大人の英文法やり直しは順番で 9 割決まる|世界の言語習得の研究で分かった『先に伸びる文法』と『後回しでいい文法』つまずかない再入門ロードマップ

集中して勉強する男性とカフェで勉強する男性のイラスト — 大人の英文法やり直しの正しい順番と 3 ヶ月ロードマップ 英語学習

大人の英文法やり直しは順番で 9 割決まる|世界の言語習得の研究で分かった『先に伸びる文法』と『後回しでいい文法』つまずかない再入門ロードマップ

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

英文法やり直そうと本を何冊も買ったのに、いつも 3 章目でつまずくんです。

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

Krashen 1977 の自然な習得順の仮説では、教えた順と身に付く順が違うと繰り返し示されています。

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

そうなんですね。じゃあ何から先にやればいいのか教えてほしいです。

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

Goldschneider & DeKeyser 2001 のメタ分析は、-ing や冠詞が先に身に付くと示しました。

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

その順に 3 ヶ月頑張れば話せるようになりますか?

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

Housen & Kuiken 2009 は 3 側面のトレードオフを示し、期間ごとの軸切り替えが持続の鍵と分かっています。

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

3 ヶ月で焦って先取りすると失敗するんですか?

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

Long 1991 の Focus on Form は、意味の流れの中で必要な瞬間だけ短く説明を挟む形が有効と示しました。

大人が英文法をやり直して途中でつまずく最大の理由は「教科書の並び順で潰そうとする」ことにある。過去 40 年の言語の習得の研究は、学習者の脳内で文法が身に付く順は決まっていて、その内在の順を無視した学習は空回りする、と示している。本記事は 4 本の柱を軸に、大人がやり直すべき正しい順番と 3 ヶ月のロードマップを整理する。1 本目は Krashen 1977 の自然な習得の順の仮説 (= 教えた順ではなく決まった順で身に付く、という仮説)。2 本目は Pienemann の Processability Theory (= 頭の中で処理できる文法の段階を示した理論) の 5 段階。3 本目は Goldschneider & DeKeyser 2001 の形態素の順のメタ分析 (= 複数の研究を統合した分析)。4 本目は Norris & Ortega 2000 の指導の効果のメタ分析。全 12 件の研究の裏付けから抽出した、実用の結論のみを示す。

1. なぜ大人の文法やり直しは順番で失敗するのか|Krashen 1977 の自然な習得順が示す「習うより先に来る文法」

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

教科書の順で潰せば身に付くと信じてたんですが、それが間違いなんですか?

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

Larsen-Freeman 1976 の実証では、母語や指導の言語に依らず -ing が先に身に付くと分かっています。

40 年前、Krashen 1977 は自然な習得順の仮説 (= 教えた順ではなく決まった順で文法が身に付くという仮説) を提唱した [E01]。この仮説は、学習者に教える順序を変えても、脳の中で身に付く順は変わらないと主張する。赤ちゃんが「ママ」を「こんにちは」より先に覚えるのに似ていて、脳の内側で獲得の順が決まっている、というイメージが分かりやすい。

具体的には Larsen-Freeman 1976 の英語の形態素の初期の実証で、L2 の学習者の母語や指導の言語に依らず、英語の -ing (進行) や冠詞などが先に、三単現の -s や所有 ‘s が後に身に付く、と分かった [E09]。教室で三単現を最初に教えても、学習者の口からは -ing の方が先に自然に出るようになる。教科書の順に従うと、学習者は「教わったのにできない」錯覚を感じ挫折しやすい。

だから大人の文法やり直しは、教科書の第 1 章から順に潰す発想を一度捨てる必要がある。順番を科学の目で見直す、これが本記事の入口である。

補足として、Krashen 1977 の仮説は当初「学習の効果は限定的で、獲得の順は変えられない」という強い主張として受け止められた [E01]。その後の 40 年で SLA の研究は「指導は無効ではないが、獲得の順を尊重する形でこそ効果が出る」という穏やかな結論に落ち着いている。この結論は Ellis 2006 と Norris & Ortega 2000 のメタ分析が繰り返し支持してきた [E04][E08]。大人の学習者にとってのメッセージは明確で、教科書の順に固執せず、自分の脳の獲得の順に合わせて優先度を並べ直す、というものになる。

2. Pienemann の Processability Theory 5 段階が示す『飛ばせない文法の階段』

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

5 段階って、下から順に上がらないとダメなんですか?

