- 英語の本をたくさん読むと本当に力がつくのか|世界の研究でわかった多読の効果と限界
- この記事でわかること
- そもそも多読とは何か|精読との違いをはっきりさせる
- 多読の効果を数字で見る|34の実験を集めたメタ分析
- なぜ多読は効くのか|「少し上」のインプットとカバー率
- 多読で語彙は本当に増えるのか|狙わなくても覚わる仕組み
- 読む速さは伸びるのか|「量」が速さを育てる
- 日本人にも効くのか|古典の実験と日本の大学での実証
- 効果の境界を正直に|多読で会話はペラペラになるのか
- 気持ちの面への効果|不安が下がると言葉が入りやすい
- 研究から逆算した始め方|レベル・量・つまずき対策
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
- 参考文献
- この記事を編集した人
英語の本をたくさん読むと本当に力がつくのか|世界の研究でわかった多読の効果と限界

先生、英語の本をたくさん読むといいって聞くんですけど、あれ本当なんですか?

気持ちはわかります。多くの人が半信半疑です。でも第二言語習得という分野では、多読は昔から研究されてきた勉強法なんですよ。

でも、やさしい絵本みたいな本を読んで、力なんてつくのかなって…。

その不安、とても自然です。実は研究の世界では「やさしい本を大量に読む」ことの効き目が、まじめに測られてきたんです。

正直、時間がかかるわりに効果が見えにくそうで、無駄になるのが怖いんですよね。

その心配こそ大事です。研究はまさに「何にどれくらい効くのか」を数字で整理してくれているので、無駄かどうかも見えてきますよ。

じゃあ、僕みたいな社会人は、何から始めればいいんでしょう?

いい問いですね。この記事では研究を順番にたどりながら、効くこと・効きにくいこと・始め方まで、やさしく一緒に見ていきましょう。
結論: やさしい英語の本をたくさん読む「多読」は、思いつきの勉強法ではありません。34の実験を集めて全体の傾向を出したメタ分析では、読解力と読む速さに中くらいの効果があると測られています[E01]。日本の大学生を対象にした研究でも、多読したクラスの方が普通の授業より伸びていました[E05]。ただし多読は万能ではなく、会話が話せるようになる力へは直接つながりにくいことも研究は示しています。この記事は、体験談ではなく第二言語習得(SLA)の研究をもとに、多読の効果と限界を正直に整理します。
第二言語習得(SLA)とは、母語のあとに外国語を身につける仕組みを調べる学問です。言い換えると「人はどうやって英語を覚えるのか」を科学的に研究する分野のことです。
この記事でわかること
- 多読とは何か、そして「1文ずつ訳す精読」とはどう違うのかが整理できる
- 多読の効果が研究でどこまで裏づけられているか(読解・語彙・読む速さ・気持ち)がわかる
- 多読が「効くこと」と「効きにくいこと」の境界を、研究にもとづいて正直に知れる
- どのレベルの本を、どれくらい読めばよいかという始め方が具体的にわかる
そもそも多読とは何か|精読との違いをはっきりさせる

そもそも多読って、ただ英語の本を読むのと何が違うんですか?

