自分の英語レベルがわからない|点数ではなく「できること」で測る方法

ヘッドホンをつけて机に向かい本を開いて勉強している男性と、灰色の階段を一段ずつ登っている男性を、左右に並べたイラスト 英語学習

自分の英語レベルがわからない|点数ではなく「できること」で測る方法

英語学び直したいユーイチ
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自分の英語レベルが分からなくて、次に何をやればいいか決まらないんです。

英語独学好きの助教S
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気持ちはわかります。実は研究では、現在地は自分でも測れると報告されていて、問題は測り方のほうなんですよ。

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

測り方、ですか? 何度も自己診断はやってきたんですけど…。

英語独学好きの助教S
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多くの人がそこで止まります。この分野は長く研究されていて、聞き方ひとつで結果が変わると分かっているんです。

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

でも研究の話でしょう? 僕みたいな普通の会社員にもできますか。

英語独学好きの助教S
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できますよ。研究の世界では、これは気合いの問題ではなく測り方の設計の問題として整理されているんですよ。

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

設計の問題、ですか。じゃあ何から始めればいいんでしょう。

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

この記事では研究を十三本ほど順番にたどりながら、今日から使える具体的な測り方までを一緒に見ていきます。

結論: 研究では、自分の英語力を自分で測ることは十分できると報告されている。ただし条件がある。「自分はどれくらいできるか」とばくぜんに聞くのをやめることだ。代わりに「電話で道順を説明できるか」のように、具体的な行動で一つずつ聞く。世界共通のものさしである CEFR も、この「できること」を書いた文を実測データで並べ直して作られた。一方でスコア換算表は等価な置き換えではなく、分布の重なりにすぎないと示されている。さらに英語力は一つの点数ではなく、技能ごとに分けたほうがデータに合うと報告されている。現在地は測れる。ただし点数ではなく「できること」で、しかも技能ごとに測る。

「TOEIC は受けた。でも、話せる気がしない」。「自分は初心者なのか中級者なのか、いまだにわからない」。

英語を学び直している大人から、こうした声は絶えない。レベルがわからないから、次に何をやればいいかも決まらない。

世の中の答えは、たいてい二つに分かれる。「スコアがすべてだ」という数値絶対派か、「点数など気にせず話せばいい」という感覚派か。

だが研究は、そのどちらとも違う答えを出している。問題は測れないことではなく、測り方を間違えていることだ。

この記事でわかること

  • ばくぜんと自問するのをやめると、自己診断の精度が上がる理由
  • よく目にする CEFR というものさしが、どうやって作られたのか
  • 「TOEIC◯点=CEFR◯」という換算表を、どこまで信じていいのか
  • 英語力を技能ごとに記録し、三か月ごとに測り直す具体的な手順

「自分はどれくらい?」と聞くから当たらない

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

自己診断って、そもそも当たるものなんですか?

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

聞き方次第です。Ross のメタ分析、つまり世界中の研究の総まとめでは、自己採点と実際の点はかなり近いと示されています。

自己評価とは、自分の力を自分で採点することだ。テストの代わりに自己申告で測る方法だと思えばいい。

Ross(=自己評価研究を最初に数字でまとめ直した研究者)は、1998 年にメタ分析を行った。メタ分析とは、世界中の研究をまとめて全体の傾向を出す方法のことだ。

対象は二十五年間に発表された十本の研究で、そこから六十個の相関係数を統合している。

相関とは、二つの数字がどれくらい連動して動くかを表す目安である。1 に近いほど、二つはぴったり一致する。

自己評価と実際の熟達度テストの相関は、平均で r=.65 に達した。熟達度とは、どれくらい上達しているかの度合いのことだ。

r=.65 は、自己採点と実際の点数がかなり近い、というイメージになる。ただし研究ごとのばらつきは大きかった。

ここに重要な内訳がある。聞く・読むという受け取る力のほうが、話す・書くという発する力より、自己評価と実測が一致しやすかった。前者を受容技能、後者を産出技能と呼ぶ。

