シャドーイングが効かないのは「教材のレベルが合っていない」せいかもしれない

左にヘッドホンをつけて教材を開き勉強している人のイラスト、右にABCの文字とともに向き合う二人が描かれた英語のリスニングのイラストが並ぶ。教材を使った学習と、英語を耳で聞き取る場面を表している。 シャドーイング・音読

シャドーイングが効かないのは「教材のレベルが合っていない」せいかもしれない

英語学び直したいユーイチ
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毎日シャドーイングしているのに、聞き取れるようになった気がしないんです…

英語独学好きの助教S
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その気持ち、よく分かります。実は続け方だけでなく、別の要因が関わっている可能性を示す研究分野の見方があります。

英語学び直したいユーイチ
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そもそもシャドーイングって、具体的にはどんな練習なんですか?

英語独学好きの助教S
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簡単に言うと、聞こえた英語を少し遅れてすぐ声に出す練習のことです。専門書でも『耳で聞いてすぐ声に出す』訓練だと説明されています。

英語学び直したいユーイチ
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研究で分かるって言っても、正直、自分にできる気がしないです…

英語独学好きの助教S
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大丈夫です。研究の多くは『やる気』ではなく、練習の仕方や条件を細かく設計し直す問題として扱っています。

英語学び直したいユーイチ
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じゃあ具体的には、何から確認していけばいいですか?

英語独学好きの助教S
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この記事では、9本の研究をひとつずつたどりながら、教材選びの見直し方をできるだけ具体的に解説していきます。

結論: 毎日シャドーイングをしても伸びを感じないとき、原因は継続日数ややり方より「教材の難しさ」であることが多い。
日本人学習者を対象にした研究では、シャドーイングの効果はレベルによって出方が違うことが分かっている。
教材の聞き取りにくさは、単語の詰まり具合や種類の多さなど、統計的に測れる要因で決まっている。
「効かない」と結論づける前に、教材が今の実力に合っているかを点検するほうが近道になる。

この記事でわかること

  • 「伸びない」と感じたとき、継続日数ややり方だけを疑いがちな思考の癖
  • 英語がまだ得意でない人と、ある程度得意な人で、シャドーイングの効果の出方が違うという研究結果
  • リスニング教材の聞き取りにくさを決めている要因と、自分のレベルとの噛み合わせの見方
  • 今の教材が難しすぎるかどうかを点検する方法と、教材を選び直す具体的な指針

「毎日やっているのに伸びない」とき、疑う場所を間違えやすい

英語学び直したいユーイチ
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有名な教材を使ってるので、大丈夫だと思ってました…

英語独学好きの助教S
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有名さと自分に合う難しさは別物です。実は研究でも、学習者の英語力によって伸び方の違いが報告されています。

半年も1年もシャドーイングを続けているのに、リスニング力が伸びている実感がない。そう感じたとき、多くの人がまず疑うのは「継続日数が足りない」か「やり方が違う」の2つである。

もう少し頑張れば結果は出るはずだ、という考え方は自然である。だが、その2つだけを疑い続けても改善しないことがある。

足に合わないランニングシューズで走り込みを増やしても、タイムはなかなか縮まらない。むしろ痛めるほうが早い。同じように、教材そのものが今の実力に合っていない可能性は、意外と見落とされがちである。

有名だから、資格試験用だからという理由だけで教材を選び続けている場合、疑うべき場所は「回数」や「姿勢」ではなく、教材の難しさかもしれない。

ニュース教材や資格試験用の教材は、内容の信頼性は高い。だが、それは「今の自分に合った難しさ」であることを保証しない。半年〜1年という継続日数は十分でも、教材の難しさがずっと自分の実力より高いままだと、伸びを感じにくい状態が続いてしまう。

実際、シャドーイングの効果を確かめた研究でも、学習者の英語力(習熟度)によって結果の伸び方に違いがあったと報告されている。教材そのものを疑ってみる価値は、ここにある。

ここまでのまとめ: 伸び悩みの原因を継続日数ややり方だけに求めると、見落とす場所がある。教材の難しさという別の軸を疑う必要がある。

レベル別に分けて比べたら、伸び方が違っていた

英語学び直したいユーイチ
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音は聞き取れても、テストの点は伸びないってことですか?

