大人の英語発音はもう直らない…は思い込み|「通じる発音」を研究で組み立てる

英語の発音が通じず聞き返されて困り顔で頭を抱える男性と、口もとを意識してはっきり発音し相手に通じてほっとする男性を左右に並べた、いらすとや風のイラスト。直らないという思い込みと通じる発音への切り替えを表す。 英語学習

大人の英語発音はもう直らない…は思い込み|「通じる発音」を研究で組み立てる

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

この歳から英語の発音を直すなんて、もう手遅れですよね…。

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

気持ちはわかります。でも第二言語の発音を調べた研究では、大人でも訓練で改善すると示されているんですよ。

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

でも僕、何度言ってもネイティブみたいに話せなくて、正直そこで気後れするんです。

英語独学好きの助教S
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多くの人がそう感じます。ただ発音研究は、ゴールを「ネイティブそっくり」に置くこと自体を問い直しているんです。

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

研究で分かるって言われても、僕みたいな社会人にできるものなんですか?

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

そこが肝心です。研究は発音を「才能」ではなく、何をどう訓練するかの設計の問題として整理しているんですよ。

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

じゃあ、まず何から知ればいいのか教えてほしいです。

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

この記事では研究を並べて、直らないと感じる理由と通じる発音の作り方を 1 つずつ、平易に解いていきますね。

結論: 大人になってから英語の発音が直らないと感じるのは、口や頭の作りのせいではない [E03]。
母語である日本語の音のフィルター越しに、英語を聞き・話しているからだ [E03][E04]。
だから目指すべきは「ネイティブそっくり」ではなく「相手に通じる発音」だ [E01]。
訛りが残っていても、意味はきちんと通じることが多いと研究は測っている [E02]。
発音指導は大人でも中〜大の効果があり、訓練で発音は改善すると示されている [E07]。
いろんな声で聞き分ける訓練は、聞く力だけでなく発音にも良い影響を広げる [E05]。
この記事では、その理由と通じる発音の組み立て方を研究で 1 つずつ解いていく。

この記事でわかること

  • 大人の発音が「直らない」と感じるのは頭のせいなのか、それとも別のことなのか
  • 目指すゴールは「ネイティブそっくり」なのか、「相手に通じる発音」なのか
  • 大人でも発音は本当に変わるのか、効果を測った研究は何と言っているのか
  • 何を優先して直せば通じやすくなるのか、どう訓練すればいいのか

なぜ大人の発音は「直らない」と感じるのか — 母語の音に引っ張られる仕組み

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

発音をやり直すたび挫折するの、やっぱり僕の耳や口が悪いんですよね…。

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

そうではないんですよ。Flege 1995 の研究は、英語の音を母語である日本語の似た音の引き出しに入れて覚えるからだと示しています。

英語の発音をやり直しても続かないと、人は「自分の口や耳が悪い」と考えがちだ。だが発音の研究は、その自己否定にまず待ったをかける。手がかりになるのが Flege 1995 の研究だ [E03]。この研究が示したのが Speech Learning Model だ [E03]。Speech Learning Model (= 大人の英語の音は、母語である日本語の似た音の引き出しに入れて覚えられる、という考え方) だ [E03]。

大事なのは、母語に似た音ほど区別しにくくなる点だ [E03]。英語の音を「日本語の一番近い音」に当てはめて聞いてしまうからだ [E03]。似ている音ほど日本語の音に飲み込まれ、別の音として聞き分けにくくなる [E03]。

これは知覚 (= 音を聞き分ける力) の側からも説明できる [E04]。手がかりになるのが Best & Tyler 2007 の研究だ [E04]。この研究が示したのが PAM だ [E04]。PAM (= 新しい音を、母語のどの引き出しに入れて聞くかで区別のしやすさが決まる、という考え方) だ [E04]。

R と L のように、母語の同じ引き出しに吸い寄せられる 2 つの音は、特に聞き分けにくい [E04]。「何度言っても R と L で聞き返される」のは、そのためだ [E04]。責めるべきは自分の頭ではなく、母語のフィルターだったのだ。

ここまでのまとめ: 大人の発音が直らないと感じるのは口や頭の作りのせいではなく、母語の音の引き出し越しに英語を聞き・話しているからだ、と研究は示している。責めるべきは頭ではない。

ゴールは「ネイティブ発音」じゃない — 通じやすさと訛りは別物

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

ネイティブみたいに話せないと、やっぱり通じないんじゃないですか?

