英単語は接頭辞・接尾辞で増やせるのか|研究でわかった「1語知っている」の中身

単語帳の見出し語は覚えたのに、英文だと読めないんですよね…

気持ちはわかります。実はその現象、記憶力ではなく「1語をどう数えるか」という研究で説明がつくんですよ。

数え方、ですか? 覚えた数の問題じゃないんですか?

多くの人がそう思います。ただ語彙の研究では、1語の中身が人によってまるで違うと繰り返し報告されています。

接頭辞や接尾辞で覚えると効率がいいって話も、半信半疑で…

その慎重さは正しいです。研究はその言い方をそのままは支持していませんが、別の使い道があると示しています。

じゃあ僕は、何から手をつければいいんでしょうか?

この記事では研究を順番に見ていきます。そのうえで、自分に何が足りないのかを見分ける手順まで一緒に組み立てましょう。
結論: 「1語覚えれば、その仲間の形も自然に使える」という前提を、研究は支持していない。ある語の名詞形・動詞形・形容詞形・副詞形を書かせると、4つ全部そろう人も、1つも出せない人もまれだった。普通は2つか3つだけ出せる。しかも足りない部分はばらばらではない。語の前や後ろに付く接頭辞・接尾辞という、決まった形をしている。だから狙って埋められる。
この記事でわかること
- 研究が数える「1語」は、実は複数の形をまとめた単位であること
- 見出し語を知っていても、その仲間の形は半分近く落ちるという実測
- 日本人の学習者が最後まで取りこぼしやすい接辞(語に付く部品)があること
- 単語帳をもう1周する前に確かめるべき、自分の穴の見つけ方
1. 見出し語は覚えたのに、英文で急に読めなくなる

語族って言葉、初めて聞きました。何ですか?

同じ語から生まれた形をまとめて1と数える単位です。家族をまとめて1世帯と数えるのに近い、と考えてください。
単語帳の見出し語は覚えた。それなのに実際の英文を読むと、語尾が少し変わっただけで意味が浮かばない。これは記憶力の問題ではない。「1語」という言葉が指す中身の問題である。
研究は語彙の量を「語族 (word family)」という単位で数える。語族とは、同じ語から生まれた形をひとまとめにして1と数える単位のことだ。家族をまとめて「1世帯」と数えるのと似ている。
ただし、この家族には性質の違う2種類が混ざっている。1つは play が plays や played になるだけの変化で、これを屈折と呼ぶ。名前の呼び方が変わるだけで、中身は同じ人物のままだ。
もう1つは teach が teacher や teachable になる変化で、これを派生と呼ぶ。こちらは品詞ごと変わる。品詞とは、その語が名詞なのか動詞なのかという「文の中での役割」のことだ。役割が変われば、文の中での置き場所も変わる。
この2つは難しさが同じではない。plays や played は語尾の形が決まっていて、意味もほとんど変わらない。一方 teachable は「教えられる」という新しい意味を持ち、文の中での働きも変わる。同じ「家族」と呼ばれていても、後者のほうがはるかに遠い親戚である。
語彙の数え方の土台を作った論文は、この線引きを4つの基準で決めている。頻度・規則性・生産性・予測可能性の4つだ。そしてその基準を英語の接辞に当てはめ、7段階のレベルに整理した。
つまり語族の大きさは固定ではない。どのレベルで線を引くかで、「1語」に含まれる形の数が変わる。数える前に、どこまでを家族と呼ぶかを決める必要があるということだ。
ここまでのまとめ: 研究の「1語」は複数の形をまとめた単位です。しかも家族の範囲は7段階に分かれていて、線の引き方で大きさが変わります。
2. 「1語知っている」の中身は、人によってまるで違う

1語覚えたら、その仲間も自然に使えるんじゃないんですか?