いい質問です。多読は「やさしい本を訳さず大量に楽しく読む」方法で、1文ずつ訳す精読とは役割が違うと、多読の定番書でも整理されているんですよ。
多読とは、やさしい英語の本をたくさん、訳さず、辞書をあまり引かずに楽しく読む方法です。英語では extensive reading と呼ばれます。読む量を「広く多く」とることから、この名前がついています。
これに対して精読は、1文ずつ丁寧に日本語へ訳しながら深く読む方法です。英語では intensive reading と言います。文法や構文を細かく分析する読み方だ、と考えるとわかりやすいでしょう。
多読の原則を体系的にまとめた定番書では、読む素材は「すでにほぼ知っている単語で書かれた、辞書なしでスラスラ読めるレベル」がよいとされています[E07]。この本は、いわば多読の遊び方のルールブックのような1冊です。
原則は「やさしい素材を・大量に・自分で選んで・楽しみのために・辞書を引きすぎず・速く読む」というものです[E07]。ここで大事なのは、多読と精読はどちらが正しいかではない、という点です。
精読は細かい文法理解に向き、多読は読む量・読む速さ・語彙の自然な定着に向きます。つまり2つは役割分担であり、両方を目的に応じて使い分けるのが賢いやり方です。
まずは「自分が今やろうとしているのはどちらか」を整理してみてください。この記事で扱うのは、あとの多読の方です。
ここまでのまとめ: 多読はやさしい本を訳さず大量に楽しく読む方法で、1文ずつ訳す精読とは役割が違い、両者は使い分けるものです。
多読の効果を数字で見る|34の実験を集めたメタ分析
多読が効くかどうかを、いちばん広い視点で調べたのがメタ分析という手法です。メタ分析とは、たくさんの実験の結果を1か所に集めて「全体としてどれくらい効いたか」を測る、いわば研究の総まとめのことです。
2015年に発表された多読のメタ分析では、34件の研究、のべ約3,900人分のデータが集められました[E01]。これは英語教育の主要な学術誌に載った、多読研究の代表的なまとめです。
その結果、多読の効果量はおおむね「中くらい」と報告されました[E01]。効果量とは、勉強法がどれくらい効いたかの強さを数字で表したものだ、と考えてください。
具体的には、多読したグループと普通のグループを比べた場合の効果量は d≒0.46 でした[E01]。これは「100人いたら、だいたい67人くらいには目に見えて効いた」というくらいの手ごたえを表す数字です。
同じ人の勉強前と勉強後を比べると、効果量は d≒0.71 とさらに大きくなりました[E01]。効いた対象は、特に読解力(意味を理解する力)と読む速さではっきり確認されています。
さらに、学習期間が長いプログラムほど効果量が大きくなる傾向も見られました[E01]。つまり多読は、短期間で終わらせるより長く続けるほど効いてくる、というわけです。
ここまでのまとめ: 34件の実験を集めたメタ分析で、多読は読解力と読む速さに中くらいの効果があり、長く続けるほど効きやすいと測られています。
なぜ多読は効くのか|「少し上」のインプットとカバー率

そもそも、なんで読むだけで英語が伸びるんですか? 不思議で。

クラッシェンのインプット仮説という考えが土台です。「今の力より少しだけ上」の分かる英語を大量に浴びると伸びる、背伸びして届く棚の本を取るイメージですね。
多読がなぜ効くのかを説明する土台の1つが、インプット仮説という考えです。これは言語学者クラッシェンが示した、外国語を身につける仕組みについての古典的な理論です[E02]。
その中心にあるのが「i+1(アイ・プラス・ワン)」という考えです。i は今の自分の英語力、+1 はそのほんの少し先を指します[E02]。
言い換えると、意味がわかる範囲で「今の力より少しだけ上」のものを大量に浴びると伸びる、という考えです[E02]。背伸びして少しだけ届く高さの棚から本を取るくらいが、いちばん伸びるイメージです。
やさしい本を大量に読む多読は、この「少し上の理解できるインプット」を大量に供給する実践だと位置づけられています[E02]。文法の暗記より、理解できる量を確保することが伸びを左右する、という考え方です。
では「少し上」とは具体的にどのくらいでしょうか。ここで役立つのが、言語学者ネイションが示したカバー率の研究です[E03]。
カバー率とは、本文の単語のうち自分が知っている単語の割合のことです。ネイションの研究では、知っている単語が本文の98%あれば、辞書なしでも快適に読めると示されました[E03]。
これは、100語のうち98語を知っていれば、残り2語は前後の流れから意味を推測して読み進められる、という考え方です。逆に知らない単語が増えるほど、推測の負担が重くなって読解がつまずきやすくなります[E03]。
ちなみに、小説など一般的な英文を98%カバーするには、家族のようにまとまった語のグループで8,000〜9,000ほどの語彙が必要と推定されています[E03]。だからこそ、最初はやさしい本から入るのが理にかなっているのです。
ここまでのまとめ: 多読は「今より少し上」の理解できるインプットを大量に与えるから効きます。本は知っている単語が98%あるやさしいものを選ぶのがよい、と研究は示します。
多読で語彙は本当に増えるのか|狙わなくても覚わる仕組み
「読むだけで単語が増えるの?」という疑問に、実際に測って答えた研究があります。学習者向けにやさしく書き直された本(graded reader)を読ませ、狙わなくても単語が定着するかを調べた実験です[E06]。
graded reader とは、語彙や文法をレベル別に調整した学習者向けの本のことです。難しさが階段(grade)のように段階分けされている本だ、と考えるとわかりやすいでしょう。
この研究で調べられたのが偶発語彙学習です。偶発語彙学習とは、覚えようと狙わなくても、読んでいるうちに自然と単語が頭に残っていく現象を指します[E06]。
結果はとても正直なものでした。本文中に1回しか出てこない単語は、ほとんど記憶に残らなかったのです[E06]。つまり「1回出会えば覚える」というほど甘くはありません。
一方で、同じ単語に8回以上出会うと、ようやく定着しやすくなると報告されました[E06]。これは、同じ単語に何度も出会ううちに、覚えようとしなくても自然と頭に残る、というイメージです。
さらに、3か月後にもう一度テストすると、覚えたはずの単語のかなりの数が忘れられていました[E06]。ここから、多読は語彙定着に役立つけれど、繰り返し出会う量が鍵だとわかります。
この結果は、むしろ多読の強みを裏づけます。少ない量では足りないからこそ、大量に読んで同じ語に何度も出会う多読が、語彙を増やすのに向いているのです[E06]。
読解研究の標準的な教科書でも、語彙と読解は互いに高め合うと整理されています[E09]。豊富な読書が語彙を増やし、その語彙がさらに読解を支える、という良い循環が生まれるのです[E09]。
ここまでのまとめ: 単語は1回では残りにくく、何度も出会って初めて定着します。だから大量に読む多読は、狙わずに語彙を増やすのに向いています。
読む速さは伸びるのか|「量」が速さを育てる