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

そこが逆なんです。Munro & Derwing 1995 は、訛りの強さと通じやすさは別のメーターで、訛りが強くてもよく通じる話し手は珍しくないと測りました。

では、大人の発音は何を目指せばいいのか。ここで発想を変えてくれるのが Derwing & Munro 2005 の研究だ [E01]。この研究が示したのが intelligibility principle だ [E01]。intelligibility principle (= 目指すのはネイティブそっくりではなく、相手にちゃんと通じることだ、という原則) だ [E01]。

大事なのは、訛りが残っていても通じることは多い点だ [E01]。全部の音を完璧に消すより、通じやすさに効く部分に力を集中すべきだと論じられている [E01]。「ネイティブみたいに話せないと恥ずかしい」という思い込みは、研究の側からほどける [E01]。

これを実測で裏づけたのが Munro & Derwing 1995 の研究だ [E02]。この研究は 3 つの物差しを区別した [E02]。1 つ目は訛りの強さ (accentedness)、2 つ目は聞き手の負担 (comprehensibility) だ [E02]。3 つ目が、実際にどれだけ通じたか (intelligibility) だ [E02]。

言い換えると、accentedness は「どれだけ外国語っぽく聞こえるか」のメーターだ [E02]。intelligibility は「ちゃんと意味が伝わるか」の別のメーターだ [E02]。この 2 つは別々に動き、訛りが強くてもよく通じる話し手は珍しくないと測られた [E02]。

ここまでのまとめ: 訛りの強さと通じやすさは別のメーターで、訛りが残っても通じることは多い、と研究は測っている。目指すのはネイティブそっくりではなく、相手に通じる発音だ。

大人でも発音は本当に変わるのか — 発音指導の効果を測った研究

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

大人だから発音は変わらない、ってよく聞くんですけど本当ですか?

英語独学好きの助教S
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それが思い込みなんです。Lee, Jang & Plonsky 2015 は、多くの実験を合算したメタ分析で、発音指導は大人でも中〜大の効果があると示しました。

「大人だから発音は直らない」は本当なのか。これに答えるのが Lee, Jang & Plonsky 2015 の研究だ [E07]。これはメタ分析という手法を使っている [E07]。メタ分析 (= たくさんの実験の結果を合算して、効果の大きさを 1 つの数字にまとめる手法) だ [E07]。

この研究は、発音指導は全体として中〜大の効果があると示した [E07]。効果の大きさは効果量という数字で表される [E07]。効果量 (= 効き目の大きさを数字にしたもの) で、おおよそ d ≈ 0.8 前後という大きめの値が報告された [E07]。

d ≈ 0.8 は、おおよそ「やった人の多くに目に見える改善が出る強さ」のイメージだ [E07]。正確な値は測り方で変わるので、ここでは概数として扱う [E07]。研究の対象には大人の学習者も含まれ、大人でも改善しうると示された [E07]。

これを補強するのが、より新しい Saito & Plonsky 2019 の研究だ [E10]。この研究も発音指導が発音や通じやすさを改善すると確かめた [E10]。とくに「相手が分かりやすくなる」方向で改善が出やすいと整理されている [E10]。

同じ号のレビューも、発音指導には概して効果があると認めている [E08]。これは Thomson & Derwing 2015 の総括だ [E08]。「もう大人だから直らない」は、複数の研究をならして見ると思い込みだと言える [E07][E08]。

ここまでのまとめ: たくさんの実験を合算したメタ分析で、発音指導は中〜大の効果があり大人でも改善する、と研究は示している。「大人だから直らない」は思い込みだった。

何を優先して直すと通じやすくなるのか — よく効く音・強勢・リズム

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

全部の音を直す時間なんてないです。何から手をつければいいんですか?

