AI英会話が3日で飽きるのはなぜ?|研究でわかった新しさの切れ方と続け方

左に AI と話している男性のイラスト、右に横になってスマホを使う人のイラストが並ぶ。機械を相手に話し始めたころと、寝ながら画面を見るだけになったころを対比している。 AI英会話・CALL

AI英会話が3日で飽きるのはなぜ?|研究でわかった新しさの切れ方と続け方

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

AI英会話、3日は毎日開いたのに今は通知を消すだけなんです。

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

気持ちはわかります。実はその落ち方は、話し相手が機械のときの興味の動きとして研究でも測られているんですよ。

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

僕の根性が足りないだけじゃないんですか?

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

そう決めつけなくて大丈夫です。語学学習で機械を相手にしたときの興味の続き方は、研究者の側でもずっと課題として扱われてきた領域なんです。

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

研究でわかると言われても、僕にできるんでしょうか。

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

多くの人が同じ不安を持ちます。研究はそれを意志の強さではなく、練習の作り方の問題として整理しているので、手の入れどころが見えてきますよ。

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

具体的には、どこから直せばいいんですか?

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

この記事では研究を順番に見ていきます。興味を測った実験から効果をまとめた分析まで、確かめられた範囲だけを並べていきますね。

結論: AI 英会話が数日で飽きるのは、根性の問題とは言い切れない。
外国語クラスで機械の話し相手と人の話し相手を比べた実験では、機械の側でだけ課題への興味が有意に下がった。
有意とは、偶然のばらつきでは説明しにくい差だという統計の言い方である。
著者はこの落ち方を novelty effect (= 新しさによる効果。新しいゲームが 1 回目だけおもしろい、あの現象) と呼んでいる。
興味の研究では、その場で生まれる興味と、自分の中に根づいた興味が別の段階として整理されている。
つまり新しさが点けられるのは前の段階までで、その先の興味は別の段階のものとして区別されている。
一方で、機械と対話して練習する形式そのものには中程度の効果も報告されている。
だから変えるべきは気合いではなく、練習の設計の側である。

この記事でわかること

  • 機械相手と人相手で興味の動きがどう違ったのか、実験で確かめられた範囲
  • 「新しさで出る興味」と「根づいて続く興味」の違い、そしてその間にあるもの
  • 2 週間でやめた場合、効果があったかどうかを試したことになるのか
  • 研究から言える練習の組み直し方と、まだ分かっていないこと

3 日は毎日開いたのに、2 週間後には通知を消すだけになった

最初の数日は、話しかけたら即座に返ってくるのが単純におもしろい。ところが 2 週間ほど経つと、通知を消す手つきだけが残る。やめたつもりはないのに、アプリは開かれなくなる。

ここで多くの人が「自分の根性が足りない」という結論に飛ぶ。次に何かを始めるのが怖くなるのは、その自己評価のせいである。英語のやる気が続かないのは意志が弱いからなのかでも整理したとおり、続かなさを人格の問題として片づけると打つ手がなくなる。

立てるべき問いは別の形をしている。「相手が機械であることは、興味の続き方に影響するのか」である。この問いには答えの材料がある。同じ課題を機械相手と人相手でやらせ、興味の推移を比べた実験が実際にあるからだ。

先に結論を置く。同じ学生・同じ 12 週間でも、相手が機械の課題では興味が下がったと報告されている。そして興味の研究では、新しさの興味と根づいた興味が別の段階として整理されている。ここから記事側が引けるのは、手を入れる先は気合いよりも練習の形のほうだ、という線までである。

ここまでのまとめ: 数日で開かなくなったことを人格の話にすると、次の一手が出ない。相手が機械であることが興味に関わるかどうかは、実験で調べられている。

機械相手と人相手で、興味の動きはどう違ったのか

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

カウンターバランス設計って何ですか?