たくさん読んだら、読むスピードって本当に上がるんですか?

上がります。日本の大学生97名を1年追った研究では、たくさん読んだ人ほど1分間に読める語数が増えた、と量に比例する形で確認されているんですよ。
多読のもう1つの大きな効果が、読む速さ(reading rate)の向上です。読む速さとは、1分間に読める英語の語数(words per minute)のことです。
日本の大学生97名を1年間追いかけた研究では、楽しみのための多読が読む速さに与える影響が調べられました[E10]。楽しみのための多読とは、テストのためでなく面白いから読む、という自由な読書のことです。
結果、graded reader を多く読んだ学習者ほど、読む速さがはっきり向上しました[E10]。しかも、読んだ語数が多いほど読む速さの伸びも大きい、という関係が見られました[E10]。
これは「たくさん読んだ人ほど、1分間に読める英語の量がはっきり増えていた」ということです。量と効果がきれいに対応する、いわば「読めば読むほど速くなる」関係です。
なぜ量が速さを育てるのでしょうか。読解研究の教科書では、読む速さは自動化によって育つと説明されています[E09]。自動化とは、いちいち考えなくても単語や文が自然に処理できるようになることです。
これは自転車と同じで、たくさん乗る(読む)ほど、考えなくてもスイスイ進めるようになる、というイメージです[E09]。速く読めるようになれば、同じ時間でもっと多くの英語に触れられ、さらに伸びる好循環に入ります。
TOEICのような時間制限のあるテストでも、読む速さは大きな武器になります。多読で読む速さを底上げしておくことは、こうした試験の土台づくりにもつながるのです。
ここまでのまとめ: 読む速さは読んだ量に比例して伸び、日本の大学生の研究でも「たくさん読んだ人ほど速くなった」と確認されています。
日本人にも効くのか|古典の実験と日本の大学での実証
「海外の研究はわかったけれど、日本人にも効くの?」という疑問は当然です。これに答える研究が、古典と国内実証の両方にあります。
まず土台となる古典が、1983年のフィジーで行われた Book Flood 研究です[E04]。Book Flood とは、教室を本でいっぱいにする、という意味の取り組みのことです。
この研究では、小学校に大量の英語の絵本や物語本を投入しました[E04]。すると、たくさん読んだグループは、文法中心の普通の授業を受けたグループを、読解や言語力で上回ったのです[E04]。
これは「教室を本でいっぱいにしたら、子どもたちの読む力がぐんと伸びた実験」だと言えます。しかも効果は読解だけでなく、作文や文法など言語全般に広がりました[E04]。
この古典は、第二言語での多読が学習を後押しするという因果的な効果を示した点で重要です[E04]。因果的な効果とは、「多読をしたから伸びた」と言える関係のことです。
そして日本人に直接答えるのが、1997年の日本の大学生を対象にした研究です[E05]。多読(静かに黙々と読む時間)を取り入れたクラスと、普通の授業のクラスを比べました[E05]。
結果、当初は伸び悩んでいた学生を含め、多読したクラスの方が読解力などのテストで上回りました[E05]。つまり「日本の大学で、たくさん読んだクラスの方が普通の授業のクラスより伸びた」のです。
さらに、多読を続けた学生は英語への態度も良くなり、読むこと自体を楽しむようになりました[E05]。これは日本人EFL学習者にも多読が効くことを、実際の授業で示した代表的な研究です。EFLとは、英語を日常であまり使わない環境で外国語として学ぶこと、と考えてください。
ここまでのまとめ: フィジーの古典実験でも日本の大学の研究でも、多読したグループの方が読解や言語力で伸びており、日本人にも効くと示されています。
効果の境界を正直に|多読で会話はペラペラになるのか

多読を続けたら、英語がペラペラ話せるようにもなりますよね?