英語独学好きの助教S
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優先順位があります。Munro & Derwing 2006 は、間違えると別の単語に聞こえる「事故りやすい音」から直すと効くと示しました。

大人の時間は限られている。だから全部の音を平等に直すのは効率が悪い。ここで軸になるのが Munro & Derwing 2006 の研究だ [E09]。この研究が扱ったのが機能負荷という考え方だ [E09]。機能負荷 (= その音を取り違えると、別の単語に聞こえてしまいやすいかどうかの度合い) だ [E09]。

大事なのは、機能負荷の高い音の誤りほど通じにくさに響く点だ [E09]。間違えると別の単語に聞こえる「事故りやすい音」の誤りが、聞き手の分かりやすさを大きく下げると測られた [E09]。

だから優先順位はこうなる。全部の音を平等に磨くのではなく、事故りやすい音から先に直すのだ [E09]。取り違えても意味が変わりにくい細かな癖は、後回しでも通じやすさは保てる [E09]。

音の一つひとつだけでなく、強勢やリズムも通じやすさに効く [E01]。強勢やリズムとは、どの音を強く言い、どこで区切るかの流れのことだ [E01]。この土台が崩れると、正しい音でも相手には取りにくくなる [E01]。

限られた時間で通じやすさを上げるなら、事故りやすい音・強勢・リズムから直す [E09][E01]。これが「通じやすさに効くところから直す」という研究に沿った優先順位だ [E09]。

ここまでのまとめ: 全部の音を平等にではなく、取り違えると別の単語に聞こえる「事故りやすい音」や強勢・リズムから先に直すほうが通じやすさに効く、と研究は示す。

「たくさんの声で聞き分ける」訓練が効く — HVPT と R/L

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

R と L がどうしても聞き分けられないんです。何かコツはありますか?

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

耳から作るといいですよ。Logan らの 1991 年の研究では、いろんな人の声で聞き分ける練習で日本人の R/L の聞き取りが上達したと報告されています。

通じる発音の土台は、まず耳を作ることだ。それを示したのが Logan et al. 1991 の研究だ [E06]。この研究が打ち立てたのが HVPT だ [E06]。HVPT (= 一人の先生の声だけでなく、いろんな人・いろんな単語で音を聞き分ける練習) だ [E06]。

大事なのは、いろんな声で練習するほど本番で効く点だ [E06]。多様な話者・単語で R と L を聞き分ける訓練で、日本語話者の聞き分けが上達した [E06]。しかも訓練で使っていない新しい単語や話者にも、その力が広がったと報告された [E06]。

さらに驚くのが、この訓練が発音にも波及することだ。それを示したのが Bradlow et al. 1997 の研究だ [E05]。この研究は、聞き分けの訓練だけで発音まで改善したと示した [E05]。これは知覚から産出への転移と呼ばれる [E05]。

知覚から産出への転移 (= 耳が良くなると、口 [発音] も後からついてくること) だ [E05]。訓練は聞き分けだけを対象にしていたのに、自分で言う R/L の発音まで良くなった [E05]。母語話者が聞き取る評定でも、その改善が確かめられている [E05]。

つまり、まず耳を作ることが発音改善の土台になる [E05][E06]。いろんな声で聞き分ける練習が、聞く力だけでなく話す力にもつながっていく [E05]。

ここまでのまとめ: いろんな声で聞き分ける訓練 (HVPT) で R/L の聞き取りが上達し、訓練していない発音にも改善が広がった、と研究は示している。まず耳を作ることが土台になる。

シャドーイング・音読・録音フィードバックの位置づけ — 聞く力と話す力をつなぐ

耳ができたら、次はそれを口につなげたい。この橋渡しを担うのが、身近な 3 つの練習だ。シャドーイングと音読と、録音して聞き直すフィードバックだ。研究の言葉で言えば、知覚と産出をつなぐ練習だ [E05]。

知覚と産出 (= 音を聞き取る力と、実際に口から出す力) だ [E05]。前章のとおり、聞き分けの力は発音に波及することが示されている [E05]。だからこの橋渡しの練習は、その波及を後押しする位置づけになる [E05]。