では、ばらつきは何で決まるのか。

Blanche と Merino(=自己評価研究を最初に見取り図としてまとめた研究者たち)は、1989 年の総説論文でこう指摘した。自己評価研究の結論は研究どうしで一致せず、精度は聞き方や場面で大きく変動する。総説論文とは、たくさんの研究を読み集めて言葉で整理した論文のことだ。

つまり「自己診断は当たるのか」という問い自体が大雑把すぎる。「どう聞けば当たるのか」が本当の問いになる。

その答えが can-do 方式だ。can-do とは、「これができる」を一つずつチェックしていくやり方のことである。

「あなたの英語力はどれくらいですか」とは聞かない。「電話で道順を説明できますか」と聞く。

Butler と Lee(=自己評価を繰り返させて精度の変化を追った研究者たち)は、韓国の小学六年生二百五十四人を一学期間追った。

すると、自己採点の精度そのものが回を追うごとに上がっていった。成績や自信にもプラスの効果が出たが、その大きさはいずれも小さめだった。

体重計と同じだ。毎日量っている人は、乗る前から自分の体重をかなり当てられる。

ここまでのまとめ: 自己評価と実測の相関は平均で r=.65 と報告されている。ばくぜんとした自問をやめ、具体的な「できること」で繰り返し聞くほど精度が上がる。

できない人ほど、自分を高く見積もる

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

自分では中級のつもりなんですが、当てになりますか?

英語独学好きの助教S
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多くの人がそう感じます。Kruger と Dunning の実験では、成績が下の人ほど自分の順位をかなり高く見積もると示されました。

自己診断には、もう一つの落とし穴がある。

Kruger と Dunning(=自分の実力に気づけない現象を実験で確かめた研究者たち)は、1999 年の一連の実験でそれを示した。

論理、文法、ユーモアなど複数の課題を解かせ、自分の成績が何番目くらいかを予測させたのである。

ここで使われたのがパーセンタイルという言い方だ。百人並べたら上から何番目か、を表す数字だと思えばいい。

成績が下位二十五パーセントの人たちは、自分の順位を平均して約五十パーセンタイルも高く見積もった。実際は下のほうなのに、「自分は平均より上」と思い込んでいたのである。

原因は単なる能力不足ではない。自分の実力を正しく測るメタ認知自体が、同じ能力不足の影響を受けるからだと説明されている。メタ認知とは、自分の考えや出来ばえを一段上から眺める力のことである。

カラオケと同じである。音を外している人ほど、自分では上手に歌えているつもりになる。

この現象は英語でも起きる。Trofimovich たち(=第二言語の発話を本人と他人の両方に評価させた研究者たち)は、カナダの英語圏大学に通う第二言語話者百三十四人を調べた。

絵を見て話す課題で自分の話しぶりのわかりやすさを自己採点させ、評価者の判定と突き合わせた。ここでいうわかりやすさとは、聞き手がどれだけ楽に意味を取れるかの度合いである。

わかりやすさが低い話者ほど自分を高く評価し、逆に高い話者は自分を低く評価していた。

つまり伸びていない段階ほど自己診断は甘くなり、伸びた段階ほど辛くなる。だからこそ、具体的にできることを一つずつ数える方式が要る。

ここまでのまとめ: 実力が低い段階ほど自分を高く見積もる傾向は心理学でも第二言語の発話でも確認されており、自己診断は具体的な項目に落とし込む工夫が要る。

CEFR は感覚ではなく、実測データから組み立てられた

では、具体的な「できること」はどこから持ってくればいいのか。ここで CEFR が出てくる。CEFR(セファール)とは、「何点取れたか」ではなく「何ができるか」で語学力を表す、世界共通のものさしだ。

A1 から C2 までの六段階で熟達度を示す。必要に応じて A2+ や B1+ のような中間段階も置ける。公開したのは欧州評議会、つまりヨーロッパの国々が教育などの基準づくりのために作った国際機関である。