英語独学好きの助教S
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その通りです。ある研究では、音の聞き分けは両グループで伸びましたが、点数が伸びたのは英語が苦手なグループだけでした。

この疑問に実証的に答えたのが、Hamada(2016)の研究である(=秋田大学の日本人学習者43名を対象にした調査のこと)。

対象は日本人の英語学習者43名で、教科書を使ったシャドーイングの授業を9回受けてもらった。事前のリスニングテストの結果で、学習者を「英語がまだ得意でない群」と「ある程度得意な群」に分けたうえで、効果を比較している。

結果は単純な「効く・効かない」ではなかった。音素知覚(=英語の似た音を聞き分ける力のこと)のテストは、どちらの群でも点数がはっきり伸びた。ところが、日本の高校レベルのリスニング問題を使った得点は、英語がまだ得意でない群だけで伸びが確認された。この伸びは統計的に「有意」(=偶然の差ではなく、はっきりとした違いだと言える、という意味)だった。ある程度得意な群では、この伸びが確認できなかった。

同じ練習を同じ回数こなしても、測るものさしとレベルの組み合わせ次第で、結果の見え方が変わるということである。

この研究では、書き取りをして空欄を埋めるディクテーション・クローズテストという方法もあわせて使い、理解度を測っている。ひとつの物差しだけに頼らず、複数の角度から効果を確認する形で実施されたと報告されている。

ここまでのまとめ: 音の聞き分け力はレベルを問わず伸びた。だが、テストの点数がはっきり伸びたのは、英語がまだ得意でない群だけだった。

「中級者には効かない」と決めつけるのは早すぎる

ここで「ある程度英語ができる人にはシャドーイングは意味がない」と結論づけたくなるが、それは急ぎすぎである。

まず、伸びなかったとされた指標は「日本の高校レベルのリスニング問題」という、ひとつの測り方にすぎない。ものさしを変えれば、違う結果が出た可能性は十分にある。

もうひとつ手がかりになるのが、Cutler・Weber・Otake(2006)の実験である。これは日本語を母語とする英語学習者が単語を聞いたときの反応を調べた研究のことである。目の動き(視線)と反応の速さから、頭の中の処理を間接的に推測している。この研究では、耳では聞き分けにくい音の対(英語の/l/と/r/など)を含む単語を扱っている。

そこで分かったのは、音そのものの聞き分けが不正確でも、頭の中の単語の記憶にはその違いがうっすらと保持されている場合がある、ということである。聞こえていないようで、実は少し覚えている、というズレが起きている。

つまり、音の処理レベルでの伸びと、意味や語彙のレベルでの理解の伸びは、必ずしも同時には表に出てこない。「テストの点数が動かなかった=効果がゼロ」と読むのは正確ではなく、「測り方や教材との噛み合わせ次第で、見え方が変わる」と読むほうが実態に近い。

こうした「伸びる力と伸びにくい力の違い」については、毎日シャドーイングしているのに話せないのはなぜでも扱っている。本記事はそこに「教材の難易度」という軸を重ねる位置づけになる。

ここまでのまとめ: 伸びが見えなかった指標はひとつの測り方にすぎない。音の伸びと理解の伸びは別々に動くことがあり、「効果ゼロ」と決めつけるのは正確ではない。

教材の聞き取りにくさは、何で決まっているのか

英語学び直したいユーイチ
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聞き取りにくさって、結局何が原因なんですか?

英語独学好きの助教S
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Révészたちの研究では、単語の詰まり具合(語彙密度)が主な原因の一つだと分かっています。料理のスパイスの濃さに近いイメージです。

では、教材の「難しさ」そのものは何が決めているのか。この問いに正面から取り組んだのが、Révész・Brunfaut・Kormos(2013)の研究である。上級の第二言語学習者68名が、18種類の教材に取り組んだ実験である。

この研究は、Rasch分析と回帰分析(=難しさを数値として計算する統計的な方法のこと)を使い、教材の難しさを左右する要因を統計的に調べている。

結果、語彙密度(=文の中に難しい単語がどれくらい詰まっているかのイメージ)と語彙の多様性(=使われている単語の種類の多さのこと)を含む、6つの指標が見つかった。これらが教材の難しさを有意に予測した。内容に含まれる因果関係の複雑さも、難しさを決める要因として有意だった。

料理のスパイスに例えると分かりやすい。同じ食材でも、スパイスの種類と濃さが変われば、辛さの感じ方はまったく違ってくる。教材も同じで、同じ話題でも、難しい単語の詰まり具合ひとつで聞き取りにくさは大きく変わる。

「有名な教材だから」「レベル表示が中級だから」という理由だけで難易度を判断できないのは、こうした複数の要因が絡んでいるからである。

この研究では、学習者自身に「なぜ難しく感じたか」を口頭で振り返ってもらう方法(刺激再生法)も使っている。その結果は、あとから紙のアンケートで聞くよりも、語彙密度などの統計的な指標とよく一致していたと報告されている。

ここまでのまとめ: 教材の聞き取りにくさは、単語の詰まり具合や種類の多さなど、複数の要因の組み合わせで統計的に説明できる。

「教材の難しさがレベルに合っていない」とは、具体的にどういう状態か

英語学び直したいユーイチ
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『レベルが合っていない』って、具体的にはどういう状態なんですか?