シャドーイング (= 聞こえた英語を少し遅れて声に出して追いかける練習) を考えてみよう。これは聞いた音を、すぐ自分の口で再現する練習になる [E05]。聞く力と話す力を同時に働かせるので、両者をつなぐ橋として使える [E05]。

音読は、文字を見ながら自分の口で音を作る練習だ。録音フィードバックは、自分の声を録って聞き直す練習だ。録音を聞き直すと、通じにくい音を耳で客観的に確かめられる [E02]。ここで確かめる基準も「ネイティブそっくりか」ではなく「通じるか」に置くのがよい [E01]。

大事なのは、これらを耳作りの上に重ねる点だ [E05]。聞けるようになった音を、口でも出せるようにするための練習として位置づける [E05]。順番は、まず耳、次に口だ [E05]。

ここまでのまとめ: シャドーイング・音読・録音フィードバックは、聞く力 (知覚) と話す力 (産出) をつなぐ橋だ。聞けるようになった音を口でも出す練習として、耳作りの上に重ねる。

やっても意味が薄い・逆効果な発音の直し方 — 完璧主義・訛り根絶主義の落とし穴

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

カタカナ発音を完全に消さないと恥ずかしくて、つい全部直そうとしちゃいます。

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

そこが落とし穴なんです。Thomson & Derwing 2015 は、訛りを消すことより「通じるか」を目標にした指導のほうが望ましいと整理しています。

ここまでの合意を裏返すと、避けたい直し方も見えてくる。それが完璧主義と訛り根絶主義だ。訛り根絶主義 (= 訛りを一切なくさないと失格だという思い込み) だ [E01]。この思い込みが、逆効果になりうる。

なぜなら、通じやすさに効かない音まで完璧に直そうとするからだ [E01]。取り違えても意味が変わらない細かな癖に時間を注ぎ、肝心の事故りやすい音がおろそかになる [E09]。力の配分が、通じやすさから外れてしまう [E01]。

研究の側も、目標の偏りを指摘している。Thomson & Derwing 2015 は、多くの研究の課題を整理した [E08]。多くの研究が、通じやすさではなく訛りを消せたかばかりを測ってきたと指摘している [E08]。

さらに、決まった形の反復に偏りがちだとも指摘されている [E08]。型どおりの反復だけでなく、実際に相手と伝え合う練習が足りない、というのだ [E08]。「訛りを消す」より「通じるか」に目標を置き直すべきだと示されている [E08]。

もう一つの落とし穴が、ネイティブ神話だ。ネイティブ神話 (= ネイティブそっくりでないと通じない、という思い込み) だ [E01]。研究に沿えば、全部の音を完璧にではなく、通じる音から優先して直すのが正しい [E01][E09]。ここが力の抜きどころだ。

ここまでのまとめ: 完璧主義・訛り根絶主義は、通じやすさに効かない音まで直そうとして時間と自信をすり減らす、と研究は示している。「全部の音を完璧に」ではなく「通じる音から優先して」だ。

結局どう発音を直せばいいのか — 研究からの落としどころ

最後に、ここまでの研究を一つの絵にまとめ直したい。まず全体像はこうだ。大人の発音が直りにくいのは、口や頭の作りのせいではなかった [E03]。母語の音の引き出し越しに、英語を聞き・話しているからだ [E03][E04]。

次に、ゴールはネイティブそっくりではない。訛りが残っても通じることは多く、目指すのは通じやすさだ [E01][E02]。この目標の置き直しが、力の入れどころを大きく変える [E01]。

そのうえで、大人でも訓練で発音は改善する [E07]。発音指導は中〜大の効果があり、とくに通じやすさで改善が出やすいと示されている [E07][E10]。「もう大人だから」は思い込みだった [E07]。

具体的な順番はこうだ。まず、いろんな声で聞き分けて耳を作る [E05][E06]。次に、事故りやすい音・強勢・リズムから優先して直す [E09]。最後に、シャドーイングや録音で、聞けた音を口に落とす [E05]。

