英会話で緊張するのは性格ではない|世界の研究で分かった「効く克服法・効かない克服法」

英会話レッスンや英語会議の前で緊張しているサラリーマンを表現したイラスト。汗をかきながら不安そうにしている男性と、深呼吸でリラックスを試みる男性のイラスト 2 枚を左右に並べた構成。 学習動機・継続

英会話で緊張するのは性格ではない|世界の研究で分かった「効く克服法・効かない克服法」

英語学び直したいユーイチ
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英会話レッスンに行くと頭が真っ白になるんです。僕、性格的にダメなんですかね…。

英語独学好きの助教S
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気持ちはわかります。実は研究では、外国語学習者の約 3 人に 1 人が同じ強さの緊張を感じていると示されています。性格ではないんですよ。

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

え、3 人に 1 人? でも周りはみんな平気そうに話してますけど…。

英語独学好きの助教S
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外国語不安は応用言語学で 40 年以上研究されてきた普遍現象です。世界中・どの言語でも同じ構造で起こることが分かっています。

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

研究で説明できる現象だとしても、僕みたいな人が本当に話せるようになるんですか?

英語独学好きの助教S
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研究はそれを「設計問題」として整理しています。性格を変えるのではなく、対処の仕組みを 3 つ作ればよい、という方向です。

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

対処の仕組み? 根性論じゃなくて、具体的にどう始めればいいんですか?

英語独学好きの助教S
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この記事では Horwitz / MacIntyre / Bandura など研究 12 本を順に解説して、効く克服法と効かない克服法を仕分けていきます。

結論: 英会話で緊張するのは「性格」でも「慣れ不足」でもありません。応用言語学で 40 年以上研究されてきた外国語不安 (Foreign Language Anxiety) という普遍現象です。Horwitz ら (1986) [E01] が世界で初めて測定尺度 FLCAS を作りました。それ以来、世界の学習者の約 3 人に 1 人が同じくらい強い緊張を感じていると分かっています。慣れだけでは消えません [E07]。しかし研究で効果が確認されている対処法を組み合わせれば、性格を変えずに「話せる自分」に近づけます。具体的には 段階曝露・自己効力感づくり・WTC (= 話す意欲) を上げる場の選び方 の 3 つです。

この記事でわかること

  • 英会話で緊張するのは普遍現象で、世界の 3 分の 1 の学習者が同じ感覚を持っていること
  • 緊張のメカニズムを応用言語学・心理学の研究 12 件で読み解く視点
  • 「慣れれば消える」が研究的には間違いである理由
  • 研究で効果が確認されている 3 つの克服法と、効かない根性論との見分け方

英会話で緊張するのはあなただけではない

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

やっぱり、緊張するのは僕だけじゃないって本当ですか?

英語独学好きの助教S
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Horwitz らが 1986 年に作った FLCAS (= 外国語不安を数値で測る質問紙) で、世界の 3 人に 1 人が高い不安を経験すると示されています。

英会話で口が止まる、頭が真っ白になる、相手の目を見られない — このような感覚を「自分の性格が弱いせいだ」と考えてしまう人は多いものです。しかし応用言語学の世界では、この現象は 1986 年から測定可能な普遍現象として記述されてきました。

研究の出発点は Horwitz, Horwitz, & Cope (1986) [E01] です。3 人は世界で初めて FLCAS (Foreign Language Classroom Anxiety Scale) という質問紙を作りました。日本語に直訳すると「外国語授業不安尺度」です。これで外国語授業で感じる不安を数値で測れるようになりました。彼らの研究では、約 3 分の 1 の学習者が「高い不安」を経験していると報告されています。

つまり、英会話レッスンに行って緊張するあなたは、世界中の英語学習者 100 人のうち 30 人前後と同じ場所に立っているということです。これは「性格」ではなく、外国語を学ぶ人の多くに共通する反応として研究で記述されてきた現象なのです。

