英単語の語呂合わせは本当に効くの?|50年の研究でわかった「効く場面」と落とし穴

左にヘッドホンをして勉強をしている男性のイラスト、右にひらめいた顔をした女性会社員のイラストが並ぶ。集中して覚える様子と、イメージで結びつく瞬間を表している。 語彙・単語

英単語の語呂合わせは本当に効くの?|50年の研究でわかった「効く場面」と落とし穴

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

英単語を語呂合わせで覚えるのって、子供っぽくないですか?

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

気持ちはわかります。ただ、その覚え方には研究上の正式な名前があって、記憶心理学で長く検証されてきた技術なんですよ。

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

でも、覚えても結局すぐ抜けちゃうんですよね…

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

多くの人が同じところでつまずきます。実は記憶の研究では、覚えた直後の強さと、時間が経った後の残り方は別の話として扱われているんです。

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

研究があると言われても、僕にできるか不安です。

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

その不安はもっともです。ただ研究の側は、才能の問題ではなく、どう組み立てるかという設計の問題として整理してきているんですよ。

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

じゃあ、何から手をつければいいんですか?

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

この記事では、50年分の研究を順番にたどります。効く場面と、つまずきやすい場面を分けて見ていきましょう。

結論: 英単語を語呂合わせやイメージで覚える方法は、思いつきの俗説ではない。1975年にアメリカの心理学者が行った実験を出発点に、50年にわたって検証されてきた暗記の技術である。研究では、覚えた直後のテストで丸暗記より高い成績が出ることが繰り返し報告されている。ただし落とし穴もある。思い出す練習をしないまま時間を置くと、意味でつないで覚えた場合より記憶が崩れやすくなる場合が報告されている。つまりこれは「覚え始めの一手」であって「仕上げの一手」ではない。

この記事でわかること

  • 語呂合わせ的な暗記法には「キーワード法」という名前と、50年分の研究の積み重ねがあること
  • 覚えた直後のテストでは、丸暗記より高い成績が出ることが繰り返し報告されていること
  • 復習をしないまま時間が経つと、成績が逆転してしまう場合があるという落とし穴
  • 「思い出す練習」と正しい順番で組み合わせる、今日から使える具体的な手順

語呂合わせで英単語を覚える「キーワード法」とは何か

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

語呂合わせに、ちゃんとした名前があるんですか?

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

キーワード法という名前があります。1982年の研究のまとめ役の論文で、音の似た言葉を経由して絵でつなぐ2段階の手順として整理されているんですよ。

「語呂合わせで英単語を覚える」と聞くと、試験前だけの裏ワザに聞こえるかもしれない。

だが記憶の研究では、この覚え方にキーワード法という名前が付いている。知らない外国語の単語を、音の似た言葉と絵でつないで覚える暗記法、というイメージだ。

手順は2つの段階に分かれている。

  • 第1段階: 覚えたい単語の発音に似た、自分がすでに知っている言葉を思い浮かべる
  • 第2段階: その言葉と訳語を、1枚の絵のようなイメージでつなぐ

第1段階で思い浮かべる言葉を「キーワード」と呼ぶ。この名前が、そのまま手法の名前になっている。

具体例で見てみる。pond(池)という単語を覚えるとする。

まず、音が似ている日本語として「ポンッ」を思い浮かべる。これが第1段階だ。

次に、池にカエルがポンッと飛び込む場面を頭の中に描く。これが第2段階になる。

もう一つ挙げる。barn(納屋)なら「バーン」を思い浮かべればよい。納屋の扉がバーンと大きな音を立てて開く絵を作る。

大事なのは、音と意味を別々に覚えないという点だ。音の橋と絵の橋を2本かけて、ひとつながりにしてしまう。

この2段階の手順は、Pressleyらの総説論文で整理された。ばらばらだった実験結果を1冊の取扱説明書にまとめたような論文、というイメージだ。

同じ論文では、外国語の単語だけでなく人名や事実の暗記にも応用できることが整理されている。一方で、効果の大きさは学習する材料や年齢層によって変わるとも指摘されている。

ここまでのまとめ: キーワード法とは、覚えたい単語の音に似た言葉を思い浮かべ、それと訳語を絵のイメージでつなぐ2段階の暗記法である。

出発点は1975年のロシア語実験だった

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

でも、それって本当に差が出るんですか?