多くの人がそう考えます。ただ研究で4つの品詞形を書かせると、2つか3つしか出ないのが普通だと示されています。
では、語族のメンバーを1つ知っていれば、残りも自然に使えるようになるのか。長くそう考えられてきたが、それを正面から確かめた研究がある。
英語を母語としない大学生・大学院生106名に、16の基語について4つの品詞形を書かせた。基語とは、design のような、まだ何も付いていないもとの形のことだ。品詞は名詞・動詞・形容詞・副詞の4つである。stimulate に対する stimulant や stimulative のような形を、自分で産出させたわけだ。
結果は予想と違った。4つ全部を書けた場合も、1つも書けなかった場合も、比較的まれだったのである。多くの学習者は部分的にしか知らなかった。
典型的だったのは、2つか3つの形だけ産出できるという状態だった。家族写真を撮ろうとしたら、いつも1人か2人だけ写っていない。全員そろうことも、誰も写らないことも、めったにない。そんな状態に近い。
ここで重要なのは、産出と受容が別だという点だ。産出とは自分で書ける・言えること、受容とは読んで意味が分かることを指す。1つのメンバーを知っていることは、他のメンバーを読んで分かる助けにはなる。だが自分で出せるところまでは自動的に届かない。
だから「3000語知っている」という自己申告は、人によって中身がまるで違う。同じ3000でも、家族がそろっている3000と、代表1人ずつの3000がある。
ここまでのまとめ: 4つの品詞形のうち、産出できるのは2つか3つが普通でした。「1語知っている」の中身は、人によって別物です。
3. 日本人の学習者には、接辞を覚える順番がある
足りない部分がでたらめに散らばっているなら、打つ手はない。だが、そうではないことを示した研究が日本にある。
日本人の英語学習者403名を対象に、語彙サイズを測るテストと、接辞の知識を測るテストを同時に行った研究である。語彙サイズとは、その人が知っている語の総量のことだ。接辞とは、語の前後にくっつく部品のことで、前に付くものを接頭辞、後ろに付くものを接尾辞と呼ぶ。
対象者の平均語彙サイズは約3769語だった。その人たちが平均して知っていた接辞は、13個の接頭辞のうち7.24個、16個の接尾辞のうち10.70個である。半分は取れているが、残りは取れていない。
もう少し細かく見ると、接頭辞の意味を当てられた割合は平均57%、接尾辞がどの品詞を作るかを当てられた割合は平均67%だった。3000語以上を知っている人でも、この水準にとどまる。
この研究の巧みなところは、実在しない語を使った点にある。unzaop や dutical のような造語に接辞を付けて出題した。こうすると「その語を知っているか」ではなく「接辞そのものを知っているか」だけを測れる。
そして、より多くの学習者が知っている接辞ほど早く身につき、知っている人が少ない接辞ほど後回しになる。この前提から接辞に順番を並べたのがこの研究だ。漢字の部首と同じで、先に入る部品と、何年たっても残る部品が分かれているということである。
この結果の読み方には注意がいる。「接辞を覚えていないのが悪い」という話ではない。語彙の総量が3000語を超えても取りこぼしが残るということは、単語を数多く覚えるやり方では接辞の穴が自然には埋まらない、という意味である。埋めたければ、接辞を別立てで扱うしかない。
ここまでのまとめ: 日本人学習者403名の平均は、接頭辞13個中7.24個、接尾辞16個中10.70個でした。取りこぼしには決まった偏りがあります。
4. 基語が分かっても、派生形は半分近く落ちる

半分近く落ちるって、そんなに落ちるものですか?

はい。研究では、もとの語を訳せた語のうち約半分で、形が変わった語は訳せませんでした。土台はあるのに崩れるんです。
接辞の取りこぼしは、読解の場面でどのくらい効いてくるのか。それを翻訳課題で測った研究がある。
対象はタイの大学生257名である。日本人ではない点は押さえておきたい。内訳は工学系167名と、より習熟度の高い医学系90名だった。
出題されたのは -tion / -er / -ment / -ity という4つの接尾辞である。32のもとの語と、その派生形を母語に訳させた。design と designer のような組み合わせだ。
結果が厳しい。基語を正しく訳せた語のうち、49%では派生形を正しく訳せなかったのである。元の駅名は読めるのに、そこに「前」や「口」が付いた途端に読めなくなる。そんな落ち方に近い。
著者らはここから3つのことを述べている。まず、語族を数える単位として使うと、とくに習熟度の低い学習者の実力を大きく見誤る。次に、接辞の学習は「基語から派生形へ」の方向で進み、逆方向では進まない。そして特定の接尾辞が他より先に身につくという順序がある。
3つ目は、そうした語の組み立てのパターンが、どれだけその形に出会ったかという頻度に左右されるという指摘だ。触れた回数が少ない形は、いつまでも組み立てられないままになる。
読解の場面に置き換えると、影響の大きさが見えてくる。文章の中で知らない語に当たると、そこで一度立ち止まることになる。それが「知っているはずの語の別の形」だった場合、立ち止まった理由すら分からない。単語帳に戻っても、その語は載っているのだから、原因が見つからないままになる。
ここまでのまとめ: 基語を訳せた語の49%で、派生形は訳せませんでした。基語が分かることと、家族が使えることは別です。
5. 接辞の知識は「形・意味・使い方」の3つに分かれる

接辞を知っているって、意味が言えれば十分じゃないんですか?