この FLCAS は英語学習者だけのものではありません。Aida (1994) [E12] は、Horwitz らの尺度を日本語学習者で再検証しました。その結果、同じ 4 つの不安要因 (話す不安・否定的評価への恐怖・授業への居心地の悪さ・言語学習への否定的態度) が現れると示されました。つまり、外国語不安は英語特有でも日本人特有でもありません。世界中・どの言語でも共通の構造を持つことが裏付けられています。

ここまでのまとめ: 英会話の緊張は「性格」ではなく、Horwitz (1986) 以来 40 年研究されてきた普遍現象です。世界の 3 人に 1 人が同じくらい強く感じています。

なぜ英語だと緊張するのか — 3 つの構成要素

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

日本語の会話は平気なのに、なんで英語だと頭が真っ白になるんですか?

英語独学好きの助教S
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MacIntyre & Gardner 1994 は、緊張が頭の中の作業机 (= ワーキングメモリ) を狭くする現象を実験で示しました。性格ではない証拠です。

「自分は性格的に内気だから」と片付ける前に、研究が示す緊張の中身を見てみましょう。Horwitz ら (1986) [E01] は、外国語不安を 3 つの構成要素に分解しています。

  1. コミュニケーション不安: 人とリアルタイムで話すこと自体への不安
  2. 否定的評価への恐怖: 「下手だと思われたらどうしよう」という他者評価への恐れ
  3. テスト不安: 評価される場面そのものへの不安

英会話で緊張する人の多くは、母国語の会話では平気でも 2 番目の「下手だと思われる恐怖」が英語では一気に強まります。これは母語を使うときの自分のイメージ (= 知的に話せる大人の自分) と、英語で話す自分のギャップが大きいためです。英語の自分は、単語が出てこない、文法が崩れる、子供のような自分に感じられます。

このギャップが具体的に何を引き起こすかを示したのが MacIntyre & Gardner (1994) [E02] です。彼らは、言語不安がワーキングメモリ (= 頭の中の作業机のような場所) の容量を実際に圧迫することを実験で示しました。緊張で覚えていた単語が引き出せなくなるのは「気のせい」ではなく、不安が脳の処理を物理的に邪魔しているのです。

たとえると、緊張は作業机の上に大きな箱を置かれたようなものです。机そのものは同じ広さでも、使える面積が半分になれば、思い出せる単語の数も半分以下になります。これが「英会話で頭が真っ白」の正体です。

ここまでのまとめ: 緊張の中身は「コミュニケーション不安・他者評価への恐怖・テスト不安」の 3 つに分解できます。MacIntyre & Gardner (1994) は、これがワーキングメモリを圧迫する実証データを示しました。

WTC モデルで読み解く「話せる人・話せない人」の差

WTC モデルで読み解くと、話す行動はピラミッド状の積み重ねで決まります。

不安だけでは「話す行動」のすべてを説明できません。同じくらい緊張していても、話し出す人と黙ってしまう人がいるからです。この差を説明する代表モデルが MacIntyre ら (1998) [E03] の WTC モデルです。WTC は Willingness to Communicate (= 話す意欲) の略です。

WTC モデルは、話す行動を 6 階層のピラミッドで説明します。底辺から順に積み上げると以下のようになります。

  1. 社会的・文化的態度 (土台)
  2. 認知的・情緒的傾向
  3. 動機 (英語を話したい理由)
  4. 状況的自信 (この相手・この話題なら話せるという感覚)
  5. 話す意欲 (今、この瞬間話そうとする気持ち)
  6. 実際の話す行動 (頂点)

つまり「話せるかどうか」は、性格や能力だけでなく、土台の文化的態度から頂点の状況的意欲までの積み重ねで決まります。緊張は確かに 5 階層目の「話す意欲」を下げますが、それは話せない理由の一部にすぎません。

日本人特有の WTC 研究としては Yashima (2002) [E04] が代表的です。彼女は日本人 297 人を調査しました。そして国際志向性 (International Posture) が WTC を強く予測すると示しました。国際志向性とは「英語圏や国際社会の人とつながりたい」という心理的な憧れのことです。

これは身近な例で考えると分かりやすいでしょう。たとえば「海外旅行に行きたい」「海外ドラマを字幕なしで観たい」「外国の友達が欲しい」と感じる人ほど、英会話レッスンで多少緊張しても話し出します。逆に「英語は仕事で必要だから仕方なくやっている」だけだと、緊張が一段強く出やすいということです。

ここまでのまとめ: 話せるかは WTC ピラミッドの 6 階層で決まります。日本人では Yashima (2002) の「国際志向性」が WTC を強く予測する要因です。

緊張で口が止まる脳のしくみ

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

緊張で言葉が出ないのって、脳の中で何が起きてるんですか?