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

Pienemann 1998 は下位の段階が固まらないと、上位の関係詞は空回りすると繰り返し示しました。

Pienemann 1998 が示した Processability Theory (= 頭の中で処理できる文法の段階を示した理論) は、L2 の文法の習得を 5 段階の階段で説明する [E02]。階段の 3 段目を飛ばして 5 段目に足を掛けても届かないのと同じで、下位の段階が身に付いていないと上位の文法は空回りする。

5 段階の概要は次の通り。第 1 段階は単語だけの発話で「Coffee.」の一語のみ。第 2 段階は主語 + 動詞の SVO の語順で「I drink coffee.」の形。第 3 段階は主語と動詞の一致 (三単現) を含む短い平叙文で「He drinks coffee.」の形。第 4 段階は疑問文などで句が前に移動する形で「Do you drink coffee?」の形。第 5 段階は関係詞など従属節が絡む文で「The coffee that I drink is hot.」の形になる。

日本語話者が英文法をやり直す時、この階段で見ると、第 2 段階の SVO の語順を安定させる前に第 5 段階の関係詞をやろうとすると、負荷が集中して定着しない。Ellis 2006 も同じ趣旨で、教室の並びと発達の順が一致しない時は指導の効果が持続しない、と指摘した [E08]。

具体的には、SVO の語順 + 現在形 + 定冠詞 (第 2 段階) が口から自然に出る前に、仮定法 (第 5 段階の級) の練習を始めても、脳の処理の段階が追い付いていないため定着が薄い、というのが結論。

3. Goldschneider & DeKeyser 2001 のメタ分析で分かった英語形態素の獲得の順

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

-ing が先で三単現が最後、その順の理由が知りたいです。

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

Goldschneider & DeKeyser 2001 は 5 変数で 71% の分散を説明し、音の目立ちやすさが上位と示しました。

Goldschneider & DeKeyser 2001 は英語の形態素の L2 の獲得順を巡る 12 件の研究のメタ分析を行い、次の並びを実証した [E03]:

-ing (進行) → 冠詞 (a / the) → 複数の -s → be 動詞 → 不規則な過去 → 三単現 -s → 所有 ‘s

この順序が生じる理由も 5 変数 (音の目立ちやすさ・意味の明快さ・形の規則性・統語の分類・入力の頻度) で 71% 説明できる、と示された。「-ing」は音が長く目立ち意味も進行中と明快だから最初に覚える、「三単現 -s」は音が小さく意味が薄いから最後、というふうに、聞こえやすさと意味の重さで順番が決まる、と考えれば分かりやすい。

つまり、大人が英文法をやり直す時、順番として: 語順 + 現在形 → 現在の進行 (-ing) → 冠詞 → 複数の -s → be 動詞 → 過去の形 (不規則) → 三単現 -s → 所有 ‘s の順で潰すのが自然な流れになる。教科書で三単現を最初に教える伝統の並びは、この獲得の順とちょうど反対の順序で、大人にとって最も難しい形態素から始めていることになる。

このメタ分析はもう一歩踏み込み、5 変数のうちどれが最も強く効くか、まで示している。相対の重みで見ると、意味の明快さ (何を表すかがはっきりしているか) と入力の頻度 (どれくらいよく耳にするか) の 2 つが上位に来る。Larsen-Freeman 1976 も、頻度こそが獲得の順を予測する最大の因子だ、と示した [E09]。話し言葉でよく出てくる音ほど覚えるチャンスが多い、というシンプルな原理で獲得の順がだいたい説明できる、というイメージが分かりやすい。この順は大人の英文法やり直しの現場でも、毎日の練習で先に扱うべき文法の優先度を決める、実用の物差しになる。

4. 最初の 1 ヶ月: 語順と現在形を軸に据える (VanPatten の入力の処理の理論)

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

最初の 1 ヶ月に語順と現在形だけって、本当に足りますか?