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

1975年の実験では、キーワード法の組が約72%、丸暗記の組が約46%と報告されています。10語中7語と4〜5語の差ですね。

キーワード法の原点は、1975年にスタンフォード大学で行われた実験にある。

心理学者のAtkinsonとRaughは、学生に未知のロシア語の単語を覚えてもらう課題を用意した。この2人は、キーワード法という名前と手順を心理学の分野に広めた研究者だと考えればよい。

学生は2つのグループに分かれた。

  • キーワード法グループ: 音の似た言葉を経由し、イメージでつないで覚える
  • 対照グループ: 機械的な繰り返しで覚える(いわゆる丸暗記)

結果は、キーワード法グループの再生率が約72%、対照グループが約46%と報告されている。

数字だけでは実感しにくいので言い換える。10語のうち7語くらい思い出せた組と、4〜5語くらいしか思い出せなかった組の差だ。

報告されているのは、あくまで2つの覚え方を比べたときの差である。

だからこそ、この実験は「語呂合わせは気休め」という見方を覆す出発点になった。以後の研究の多くが、ここを出発点として参照している。

なお、この数値は複数の心理学の教科書で繰り返し引用されている代表値である。実験の条件によって数字は動くため、本記事では「約」を付けて扱う。

ここまでのまとめ: キーワード法の出発点となった1975年の実験では、キーワード法グループの再生率が丸暗記グループを大きく上回ったと報告されている。

思いつきの裏ワザではなく、理論に裏打ちされた技法

同じ1975年に、Atkinsonはもう1本の論文を発表している。実験の結果を、第二言語学習という大きな枠の中に位置づけ直した総説論文だ。

そこでキーワード法の手順は、2つの情報処理の過程として整理された。

  • 音響リンク: 発音の似た言葉を経由してつなぐ段階
  • イメージリンク: 目に見える絵として結びつける段階

聞き慣れない用語だが、中身は先ほどの2段階と同じである。音の橋を渡ってから、絵の橋を渡る、という2本立ての道順だと考えればよい。

この論文が主張したのは、キーワード法が暗記のコツの寄せ集めではないという点だった。当時の記憶研究の知見に基づく、根拠のある技法だという立場である。

土台になっているのが、Paivioの二重符号化理論だ。言葉を扱う回路と、絵を扱う回路の2つを同時に使ったほうが記憶に残りやすい、という考え方である。

これはノートを2冊持つイメージに近い。言葉のノートだけに書くより、絵のノートにも書いておいたほうが、あとで見つけやすくなる。

キーワード法の「音の橋渡し」と「イメージでつなぐ」という2段階は、この理論を実際の暗記に応用した形として位置づけられている。

つまり、語呂合わせが効くのは偶然ではない。頭の中に2本の道を作っておくと、片方を忘れてももう片方から思い出せる、という仕組みが背景にある。

ここまでのまとめ: キーワード法は思いつきの暗記のコツではなく、言葉とイメージの2つの回路を使うという記憶研究の理論に裏打ちされている。

「覚えたては強い」は追試でも確認されている

1975年の実験が示した効果は、その後の研究でも確かめられている。

Wangらは4つの実験を行い、大学生218名を対象にキーワード法の効果を検証した。この研究チームは、キーワード法の効果が時間とともにどう変わるかを追いかけた人たちだ。