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

順番の影響を消す工夫です。3 週間おきに相手を入れ替え、122 名を 12 週間追ったところ、機械の課題だけ興味が下がっていました。

Fryer たちの実験 (2017) は、話し相手の種類を入れ替えながら興味を測り続けた調べ方である。参加者は外国語クラスの学生 122 名、期間は 12 週間。事前と事後にコース全体への興味を測り、その間に課題ごとの興味を繰り返し測っている。

やり方はカウンターバランス設計 (= 順番の影響が出ないよう、条件の並び順を入れ替えてそろえるやり方) だった。3 週間おきに、人のパートナーと chatbot (= 自動の会話プログラム) のパートナーを、順番を入れ替えながら割り当てている。相手ごとに別々のスピーキング課題をやらせた。

結果は片側にはっきり出た。課題への興味は chatbot のパートナーでは有意に下がり、人のパートナーでは下がらなかった。

さらに構造方程式モデリング (= 複数の要素の結びつきをまとめて解く分析) を使った検討もある。コース全体への興味の育ちに寄与したのは、人のパートナーとの課題への興味だけだった。chatbot 条件での興味は、将来のコースへの興味を予測しなかった。著者は、最初の課題のあとに興味が落ちた点を novelty effect と呼んでいる。

なお下落幅を示す数値は報告されていない。しかもこれは学習効果ではなく、興味の推移を測った実験である。

ここまでのまとめ: 同じ学生・同じ課題でも、相手が機械のときだけ興味が下がった。飽きは性格だけの問題ではなく、相手が機械であることに由来する側面がある。

興味には「花火の興味」と「電球の興味」がある

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

花火と電球って、どう違うんですか?

英語独学好きの助教S
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花火は外から点けてもらう興味、電球は自分でスイッチを入れ直せる興味です。興味の研究では、この 2 つが別の段階として整理されています。

なぜ新しさだけでは続かないのか。Hidi と Renninger のモデル (2006) は、興味の育ち方を 4 つの段階に分けて整理した理論の論文である。

4 段階は順にこうなっている。まず triggered situational interest (= きっかけで生じた、その場の興味)。次に maintained situational interest (= その場の興味がしばらく保たれている段階)。続いて emerging individual interest (= まだ育ちきっていない、自分のものになりかけの興味)。最後に well-developed individual interest (= 十分に育った、自分のものとしての興味) である。

言い換えるとこうなる。situational interest は花火に近い。パッと明るいが、すぐ消える。individual interest は部屋の電球に近い。外から火を点けてもらわなくても、自分でスイッチを入れ直せる。このモデルは、感情の面と認知の面の両方を考えに入れている。

ここからは記事側の読み方である。通勤や寝る前にスマホで開く使い方で点けられるのは、前半の段階までだろう。ただし後半へ自動で進むとまで、このモデル自身が述べているわけではない。確かなのは、新しさの興味と根づいた興味が別の段階として区別されている点である。

ここまでのまとめ: 興味は「その場の興味」と「自分のものになった興味」に分けて整理されている。新しさが点けられるのは前者であり、後者は別の段階として扱われている。

新しさが切れたあとに残るのは「前より言えた」の側

では、先の段階へ進む足場はどこにあるのか。Fryer たちの続報 (2019) が、その手前まで調べている。先行する実験で見えた novelty effect を踏まえ、なぜ chatbot が語学の練習相手として定着しないのかを検証した研究である。

学生には 2 種類の会話活動をさせた。ひとつは人と人の会話。もうひとつは音声認識 (= 話した声を文字に変える技術) を経由した、人と chatbot の会話である。直後に相手ごとの興味を測り、自由記述とテストの結果も合わせて分析した。

結果は 3 つある。将来 chatbot との会話に興味を持つかを最もよく予測したのは、もともと人の会話相手に対して持っていた興味だった。もともとの言語能力は、人との会話への興味よりも chatbot との会話への興味と強く結びついていた。そして chatbot のほうで「より多く学べた」という実感は、会話がうまく通じなかったと報告している場合でも課題への興味と強く結びついていた。

3 つ目が本題に近い。うまく話せなかった回でも「前より言えた」と感じた回はおもしろかった、という結びつきである。competence (= 自分はこれができるようになってきた、という手ごたえ) が、興味の側と一緒に動いていた。