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

VanPatten 2007 の入力の処理の理論は、この 2 つが更新されないと後が全部空回りすると示しました。

VanPatten 2007 の入力の処理の理論 (= 入力を処理する時の脳の初期の方略を扱う理論) は、大人の L2 の学習者の初期の癖を 2 つ挙げた。1 つ目は意味を形より優先すること。2 つ目は語順を「主語・動詞・目的語」の順に解釈するのを最初のデフォルトにすること [E06]。この方略を最初に更新するのが、文法やり直しの入口になる。

初めて外国語を聞いた時、動詞 = 意味の核だけを先に拾って形の細かい部分を後回しにする脳の癖が働く。これを踏まえ、最初の 1 ヶ月は「語順 + 現在形」を軸に据え、意味と形を結ぶ処理を反復するのが最短のルートである。具体的には、SVO の語順 (I eat sushi.) と現在形 (I go / He goes) を毎日 15 分、意味を意識しながら音読と例文の練習を回す。

White 2003 は日本語の母語の話者が英語を学ぶ場合、語順のパラメータ (= 脳内の設定みたいな仕組み) の切り替えで特に負荷が大きい、と指摘した [E12]。OS の設定を日本語の仕様から英語の仕様に切り替える感じで、単語のアプリを入れるだけでは根本の設定が変わらない、というのは覚えておきたい。1 ヶ月かけて語順を体に染み込ませる価値がある。

Housen & Kuiken 2009 の complexity (複雑さ) / accuracy (正確さ) / fluency (流暢さ) の 3 側面のトレードオフ (= どれか 1 つを伸ばすと他が一時的に落ちる関係) も踏まえ、この時期は accuracy (正確さ) の優先で構わない [E11]。流暢さや複雑な文法を焦って詰め込む時期ではない。

5. 2〜3 ヶ月目: 時制の骨組みを積み上げる (現在完了・過去進行・過去完了)

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

現在完了で毎回詰まるんですけど、どう乗り越えたらいいですか?

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

Ellis 2006 の総説は、意味と形を結ぶ説明を先に置いてから例文に触れる形が最も伸びると示しました。

2 ヶ月目からは時制の骨組みに移る。Goldschneider & DeKeyser 2001 の獲得の順に沿えば、-ing (現在進行) → 不規則な過去 → 現在完了 → 過去進行 → 過去完了 の順に積むのが自然 [E03]。

現在完了 (have + 過去分詞) は日本語の話者にとって「過去形と何が違うか」で詰まりやすい文法である。Ellis 2006 が指摘した通り、意味と形を結ぶ処理を明示的に説明する必要がある [E08]。例えば「I have eaten.」は「食べ終わった状態が今もある」という意味であり、日本語の過去形の「食べた」とは意味の焦点が違う。この違いを頭で理解した上で例文を大量に触れる形が最も伸びる。

過去進行 (was / were + -ing) は現在進行と過去形の合体で、-ing と過去形が定着していれば加算的に習得しやすい。過去完了 (had + 過去分詞) は「もう一つ前の過去」を扱う形で、これが必要な場面 (物語や報告) は限られるため、最初の 3 ヶ月では概念の把握に留め、大量の練習は後回しでよい。

Housen & Kuiken 2009 のトレードオフに従い、この時期は complexity (複雑さ) を意識して文の型を広げる期間である [E11]。ただし accuracy (正確さ) が崩れないラインを守り、fluency (流暢さ) は次の段階に持ち越す。野球で打率と長打率とスピードは同時には上げにくく、どれかを重点的に伸ばす期間を作る、というのに似ている。

時制の順の話をもう一歩深めると、-ing (現在進行) は Goldschneider & DeKeyser 2001 の獲得の順で最も早く定着する形態素であり [E03]、大人でも短い期間で自然に出るようになる。次の不規則な過去は動詞の暗記の負荷が大きく、頻出の 30 語ほどをまず口に慣らす期間を 2 週間ほど設けたい。現在完了に入るのは、この不規則な過去がある程度口から出る状態になってからで遅くない。

6. 半年目までに: 関係詞・受動態・仮定法の順で応用の文法を仕上げる

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

関係詞と仮定法、どっちを先にやったらいいですか?