多くの記事は「六段階です」で終わる。だが面白いのは、この六段階がどう作られたかのほうだ。

North と Schneider(=ものさしの目盛りを実測データから作った研究者たち)は、1998 年にその手法を発表した。

まず「〜ができる」と書いた短い文を、大量に集めて銀行のように蓄えた。この短い文を descriptor(記述文)と呼ぶ。「知っている店で飲み物を注文できる」のような一行だと思えばいい。

集めた記述文はアンケートにまとめられ、スイスの教師たちが自分のクラスの学習者一人ひとりを判定した。

その膨大な判定データを Rasch モデルにかけ、記述文の難しさの順番を推定した。Rasch モデルとは、採点の甘い先生と辛い先生の差を補正して、全員を一本の目盛りに並べ直す統計手法のことだ。

重要なのは再現性だ。1994 年の英語データで得た並びは、翌年のフランス語・ドイツ語・英語のデータでも再現された。

North は 2000 年に、この尺度づくりの全過程を一冊の著書にまとめている。約百人の教師の判定データから目盛りを組み立てた経緯が詳しい。

この成果が、そのまま CEFR の例示用の記述文の土台になった。2020 年の追補版では、オンラインでのやり取りや仲介の役割を扱う記述文も加わった。

つまり CEFR は、誰かの思いつきで作られた段階表ではない。実際の学習者を判定したデータから組み上げられた物差しである。

ここまでのまとめ: CEFR の六段階は、大量の記述文を教師が学習者に当てはめた判定を統計で一本の尺度に並べ直して作られた、実測に基づく物差しである。

日本人は下のほうに密集する。だから目盛りを刻み直した版がある

ただし、この世界共通のものさしをそのまま日本人に当てると問題が起きる。多くの学習者が、A1 から B1 という下のほうの帯に集まってしまうのだ。

体重計の目盛りが十キロ刻みしかないようなものだ。全員が同じ目盛りに乗り、違いが見えない。

この課題に応えたのが CEFR-J である。CEFR-J とは、日本人の英語学習者に合わせて、下のほうの目盛りを細かく刻み直した版のことだ。

投野由紀夫(=日本人学習者向けの細分化版を開発した研究者)らが編み、2013 年にガイドブックとして刊行された。

どう細かくしたのか。A1 から B1 を、さらに下位のレベルへ分割している。Pre-A1、A1.1、A1.2、A2.1、A2.2、B1.1、B1.2 といった刻みだ。

「あなたは A1 です」だけでは、その中の前半なのか後半なのかがわからない。CEFR-J なら、その解像度が出せる。

各レベルには CAN-DO リストが対応している。CAN-DO リストとは、「〜ができる」を並べたチェックリストのことだ。ばくぜんと悩む代わりに、これを上から順に確認すればいい。

ここまでのまとめ: CEFR をそのまま使うと、日本人学習者は下位帯に密集する。細分化した CEFR-J とその CAN-DO リストが、自己診断の出発点になる。

「TOEIC◯点=CEFR◯」は等価ではなく、重なりにすぎない

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

ネットの換算表、あれは信じていいんですか?

英語独学好きの助教S
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目安としてなら使えます。ETS の報告書では、あれは専門家が線を引いて推定した分布、つまり矢の集まりやすい範囲の話なんです。

ネットでよく見かける、スコアと CEFR レベルを並べた換算表。あれはどこから来たのか。

多くがたどり着く原典が、Tannenbaum と Wylie(=スコアと CEFR を対応づけた研究者たち)の 2008 年の報告書だ。出したのはテスト団体 ETS、つまり TOEFL や TOEIC を作っているアメリカの機関である。

使われた手法は standard setting と呼ばれる。standard setting とは、専門家が集まって「ここから上はこのレベル」と線を引く手続きのことだ。