実は3つに分かれます。漢字でいう読める・意味が言える・書けるが別なのと同じだと、研究では整理されています。
「接辞を知っている」という言い方も、実は一枚岩ではない。それを3つに分けて測るテストが作られている。
Word Part Levels Test と呼ばれるもので、接辞の知識を形・意味・使い方の3面で測る。形とは、書かれた接辞を見分けられるかどうかだ。意味とは、その接辞が何を表すか言えるかどうか。使い方とは、その接辞が品詞をどう変えるか分かるかどうかである。
漢字にたとえると分かりやすい。見て読めるか、意味が言えるか、文の中で書けるか。この3つは別々の力である。接辞も同じで、形は分かるのに使い方は分からない、という段差が起こりうる。
このテストは大規模なデータで作られている。British National Corpus という英語の大量の文章を集めた資料から、頻度をもとに118個の派生接辞を選んだ。コーパスとは、実際に使われた文章を大量に集めて検索できるようにしたデータのことだ。
そのうえで、まず日本人の大学生417名からデータを取って項目を改訂した。次に30以上の異なる母語を持つ1348名の回答を分析し、接辞ごとの難しさの段階を決めている。日本人学習者が開発段階に組み込まれている点で、この記事の読者に近いデータだと言える。
自分がどの面で止まっているかを確かめるだけでも、次にやることは変わる。形も意味も分かるのに文の中で使えないなら、足すべきは新しい接辞ではなく、その接辞を使った文に触れる量である。
簡単な自己チェックもできる。-ity という接尾辞を例に取る。まず、その形を語の中で見つけられるか。次に、それが「性質」を表すと言えるか。最後に、それが付くと名詞になると分かるか。3つ目でつまずく人は多い。形と意味だけで止まっていると、読んでいる途中で文の骨組みを見失う。
ここまでのまとめ: 接辞の知識は形・意味・使い方の3面に分かれます。どの面で止まっているかで、次にやることが変わります。
6. 研究が数える「何語」も、実は多めに出る
ここまで読むと、次の疑問が出てくる。研究が示す「読解には何語必要」という数字は、語族単位で数えられている。では、家族の中身を知らない学習者にとって、その数字は当てになるのか。
この問いを日本人学習者で確かめた研究がある。英語学習者279名を語彙の習熟度で3群に分け、12の基語とその屈折形・派生形を英語から日本語に訳させた。
結果、基語・屈折形・派生形の理解度には3群すべてで有意な差が出た。有意な差とは、偶然のばらつきでは説明しにくいほどはっきりした差、という意味である。しかも最初の4000語から5000語の基語を習得している人でも、同じ差が見られたのである。習熟度が上がっても、この差は消えなかった。
そこで著者が提案したのが flemma という単位だ。基語とその屈折形までをまとめて1と数え、品詞をまたぐ派生形は別に数える方法である。家族の範囲を狭く取り直す、と考えればよい。
数字への影響は小さくない。語族単位で数えると98%のカバー率になる文章が、flemma 単位では85%にしかならない。カバー率とは、その文章に出てくる語のうち何割を知っているかという割合のことだ。既知語の割合が少し下がるだけで読解は大きく崩れるため、語族を単位にした推論には疑問が残る、と著者は結論している。
必要な語数の目安そのものは英単語は何個覚えれば読める・聞ける?で扱っている。本記事の役割は、その数字を語族単位として読み、自分の実力は控えめに見積もっておくという但し書きを添えることだ。
ここまでのまとめ: 語族単位で98%のカバー率でも、狭く数え直すと85%まで落ちます。語数の目安は多めに出ると心得ておきます。
7. 「思い出せない」と「そもそも知らない」は別の問題

出てこないのと知らないのって、同じじゃないんですか?