英語独学好きの助教S
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知ってる単語の割合が75%を切ると急に理解できなくなり、90%を超えると一気に分かりやすくなる、という研究結果があります。坂を上るイメージに近いです。

「教材の難しさとレベルが合っていない」と言われても、感覚的にはつかみにくい。ここを具体的な数字で示した研究がある。

Nation(2006)の研究がある。これは英国の大規模な言語データベースをもとに、語彙リストを検証した研究のことである。文章の98%が知っている単語で埋まって初めて「助けなしで理解できる」という基準を示している。語族とは、developとdevelops、developmentのように、形が変わっても仲間としてまとめて数える単語のグループのことである。この単位で見ると、読解に必要な語彙量はおよそ8000〜9000語族である。リスニングではそれよりやや少ない、6000〜7000語族と推計されている。

虫食いプリントを思い浮かべると分かりやすい。空欄が数か所なら文脈で補えるが、空欄だらけになると意味が取れなくなる。教材の中の「知らない単語」は、この空欄にあたる。

もっとも、リスニングは読解ほど厳しい基準でなくてもよいという報告もある。van Zeeland・Schmitt(2012)の研究がある。これは聞き取りに必要な語彙量を、読解と比べて検証した研究のことである。この研究は、聞き取りの理解には95%程度のカバー率(=文章の中で、知っている単語がどれくらいの割合を占めているか、ということ)で十分だと示している。これは最頻出の2000〜3000語族ほどで達成できる水準である。

さらに具体的な境目を示したのが、Bonk(2000)の研究である(=日本の大学生59名を対象にディクテーションと内容再生を行った実験のこと)。この研究では、文中の単語への馴染み度合いと理解度の間に、中程度の相関(.45)が見られた。相関は0が「まったく関係なし」、1が「完全に一致」を表す数字で、.45はその中間よりやや低い「そこそこ関係がある」というイメージである。馴染みのある単語が75%を下回ると、良い理解はほとんど見られなかった一方、90%を超えると良い理解が高い頻度で見られている。

坂道を上るイメージに近い。75%のあたりまでは急な坂で、話の筋がなかなか見えてこない。90%を超えたあたりから、急に見晴らしがよくなる。この傾向は、リスニングの熟達度が高い人・中位の人・低い人のいずれでも共通して見られた。

つまり「教材の難しさがレベルに合っていない」状態とは、聞き取れる単語の割合がこの坂道の急な部分に入っている状態だと言い換えられる。3つの研究に共通しているのは、難しさを感覚ではなく「知っている単語の割合」という数えられる形で捉えている点である。感覚だけに頼るより、この割合を意識するほうが、教材選びの判断はぶれにくくなる。

ここまでのまとめ: 教材の中の「知っている単語の割合」がおよそ75%を下回ると理解が急に難しくなり、90%を超えると理解しやすくなる。この割合が、レベルと難しさの噛み合わせの目安になる。

今の教材の難易度を点検する簡単な方法

上で見た目安を、実際の点検作業に落とし込む。特別な道具は要らない。

研究が示しているのは、あくまで「知っている単語の割合が75%を下回ると理解が急に難しくなり、90%を超えると理解しやすくなる」という割合の目安である。以下は、その目安を点検作業に落とし込むための、本記事による具体的なやり方である。

  1. スクリプト(台本)を黙読して、意味がすらすら取れるか確認する。読んでも意味が取れない単語だらけなら、聞いて分かるはずがない
  2. 1分間のスクリプト(130〜150語程度が目安)で、知らない単語がいくつ出てくるかを数える。知らない単語がおよそ13語以上(全体の1割程度)あると、知っている単語の割合はおおよそ90%を下回る計算になる
  3. 1回聞いただけで、話の大まかな筋(誰が・何を・どうした)が追えるかを確認する。筋がほとんど追えない場合は、知っている単語の割合がかなり低い状態に入っているサインである
  4. 同じ教材を3回聞いても内容理解が変わらないかを見る。単語量の問題であれば、回数をこなしても大きくは変わらない
  5. 一段階易しい教材に替えて、聞いた直後の理解のしやすさを比べてみる。楽に感じる度合いがはっきり変わるなら、今の教材の難しさがレベルに合っていなかったサインである

自分の英語力そのものがどのくらいなのか分からないと、この点検はやりにくい。自分の英語レベルがわからないで扱っている「できること」で測る考え方と組み合わせると、今の教材が「今の自分」に合っているかどうかを判断しやすくなる。

ここまでのまとめ: スクリプトの黙読・知らない単語の数・1回で筋が追えるかの3点は、特別な道具なしでできる点検方法である。

教材を選び直す、具体的な指針

英語学び直したいユーイチ
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結局、どんな教材に変えればいいんですか?