英語独学好きの助教S
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Krashen の affective filter (= 気持ちのフィルター) が立ち、Levelt の 3 段階モデルも同時に詰まる、という仕組みです。

「頭が真っ白になる」「日本語ならすぐ出る言葉が英語だと出ない」という感覚には、明確な脳のメカニズムがあります。代表的な 2 つの理論を見てみましょう。

1 つ目は Krashen (1985) [E05] の affective filter 仮説 (= 気持ちのフィルター仮説) です。学習者が緊張や不安を感じると、頭の中に「フィルター」が立って、せっかく覚えた英語が外に出てこられなくなる、という考え方です。インプットがどれだけ良くても、フィルターが上がっていれば言語習得に届かないとされています。

2 つ目は Levelt (1989) [E06] の speech production モデルです。これは話すプロセスを認知科学で説明したモデルで、話すプロセスを次の 3 段階に分けます。

  • 段階 1: 概念化 (= 何を言うか考える)
  • 段階 2: 言語化 (= 単語と文法を選ぶ)
  • 段階 3: 音声化 (= 口を動かして音にする)

普段の母語会話では、この 3 段階が自動化されているため意識せず話せます。しかし英語では、段階 2 (単語選び・文法判断) と段階 3 (発音) がまだ自動化されていないので、各段階でワーキングメモリを大量に消費します。

ここに緊張が加わるとどうなるか。MacIntyre & Gardner (1994) [E02] が示したように、緊張は作業机そのものを狭くします。狭くなった机の上で 3 段階の処理を同時にやろうとすると、机から物が落ちる — つまり「言葉が出てこない」状態になります。

緊張で口が止まるのは「あなたの英語力不足」だけが原因ではありません。英語処理が自動化されていない状態 × 不安による作業机の縮小という掛け算で起きている、と理解すると対処の方向が見えてきます。

ここまでのまとめ: 緊張で話せないのは Krashen の affective filter と Levelt の 3 段階モデル + 作業机縮小、の組み合わせで説明されます。

緊張は「慣れ」では消えない

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

英会話を 3 年やってるけど、まだ緊張します。続ければそのうち消えますか?

英語独学好きの助教S
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Liu & Jackson 2008 が中国人 547 名を調べた研究で、学習歴と不安の相関は r=-.15 (= ほぼ無関係) と示されました。

「英会話を 1 年続ければ慣れて緊張しなくなるよ」という助言をよく聞きますが、これは研究的には正確ではありません。

Liu & Jackson (2008) [E07] は中国人 EFL 学習者 547 名を調査しました。結果は英語学習歴と不安の相関は非常に弱い (r=-.15) というものでした。r=-.15 とは、学習歴が長いほど不安が少しだけ下がる傾向はあるが、ほとんど予測力がないという意味です。つまり 5 年 10 年やっても、自動的には緊張は消えません。

これを身近に置き換えると、自転車に長く乗っていても下り坂で勝手にスピードが緩まないのと似ています。重力に逆らう仕組み (= ブレーキの使い方) を知らなければ、年数だけでは恐怖は消えないのです。緊張も同じで、「対処の仕組み」を知らずに時間だけ重ねても消えにくいということです。

さらに Saito ら (2018) [E08] は日本人 EFL 学習者 108 名を 1 年追跡しました。学習成果を予測したのは 学習時間量ではなく「楽しさ (enjoyment) と動機の質」 だったと報告しています。1 年経っても、緊張が強いまま義務感で続けた人は伸びにくいということです。