別物ですよ。日本語から英語が出ないなら取り出しの問題、英語を見て意味が浮かばないなら知識の穴だと分けられます。
ここで大事な切り分けをしておきたい。単語がうまく使えないとき、詰まり方には2種類ある。
1つは、同じ1つの語形が口から出てこないという詰まり方だ。意味は分かる。読めば分かる。でもとっさに出てこない。これは知識の問題ではなく、取り出しの問題である。
もう1つは、そもそも別の形を知らないという詰まり方だ。develop は分かるが development は分からない。この場合、いくら思い出そうとしても出てこない。頭の中に無いものは出せないからだ。
見分け方は単純である。日本語の意味を見せられて英語が出てこないなら前者、英語を見せられて意味が浮かばないなら後者だ。前者は取り出しの練習が要る。後者は対象を足すしかない。
取り出し側の詳しい話は覚えたはずの英単語が口から出てこない本当の理由に譲る。本記事が扱っているのは後者、つまり知識そのものに空いた穴のほうである。
この2つを混ぜると、練習の型を間違える。取り出しが弱い人が新しい語を足しても改善しないし、知識に穴がある人がいくら思い出す練習をしても埋まらない。
ここまでのまとめ: 「出てこない」と「知らない」は別の詰まり方です。日本語から引くか英語から引くかで、どちらか見分けられます。
8. 単語帳をもう1周する前に、やること
では、限られた時間をどこに使うか。ここまでの研究をつなぐと、道筋はかなり具体的になる。
まず、接辞の一覧を丸暗記するのは勧めない。取りこぼしには順序があり、後回しでよい接辞が実際に存在するからだ。全部を等しく詰め込むのは、順序の情報を捨てることになる。
代わりに勧められるのは、すでに見出し語を知っている語に対して「自分が使う品詞形を1つだけ足す」という作業である。基語から派生形への方向でしか学習は進まない。だから土台のある語から広げるほうが理にかなっている。
確かめ方も難しくない。手元の単語帳から10語ほど選び、その語の名詞形と動詞形と形容詞形を書けるか試す。2つか3つしか出なければ、それが普通の状態だ。そこで出なかった形が、次に埋める対象になる。
もう1つ、リストの数字の読み方を変えておきたい。頻度リストの「1語」は、語族や、品詞ごとに分けて数えるレンマといった単位でまとめられている。たとえば学術語彙のリストが570語と言うとき、それは570の語族という意味だ。研究で選ばれた語を実際に見たい場合は英単語リスト集で全文を確かめられる。
最後に、この記事は「接辞を覚えれば単語が何倍にもなる」とは言っていない。言っているのは、自分に足りない部分が決まった形をしているので狙って埋められる、ということだけだ。倍率の話ではなく、地図の話である。
ここまでのまとめ: 接辞の一覧暗記ではなく、知っている語に品詞形を1つ足すのが順序に合っています。まず10語で自分の状態を測ります。
よくある質問
Q. 語源で覚えるのは効率がいいのですか。
A. どの面を埋めたいかによります。接辞の知識は形・意味・使い方の3面に分かれ、面ごとに到達度が違うためです。意味は分かるのに使えないなら、語源を足すより使った文に触れる量を増やすほうが噛み合います。
Q. 接頭辞と接尾辞、どちらを先にやるべきですか。
A. 実測では接尾辞のほうが正答率が高く出ています。接頭辞の意味の認識が平均57%、接尾辞の品詞認識が平均67%でした。取りこぼしが大きいのは接頭辞の側だと言えます。
Q. 単語帳の見出し語数と、研究の語数はどう違うのですか。
A. 研究の数字は原則として語族単位です。同じ語から生まれた形をまとめて1と数えるため、単語帳の見出し語数とは物差しが違います。しかも語族単位は実力を多めに見せます。
Q. 派生形は読めれば十分ですか。書けなくてもいいですか。
A. 目的次第です。読むだけなら受容の知識で足ります。ただし1つの形を知っていても他の形を産出できるとは限らないため、話す・書く場面で使いたい形は個別に足す必要があります。
Q. 何個の接辞を覚えれば十分ですか。
A. 十分という数を示した研究は見当たりません。参考として、大規模なテストでは頻度をもとに118個の派生接辞が選ばれています。数を目標にするより、自分が読む文章に出てくる形から埋めるほうが現実的です。
まとめ
「1語覚えれば家族ごとついてくる」という前提は、研究では支持されていない。4つの品詞形のうち産出できるのは2つか3つが普通で、基語を訳せた語の半分近くで派生形は訳せなかった。
ただし、これは悪い知らせではない。足りない部分がでたらめに散らばっているのではなく、接頭辞・接尾辞という決まった形をしているからだ。決まった形をしているものは、狙って埋められる。
やることは3つに絞れる。手元の10語で自分の状態を測る。知っている語に品詞形を1つだけ足す。語数の目安は語族単位だと知って、控えめに見積もる。単語帳をもう1周増やすより、この3つのほうが投資対効果は高い。
参考文献
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- greencafe 編集部 (2026). 語彙リスト資料ページ. https://greencafe.jp/vocabulary
最終更新日: 2026-08-30
著者: 中村 拓(Taku Nakamura)(greencafe 編集部 編集責任者・非ネイティブ話者)。公開された 8 件の研究エビデンス(tier 1=7 件 / tier 2=1 件)を横断分析・再構成した。
画像: いらすとや (https://www.irasutoya.com/) より
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