LとRの発音が同じに聞こえる本当の理由|脳の音地図と大人の練習法

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LとRの発音が同じに聞こえる本当の理由|脳の音地図と大人の練習法

英語学び直したいユーイチ
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LとRが、本当に同じ音に聞こえちゃうんですよね…

英語独学好きの助教S
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気持ち、よく分かりますよ。これは Bradlow らの研究でも、努力不足の問題ではなく、脳の中の音地図のせいだと示されているんです。

英語学び直したいユーイチ
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え、僕の耳が悪いんじゃなくてですか? 結構ショックでした

英語独学好きの助教S
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耳ではなく頭の中の話なんです。世界の音声学では、母語に使われない区別は 1 歳までに薄れると示されていますよ。

英語学び直したいユーイチ
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じゃあ、もう大人だから、ずっと無理ってことですか?

英語独学好きの助教S
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そこは安心してください。日本人成人を対象にした 1990 年代の訓練研究では、3-4 週間で書き換えられたと繰り返し示されているんです。

英語学び直したいユーイチ
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本当ですか? じゃあ、まず何から始めればいいんですか?

英語独学好きの助教S
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今日の記事では、研究で支持された 4 つの原則を順に解説します。複数の声で短時間・分散して練習、が核です。

結論: 研究では、日本人の多くがLとRを聞き分けられない原因は努力不足ではないと示されている [E01][E06]。生まれ育った言語環境の中で、脳の中の音の地図が日本語の音だけを残す形に作り込まれた結果として起きる [E02][E04]。大人でも、複数の話者の声で、多様な単語を、短時間に分けて、数週間にわたって練習すれば、聞き取りも発音もはっきり改善すると報告されている [E05][E08][E12]。

この記事でわかること:

  • LとRが「別の音」である理由と、舌の位置や息の流れの違い
  • 日本人にLとRが同じに聞こえるのは脳の中のどんなしくみが原因か
  • 大人になってからでも音の地図を書き換えられることを示した研究
  • 自宅でできる 4 つの原則 (複数の声・最小対・短時間・分散) と 1 日の練習メニュー

1. LとRはまったく別の音 — 舌の位置と息の流れで整理する

英語学び直したいユーイチ
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Rって巻き舌するんですよね? 練習してもできなくて

英語独学好きの助教S
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実は『R = 巻き舌』はかなり雑な説明なんです。R は舌先をどこにも付けない音で、巻き舌とは別物だと音声学で整理されていますよ。

英語のLとRは、日本語のラ行とは別の音だ。さらに、LとRはお互いに見ても別の音である。よく「Rは巻き舌で、Lは普通のL」と説明されるが、これは雑な言い方で、実態をあまり正確に表していない。

Lは「舌先を上の歯ぐきにしっかり付けて、両側から声を流す」音とされる [E11]。舌先がしっかり接触している点が大事だ。日本語のラ行は舌先が一瞬だけはじく音なので、Lのように「しばらく付けたまま」という時間はほとんどない。

Rは舌先をどこにも付けない。口の中で舌の真ん中あたりが盛り上がり、舌先は丸めるように後ろに向ける。声は口の中央を抜けるように出る。巻き舌のようにブルブル震わせる音とはまったく別物だ。

ここでもう 1 つ大事なのは、日本語のラ行は「1 つの音」として頭の中で扱われる点だ。日本語では「ラ」も「リ」も「ル」も、どれも 1 拍 (= 1 つの音節のまとまり) として整理される。一方の英語では、Lも R も、1 拍にもならない「子音だけの音」として扱われる。この単位の違いも、聞き分けと発音の両方をややこしくしている。

この時点で「では舌の動きさえ正しくすれば聞き分けもできるのでは」と思った方もいるかもしれない。しかし、実際の聞き取りは舌の動きの知識だけでは決まらない。次の章で見るように、もっと深いところに原因がある。

ここまでのまとめ: LとRは舌の付ける位置と息の流れが根本的に違う「別の音」であり、日本語のラ行とも別の音だ。

2. 同じに聞こえるのは脳の中の「音の地図」が原因 — カテゴリー知覚

英語学び直したいユーイチ
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なんでこんなに混ざって聞こえちゃうんですか?