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

Spada & Tomita 2010 のメタ分析は、複雑な文法で explicit が implicit の 5 倍以上効くと示しました。

半年に達する頃、Pienemann の 5 段階の第 5 段階に相当する応用の文法に手を伸ばす時期になる [E02]。この時期の順は、関係詞 → 受動態 → 仮定法。

関係詞 (who / which / that) は Pienemann の第 5 段階の従属節そのものであり、獲得の負荷が大きい。Spada & Tomita 2010 のメタ分析は、複雑な文法 (関係詞や仮定法) では説明を伴う練習 (explicit) が触れる練習 (implicit) の 5 倍以上の効果を持つ、と示した [E10]。関係詞は必ず「先行詞 → 関係詞 → 節の中の役割」を明示的に説明した上で例文を使うことが重要になる。

受動態 (be + 過去分詞) は形の規則が単純だが、能動と受動の視点の切り替えが認知の負荷を生む。関係詞で従属節の処理に慣れた後で入れると、受動の関係節 (the book which was written) を含む複合の形にもスムーズに繋げられる。

仮定法 (If I had…, I would have…) は時制のシフト (現在の仮定を過去形で表す反実仮想の形) が入る難所である。DeKeyser 2003 は、大人の学習者は宣言的な知識を練習で手続き的な知識に変え、最終的に自動化 (= 考えずに使える状態) に至る、と整理した [E07]。仮定法はまず宣言的な知識として型を頭に入れ、その後例文を大量に触れる、という 2 段階が有効。

White 2003 は関係詞のパラメータで日本語の母語の話者は特に苦労する、と指摘しており [E12]、この時期に関係詞を焦らず半月〜1 ヶ月かけて仕上げる余裕を持ちたい。OS の設定を日本語の仕様から英語の仕様に切り替える感じで、関係詞は根本の並びの設定を書き換える必要がある文法である。

半年目に到達したい水準の目安を挙げる。関係詞なら、二重の主語 (who / which) と目的語 (whom / which) を含む文を、短い時間の中で 8 割ほど正しく理解できる状態。受動態なら、能動と受動を意味のニュアンスで使い分けて書ける状態。仮定法なら、If 節と主節の時制のズレを 5 秒以内に判断できる状態。ここまで来れば、TOEIC の Part 5 や英字の新聞の見出しの理解の速度が明らかに変わる、という実感が伴う。

7. explicit (説明) と implicit (触れて感じる) の配分: Norris & Ortega 2000 の週次のモデル

Norris & Ortega 2000 のメタ分析は、L2 の文法の指導が無指導より平均 d=0.96 (= 100 人中 82 人くらいに大きく効く強さ) で有効、explicit (説明を伴う) の指導が implicit (触れて感じる) より d=0.35 分だけ上回る、と示した [E04]。ただし explicit だけでは持続の効果が弱く、implicit と混ぜる形が最も持続する、というのが結論である。

料理でレシピを読んで理解する (explicit) だけでも上達し、実際に何回も作る (implicit) だけでも上達するが、両方混ぜるとさらに上手くなる、というのに似ている。

DeKeyser 2003 も、大人の L2 の学習では説明の経路が有効で、宣言的な知識を練習で手続き的な知識に変える、と整理している [E07]。この 2 つの経路を組み合わせる週次のモデルの目安を示す。平日は 30 分の explicit として、テキストで文法の説明を読み例文を書く時間を確保する。週末は 60 分の implicit として、ドラマや自分の日記の英作文で意味に集中して触れる時間を持つ。この配分が最も持続しやすい。