英語独学好きの助教S
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目的次第です。音に慣れたいなら易しく短い教材、内容理解を伸ばしたいなら少し背伸びした教材が向くと、研究でも整理されています。

点検の結果、教材が難しすぎると分かった場合の選び直し方を整理する。目的によって、選ぶべき方向は変わる。

難しすぎる場合は、素直に一段階易しい教材に落とすのが基本である。知っている単語の割合が90%に近づくように、レベル表示だけでなく、実際にスクリプトを読んで判断するとよい。

音のリズムやスピードに慣れることが目的なら、内容の難しさよりも、短くて聞き取りやすい音重視の教材を選ぶ。Kadota(2019)の専門書がある。これはシャドーイングと第二言語習得の関係を整理した、研究者向けの本のことである。この本は、シャドーイングを「聞いた音を処理する認知の働き」という側面から位置づけている。

Hamada・Suzuki(2022)の研究もある。シャドーイングの技法を練習の理論に位置づけて整理した論文のことである。この研究は、シャドーイングの技法を音の処理を重視する型と、意味を汲み取る処理を重視する型の2系統に分類している。音マネに集中するモードと、意味を追うモードの、いわば道具箱の使い分けである。

内容理解を伸ばすことが目的なら、多少背伸びした、意味を追うタイプの教材を選ぶほうが向いている。Hamada(2019)のレビュー論文がある。シャドーイングの研究蓄積、約25年分を総括した論文のことである。この論文は、初級レベルの学習者はまず「聞くためのシャドーイング」から始め、次に「話すためのシャドーイング」へ進むことを提案している。階段を1段ずつ上るイメージに近い。

これは、Hamada(2016)の研究で英語がまだ得意でない群の伸びがはっきり出ていたことともつながる。まだ得意でない段階では、まず「聞くこと」に絞った音重視の練習で土台を作り、力がついてから意味を追う練習に進むほうが、無理のない順番だと考えられる。

いずれの場合も、レベル表示だけで選ばず、実際にスクリプトを読んで知っている単語の割合を確かめる一手間が効いてくる。教材の難易度は、あくまで伸び悩みの一因である。シャドーイングは何ヶ月で効くのかで扱っている継続期間の目安ともあわせて、総合的に見直す視点を持つとよい。

ここまでのまとめ: 難しすぎるなら一段階易しく、音に慣れたいなら音重視、内容理解を伸ばしたいなら意味重視というように、目的別に教材を選び分ける。

よくある質問

Q. ある程度英語ができる中級者には、シャドーイングは効果がないのですか。
A. そうとは言い切れない。研究で伸びが確認できなかったのは、高校レベルのリスニング問題というひとつの測り方にすぎない。音の伸びと理解の伸びは別々に動くこともあり、教材の難しさが合っていない可能性のほうを先に疑うのが妥当である。

Q. 教材が難しすぎるかどうかは、どう判断すればいいですか。
A. スクリプトを黙読して、知らない単語がどれくらい出てくるかを数える。目安として、知っている単語の割合が90%を超えていると理解しやすく、75%を下回ると理解が急に難しくなる。

Q. 音重視の教材と、内容理解重視の教材、どちらを選ぶべきですか。
A. 目的によって変わる。音のリズムやスピードに慣れたいなら音重視の短い教材、内容理解を伸ばしたいなら少し背伸びした意味重視の教材が向いている。

Q. 教材を替えれば、リスニング力は必ず伸びますか。
A. そうとは限らない。教材の難易度は伸び悩みの一因ではあるが、唯一の原因ではない。継続の仕方や取り組み方など、他の要因もあわせて見直す必要がある。

Q. 何ヶ月続ければ効果を感じられますか。
A. 教材の難易度が合っていても、効果が実感できるまでには一定の期間がかかる。教材の相性は「伸びるかどうか」を左右する一因であり、期間の目安は別の観点になる。

Q. 教材のレベル表示(初級・中級・上級など)を信じてはいけませんか。
A. 目安として使ってよいが、それだけで判断しないほうがよい。同じ「中級」でも、語彙密度や語彙の多様性は教材によってばらつく。表示より先に、実際にスクリプトを読んで知っている単語の割合を確かめるほうが確実である。