この 2 つの研究から導かれる結論は明確です。「とにかく続ければ慣れる」は神話で、対処の仕組みを意識的に作らないと緊張は減らない。次の 3 章で、その「対処の仕組み」を 1 つずつ見ていきます。

ここまでのまとめ: Liu & Jackson (2008) と Saito ら (2018) は「年数と緊張はほとんど無関係」「楽しさが伸びを決める」と示しました。慣れ任せは効きません。

効く対処法 1 — 段階曝露で「話す前の壁」を下げる

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

いきなり海外出張で英会話、はやっぱりキツいですよね…。

英語独学好きの助教S
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臨床心理学の段階曝露 (= 低リスク場面から階段で慣らす方法) を応用します。緊張強さ 3-5 の場面で小さな成功を 10-20 回積むのが研究的に効きます。

研究で効果が確認されている 1 つ目の対処法は、段階曝露 (= 低リスク場面から高リスク場面へ階段状に慣らす方法) です。これは臨床心理学の不安治療で長年確立された手法を、英会話に応用したものです。

段階曝露では、緊張の強さを 1 (ほぼゼロ) から 10 (パニック) で自己評価し、強さ 3-4 の場面から始めて徐々に上げていきます。たとえば英会話の場合、次のような階段が考えられます。

  • 強さ 1: 英語の独り言を風呂で言う
  • 強さ 3: AI 相手に音声で 5 分話す
  • 強さ 5: オンライン英会話で初対面の講師と 25 分話す
  • 強さ 7: 職場の英語会議で 1 回発言する
  • 強さ 9: 海外出張で初対面の顧客とランチ会話をする

ここで重要なのは「強さ 9 にいきなり挑む根性論」を避けることです。MacIntyre & Gardner (1994) [E02] が示したように、不安が高い場面では作業机が極端に狭くなり、せっかくの英語力が引き出せません。引き出せないまま終わると「やっぱり自分はダメだ」という感覚が強化されてしまいます。

逆に、強さ 3-5 の場面で「言いたいことが言えた」という小さな成功を 10-20 回積むと、後述の自己効力感 [E09] が育ちます。すると強さ 7 以上の場面でも作業机を維持しやすくなります。

ここまでのまとめ: 緊張強さ 3-5 の場面で小さな成功を 10-20 回積む段階曝露が、根性で強さ 9 に挑むより研究的に効きます。

効く対処法 2 — 自己効力感づくりと「楽しさ」の戦略

2 つ目の対処法は、自己効力感づくりです。研究的に効くと確認されています。

2 つ目の対処法は、自己効力感 (= 「自分はこれができる」という確信) を意図的に育てることです。Bandura (1997) [E09] は、自己効力感が行動の継続・困難の克服を予測する最強の心理因子の一つだと示しました。

Bandura は自己効力感を育てる 4 つの源泉を挙げています。英会話に置き換えると次のようになります。

  1. 小さな成功体験: コンビニで Yes / No だけ言えた、英語で道を聞かれて単語 3 つで答えられた、など
  2. 成功している他者の観察: 自分と似た立場 (社会人・40 代開始など) の人が話している動画を見る
  3. 言語的説得: 信頼できる講師・友人から「今日の説明、伝わってたよ」と具体的に言ってもらう
  4. 生理的覚醒の解釈の書き換え: 心拍数が上がるのを「緊張」ではなく「ウォーミングアップ」と解釈する

ここで Dewaele & MacIntyre (2014) [E10] の大規模調査 (1,746 名) が示した重要な発見が効いてきます。彼らは 不安と楽しさは別の独立した次元 だと示しました。つまり「緊張するけど楽しい人」は伸び、「緊張しないけどつまらない人」は伸びない、ということです。

これは身近な例で考えると分かりやすいでしょう。ジェットコースターは怖くても楽しいから繰り返し乗りたくなります。同じ「ドキドキ」でも、楽しさが乗っていれば行動が続くわけです。英会話でも「緊張ゼロ」を目指す必要はなく、「緊張するけど楽しめる場面」を増やす方が研究的に正しい方向です。

Saito ら (2018) [E08] が日本人 108 名で示したのもこの方向で、楽しさを伴った学習は学習時間量より成果を予測しました。楽しさを増やす方が、不安を消そうとするより効きやすいということです。

ここまでのまとめ: Bandura の 4 源泉で自己効力感を育て、Dewaele & MacIntyre の「楽しさは別軸」を活かす方が、緊張をゼロにしようとするより効きます。

効く対処法 3 — WTC を上げる「場の選び方」

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

英会話スクール、どこを選んでもダメだったんですけど、選び方ってあるんですか?