ただしこれは相関 (= 2 つが一緒に動いていた関係で、どちらが原因かは示していない) の知見である。「手ごたえを作れば興味が続く」と因果で読むことはできない。

ここまでのまとめ: 目新しさが切れたあとに残るのは、上手さではなく「前より言えた」という実感の側だった。ただしこれは相関であり、原因と結果の証明ではない。

2 週間でやめた人は、効果をまだ試したことになっていない

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

2 週間でやめた僕は、効果がなかったんですね…

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

いえ、試す手前で終わっています。研究をまとめた分析で効果が確認されたのは最後までやり切った人のデータで、途中でやめた人の分は入っていません。

ここで話を効果の側に移す。興味の続き方と学習効果は別の話である。

Bibauw たちのメタ分析 (2022) を見る。メタ分析は、同じテーマの研究をたくさん集めて平均を取る調べ方である。集めたのは、会話プログラムと外国語でやり取りして練習する形式 (= dialogue-based CALL。「対話しながら学ぶコンピュータ学習」の意) の効果検証 17 件である。

全体として、この形式の練習は第二言語の習熟度の伸びに中程度の有意な効果を示した (d = 0.58)。d は効果の大きさを表す目盛りで、0.58 はクラスの平均点が少し上がるくらいの中くらいの強さを指す。

ただし著者自身が強い限界を書いている。効果を検証した研究者のほぼ全員が、評価対象のシステムの設計者本人か同じチームだった。だから出版バイアス (= 良い結果ばかりが世に出て、悪い結果が埋もれる偏り) が非常に強い可能性がある。

2025 年には別のチームが同じ領域を集計し直している。Hou と Min のメタ分析 (2025) は 16 件の研究を分析した。スピーキングの発達への全体効果量は中程度 (g = .61) だった。g も効果の大きさの目盛りで、.61 は「まあまあ効く」くらいの強さである。効果の中身はAI 英会話は本当に効果があるのかで別に整理している。

さて、読者の問いはここだ。「2 週間でやめた自分には効果がなかったのか」。答えは「まだ試したことになっていない」である。ただしこれは論文に書かれた結果ではなく、記事側が引いた論理的な線である。これらのメタ分析で効果が確認されたのは、最後まで練習をやり切った参加者のデータだからだ。途中で開かなくなった人のデータは入っていない。

一方で「長く続けたほうが効果が大きい」とも書けない。Bibauw たちの分析では、練習期間の長さに関わる変数はいずれも単独では有意にならなかった。Hou と Min の分析でも、練習をやらせた期間の長さに有意な調整効果 (= 効果の出方を左右する条件) は確認されなかった。

しかも Bibauw たちは、1 週間以内に詰めて練習した研究のほうが効果が高かったと報告し、これを直観と逆かもしれないと書いている。つまり期間の長短が効果を左右するかは、2 本のメタ分析とも結論が出ていない。

ここまでのまとめ: 効果が確認されたのは、やり切った人のデータである。2 週間でやめた場合は試す手前で終わっている。ただし「長いほど効く」も 2 本のメタ分析とも示していない。

「新しさで飽きる」は研究者の側でも課題になっている

続かないのは自分だけに起きていることなのか。Fryer たちのレビュー (2020) は、語学学習に機械の話し相手を使う研究の到達点と課題を整理した論文である。レビューとは、個別の実験ではなく既存の研究をまとめて見渡す形の論文を指す。

出発点にあるのは、会話のために作られた道具が語学練習ではまだ十分に貢献できていない、という問題意識である。本文には、学習者の興味を引きつけて保つことが大きな課題だと明記されている。novelty effect と学習者が急速に興味を失う危険も、深刻な問題として挙げられている。chatbot が数回のやり取りを超えた一貫した会話に到達していないという見方も、研究者間でおおむね一致している。つまり「新しさで飽きる」は、利用者の弱さではなく研究者が名前を付けて課題にしている現象である。AI 英会話が何を苦手にしているかはAI 英会話の弱点はどこにあるのかでも扱っている。