この研究で使われた重要な条件が保持間隔である。覚えてからテストを受けるまでにどれくらい時間を置くか、という間隔のことだ。

結果として、学習の速さと覚えた直後の再生率では、キーワード法が丸暗記を上回ることが確認された。1975年の知見が、別の実験でも再現されたことになる。

ここまでだけを見れば、キーワード法は文句なしに優れた暗記法に見える。

しかし同じ論文は、もう一つの結果も報告している。保持間隔が長くなるほど、キーワード法グループの忘れ方のほうが丸暗記グループより大きくなる、という結果だ。

つまりこの研究は「短期では強い」と「長期では目減りしやすい」の両方を同時に示していた。片方だけを取り出すと、この研究の意味を取り違えることになる。

覚えたてのスピードだけで暗記法を選ぶと、後で困る場合がある。この点は次の章で詳しく見ていく。

ここまでのまとめ: 追試でも覚えた直後の優位は確認されたが、同じ研究は時間が経つほど忘れ方が大きくなることも同時に報告している。

落とし穴は「時間が経ってから」に現れる

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

語呂は思い出せるのに、意味が出てこないんです。

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

それは多くの人が経験するつまずきです。1995年の研究でも、橋の入り口までは行けるのに渡った先が思い出せない状態が報告されています。

キーワード法の限界を正面から扱ったのが、WangとThomasによる1995年の研究である。論文の副題は「助けになるのか、それとも妨げになるのか」という問いの形をしている。

この研究では、キーワード法のグループと、意味のつながりを手がかりに覚えたグループが比較された。後者は、単語を文や場面の意味の中に置いて覚えるやり方だと考えればよい。

覚えた直後のテストでは、キーワード法グループのほうが成績が良かった。ここまでは、これまでの研究と同じ結果だ。

ところが時間を置いてからのテストでは、結果が逆転した。意味のつながりで覚えたグループのほうが成績が良くなったのである。

何が起きていたのかも報告されている。キーワードそのもの、つまり音の橋は高い割合で思い出せていた。

つまずいていたのは、その次の段階だった。キーワードから訳語にたどりつく部分で止まってしまうケースが多かったのである。

橋の入り口までは行けるのに、渡った先が思い出せない。そんな状態だと考えるとわかりやすい。

研究では、この現象を手がかりの性質の違いとして説明している。音のインパクトのような目立つ手がかりは、意味のつながりに比べて長持ちしにくいという解釈だ。

覚えた直後は花火のようにパッと鮮やかでも、時間が経つと意味でつながった記憶のほうが残る。この落とし穴は、「英単語をすぐ忘れる」のは根性のせいじゃないで扱った、覚え方の深さと忘れやすさの関係とも重なる。

ただし、救いになる報告もある。復習を繰り返した場合、キーワード法グループの急な忘却はやわらいだ。5回の復習を終えた時点では、意味で覚えたグループの水準に近づいたとされている。

ここが本記事の核心だ。キーワード法そのものが悪いのではない。キーワード法だけで終わらせて、復習をしないことが問題になる。

ここまでのまとめ: 時間を置くと成績が逆転する場合があるが、復習を重ねれば急な忘却はやわらぐと報告されている。

「意味を選ぶ」学習と「単語を思い出す」学習では効き方が違う

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

思い出す練習と語呂、どっちを選べばいいんですか?

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

実は場面によって答えが変わります。意味を選ぶ形の学習なら互角ですが、単語そのものを書き出す形なら思い出す練習が有利だと報告されています。

キーワード法をどこで使うべきかについて、使い分けの境界を示した研究がある。Fritzらが3つの実験で複数の学習法を比べたものだ。この研究チームは、どの覚え方がどの場面で効くのかを実験で仕分けした人たちだと考えればよい。