具体的には修正 Angoff 法などが用いられた。問題ごとに「このレベルの人なら解けるか」を専門家が見積もる方法である。

ここが肝心だ。この手続きが推定しているのは、「あるスコアの受験者集団に、どのレベルの人が最も多く含まれるか」にすぎない。

的当てで言えば、「この得点の人は、だいたいこの的の周りに矢が集まりやすい」という分布の話である。「必ずこの的に当たる」という保証ではない。

対応づけが確立された範囲にも限りがある。TOEFL iBT は B1・B2・C1 で、TOEIC はリーディングの C1 を除く A1 から C1 の範囲だった。

換算表は捨てなくていい。ただし「目安の分布」として使う。

ここまでのまとめ: スコアと CEFR の対応表は専門家が線を引く手続きで推定された分布の重なりであり、等価な置き換えではなく目安として扱うのが正確だ。

英語力は一つの点数ではなく、技能ごとのプロファイル

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

点数は上がったのに話せないのは、僕の努力不足ですか?

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

そうとは限りません。In’nami と Koizumi の分析では、TOEIC が測っているのは聞く力と読む力で、話す力の点数はそもそも無いんです。

「英語レベルは中級です」。この一言で表す発想そのものにも、限界がある。

In’nami と Koizumi は、TOEIC の中身が何本の力でできているかを統計で調べた研究者たちだ。改訂版 TOEIC の受験者五百六十九人を、二つのグループに無作為に分けて分析した。

比べたのは四種類のモデルである。「技能をひとつの総合力とみなすモデル」や「リスニングとリーディングを別々だが関連する能力とみなすモデル」などだ。

使われたのは確証的因子分析(CFA)である。確証的因子分析とは、「この分け方でデータにうまく合うか」を答え合わせする統計手法のことだ。

結果は、どちらのグループでも同じだった。「リスニングとリーディングを別々だが相関する能力として扱うモデル」が、最も当てはまりが良かった。

つまり英語力は、一つの総合点にまとめるより、技能ごとに分けて捉えるほうがデータに合う。

同じ二人は 2011 年に、言語テスト研究の統計手法をまとめたレビューも書いている。1981 年から 2008 年までの五十本を対象にした総まとめだ。

扱われたのは SEM という手法群だ。SEM とは、テストの点数から、その裏にある見えない力の組み立て方を推定する統計の道具である。

そこでは、言語能力を単一の値ではなく複数の下位技能に分けてモデル化する手法が多く採られていたと報告されている。

ここで、あの悩みに答えが出る。「TOEIC のスコアは高いのに話せない」というものだ。

TOEIC のリスニングとリーディングが測っているのは、聞く力と読む力である。話す力と書く力の点数は、そもそも存在しない。

能力の矛盾ではなく、測定の範囲の問題だ。しかも話す・書くは自己評価と実測がずれやすい。だから体感とスコアの食い違いは、いっそう起きやすくなる。

英語力は一本の棒グラフではない。四つの軸を持つレーダーチャートとして記録するほうが、実態に近い。

ここまでのまとめ: リスニングとリーディングは、別々だが相関する能力として扱うモデルが最もデータに合った。英語力は技能ごとのプロファイルとして記録するのが妥当だ。

レベルとレベルの間の距離は、均等ではない

もう一つ見落とされがちな点がある。段階が等間隔だという思い込みだ。

ケンブリッジ英語検定機構は、guided learning hours という目安を公開している。ケンブリッジ英語検定機構とは、ケンブリッジ大学系の英語試験団体のことだ。

guided learning hours(GLH)とは、先生の指導や宿題など「指導つきの学習」に使う時間の見積もりで、独学の時間は含まない。

公開資料では、累積の目安として次のような数値が示されている。

  • A2 に届くまで、およそ 180 から 200 時間
  • B1 に届くまで、およそ 350 から 400 時間
  • B2 に届くまで、およそ 500 から 600 時間
  • C1 に届くまで、およそ 700 から 800 時間
  • C2 に届くまで、およそ 1000 から 1200 時間