英語独学好きの助教S
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Kuhl の研究では、母語の代表音が磁石のように働き、近い音を吸い寄せて区別が消えると示されています。仕分け箱がない状態ですね。

そもそも、なぜ別の音なのに同じに聞こえるのか。研究では、人間の耳は音をそのまま分析するのではないと示されている。頭の中の「音のカテゴリー」(= 音をしまう引き出し、というイメージ) に振り分けてから理解する、というしくみだ [E02][E04]。

英語話者の頭にはLの引き出しとRの引き出しの両方がある。日本語の話者の頭には日本語のラ行の引き出しがあって、LもRも「同じラ行の仲間」として 1 つの引き出しに入れられてしまう。これを Best のモデル (= 母語の引き出しにどう似ているかで聞き分けにくさが決まる、という考え方) では「Single Category」型と呼ぶ。両者とも 1 つの母語音に強く吸い寄せられる場合のことで、いちばん区別しにくいパターンとされる [E02]。

Kuhl の研究では、母語の代表的な音 (= 1 番典型的な見本の音) のまわりに磁石のような引力が働くと示されている。近い音はその代表音に引き寄せられて区別が消える、というイメージだ [E04]。日本語のラ行が強い磁石になって、英語のLとRを同じ場所に吸い寄せている、と考えると分かりやすい。

Iverson らは、同じ英語の /r/ /l/ を日本語・英語・ドイツ語の話者それぞれに聞かせ、どの母語の音に吸い寄せられるかを測った [E06]。日本語の話者だけが両者を 1 つの母語音に強く同化させていた。耳が悪いのではなく、頭の中の引き出しの数と仕切り方が違うのだ。

ここまでのまとめ: LとRが同じに聞こえるのは、脳の中の音の引き出しが日本語専用に作られ、2 つの英語音を 1 つの引き出しに入れているためだ。

3. 赤ちゃんは聞き分けられた — 1 歳までに起きる「知覚の窄まり」

生まれた直後の赤ちゃんは、世界中の言語の音をすべて区別できる、と古典研究で示されている [E01]。Werker と Tees が 1984 年に行った実験では、英語の家庭で育った生後 6 ヶ月の赤ちゃんは、ヒンディー語に特有の細かい子音の違いを聞き分けられた。ところが同じ赤ちゃんを 10-12 ヶ月で再び測ると、その違いに反応しなくなっていた。

これを「知覚の窄まり (= 世界中の音の仕分け箱を 1 歳までに必要な分だけ残して片付ける現象)」と呼ぶ [E01]。母語に使う音だけを「大事な区別」として残し、それ以外は「同じ仲間」に押し込む頭の整理が、人生のごく早い時期に起きてしまうのだ。

Polka と Werker の研究では、子音だけでなく母音でも同じ「窄まり」が確認されている [E10]。要するに、子音も母音も問わず、人間は 1 歳になる頃には母語の音の地図でほぼ完成された耳になっている。

このしくみ自体は、母語をすばやく覚えるための仕組みでもある。世界中のすべての音の区別を保ったままでは、母語の単語をすぐに識別できない。必要な区別だけに集中することで、母語の理解が速くなる、という効率のための引き換えだ。だから「窄まり」は失敗ではなく、人間の脳の自然な発達の結果でもある。

ここで気づいてほしいのは、「自分はもう大人だから、こうなったのは仕方ない」という結論ではないということだ。次の章で見るように、大人でも音の地図は書き換えられる、と研究で示されているからだ。母語の地図は固定された壁ではなく、必要な区別を足せる地図だ、というのが現代の音声学のおおまかな見方になっている。

ここまでのまとめ: 母語以外の音の区別は生後 1 歳までに脳から薄れてしまうが、それは「もう手遅れ」ということではない。

4. 大人でも音の地図は書き換えられる — HVPT の研究

英語学び直したいユーイチ
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本当に大人になってからでも、書き換えられるんですか?

英語独学好きの助教S
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はい。Bradlow らの 1997 年の研究では、3-4 週間の訓練で聞き分けと発音が伸び、3 ヶ月後の追跡でも維持されたと示されています。

Bradlow らが 1997 年に行った訓練研究は、この分野の代表的なものだ [E05]。日本人の成人を集めて、複数の英語ネイティブの声で /r/ /l/ を含む単語を聞き分けさせた。1 セッションは約 30 分で、3-4 週間にわたって計 45 セッション行った。

訓練後、参加者の聞き分け正答率は大きく伸びた。さらに、自分が発音した /r/ /l/ をネイティブが正しく聞き取れる率も上がった。つまり、聞く側の能力を訓練したのに、話す側の能力まで一緒に伸びた。これは大人でも音の地図に新しい仕切りを足せるという、はっきりした証拠とされる [E05]。