この研究で比較相手になったのが想起練習である。教材を読み返すのではなく、自分の力で思い出すテストを繰り返す学習法のことだ。

まず実験1では、想起練習とキーワード法は同じくらいの再生率を示した。どちらも、機械的な繰り返しによる学習より優れていた。

実験2でも、想起練習とキーワードを使った再生は同程度の成績だった。どちらも、学習者が自分の好きなように勉強した場合より優れていた。

境界が見えたのは実験3である。ここでは学習の種類が2つに分けられた。

  • 受容的学習: 英単語を見せられて、正しい意味を選ぶ形の学習
  • 産出的学習: 意味のほうから、英単語そのものを思い出す形の学習

受容的学習は選択肢から選ぶクイズ、産出的学習は空欄に自分で書き込むテストだと考えればわかりやすい。

結果はこうだった。意味を選ぶ受容的学習では、想起練習とキーワード法は同じくらい有効だった。

一方、単語そのものを思い出す産出的学習では、想起練習のほうがより効果的だった。

この差は、記憶研究の古典的な知見とつながっている。RoedigerとKarpickeは、繰り返し読む学習と繰り返しテストを受ける学習を比べた。この2人は、テストを成績を測る道具ではなく勉強の道具として使う効果を示した研究者だ。

学習の直後は読み返した組のほうが成績が良かった。しかし数日後のテストでは、テストを受けた組のほうが明らかに高い保持率を示した。保持率とは、覚えた内容をどれだけ覚えていられたかの割合のことだ。

この現象は検査効果と呼ばれている。自分で思い出す作業そのものが記憶を強くする、という考え方だ。

急がば回れ、という言い方が近い。読み返しは手軽で楽に感じるが、あとで残るのは思い出す練習をしたほうである。

思い出す練習そのものの効き方については、単語帳を何周しても覚えられない人へで詳しく扱っている。

ここまでのまとめ: 意味を選ぶ学習ではキーワード法と想起練習は互角だが、単語そのものを思い出す学習では想起練習のほうが有利だと報告されている。

語呂合わせと「思い出す練習」を組み合わせるとどうなるか

では、キーワード法と想起練習は二者択一なのか。この問いを正面から検証したのが、MiyatsuとMcDanielによる2019年の研究である。この2人は、思い出す練習に語呂合わせを足すと何が起きるかを調べた研究者だと考えればよい。

教材にはリトアニア語と英語の単語ペアが使われた。学習者にとって未知の言語を使うことで、事前の知識の影響を避ける狙いがある。

この研究の特徴は、想起練習の回数を1つの単語につき2回に絞った点にある。それまでの研究の多くが何度も想起練習を行っていたことと対比した設計だ。

回数を絞ったのは、実際の学習者が使える時間が限られているからだと考えるとわかりやすい。

実験2では、キーワード法と想起練習を組み合わせたグループが、想起練習だけのグループより高い成績を示した。合わせ技が上乗せの効果を生んだことになる。

ただし、話はここで終わらない。実験1では、同じような組み合わせの効果ははっきり確認されなかった。

著者らは、参加者の年齢層の幅や教育歴のばらつき、テスト形式の違いを理由として考察している。

したがって「組み合わせれば必ず伸びる」とは言えない。誠実に書けば、実験によって差はあるが、少なくとも一つの実験では有意な上乗せ効果が確認された、となる。

ここでの有意は「有意義」とは別の言葉だ。統計的に見て偶然のばらつきでは説明しにくい差、という意味である。

それでも意味のある結果だ。著者らは、キーワード法が想起練習の効果を強める触媒として働く可能性を議論している。触媒とは、それ自体が主役ではないが反応を進みやすくする働きのことだ。

料理でいえば、下ごしらえに近い。下ごしらえだけでは料理は完成しないが、あるとその後の火の通りが良くなる。

キーワード法は覚え始めの一手、想起練習は定着させる一手。役割が違うからこそ、順番に重ねる価値がある。

ここまでのまとめ: 組み合わせの効果は実験によって差があるが、少なくとも一つの実験ではキーワード法が想起練習に上乗せの効果を与えた。

今日から使える手順と、良いキーワードの作り方

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

全部の単語で語呂を作るのは、正直しんどいです。

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

その気持ちはよくわかります。効果の大きさは学ぶ材料によって変わると研究でも指摘されていて、抜けやすい単語だけに絞るのが現実的ですよ。

ここまでの研究をふまえると、実際の手順は次のようになる。研究が支持する部分と、そこから導いた工夫は分けて示す。

手順1: 音の似た言葉を決める

覚えたい単語の発音を口に出し、音の近い日本語を思い浮かべる。音でつないでから絵でつなぐ、というこの順番が原点の実験の手順である。候補を1つに絞るかどうかは研究の論点ではない。迷ったら作りやすいものを選べばよい。

