、素材の重さを今の力に合わせることである。

返り読みを禁止する必要はない。戻ったあと前に進めているかどうか、そこだけを見ればよい。

参考文献

  1. Rayner, K. (1998). Eye movements in reading and information processing: 20 years of research. Psychological Bulletin, 124(3), 372-422. https://doi.org/10.1037/0033-2909.124.3.372
  2. Rayner, K. (2009). Eye movements and attention in reading, scene perception, and visual search: The 35th Sir Frederick Bartlett Lecture. Quarterly Journal of Experimental Psychology, 62(8), 1457-1506. https://doi.org/10.1080/17470210902816461
  3. Frazier, L., & Rayner, K. (1982). Making and correcting errors during sentence comprehension: Eye movements in the analysis of structurally ambiguous sentences. Cognitive Psychology, 14(2), 178-210. https://doi.org/10.1016/0010-0285(82)90008-1
  4. Clahsen, H., & Felser, C. (2006). Grammatical processing in language learners. Applied Psycholinguistics, 27(1), 3-42. https://doi.org/10.1017/S0142716406060024
  5. Marinis, T., Roberts, L., Felser, C., & Clahsen, H. (2005). Gaps in second language sentence processing. Studies in Second Language Acquisition, 27(1), 53-78. https://doi.org/10.1017/S0272263105050027
  6. Cunnings, I. (2017). Interference in native and non-native sentence processing. Bilingualism: Language and Cognition, 20(4), 712-721. https://doi.org/10.1017/S1366728916000675
  7. Hopp, H. (2010). Ultimate attainment in L2 inflection: Performance similarities between non-native and native speakers. Lingua, 120(4), 901-931. https://doi.org/10.1016/j.lingua.2009.06.004
  8. Kaan, E. (2014). Predictive sentence processing in L2 and L1: What is different? Linguistic Approaches to Bilingualism, 4(2), 257-282. https://doi.org/10.1075/lab.4.2.05kaa
  9. Nation, I. S. P. (2006). How large a vocabulary is needed for reading and listening? Canadian Modern Language Review, 63(1), 59-82. https://doi.org/10.3138/cmlr.63.1.59
  10. Taguchi, E., Takayasu-Maass, M., & Gorsuch, G. J. (2004). Developing reading fluency in EFL: How assisted repeated reading and extensive reading affect fluency development. Reading in a Foreign Language, 16(2), 70-96. https://nflrc.hawaii.edu/rfl/
  11. Nuttall, C. (1996). Teaching Reading Skills in a Foreign Language (2nd ed.). Macmillan Heinemann. https://www.macmillanenglish.com/

最終更新日: 2026-08-26

著者: 中村 拓(Taku Nakamura)(greencafe 編集部 編集責任者・非ネイティブ話者)。公開された 11 件の研究エビデンス(tier 1=9 / tier 2=2)を横断分析・再構成した。

画像: いらすとや (https://www.irasutoya.com/) より

この記事を編集した人

中村 拓(Taku Nakamura)のポートレート

(編集責任者 / 応用言語学・第二言語習得 エディター(非ネイティブ話者))

応用言語学のバックグラウンドを持つ英語学習分野のエディターで、査読済み SLA 論文・応用言語学ジャーナル・公的機関資料の横断要約と再構成を担当する編集責任者です。非ネイティブ英語話者で、大人の英語学び直しを研究の視点で編集しています。

編集した記事: 101 本

この編集者が編集した他の記事を読む運営者情報・編集方針

公開日: / 最終更新:

タイトルとURLをコピーしました