一段上がるのに、おおよそ 200 時間前後が目安とされているが、レベルによって幅がある。上の段ほど時間は延び、B2 から C1 で約 200 時間、C1 から C2 では約 300 時間以上かかる計算になる。

階段と同じだ。一段一段の高さが同じではなく、上に行くほど段差が高くなっていく。

この数値はあくまで目安で、学習の条件によって変わる。それでも実感の説明には役に立つ。

「最近まったく伸びた気がしない」という時期は、努力が足りないサインとは限らない。単に段差の高い区間に入っただけかもしれない。

CEFR 側にも手当てはある。A2+ や B1+ のような中間段階を置けることだ。CEFR-J のように下位レベルへ刻み直す発想も、同じ動機から来ている。

段差が高いなら、途中に踊り場を作ればいい。

ここまでのまとめ: 指導つきの学習時間の目安では上のレベルほど一段に必要な時間が長くなり、停滞感は段差の高い区間に入った合図かもしれない。

実際の手順: できること診断から三か月後の再測まで

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

結局、明日から何をすればいいんでしょうか。

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

できることの一覧を作り、技能ごとに記録するだけです。Butler と Lee の研究では、繰り返すほど自己採点の精度が上がっていました。

ここまでの研究を、一つの手順にまとめる。

1. ばくぜんと自問するのをやめる

「自分はどのレベルだろう」と考えるのをやめ、CEFR-J の CAN-DO リストのような具体的な一覧を用意する。上から順に「できる/できない」を付けていく。

2. 四技能をまとめない

聞く・読む・話す・書くを、一つの点数に合算しない。技能ごとに別々に記録する。言語能力を複数の下位技能に分けて捉えるのは、研究でも広く採られてきた扱いだと報告されている。