手順2: キーワードと訳語を1枚の絵にする

言葉だけで覚えず、絵の回路も一緒に使う。これが二重符号化理論から言える部分だ。カエルが飛び込む、扉が開くといった具体的な場面にすると、絵として描きやすい。

手順3: 自分で描き直してみる

自作の語呂と他人が作った語呂のどちらが有利かは、本記事で扱った研究では比べられていない。ただ自分の生活の場面に置き換えたほうが絵にしやすいので、編集部としては自作をすすめる。

手順4: 数日後に必ず思い出すテストをする

ここが最も重要な一手になる。単語帳を眺め直すのではなく、意味を隠して自分の力で思い出す。

手順5: 訳語から英単語を書き出す練習も入れる

意味を選ぶだけの復習では、産出の力は伸びにくい。訳語を見て英単語を書き出す練習を混ぜる。

良いキーワードの条件も整理しておく。以下は研究が直接比べた項目ではなく、作りやすさの観点からの目安である。

  • 音がはっきり近いこと。無理にこじつけた音は、あとで思い出せない
  • 絵にしやすいこと。抽象的な言葉より、目に見えるものを選ぶ
  • 場面が具体的であること。ぼんやりした絵より、はっきり描ける場面のほうが作りやすい
  • 自分にとって身近であること。知らない土地や人物では絵を描きにくい

注意点も添えておく。キーワード法は1語ごとに手間がかかる技法だ。

効果の大きさは学習する材料によって変わるとも指摘されている。そこで編集部としては、何度も抜けてしまう手ごわい単語に絞る使い方をすすめたい。これは研究が直接推奨する運用ではなく、時間配分としての判断である。

そして、復習の間隔をどう置くかは別の論点になる。覚えた後にいつ復習を挟むかについては、英単語が1週間で消えるのはなぜ?で扱った忘却曲線の話が参考になる。

ここまでのまとめ: 音が近く絵にしやすいキーワードを作り、数日後に思い出すテストを必ず重ねることが、研究から導かれる実践の形である。

よくある質問

Q1. 語呂合わせは子供っぽい覚え方で、大人がやると恥ずかしくないですか。

研究上は、大人にこそ検証されてきた技法である。原点となった1975年の実験は、大学生を対象に行われた。総説論文では、効果の大きさが学習材料や年齢層によって変わると指摘されている。恥ずかしさより、復習を挟まないことのほうが問題になる。

Q2. 「約72%対約46%」という数字はどこまで信用できますか。

この数値は、1975年の実験の代表的な結果として複数の教科書で引用されている。ただし実験の条件によって数字は動く。本記事で「約」を付けているのはそのためだ。数字そのものより、覚え方を変えるだけで差が出たという点が重要になる。

Q3. 市販の語呂合わせ本と、自分で作る語呂はどちらがよいですか。

本記事で扱った研究は、この2つを直接比べていないため断定はできない。ただ、自分がすでに知っている言葉や場面のほうがイメージを描きやすいのは確かだ。市販の語呂を出発点にして、自分の場面に描き直す使い方が現実的だろう。

Q4. すべての英単語にキーワード法を使うべきですか。

その必要はない。1語ごとにイメージを作る手間がかかるうえ、効果の大きさは材料によって変わると指摘されている。何度やっても抜ける単語に絞るという配分は、研究の推奨ではなく編集部の実務的な判断である。

Q5. 語呂は思い出せるのに訳語が出てこないときはどうすればよいですか。

それは研究でも報告されている典型的なつまずきである。キーワードは思い出せても、そこから訳語にたどりつけない状態だ。研究から言える対策は、訳語を書き出す想起練習を重ねることになる。加えて、絵の中に訳語そのものを登場させておくと橋の渡り先がはっきりする。