ここから研究の合意点が見えてくる。直らないのは頭のせいではなく、母語のフィルター越しに聞き・話しているからだ [E03]。だからゴールを通じやすさに置けば、大人でも訓練で確実に近づける [E01][E07]。手渡せる軸は三つだ。通じやすさを目標に・耳から作って・効く音から直す、である [E05][E09]。

ここまでのまとめ: 直らないのは頭のせいではなく母語のフィルター越しに聞き・話すからで、通じやすさをゴールに置けば大人でも訓練で近づく、というのが研究の合意点だ。

FAQ

Q. 大人になってから英語の発音を直すのは、もう遅いのでしょうか

A. 遅くありません。Lee, Jang & Plonsky 2015 のメタ分析は、発音指導が全体として中〜大の効果があり、大人でも改善すると示しました [E07]。直りにくく感じるのは、母語の音の引き出し越しに聞き・話しているからです [E03]。頭や口の作りのせいではありません。

Q. ネイティブみたいに発音できないと、やっぱり通じないですか

A. そんなことはありません。Munro & Derwing 1995 は、訛りの強さと通じやすさは別のメーターだと実測しました [E02]。訛りが残っていても、よく通じる話し手は珍しくないのです [E02]。目指すべきは、ネイティブそっくりではなく相手に通じる発音です [E01]。

Q. R と L がどうしても聞き分けられません。どうすればいいですか

A. いろんな声で聞き分ける訓練が有効です。Logan et al. 1991 は、多様な話者・単語で練習すると R/L の聞き分けが上達すると示しました [E06]。Bradlow et al. 1997 は、その訓練が発音にも波及したと報告しています [E05]。まず耳を作るのが第一歩です。

Q. 時間がありません。何から優先して直せばいいですか

A. 取り違えると別の単語に聞こえる「事故りやすい音」からです。Munro & Derwing 2006 は、機能負荷の高い音の誤りほど通じにくさに響くと示しました [E09]。強勢やリズムも通じやすさに効きます [E01]。全部を平等にではなく、効くところから直しましょう。

Q. シャドーイングや音読は、発音の役に立ちますか

A. 聞く力と話す力をつなぐ橋として役立ちます。Bradlow et al. 1997 は、聞き分けの訓練が発音に波及すると示しました [E05]。シャドーイングや録音は、聞けるようになった音を口でも出す練習になります [E05]。まず耳を作り、その上に重ねるのが順番です。

Q. カタカナ発音を完全になくさないと、恥ずかしいのでは

A. 完璧に消す必要はありません。Derwing & Munro 2005 は、訛りをゼロにするより通じやすさに力を集中すべきだと論じました [E01]。Thomson & Derwing 2015 も、訛りを消すより通じるかを目標にすべきだと整理しています [E08]。力の抜きどころを知るのが大切です。

まとめ

大人の発音矯正という悩みを研究のレンジで読み直すと、風景が落ち着いて見えてくる。

まず、直らないのは頭のせいではなかった。Flege 1995 は、大人の英語の音が母語の似た音の引き出しに飲み込まれる仕組みを示した [E03]。Best & Tyler 2007 は、R と L が同じ引き出しに吸い寄せられて聞き分けにくくなると整理した [E04]。責めるべきは頭ではなく、母語のフィルターだった。

次に、ゴールはネイティブそっくりではない。Derwing & Munro 2005 は、目指すのは通じやすさだと論じた [E01]。Munro & Derwing 1995 は、訛りが残っても通じることは多いと実測した [E02]。

そのうえで、大人でも訓練で発音は改善する。Lee, Jang & Plonsky 2015 は、発音指導が中〜大の効果を持つと示した [E07]。Saito & Plonsky 2019 は、とくに通じやすさで改善が出やすいと確かめた [E10]。Thomson & Derwing 2015 は、通じやすさを目標にすべきだと整理した [E08]。