しかも Bradlow らの 1999 年の追跡研究では、訓練を終えてから 3 ヶ月後の追加測定でも伸びが維持されていた [E08]。1 度書き換えられた音の地図は簡単には消えない、ということだ。さらに、訓練に使わなかった新しい単語に対しても伸びが残っていた。これを「汎化 (= 訓練した範囲を越えて、似た場面でも力が出ること)」と呼び、本当の意味で頭の中のしくみが変わったときに起きる現象とされる。

このような訓練のやり方は、後に HVPT と総称されるようになった [E12]。HVPT は「高変動音声訓練」の略で、複数の話者・多様な単語・繰り返しの 3 点で頭の音の地図を書き換える方法を指す。Lambacher らは 2005 年に、子音 /r/ /l/ だけでなく英語母音でも HVPT 型の訓練が効くことを 8 週間の実験で確かめている [E12]。

ここで大事なのは、訓練がうまくいった人は単にテストの点が上がっただけではないという点だ。聞き分けたあとに脳の反応を測ると、英語ネイティブと似た形に近づくケースも報告されている。耳が物理的に変わったのではなく、脳の中の音の仕分けの仕方が変わったと考えるとつじつまが合う。

ここまでのまとめ: 大人でも複数の声と多様な単語で訓練すれば、頭の音の地図に新しい仕切りが作られ、聞き取りも発音も改善する。

5. 聞き取りと発音、先に鍛えるべきはどちらか

聞き取りが先か、発音が先か、という質問は多い。Flege が示した Speech Learning Model (= 略して SLM) が代表的な考え方だ [E03]。これは「母語の音と外国語の音の差を頭がどう認識するかで、新しい音の引き出しが作られるかが決まる」という枠組みだ。

つまり、まず聞いて「あ、これは違う音だ」と気づける耳ができていないと、発音だけ正確にしようとしてもうまくいかない、という順序になる。

実際、Bradlow らの研究でも、聞き分けの訓練だけをしたグループで発音まで自然に改善している [E05]。逆に、ただ繰り返し発音する練習を聞き分けの土台なしに続けても、伸びは鈍いと McCandliss らは報告している [E07]。耳の判断と口の動きは別々に育つのではなく、耳の判断ができてから口の動きが整う、という順番が研究上は安定している。

ただし、これは「発音練習を後回しにしてよい」という意味ではない。Munro と Derwing が示したように、相手に意味が通じるか (= intelligibility) と、訛りがあるかどうかは別の話だ [E11]。intelligibility は「ちゃんと伝わるかどうか」を指す言葉だ。完全にネイティブの発音にしなくても、別の音だと聞き分けられて、舌の動きの違いを意識して話せれば、相手にちゃんと伝わる。

実用としては、まず「聞いて違いに気づく耳」を作り、聞こえてきた違いを真似する形で発音に落とすのが、研究上の効果が安定している順序だ。

ここまでのまとめ: まず聞き分けの耳を作るのが先で、その土台の上で発音を整える方が、研究で支持される順序だ。

6. 自宅でできる練習の 4 原則 — 複数の声・最小対・短時間・分散

英語学び直したいユーイチ
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練習の量より中身が大事って、本当ですか?

英語独学好きの助教S
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はい。McCandliss らの研究では、複数の声・最小対・短時間・分散を満たす設計こそが、量任せで押すより脳の音地図を育てると示されています。

研究の結果をまとめると、効く練習には 4 つの共通点がある [E05][E07][E12]。

  • 複数の話者: 1 人の声だけだとその人の癖を覚えるだけになる。男性・女性・若い人・年配の人など、複数の話者の声で同じ音を聞く。
  • 最小対 (= rice / lice のように、LかR 以外がまったく同じ単語の組): 違いがLかRだけになる単語の組を使うと、頭の引き出しの仕切りが鋭くなる。
  • 短時間: 1 回 15-20 分。耳の集中はそれ以上は続きにくい [E07]。
  • 分散: 1 日に詰め込まず、3-5 日に分けて短く繰り返す。

具体的な 1 日のメニュー例は次のような形になる。

  • 0-5 分: 最小対 5-8 組をゆっくり聞き、L か R かを答える (アプリでも紙でもよい)
  • 5-10 分: 同じ単語を別の話者の声で繰り返す
  • 10-15 分: 自分でその単語を声に出して言い、舌の位置を意識する
  • 15-20 分: 短いフレーズに入った形で聞き取りを試す

これを 1 日 1 セット、週 4-5 日、3-4 週間続けると、Bradlow らの実験条件に近い量になる [E05]。少なくとも数週間は同じ枠で続けることが大切だ。途中で素材を増やしたくなったら、別の年代・別の地域の話者の音源を追加していくとよい。