まとめ

シャドーイングを続けても伸びを感じないとき、継続日数ややり方だけを疑うと、見落とす場所がある。日本人学習者を対象にした研究では、音の聞き分け力はレベルを問わず伸びたが、テストの点数の伸びはレベルによって違って見えた。

その違いを読み解く鍵になるのが、教材の難易度である。教材の聞き取りにくさは、単語の詰まり具合や種類の多さといった、統計的に測れる要因で決まっている。知っている単語の割合がおよそ75%を下回ると理解が急に難しくなり、90%を超えると理解しやすくなるという目安もある。

だからといって、「教材さえ替えれば必ず伸びる」と単純化するのも正しくない。教材の相性は伸び悩みの一因にすぎず、継続期間や日々の取り組み方とあわせて、総合的に見直す必要がある。

やり方や継続日数を責める前に、教材という土台を点検する。この順番を意識するだけでも、伸び悩みの受け止め方は変わってくる。「自分のやり方が間違っている」と思い込むより、「教材と今の実力の組み合わせを見直す」と考えるほうが、次の一歩は具体的になる。

まずは今の教材のスクリプトを開いて、知らない単語がどれくらい出てくるかを数えるところから始めるとよい。1分間(130〜150語程度)のスクリプトで、知らない単語がおよそ13語未満に収まっていれば合格ラインに近い。それ以上あるなら、一段階易しい教材に替える価値は十分にある。

参考文献

  1. Hamada, Y. (2016). Shadowing: Who benefits and how? Uncovering a booming EFL teaching technique for listening comprehension. Language Teaching Research, 20(1), 35-52. https://doi.org/10.1177/1362168815597504
  2. Révész, A., Brunfaut, T., & Kormos, J. (2013). Text characteristics of task input and difficulty in second language listening comprehension. Studies in Second Language Acquisition, 35(1), 31-65. https://doi.org/10.1017/S0272263112000678
  3. Nation, I. S. P. (2006). How Large a Vocabulary Is Needed for Reading and Listening? Canadian Modern Language Review, 63(1), 59-82. https://doi.org/10.3138/cmlr.63.1.59
  4. van Zeeland, H., & Schmitt, N. (2012). Lexical Coverage in L1 and L2 Listening Comprehension: The Same or Different from Reading Comprehension? Applied Linguistics, 34(4), 457-479. https://doi.org/10.1093/applin/ams074
  5. Bonk, W. J. (2000). Second Language Lexical Knowledge and Listening Comprehension. International Journal of Listening, 14(1), 14-31. https://doi.org/10.1080/10904018.2000.10499033
  6. Kadota, S. (2019). Shadowing as a Practice in Second Language Acquisition: Connecting Inputs and Outputs. Routledge. https://doi.org/10.4324/9781351049108
  7. Hamada, Y., & Suzuki, Y. (2022). Situating Shadowing in the Framework of Deliberate Practice: A Guide to Using 16 Techniques. RELC Journal. https://doi.org/10.1177/00336882221087508
  8. Hamada, Y. (2019). Shadowing: What is It? How to Use It. Where Will It Go? RELC Journal, 50(3), 386-393. https://doi.org/10.1177/0033688218771380
  9. Cutler, A., Weber, A., & Otake, T. (2006). Asymmetric mapping from phonetic to lexical representations in second-language listening. Journal of Phonetics, 34(2), 269-284. https://doi.org/10.1016/j.wocn.2005.06.002

最終更新日: 2026-09-20

著者: 中村 拓(Taku Nakamura)(greencafe 編集部 編集責任者・非ネイティブ話者)。公開された 9 件の研究エビデンス(tier 1=8 件 / tier 2=1 件)を横断分析・再構成した。

画像: いらすとや (https://www.irasutoya.com/) より

この記事を編集した人

中村 拓(Taku Nakamura)のポートレート

(編集責任者 / 応用言語学・第二言語習得 エディター(非ネイティブ話者))

応用言語学のバックグラウンドを持つ英語学習分野のエディターで、査読済み SLA 論文・応用言語学ジャーナル・公的機関資料の横断要約と再構成を担当する編集責任者です。非ネイティブ英語話者で、大人の英語学び直しを研究の視点で編集しています。

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