どう訓練するかも見えてきた。Logan et al. 1991 は、いろんな声で聞き分ける訓練が効くと示した [E06]。Bradlow et al. 1997 は、その訓練が発音にも波及すると報告した [E05]。Munro & Derwing 2006 は、事故りやすい音から直すべきだと示した [E09]。

そして落としどころはひとつだ。直らないのは頭のせいではなく、母語のフィルター越しに聞き・話しているからだ [E03]。ゴールを通じやすさに置けば、大人でも訓練で近づける [E01][E07]。通じやすさを目標に・耳から作って・効く音から直す。その一歩を、いろんな声で R/L を聞き分ける練習から始めればいい。それが研究の言う、いちばん落ち着いた発音矯正だ。

参考文献

  • [E01] Derwing TM, Munro MJ (2005). Second Language Accent and Pronunciation Teaching: A Research-Based Approach. TESOL Quarterly, 39(3): 379-397. https://doi.org/10.2307/3588486
  • [E02] Munro MJ, Derwing TM (1995). Foreign Accent, Comprehensibility, and Intelligibility in the Speech of Second Language Learners. Language Learning, 45(1): 73-97. https://doi.org/10.1111/j.1467-1770.1995.tb00963.x
  • [E03] Flege JE (1995). Second Language Speech Learning: Theory, Findings, and Problems (Speech Learning Model). In Strange W (ed.), Speech Perception and Linguistic Experience: Issues in Cross-Language Research. York Press (Timonium, MD), pp. 233-277. ISBN 978-0912752365.
  • [E04] Best CT, Tyler MD (2007). Nonnative and Second-Language Speech Perception: Commonalities and Complementarities (PAM/PAM-L2). In Bohn OS & Munro MJ (eds.), Language Experience in Second Language Speech Learning. John Benjamins (Amsterdam), pp. 13-34. https://doi.org/10.1075/lllt.17.07bes
  • [E05] Bradlow AR, Pisoni DB, Akahane-Yamada R, Tohkura Y (1997). Training Japanese Listeners to Identify English /r/ and /l/: IV. Some Effects of Perceptual Learning on Speech Production. Journal of the Acoustical Society of America, 101(4): 2299-2310. https://doi.org/10.1121/1.418276
  • [E06] Logan JS, Lively SE, Pisoni DB (1991). Training Japanese Listeners to Identify English /r/ and /l/: A First Report. Journal of the Acoustical Society of America, 89(2): 874-886. https://doi.org/10.1121/1.1894649
  • [E07] Lee J, Jang J, Plonsky L (2015). The Effectiveness of Second Language Pronunciation Instruction: A Meta-Analysis. Applied Linguistics, 36(3): 345-366. https://doi.org/10.1093/applin/amu040
  • [E08] Thomson RI, Derwing TM (2015). The Effectiveness of L2 Pronunciation Instruction: A Narrative Review. Applied Linguistics, 36(3): 326-344. https://doi.org/10.1093/applin/amu076
  • [E09] Munro MJ, Derwing TM (2006). The Functional Load Principle in ESL Pronunciation Instruction: An Exploratory Study. System, 34(4): 520-531. https://doi.org/10.1016/j.system.2006.09.004
  • [E10] Saito K, Plonsky L (2019). Effects of Second Language Pronunciation Teaching Revisited: A Proposed Measurement Framework and Meta-Analysis. Language Learning, 69(3): 652-708.

最終更新日: 2026-07-23
著者: 中村 拓(Taku Nakamura)(greencafe 編集部 編集責任者・非ネイティブ話者)。公開された 10 件の研究エビデンス(tier 1 の一次文献 9 件 + tier 2 のレビュー 1 件)を横断分析・再構成した。
画像: いらすとや (https://www.irasutoya.com/) より

この記事を編集した人

中村 拓(Taku Nakamura)のポートレート

(編集責任者 / 応用言語学・第二言語習得 エディター(非ネイティブ話者))

応用言語学のバックグラウンドを持つ英語学習分野のエディターで、査読済み SLA 論文・応用言語学ジャーナル・公的機関資料の横断要約と再構成を担当する編集責任者です。非ネイティブ英語話者で、大人の英語学び直しを研究の視点で編集しています。

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