3. 甘さを前提に補正する

伸びていない段階ほど、自己採点は甘くなる。話す・書くは自己申告で済ませず、録音して聞き直すか、誰かに聞いてもらう。この一手間で、ずれの方向が見えてくる。

4. 目的に効く技能へ時間を割く

一番低い技能を、無理に底上げしなくていい。仕事で使うのか、旅行で使うのか。目的に一番効く技能へ投資する。段差の高い区間では時間がかかるのが普通だ。

5. 三か月後に、同じ一覧で測り直す

点数が上がったかではなく、「できることが増えたか」で見る。自己評価は繰り返すほど精度が上がると報告されている。測り直しそのものが、診断の腕を上げてくれる。

ここまでのまとめ: 具体的な一覧で測り、技能ごとに記録し、甘さを補正し、目的に効く技能へ投資して三か月後に測り直す。この循環で次の一手も決まる。

よくある質問

Q. 自己診断なんて、結局あてにならないのでは

A. 聞き方によります。メタ分析では、自己評価と実測テストの相関は平均で r=.65 と報告されています。ただしばらつきは大きく、聞き方や場面によって精度が大きく変わると指摘されています。具体的な項目で繰り返し確認するほど精度は上がります。

Q. TOEIC のスコアがあれば、自分のレベルはわかりますか

A. 目安にはなりますが、置き換えではありません。スコアと CEFR の対応づけは、専門家が線を引く手続きで推定されたものです。示しているのは「そのスコア帯に多いレベル」にすぎません。

Q. TOEIC は高いのに話せません。レベルを名乗る資格がないのでしょうか

A. TOEIC のリスニングとリーディングが測っているのは、聞く力と読む力だけです。話す力と書く力は、そもそも測定されていません。しかも話す・書くは自己評価と実測がずれやすいと報告されています。

Q. 初心者と中級者の境目は、どこにあるのですか

A. 一本の線を引く発想そのものが、ものさしの作りと合いません。CEFR は各段階を「〜ができる」という記述文の集合として定義しています。日本人向けにはさらに細かい刻みもあります。境目を探すより、一覧で位置を見るほうが実用的です。

Q. 半年やっても伸びた気がしません。やり方が悪いのでしょうか

A. 段差の高い区間に入っただけかもしれません。指導つきの学習時間の目安では、上のレベルほど一段に必要な時間が長くなるとされています。点数ではなく「できることが増えたか」で見ると、変化に気づきやすくなります。

まとめ

「自分の英語レベルがわからない」。この足踏みは、能力ではなく測り方の問題であることが多い。

研究が示しているのは、次の五つだ。

第一に、自己診断は具体的な行動で聞くほど当たる。ばくぜんとした自問では、精度が安定しない。

第二に、伸びていない段階ほど自己採点は甘くなる。だから録音や他人の耳で補正する。

第三に、CEFR は感覚ではなく実測データから組み立てられたものさしで、日本人向けに刻み直した版もある。

第四に、スコア換算表は等価ではなく、分布の重なりにすぎない。

第五に、英語力は技能ごとのプロファイルとして見るほうがデータに合い、レベル間の距離も均等ではない。

現在地は測れる。ただし点数ではなく、「できること」で、しかも技能ごとに測る。

測り方が決まれば、次の一手も決まる。

参考文献

  1. Ross, S. (1998). Self-assessment in second language testing: A meta-analysis and analysis of experiential factors. Language Testing, 15(1), 1–20. https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/026553229801500101
  2. Blanche, P., & Merino, B. J. (1989). Self-assessment of foreign-language skills: Implications for teachers and researchers. Language Learning, 39(3), 313–338. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1467-1770.1989.tb00595.x
  3. Butler, Y. G., & Lee, J. (2010). The effects of self-assessment among young learners of English. Language Testing, 27(1), 5–31. https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0265532209346370
  4. Kruger, J., & Dunning, D. (1999). Unskilled and unaware of it: How difficulties in recognizing one’s own incompetence lead to inflated self-assessments. Journal of Personality and Social Psychology, 77(6), 1121–1134. https://sites.lsa.umich.edu/sasi/wp-content/uploads/sites/275/2015/11/krugerdunning99.pdf
  5. Trofimovich, P., Isaacs, T., Kennedy, S., Saito, K., & Crowther, D. (2016). Flawed self-assessment: Investigating self- and other-perception of second language speech. Bilingualism: Language and Cognition, 19(1), 122–140. https://www.cambridge.org/core/journals/bilingualism-language-and-cognition/article/abs/flawed-selfassessment-investigating-self-and-otherperception-of-second-language-speech/05B422E9B1F104B182710E7E74A0DC8E
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    • Council of Europe. (2001). Common European Framework of Reference for Languages: Learning, Teaching, Assessment. Cambridge University Press. https://rm.coe.int/1680459f97
  9. 投野由紀夫(編)(2013). 『英語到達度指標 CEFR-J ガイドブック: CAN-DO リスト作成・活用』大修館書店. https://www.taishukan.co.jp/book/b197158.html
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  13. Cambridge English. (2026年8月22日更新). Guided Learning Hours: How Long Does It Take to Learn English? [オンラインサポート資料]. Cambridge University Press & Assessment. https://support.cambridgeenglish.org/hc/en-gb/articles/202838506-Guided-learning-hours (2026年8月23日参照)

最終更新日: 2026-08-23

著者: 中村 拓(Taku Nakamura)(greencafe 編集部 編集責任者・非ネイティブ話者)。公開された 13 件の研究エビデンス(tier 1=10 件 / tier 2=3 件)を横断分析・再構成した。

画像: いらすとや (https://www.irasutoya.com/) より

この記事を編集した人

中村 拓(Taku Nakamura)のポートレート

(編集責任者 / 応用言語学・第二言語習得 エディター(非ネイティブ話者))

応用言語学のバックグラウンドを持つ英語学習分野のエディターで、査読済み SLA 論文・応用言語学ジャーナル・公的機関資料の横断要約と再構成を担当する編集責任者です。非ネイティブ英語話者で、大人の英語学び直しを研究の視点で編集しています。

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