英語独学好きの助教S
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Kang 2005 が示した状況的 WTC の 3 要因 (安心・興奮・責任感) が揃う場を選ぶのが研究的に効きます。スクール選びは性格より大事です。

3 つ目の対処法は、状況的 WTC (= 話す意欲が状況ごとに上がったり下がったりする性質) を意図的に上げる「場の選び方」です。Kang (2005) [E11] は、話す意欲が固定された性格ではなく、相手・話題・状況の組み合わせで瞬間ごとに変動すると示しました。

Kang の研究では、状況的 WTC を高める 3 要因が特定されています。

  • 安心 (security): 間違っても受け入れられると感じられる相手・環境
  • 興奮 (excitement): 話題そのものが面白い、好奇心が刺激される
  • 責任感 (responsibility): 自分が話さないと会話が止まる、というような立場

逆に、この 3 要因が揃わない場面では WTC は急降下します。たとえば「厳しい先生が間違いを即訂正する」「全く興味のない話題」「他の人が話してくれるから自分は黙ってもいい場面」などです。性格的に話す方の人でも、こういう場面では WTC が一気に下がります。

ここから、英会話の場の選び方には次のような原則が導けます。

  1. 相手選びを最優先: 安心して間違えられる講師・友人を 1-2 人確保する
  2. 話題を自分の好奇心軸に寄せる: 仕事の英語より、趣味・興味のある話題で練習量を稼ぐ
  3. 発言責任のある場に身を置く: 1 対 1、または 3 人以下の小グループで「自分が話さないと進まない」状況を作る

Yashima (2002) [E04] が示した日本人の 国際志向性 とも整合します。「英語圏の人とつながりたい」という土台の動機があれば、Kang の 3 要因 (安心・興奮・責任感) を作りやすい場面を自分で選びやすくなるからです。

ここまでのまとめ: Kang (2005) の 3 要因 (安心・興奮・責任感) が揃う場を選ぶことで、状況的 WTC が一気に上がります。場選びは性格より大事です。

FAQ

Q1. 英会話で緊張するのは性格ですか?
A. 違います。Horwitz ら (1986) [E01] が世界で初めて測った FLCAS では、約 3 分の 1 の学習者が高い不安を経験していると報告されています。性格ではなく普遍現象です。

Q2. 続ければ緊張は消えますか?
A. ほとんど消えません。Liu & Jackson (2008) [E07] が中国人 547 名を調べた研究で、英語学習歴と不安の相関は r=-.15 と非常に弱いと示されました。慣れ任せでは効きにくいです。

Q3. どの対処法から始めればよいですか?
A. 段階曝露 (緊張強さ 3-5 から始める) と Bandura の自己効力感 4 源泉 [E09] を組み合わせるのが研究的に堅実です。「楽しさ」を意識的に増やすのも Dewaele & MacIntyre (2014) [E10] が示した重要因子です。

Q4. 深呼吸や瞑想は効きますか?
A. 一時的な生理的緊張は下がりますが、根本対処にはなりません。Bandura (1997) [E09] の 4 源泉のうち「生理的覚醒の解釈の書き換え」と組み合わせると意味が出ます。

Q5. オンライン英会話と対面、どちらが緊張しにくいですか?
A. Kang (2005) [E11] の 3 要因 (安心・興奮・責任感) で考えてみましょう。安心が確保しやすい固定の講師がいるオンライン英会話の方が、知らない相手の対面より状況的 WTC を上げやすい傾向があります。