そこは正直にお伝えします。多読は読解や語彙には強い一方、会話の流暢さへの直結は研究上はっきり言い切れず、話す練習の代わりにはならないんです。
ここまで良い話が続きましたが、研究を誠実に読むなら「効きにくいこと」も伝える必要があります。多読は万能薬ではありません。
はっきりしているのは、多読が強く効くのは読解力・語彙・読む速さ・気持ちの面(情意面)だということです[E01][E06][E10]。これらは複数の研究で繰り返し確認されています。
しかし「話す力(会話の流暢さ)」に多読が直接つながるとは、研究上はっきりとは言い切れません。多読はあくまで大量に読む練習であって、話す練習そのものではないからです。
考えてみれば当然です。泳ぎ方の本をたくさん読んでも、それだけでは泳げるようにならないのと同じで、話す力は話す練習で育つ部分が大きいのです。
ただし、これは多読が会話に無関係という意味ではありません。会話にも語彙や表現の蓄えは必要で、多読はその土台を厚くしてくれます。
つまり多読は、スピーキングの土台づくりとして役立つけれど、会話練習の代わりにはならない、というのが正確な位置づけです。この境界を知っておくと、過度な期待でがっかりすることがなくなります。
「多読すれば英語がペラペラになる」という宣伝を見たら、少し立ち止まってください。研究が示すのは「読む・語彙・気持ちには強いが、話すには別の練習も要る」という、もっと現実的な姿です。
ここまでのまとめ: 多読は読解・語彙・読む速さ・気持ちに強く効きますが、会話の流暢さには直結しにくく、話す練習の代わりにはなりません。
気持ちの面への効果|不安が下がると言葉が入りやすい
多読の見落とされがちな効果が、英語への不安を下げる情意面への働きです。情意面とは、やる気・不安・自信といった気持ちの側面のことです。
これを説明する理論が、クラッシェンの情意フィルター仮説です[E08]。情意フィルターとは、気持ちが言葉の吸収を左右する心の関門のようなもの、と考えてください。
この考えでは、不安や緊張が高いとフィルターが上がり、インプットが習得に届きにくくなります[E08]。逆にリラックスして動機が高いと、フィルターが下がって言葉が吸収されやすくなります[E08]。
これは「緊張してガチガチだと言葉が頭に入りにくく、リラックスしていると入りやすい」という、誰もが経験する感覚を理論にしたものです。
多読はこの点で有利です。やさしい本を楽しく自分で選んで読むので、不安が下がりやすく、フィルターが下がった状態で英語に触れられます[E08]。
実際、先ほどの日本の大学の研究でも、多読を続けた学生は英語への態度が良くなり、読むこと自体を楽しむようになっていました[E05]。気持ちが前向きになると、続けやすくなり、続くからさらに効く好循環が生まれます。
「英語アレルギー」を感じている人ほど、この情意面の効果は大きいかもしれません。難しい教材で心が折れる前に、やさしい本で「読めた」という成功体験を積むことが、次の一歩を軽くします。
ここまでのまとめ: 不安が高いと言葉は入りにくく、多読はやさしい本を楽しく読むことで不安を下げ、英語が入りやすい状態をつくります。
研究から逆算した始め方|レベル・量・つまずき対策