アプリの実利用の側でも似た記述がある。Loewen たちの事例研究 (2019) は、独立した研究では学習者の継続や動機づけの問題が報告されてきたと整理している。研究自体は、語学アプリでトルコ語を学ぶ 9 名を 1 学期追った調査である。9 名なので、多くの人が離脱するという一般化には使えない。

古い報告も置いておく。Fryer と Carpenter の報告 (2006) では、学生 211 名が授業内で当時の bot を使った。多くが使うことを楽しみ、教師や学生同士と話すよりも気楽だと感じた。それでも結論は、当時の bot は上級者か非常に意欲の高い学習者にしか概して有用ではない、だった。

ここまでのまとめ: 新しさが切れて興味が落ちることは、研究者側が深刻な課題として名前を付けている現象である。気楽さという長所は 20 年前から確認されており、それだけでは続く理由にならない。

変えるのは気合いではなく、練習の設計

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

毎回同じ会話練習じゃダメなんですか?

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

落ちる前提で組むのがコツです。実験では新しさの興味が最初の課題のあとに下がったので、話題や課題の形を少しずつ変えていきましょう。

ここまでを踏まえると、手の入れどころは 3 つに絞れる。いずれも研究から論理的に導ける範囲に留めておく。

1 つ目は、毎回同じ形の会話練習を繰り返さないことである。新しさで出た興味は最初の課題のあとに落ちていた。だから落ちることを前提に置き、話す話題や課題の形を少しずつ変えていく。関心のある話題について話しているときには機械の弱点を許容しやすいという趣旨の記述もある。

2 つ目は、できた量を自分で見える形にすることである。話した分数、言えるようになった言い方の数、詰まらずに言い切れた回数。数えられる形にすると手ごたえが目に見える。「より多く学べた」という実感が興味と一緒に動いていたという知見が、この向きを支える。

3 つ目は、人と話す場を月に一度でも混ぜることである。コース全体への興味の育ちに寄与したのは、人のパートナーとの課題への興味だけだった。将来 chatbot と話すことへの興味を予測したのも、人の相手への興味だった。

この方向には別の領域からの支えもある。Clark たちのレビュー (2016) は、デジタルゲームと学習の研究を体系的にまとめた論文である。ゲームを使わない条件との比較で効果量 0.33 を報告している。0.33 は「同じ道具でも作り方次第で結果が変わる」くらいの差である。結論は、媒体そのものを超えた設計の役割が重要だというものだ。ただし対象はゲームであり AI 英会話ではないので、一般的な方向の支持と見る範囲に留める。

ここまでのまとめ: 打ち手は課題を変える・できた量を数える・人の場を混ぜるの 3 つに絞れる。どれも研究の向きとは整合するが、続くことを保証した研究があるわけではない。

どこまで言えて、どこから先は分からないのか

限界を並べておく。まず対象である。中心に置いた実験は大学の外国語クラスの学生を対象にした 12 週間のものだった。社会人が通勤や就寝前に一人で練習する場面を、そのまま調べたわけではない。

次に技術の世代である。中心の実験は 2017 年、続報は 2019 年、気楽さの報告は 2006 年である。当時の機械の話し相手は、今の生成 AI とは性能が違う。だから「昔の bot で落ちたから今も落ちる」とそのまま言うことはできない。落ち方の仕組みに名前が付いている、というところまでが確かな部分である。

3 つ目に、分かっていないことがある。続く興味が育つまでにどれくらいの期間が必要かを示した研究は、今回の範囲では見つかっていない。期間の長短が効果を左右するかも、2 本のメタ分析とも結論を出せていない。補助に使った文献にも、参加者 9 名の事例研究、対象がゲームであるレビューという限界がある。

そのうえで着地はこの範囲に留める。AI 英会話は結局続かないから無駄、でもない。工夫すれば無限に続く、でもない。研究が言えているのは「新しさは切れる」「続く興味は別の段階のものとして整理されている」までである。

ここまでのまとめ: 対象・技術の世代・未解明の部分という 3 つの限界がある。否定にも礼賛にも振らず、研究の射程内で考えるのが妥当である。

新しさが切れたあとの AI 練習を、どう組み直すか

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

じゃあ、どんな AI 練習なら続くんですか?