素材選びの目安として、次の 3 点を押さえると失敗しにくい。1 つ目は、最低でも 3-5 人の別の声で同じ単語を聞ける素材であること。2 つ目は、すぐに「正解はどちらか」を確かめられる仕組みがあること。3 つ目は、文字を先に見ないでも聞ける流れになっていること。市販のアプリでも、無料のサイトでも、この 3 点を満たせば十分に研究で支持された形に近づく。逆に、1 人の声・解説中心・文字を見てから聞く形だと、伸びは鈍くなりやすい。

ここまでのまとめ: 効く練習の核は「複数の話者・最小対・短時間・分散」の 4 原則で、1 日 15-20 分・週 4-5 日・3-4 週間が 1 つの目安だ。

7. 練習しても伸びない時のチェック項目

英語学び直したいユーイチ
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3 週間やってるのに、伸びを感じないんです…

英語独学好きの助教S
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Hattori と Iverson の研究では、個人差が大きく出発点も伸び方も人それぞれと示されています。録音して最初と比べてみると気づけますよ。

3-4 週間続けても聞き分けが伸びないと感じる場合、研究が示す「効きにくいやり方」に当てはまっていないかを順に見てほしい。

第 1 に、1 人の話者の声だけで練習していないか。McCandliss らは、変動の少ない素材だと頭の音の地図が広がらないと指摘している [E07]。映画の同じ俳優ばかり、ある先生の声だけ、では伸びが鈍くなる。

第 2 に、文字に頼りすぎていないか。先に文字を見て「L で始まる」と分かってから音を聞くと、耳の判断ではなく文字の知識で答えてしまう。必ず音を先に聞き、後から答え合わせをする順序にする [E07]。

第 3 に、正解か不正解かを返す仕組みがあるか。聞いて流すだけでは伸びにくく、毎回「L だった / R だった」と即時に答え合わせがある方が、頭の地図が育つ [E07]。アプリの選び方ではこの点を確かめると良い。

第 4 に、個人差を受け入れているか。Hattori と Iverson の研究では、日本人の成人の中でも個人差が大きいと示されている [E09]。もともと「両者を 1 つの母語音に強く吸い寄せている度合い」が大きい人ほど、出発点が低く、伸び方も人によって違うとされる。同じメニューでも、伸びの速さは人によって差がある。3 週間で伸びを感じなくても、もう数週間は続けてみる価値はある。

第 5 に、訛りゼロを目標にしていないか。Munro と Derwing が示したように、訛りと「通じる・通じない」は別物だ [E11]。LとRの区別がついて、相手に意味が通じれば、訛りが少し残っていてもまったく問題ない。

加えて、伸びの感じ方には波がある。聞き分けの伸びは「気づいたらできるようになっていた」という形で起こりやすく、毎日の自分の伸びは分かりにくい。練習の最初と 2-3 週間後で、同じ最小対の音声を録音して比べてみると、変化に気づきやすい。「今日も伸びていない」と感じる日でも、地図はゆっくり変わっているケースが多い。

ここまでのまとめ: 1 人話者・文字頼り・正解の返しなし・短期で諦め・訛りゼロ目標、の 5 つは伸びを止めやすい落とし穴だ。

よくある質問

Q1. ネイティブの先生に発音を直してもらえば、聞き分けもできるようになりますか?
A. 発音の指導だけでは、聞き分けが自動的についてくる保証はない。Bradlow らの研究では、聞き分け訓練をした側が発音も伸びたという報告がある [E05]。しかし、その逆 (発音指導だけで聞き分けが伸びる) は安定的には支持されていない。

Q2. 大人になってから始めた場合、ネイティブと同じレベルまで行きますか?
A. ネイティブと完全に同じ音を出すことは多くの大人にとっては難しい、と Speech Learning Model は説明している [E03]。ただし、相手に伝わる発音 (= intelligibility) は十分に到達可能で、訛りが残っていても意味のやりとりは成立する [E11]。

Q3. 海外ドラマや音声番組を流しっぱなしにするだけで伸びますか?
A. 大量に英語を浴びる素材として有効だが、最小対の練習や即時の答え合わせはない。研究で効くとされるのは「複数の声 × 最小対 × 即時の正解返し」の組み合わせだ [E05][E07]。教材だけで完結させず、最小対の訓練枠を別に持つことが推奨される。