まとめ

英単語を語呂合わせやイメージで覚えるやり方には、キーワード法という名前と50年分の研究がある。

覚えた直後の効果は、1975年の実験から繰り返し確認されてきた。言葉とイメージの2つの回路を使うという理論的な裏づけもある。

一方で、時間を置くと成績が逆転する場合があることも報告されている。目立つ手がかりは長持ちしにくく、キーワードから訳語にたどりつく段階でつまずきやすい。

その落とし穴を埋めるのが、自分の力で思い出す練習である。意味を選ぶ学習では両者は互角だが、単語そのものを思い出す学習では想起練習が有利だとされる。

そして両方を組み合わせた場合、少なくとも一つの実験では上乗せの効果が確認されている。

結論はシンプルだ。語呂合わせは覚え始めの一手として使い、数日後に思い出すテストで仕上げる。この順番を守れば、大人の学習法として十分に成立する。

参考文献

  1. Atkinson, R. C., & Raugh, M. R. (1975). An application of the mnemonic keyword method to the acquisition of a Russian vocabulary. Journal of Experimental Psychology: Human Learning and Memory, 1(2), 126-133. https://doi.org/10.1037/0278-7393.1.2.126
  2. Atkinson, R. C. (1975). Mnemotechnics in second-language learning. American Psychologist, 30(8), 821-828. https://doi.org/10.1037/h0077029
  3. Wang, A. Y., Thomas, M. H., & Ouellette, J. A. (1992). Keyword mnemonic and retention of second-language vocabulary words. Journal of Educational Psychology, 84(4), 520-528. https://doi.org/10.1037/0022-0663.84.4.520
  4. Wang, A. Y., & Thomas, M. H. (1995). Effects of keyword on long-term retention: Help or hindrance? Journal of Educational Psychology, 87(3), 468-475. https://doi.org/10.1037/0022-0663.87.3.468
  5. Fritz, C. O., Morris, P. E., Acton, M., Voelkel, A. R., & Etkind, R. (2007). Comparing and combining retrieval practice and the keyword mnemonic for foreign vocabulary learning. Applied Cognitive Psychology, 21(4), 499-526. https://doi.org/10.1002/acp.1287
  6. Miyatsu, T., & McDaniel, M. A. (2019). Adding the keyword mnemonic to retrieval practice: A potent combination for foreign language vocabulary learning? Memory & Cognition, 47(7), 1328-1343. https://doi.org/10.3758/s13421-019-00936-2
  7. Pressley, M., Levin, J. R., & Delaney, H. D. (1982). The mnemonic keyword method. Review of Educational Research, 52(1), 61-91. https://doi.org/10.3102/00346543052001061
  8. Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). Test-enhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention. Psychological Science, 17(3), 249-255. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2006.01693.x
  9. Paivio, A. (1986). Mental Representations: A Dual Coding Approach. Oxford University Press. https://archive.org/details/mentalrepresenta0000paiv (原型は Paivio, A. (1971). Imagery and Verbal Processes. Holt, Rinehart and Winston.)

最終更新日: 2026-09-10

著者: 中村 拓(Taku Nakamura)(greencafe 編集部 編集責任者・非ネイティブ話者)。公開された 9 件の研究エビデンス(tier 1=9 件 / tier 2=0 件)を横断分析・再構成した。

画像: いらすとや (https://www.irasutoya.com/) より

この記事を編集した人

中村 拓(Taku Nakamura)のポートレート

(編集責任者 / 応用言語学・第二言語習得 エディター(非ネイティブ話者))

応用言語学のバックグラウンドを持つ英語学習分野のエディターで、査読済み SLA 論文・応用言語学ジャーナル・公的機関資料の横断要約と再構成を担当する編集責任者です。非ネイティブ英語話者で、大人の英語学び直しを研究の視点で編集しています。

編集した記事: 116 本

この編集者が編集した他の記事を読む運営者情報・編集方針

公開日: / 最終更新:

タイトルとURLをコピーしました