Long 1991 の Focus on Form (= 意味の流れの中で必要な瞬間だけ文法に短く注意を向ける方針) も踏まえたい [E05]。implicit の時間の中で自分がつまずいた文法だけを辞書や参考書で 30 秒調べる。その後すぐ意味の流れに戻す。この形が最も持続する。調味料を料理の途中で味を見ながらパッと足す感覚に近い。

Spada & Tomita 2010 のメタ分析は、文法の種類ごとに explicit と implicit の効き方が違う、という重要な発見も加えた [E10]。単純な文法 (現在形や複数の -s など) は implicit だけでも d=0.5 の効果があり、触れる回数を増やすだけで身に付く。しかし関係詞や仮定法などの複雑な文法は implicit だけだと d=0.2 と伸びが小さく、必ず explicit の説明を伴わないと定着しない。文法の難易度に応じて配分を切り替える、というのが本節の実用の結論になる。

8. 順番を守っても挫折する 3 つの罠

順番を守っても挫折する罠が 3 つある。研究の裏付けから典型を整理する。

罠 1: 完璧の主義で先へ進めない。1 つの文法を 100% にしてから次へ、という発想は Pienemann の階段と噛み合わない [E02]。第 2 段階を 70% で第 3 段階に進み、後で第 2 段階に戻ることで加算的に完成する形が現実的である。

罠 2: 高難度の関係詞や仮定法を先取り。Spada & Tomita 2010 は複雑な文法で implicit の効果が d=0.2 と小さい、と示した [E10]。基礎の段階が固まる前に関係詞や仮定法だけを大量にやると、費やした時間の割に定着しない。

罠 3: implicit の練習ゼロで宣言的な知識だけ膨らむ。Ellis 2006 と Long 1991 が繰り返し指摘した通り、意味の流れの中で使う練習を欠くと、テストで解けるが会話で使えない状態に陥る [E05][E08]。DeKeyser 2003 の自動化に到達するには、implicit の時間が必要不可欠になる [E07]。

3 ヶ月のロードマップは、順番 + explicit / implicit のバランス + 罠の回避、この 3 点セットで初めて完走できる。研究の裏付けを持って設計した順番は、学習の途中で心が折れそうになった時の道しるべにもなる。「今の自分は第 2 段階の SVO の語順を固めている段階で、関係詞で苦しむのは 5 ヶ月後の話だから今は焦らなくていい」と冷静に自分を位置付けられる。これが順番を守る最大の副産物である。

まとめ (研究の裏付け 12 件から)

  • 大人の英文法やり直しがつまずく最大の理由は「順番」。教科書の並び順で潰す発想は自然な習得の順と噛み合わない (Krashen 1977 / Larsen-Freeman 1976)。
  • Pienemann の Processability Theory の 5 段階を尊重し、SVO の語順 + 現在形の第 2 段階を固めてから上位の段階へ進む。
  • Goldschneider & DeKeyser 2001 のメタ分析は形態素の獲得の順を示す: -ing → 冠詞 → 複数の -s → be → 不規則な過去 → 三単現 -s → 所有 ‘s。この順で難易度を管理。
  • 最初の 1 ヶ月は語順と現在形 (入力の処理の理論)、2〜3 ヶ月目は時制の骨組み、半年目までに関係詞 → 受動態 → 仮定法。
  • explicit (説明) と implicit (触れて感じる) を混ぜる形が最も持続 (Norris & Ortega 2000 / DeKeyser 2003 / Long 1991 の Focus on Form)。
  • Housen & Kuiken 2009 の accuracy / complexity / fluency のトレードオフに従い、期間ごとに軸を切り替える。
  • 罠は 3 つ: 完璧の主義・先取り・implicit ゼロ。3 ヶ月の完走はこの 3 点の回避が鍵。
  • 順番の設計は挫折した時の道しるべにもなり、「今の自分がどの段階にいて、次に何を仕上げるか」を冷静に把握できる。研究の裏付けを持つ順は、感情の揺れを最小限に抑える実用の道具でもある。