よし、始めたいです。でも、どのレベルの本をどれくらい読めばいいのか分からなくて。

本はネイションの98%ルール、知らない単語が1ページに1〜2語までのやさしさが目安です。あとは辞書を引きすぎず、量を毎日積み上げるのがコツですよ。
最後に、ここまでの研究を「明日から何をすればいいか」に落とし込みます。ポイントはレベル・量・続け方の3つです。
まずレベルです。本は98%ルールで選びます。1ページに知らない単語が1〜2語まで、というやさしさが目安です[E03]。これはネイションのカバー率研究にもとづく基準です。
具体的には、まず graded reader から入るのが安全です[E07]。難しさがレベル別に分かれているので、辞書なしでスラスラ読める段階を選びやすいからです。
次に量です。偶発語彙学習の研究が示すように、単語は何度も出会って初めて定着します[E06]。だからこそ、1冊で終わらせず累計の読んだ語数を積み上げる意識が大切です。
読む速さの研究でも、読んだ語数が多いほど効果が大きいと示されています[E10]。つまり「毎日少しでも続けて、総量を増やす」ことが、そのまま結果につながるのです。
続け方では、つまずき対策が肝心です。多読の原則にもとづくコツは4つあります[E07]。辞書を引きすぎない、わからない所は飛ばす、簡単すぎるくらいで始める、楽しめる題材を選ぶ、です。
これらは情意フィルターの理論とも一致します[E08]。難しい本で不安を高めるより、やさしい本で楽しさを保つ方が、結果的に言葉が入りやすくなるからです。
就活やTOEICなどのゴールがある人は、そこから逆算しましょう。読む速さと読解の土台を多読で作り、必要な試験対策や会話練習は別に足す、という組み合わせが現実的です。
大切なのは、完璧を目指して身構えないことです。「簡単すぎて物足りないくらい」で始めて、楽しく続けることが、研究が教えてくれる一番の近道です。
ここまでのまとめ: 本は98%ルールでやさしく選び、graded reader から量を積み上げ、辞書を引きすぎず楽しく続けることが、研究にもとづく始め方です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 多読は本当に効果があるのですか?
A. 34件の実験を集めたメタ分析で、読解力と読む速さに中くらいの効果が測られています[E01]。日本の大学生の研究でも多読したクラスが伸びており[E05]、体験談ではなく複数の研究で効果が確認されています。
Q2. 多読と精読はどちらが効果的ですか?
A. どちらが上ではなく、効く対象が違います。読む速さ・量・語彙の自然な定着には多読が、細かい文法理解には精読が向きます[E07]。目的に応じて使い分けるのが賢い方法です。
Q3. やさしい本を読んで本当に力がつくのですか?
A. つきます。研究では、知っている単語が98%あるやさしい本を辞書なしで読むことが、語彙と読む速さを伸ばすと示されています[E03][E10]。難しい本を我慢して読むより効果的です。
Q4. 多読で英語が話せるようになりますか?
A. 多読は読解・語彙・読む速さ・気持ちの面には強い一方、会話の流暢さへの直結は研究上限定的です。多読は話す力の土台づくりで、会話練習の代わりにはならないと考えてください。
Q5. どれくらいの量を読めばよいですか?
A. 単語は何度も出会って定着するため[E06]、1冊で終えず累計の読んだ語数を積み上げるのが大切です。読んだ量が多いほど読む速さも伸びるので[E10]、毎日少しでも続ける方が有利です。
まとめ
多読は「なんとなく良さそう」な勉強法ではなく、研究で効果が測られた方法です。34件の実験を集めたメタ分析では、読解力と読む速さに中くらいの効果が確認されました[E01]。
その仕組みは、少し上の理解できるインプットを大量に浴びること[E02]と、やさしい本を辞書なしで読むこと[E03]にあります。語彙は何度も出会って定着し、読む速さは読んだ量に比例して伸びます[E10]。
フィジーの古典実験[E04]でも日本の大学の研究[E05]でも多読群が伸びており、日本人にも効くと示されています。やさしい本を楽しく読むことは、不安を下げて言葉が入りやすい状態もつくります[E08]。
一方で、多読は会話の流暢さには直結しにくく、話す練習の代わりにはなりません。この境界を知った上で、98%ルールでやさしい本を選び[E03]、graded reader から量を積み上げれば[E07]、半信半疑だった一歩を安心して踏み出せます。
参考文献
- Nakanishi, T. (2015). A Meta-Analysis of Extensive Reading Research. TESOL Quarterly, 49(1), 6-37. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/tesq.157
- Krashen, S. D. (1985). The Input Hypothesis: Issues and Implications. Longman. https://www.sdkrashen.com/content/books/the_input_hypothesis.pdf
- Nation, I. S. P. (2006). How Large a Vocabulary Is Needed for Reading and Listening? Canadian Modern Language Review, 63(1), 59-82. https://www.wgtn.ac.nz/lals/about/staff/paul-nation
- Elley, W. B., & Mangubhai, F. (1983). The Impact of Reading on Second Language Learning. Reading Research Quarterly, 19(1), 53-67. https://ila.onlinelibrary.wiley.com/journal/19362722
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- Krashen, S. D. (1982). Principles and Practice in Second Language Acquisition. Pergamon Press. https://www.sdkrashen.com/content/books/principles_and_practice.pdf
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- Beglar, D., Hunt, A., & Kite, Y. (2012). The Effect of Pleasure Reading on Japanese University EFL Learners’ Reading Rates. Language Learning, 62(3), 665-703. https://onlinelibrary.wiley.com/journal/14679922
最終更新日: 2026-07-25
著者: 中村 拓(Taku Nakamura)(greencafe 編集部 編集責任者・非ネイティブ話者)。公開された 10 件の研究エビデンス(tier 1=A / tier 2=B)を横断分析・再構成した。
画像: いらすとや (https://www.irasutoya.com/) より
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