英語独学好きの助教S
英語独学好きの助教S

そこは正直に言うと、まだ研究が足りません。生成 AI での継続を直接測った研究は少ないので、条件と自分の使い方を見比べる段階です。

では、手元の AI 英会話の使い方に何を当てはめられるか。これは「AI を使えば続く」という話ではなく、「研究が示した条件を、いま使っている練習で満たせているか」という問いになる。Bibauw たちのメタ分析では、5 つの条件で効果が確認された。形に焦点を当てた設計、目標のある設計、システム側が会話を導く形式、誤りの訂正、ゲーム的な要素である。ただし誤りの訂正は、Hou と Min の分析では有意にならなかった。2 本のメタ分析で結論が一致していない条件である。Hou と Min の分析で有意だった条件は、システムの種類・意味の制約・モダリティの 3 つだった。意味の制約とは、話す内容がどこまで決められているかの差を指す。自由な雑談か、お題が決まっているかの違いである。モダリティとは、文字でやり取りするか音声でやり取りするかの違いである。自由に雑談するだけの使い方は、この条件表とあまり重なっていない。

興味の側にも同じ当てはめができる。新しさで出た興味は最初の課題のあとに落ちていた。毎回同じ形の会話を繰り返す設計は、落ちることを前提にしていない。題材を変える、目標を一つ決めて話す、言えた量を数える。関心のある話題なら機械の弱点を許容しやすいという指摘も、題材選びの側から効いてくる。

ただし、はっきり書いておくべきこともある。新しさが切れたあとに生成 AI の練習をどう設計すれば続くのかを直接検証した研究は、まだ数が少ない。Hou と Min も、生成 AI の可能性を今後の方向として挙げている段階である。だから「この設計にすれば必ず続く」とも「AI では絶対に続かない」とも書けない。アプリを選び直す話でもない。

ここまでのまとめ: AI 練習の組み直しは、研究が示した条件と自分の使い方を突き合わせる作業である。生成 AI での継続を直接検証した研究はまだ少なく、保証を語れる段階ではない。

よくある質問

Q. AI 英会話が続かないのは、やはり意志の弱さなのでしょうか。

A. 意志だけの話とは言えない。機械相手と人相手で同じ課題をやらせた実験では、機械の側でだけ課題への興味が有意に下がった。同じ学生が同じ期間にやっているので、性格の差では説明しにくい。

Q. 2 週間でやめました。効果はなかったということですか。

A. 効果がなかったのではなく、試す手前で終わっている。メタ分析で効果が確認されたのは、最後までやり切った参加者のデータである。ただし「長く続けるほど効く」も示されていない。

Q. どれくらい続ければいいのですか。

A. 研究からは日数を示せない。練習期間の長さは 2 本のメタ分析とも有意な条件にならなかった。むしろ 1 週間以内に詰めて練習した研究のほうが効果の大きさが高かった、という報告もある。

Q. 人と話す場は必要ですか。

A. 必要かどうかまでは示されていない。ただしコース全体への興味の育ちに寄与したのは、人のパートナーとの課題への興味だけだった。将来 chatbot と話すことへの興味を最もよく予測したのも、人の相手に対する興味だった。

Q. 機械相手だと気楽なのは長所ではないのですか。

A. 長所ではあるが、それ単体では続く理由にならない。2006 年の報告でも、学生は教師と話すより bot と話すほうが気楽だと感じていた。それでも当時の結論は、上級者か非常に意欲の高い学習者にしか概して有用ではない、だった。

まとめ

数日で開かなくなったことを、人格の問題として扱わなくてよい。外国語クラスの学生を 12 週間追った実験では、同じ課題でも相手が chatbot のときだけ課題への興味が有意に下がった。著者はこれを novelty effect と呼び、レビューでも研究者側の深刻な課題として扱われている。