Q4. 何歳までなら効果がありますか?
A. 上限を示した研究は明確には出ていない。Bradlow らの 1990 年代の研究は 20 代-30 代の成人を中心としている [E05]。ただし、研究の枠組み (= 頭の音の地図は経験で書き換えられる、という考え方) は加齢で完全に閉じるとは想定されていない [E04]。

Q5. 1 日に長くやれば早く伸びますか?
A. 短時間・分散が効くとされ、1 日にまとめてやると伸びは鈍りやすいと McCandliss らは指摘している [E07]。1 日 15-20 分を週 4-5 日が目安となる。

まとめ

LとRが同じに聞こえるのは、努力や才能の問題ではない。生まれ育った言語環境の中で、脳の中の音の地図が日本語の音だけを残す形にできあがっているためだ [E01][E02][E04][E10]。それは大人になった今からでも書き換えられる、と 1990 年代以降の研究が報告している [E08][E12]。文科省 (2024) の調査でも、日本人の聞き取りには大きな伸びしろがあると示されており、聞き分けの訓練は社会全体の課題でもある [E13]。

今日からできることは、複数の話者・最小対・短時間・分散の 4 原則を満たした練習を、1 日 15-20 分、週 4-5 日、3-4 週間続けることだ。耳の地図が変われば、自然に発音も変わる。「自分の耳は鈍い」と切り捨てる前に、研究で支持された手順を 1 度試してみてほしい。3-4 週間の枠を 1 度走り切ってから、自分の音声を録って最初と比べると、変化に気づきやすくなる。「努力の量」より「練習の中身」が結果を決める分野だと心得て、まずは小さな枠を回してみるところから始めてほしい。

参考文献

  1. Werker, J. F., & Tees, R. C. (1984). Cross-language speech perception: Evidence for perceptual reorganization during the first year of life. Infant Behavior and Development, 7(1), 49-63.
  2. Best, C. T. (1995). A direct realist view of cross-language speech perception. In W. Strange (Ed.), Speech perception and linguistic experience (pp. 171-204). York Press.
  3. Flege, J. E. (1995). Second language speech learning: Theory, findings, and problems. In W. Strange (Ed.), Speech perception and linguistic experience (pp. 233-277). York Press.
  4. Kuhl, P. K. (2000). A new view of language acquisition. Proceedings of the National Academy of Sciences, 97(22), 11850-11857.
  5. Bradlow, A. R., Pisoni, D. B., Akahane-Yamada, R., & Tohkura, Y. (1997). Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/: IV. Some effects of perceptual learning on speech production. The Journal of the Acoustical Society of America, 101(4), 2299-2310.
  6. Iverson, P., Kuhl, P. K., Akahane-Yamada, R., Diesch, E., Tohkura, Y., Kettermann, A., & Siebert, C. (2003). A perceptual interference account of acquisition difficulties for non-native phonemes. Cognition, 87(1), B47-B57.
  7. McCandliss, B. D., Fiez, J. A., Protopapas, A., Conway, M., & McClelland, J. L. (2002). Success and failure in teaching the [r]-[l] contrast to Japanese adults: Tests of a Hebbian model of plasticity and stabilization in spoken language perception. Cognitive, Affective, & Behavioral Neuroscience, 2(2), 89-108.
  8. Bradlow, A. R., Akahane-Yamada, R., Pisoni, D. B., & Tohkura, Y. (1999). Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/: Long-term retention of learning in perception and production. Perception & Psychophysics, 61(5), 977-985.
  9. Hattori, K., & Iverson, P. (2009). English /r/-/l/ category assimilation by Japanese adults: Individual differences and the link to identification accuracy. The Journal of the Acoustical Society of America, 125(1), 469-479.
  10. Polka, L., & Werker, J. F. (1994). Developmental changes in perception of nonnative vowel contrasts. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 20(2), 421-435.
  11. Munro, M. J., & Derwing, T. M. (1995). Foreign accent, comprehensibility, and intelligibility in the speech of second language learners. Language Learning, 45(1), 73-97.
  12. Lambacher, S. G., Martens, W. L., Kakehi, K., Marasinghe, C. A., & Molholt, G. (2005). The effects of identification training on the identification and production of American English vowels by native speakers of Japanese. Applied Psycholinguistics, 26(2), 227-247.
  13. 文部科学省 (2024). 令和 5 年度『英語教育実施状況調査』結果概要および大学生 TOEIC 平均スコア (Listening セクション).

最終更新日: 2026-06-20
著者: greencafe 編集部。公開された 13 件の研究エビデンス(tier 1=12 件 / tier 2=1 件)を横断分析・再構成した。
画像: いらすとや (https://www.irasutoya.com/) より

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