FAQ

Q. 教科書に沿って最初から順に潰してはいけないのですか?
A. 40 年の SLA 研究は、教室での指導の順と学習者が実際に身に付ける順が一致しないことを繰り返し示してきました [E01][E09]。教科書で三単現の -s を最初に教えるのは、獲得の順で最後に近い形態素を最初に持ってきていることになり、大人が挫折する典型のパターンになります。まずは Goldschneider & DeKeyser 2001 の順で優先度を並べ直すのが安全です。

Q. 何ヶ月で全体を仕上げられますか?
A. Housen & Kuiken 2009 の枠組みに沿い、accuracy の中心の 1 ヶ月 → complexity の中心の 2 ヶ月 → 応用の文法の 3 ヶ月、の合計 6 ヶ月が典型の計画です [E11]。ただし個人差が大きく、日々の学習の時間 (30 分か 60 分か) や implicit の触れ方で 2 倍以上変わります。ロードマップは目安として持ち、遅れても罪悪感を持たないことが完走の鍵です。

Q. 中学の英語に戻る必要はありますか?
A. Pienemann の第 2 段階の SVO + 現在形が自然に出るかを自己の点検で見て、出ないなら中学の英語の 1 年生の後半までは必ず戻ります [E02]。逆に第 2 段階が固まっていれば、中学の英語の丸ごとやり直しは時間の浪費になります。診断は 1 週間ほど例文の練習をやってみて、SVO + 現在形が破綻しないかで判断します。

参考文献

[E01] Krashen, S. D. (1977). Some issues relating to the Monitor Model. In H. D. Brown, C. A. Yorio, & R. H. Crymes (Eds.), On TESOL ’77 (pp. 144-158). TESOL.

[E02] Pienemann, M. (1998). Language Processing and Second Language Development: Processability Theory. John Benjamins.

[E03] Goldschneider, J. M. & DeKeyser, R. M. (2001). Explaining the ‘Natural Order of L2 Morpheme Acquisition’ in English: A meta-analysis of multiple determinants. Language Learning, 51(1), 1-50.

[E04] Norris, J. M. & Ortega, L. (2000). Effectiveness of L2 instruction: A research synthesis and quantitative meta-analysis. Language Learning, 50(3), 417-528.

[E05] Long, M. H. (1991). Focus on form: A design feature in language teaching methodology. In K. de Bot, R. B. Ginsberg, & C. Kramsch (Eds.), Foreign Language Research in Cross-cultural Perspective (pp. 39-52). John Benjamins.

[E06] VanPatten, B. (2007). Input processing in adult second language acquisition. In B. VanPatten & J. Williams (Eds.), Theories in Second Language Acquisition: An Introduction (pp. 115-135). Routledge.

[E07] DeKeyser, R. M. (2003). Implicit and explicit learning. In C. J. Doughty & M. H. Long (Eds.), The Handbook of Second Language Acquisition (pp. 313-348). Blackwell.

[E08] Ellis, R. (2006). Current issues in the teaching of grammar: An SLA perspective. TESOL Quarterly, 40(1), 83-107.

[E09] Larsen-Freeman, D. (1976). An explanation for the morpheme acquisition order of second language learners. Language Learning, 26(1), 125-134.

[E10] Spada, N. & Tomita, Y. (2010). Interactions between type of instruction and type of language feature: A meta-analysis. Language Learning, 60(2), 263-308.

[E11] Housen, A. & Kuiken, F. (2009). Complexity, accuracy, and fluency in second language acquisition. Applied Linguistics, 30(4), 461-473.

[E12] White, L. (2003). Second Language Acquisition and Universal Grammar. Cambridge University Press.

著者

greencafe 編集部 — 公開された 12 件の応用の言語学と第二の言語の習得の研究のエビデンス (tier 1 の学術の論文と学術の書 10 件、tier 2 の教科書 2 件) を横断で分析・再構成。

画像: いらすとや (https://www.irasutoya.com/) より

Comments

タイトルとURLをコピーしました