興味の研究では、その場で生まれる興味と根づいた興味が別の段階として整理されている。後者に近いのは、うまく通じなかった回でも「前より言えた」と感じられたかどうかである。その実感は課題への興味と一緒に動いていた。ただし相関であって、因果の証明ではない。

効果の話は別に置く。機械と対話して練習する形式には中程度の効果が報告されている。だが効果が確認されたのはやり切った人のデータであり、2 週間でやめた場合は試す手前で終わっている。期間の長短が効果を左右するかは、2 本のメタ分析とも結論を出せていない。

だから打ち手は設計の側になる。同じ形の会話を繰り返さない。できた量を数えられる形にする。人と話す場を月に一度でも混ぜる。どれも保証ではなく、研究が示した条件に自分の練習を寄せる試みである。新しさは切れる。その先の興味は、別の段階のものとして整理されている。分かっているのはそこまでだが、打つ手はある。

参考文献

  1. Fryer, L. K., Ainley, M., Thompson, A., Gibson, A., & Sherlock, Z. (2017). Stimulating and sustaining interest in a language course: An experimental comparison of Chatbot and Human task partners. Computers in Human Behavior, 75, 461-468. https://doi.org/10.1016/j.chb.2017.05.045
  2. Fryer, L. K., Nakao, K., & Thompson, A. (2019). Chatbot learning partners: Connecting learning experiences, interest and competence. Computers in Human Behavior, 93, 279-289. https://doi.org/10.1016/j.chb.2018.12.023
  3. Hidi, S., & Renninger, K. A. (2006). The four-phase model of interest development. Educational Psychologist, 41(2), 111-127. https://doi.org/10.1207/s15326985ep4102_4
  4. Bibauw, S., Van den Noortgate, W., François, T., & Desmet, P. (2022). Dialogue systems for language learning: A meta-analysis. Language Learning & Technology, 26(1), 1-24. https://doi.org/10.64152/10125/73488
  5. Hou, J., & Min, H. (2025). Dialogue-based computer-assisted language learning systems for second language speaking development: A three-level meta-analysis. ReCALL, 38(1), 40-56. https://doi.org/10.1017/S0958344025100268
  6. Fryer, L. K., Coniam, D., Carpenter, R., & Lăpușneanu, D. (2020). Bots for language learning now: Current and future directions. Language Learning & Technology, 24(2), 8-22. https://doi.org/10.64152/10125/44719
  7. Loewen, S., Crowther, D., Isbell, D. R., Kim, K. M., Maloney, J., Miller, Z. F., & Rawal, H. (2019). Mobile-assisted language learning: A Duolingo case study. ReCALL, 31(3), 293-311. https://doi.org/10.1017/S0958344019000065
  8. Clark, D. B., Tanner-Smith, E. E., & Killingsworth, S. S. (2016). Digital games, design, and learning: A systematic review and meta-analysis. Review of Educational Research, 86(1), 79-122. https://doi.org/10.3102/0034654315582065
  9. Fryer, L. K., & Carpenter, R. (2006). Bots as language learning tools. Language Learning & Technology, 10(3), 8-14. https://doi.org/10.64152/10125/44068

最終更新日: 2026-10-01

著者: 中村 拓(Taku Nakamura)(greencafe 編集部 編集責任者・非ネイティブ話者)。公開された 9 件の研究エビデンス(tier 1=8 件 / tier 2=1 件)を横断分析・再構成した。

画像: いらすとや (https://www.irasutoya.com/) より

この記事を編集した人

中村 拓(Taku Nakamura)のポートレート

(編集責任者 / 応用言語学・第二言語習得 エディター(非ネイティブ話者))

応用言語学のバックグラウンドを持つ英語学習分野のエディターで、査読済み SLA 論文・応用言語学ジャーナル・公的機関資料の横断要約と再構成を担当する編集責任者です。非ネイティブ英語話者で、大人の英語学び直しを研究の視点で編集しています。

編集した記事: 130 本

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