まとめ

英会話で緊張するのは性格でも慣れ不足でもありません。応用言語学で 40 年以上研究されてきた外国語不安という普遍現象です。Horwitz ら (1986) [E01] が世界で初めて測定尺度 FLCAS を作りました。それ以来、世界の学習者の 3 分の 1 が同じ感覚を持っていると分かっています。

MacIntyre & Gardner (1994) [E02] は緊張がワーキングメモリを圧迫することを実証しました。MacIntyre 1998 [E03] と Yashima 2002 [E04] の WTC モデルがあります。これらは「話す行動」がピラミッド状の積み重ねで決まると示しました。Krashen [E05] と Levelt [E06] のモデルは、緊張で口が止まる脳のしくみを説明します。

慣れ任せは Liu & Jackson (2008) [E07] と Saito ら (2018) [E08] で否定されています。代わりに研究で効果が確認されているのは 段階曝露・自己効力感づくり [E09] [E10]・WTC を上げる場の選び方 [E11] の 3 つです。

「緊張ゼロ」を目指す必要はありません。Dewaele & MacIntyre (2014) [E10] が示したように、緊張と楽しさは別軸で、楽しさを増やす方が伸びにつながります。性格を変えずに、対処の仕組みを 1 つずつ積み上げてください。

参考文献

  1. Horwitz, E. K., Horwitz, M. B., & Cope, J. (1986). Foreign language classroom anxiety. The Modern Language Journal, 70(2), 125-132. https://www.jstor.org/stable/327317
  2. MacIntyre, P. D., & Gardner, R. C. (1994). The subtle effects of language anxiety on cognitive processing in the second language. Language Learning, 44(2), 283-305. https://onlinelibrary.wiley.com/journal/14679922
  3. MacIntyre, P. D., Clément, R., Dörnyei, Z., & Noels, K. A. (1998). Conceptualizing willingness to communicate in a L2: A situational model of L2 confidence and affiliation. The Modern Language Journal, 82(4), 545-562. https://onlinelibrary.wiley.com/journal/15404781
  4. Yashima, T. (2002). Willingness to communicate in a second language: The Japanese EFL context. The Modern Language Journal, 86(1), 54-66. https://onlinelibrary.wiley.com/journal/15404781
  5. Krashen, S. D. (1985). The input hypothesis: Issues and implications. Longman. https://www.sdkrashen.com/
  6. Levelt, W. J. M. (1989). Speaking: From intention to articulation. MIT Press. https://mitpress.mit.edu/9780262620895/speaking/
  7. Liu, M., & Jackson, J. (2008). An exploration of Chinese EFL learners’ unwillingness to communicate and foreign language anxiety. The Modern Language Journal, 92(1), 71-86. https://onlinelibrary.wiley.com/journal/15404781
  8. Saito, K., Dewaele, J.-M., Abe, M., & In’nami, Y. (2018). Motivation, emotion, learning experience, and second language comprehensibility development in classroom settings. Language Learning, 68(3), 709-743. https://onlinelibrary.wiley.com/journal/14679922
  9. Bandura, A. (1997). Self-efficacy: The exercise of control. Freeman. https://www.uky.edu/~eushe2/Bandura/Bandura1997EP.pdf
  10. Dewaele, J.-M., & MacIntyre, P. D. (2014). The two faces of Janus? Anxiety and enjoyment in the foreign language classroom. Studies in Second Language Learning and Teaching, 4(2), 237-274. https://pressto.amu.edu.pl/index.php/ssllt/article/view/5212
  11. Kang, S.-J. (2005). Dynamic emergence of situational willingness to communicate in a second language. System, 33(2), 277-292. https://www.sciencedirect.com/journal/system
  12. Aida, Y. (1994). Examination of Horwitz, Horwitz, and Cope’s construct of foreign language anxiety: The case of students of Japanese. The Modern Language Journal, 78(2), 155-168. https://onlinelibrary.wiley.com/journal/15404781

最終更新日: 2026-06-03
著者: greencafe 編集部。公開された 12 件の研究エビデンス (tier 1=12) を横断分析・再構成した。
画像: いらすとや (https://www.irasutoya.com/) より

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