英語のPとBが同じに聞こえるのはなぜ?|「息の長さ」の研究でわかる直し方

左に口の形を示す発音のイラスト、右に外国人女性と言葉が通じずに困っている男性のイラストが並ぶ。発音の仕組みと、伝わらない体験を表している。 発音矯正

英語のPとBが同じに聞こえるのはなぜ?|「息の長さ」の研究でわかる直し方

英語学び直したいユーイチ
英語学び直したいユーイチ

え、「パ」って言ってるのに、なんで「バ」に聞こえるんですか?

英語独学好きの助教S
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その悩み、よくあります。音声学の研究では、日本語と英語で音の区別の仕組みそのものが違うと分かっています。

英語学び直したいユーイチ
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でも子音は昔から意識してきたのに、なんでこれだけ直らないんでしょう?

英語独学好きの助教S
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実は世界中で、この手の音の違いは第二言語学習者の壁になりやすいと研究されています。日本語話者に特有の難しさもあるようです。

英語学び直したいユーイチ
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研究で分かってるなら、僕でも直せるってことですよね…?

英語独学好きの助教S
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はい。大人からでも仕組みを理解して練習すれば近づけると研究で示されています。ただ、放っておくだけでは変わりにくいようです。

英語学び直したいユーイチ
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じゃあ具体的に何をすればいいんですか、教えてください!

英語独学好きの助教S
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この記事では、その仕組みを説明した研究をいくつか順番に紹介します。今日からできる練習法まで一緒に見ていきましょう。

結論: 音声学の研究では、英語のP・B、T・D、K・Gの区別は「息の長さ」という物差しで決まると示されている。これはVOT(= 声を出す前に息だけが出ている時間の長さ、というイメージ)と呼ばれる。日本語の「濁っているかどうか」とは別の仕組みなので、大きな声を出しても伝わりにくさは直らない。しかも英語を使い続けるだけでは、この物差しのズレは何年経ってもほとんど変わらないと報告されている。だからこそ、意識して直す対象だと知ることが最初の一歩になる。

この記事でわかること

  • 英語のP・B、T・D、K・Gが同じ音に聞こえる正体は、息を出し始めるタイミングの長さ(VOT)にあること
  • 日本語の清音・濁音と英語の無声音・有声音は、実は別の仕組みで区別されていること
  • 大人になってから練習しても伸びる余地はあるが、放っておくだけでは変わりにくいこと
  • 特別な道具を使わずにできる、今日からのセルフチェック法

1. 「パ」が「バ」に聞こえる正体 — VOTという物差し

英語学び直したいユーイチ
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え、「パ」って言ってるのに、なんで「バ」に聞こえるんですか?

英語独学好きの助教S
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実は息を出すタイミングの長さが違うからです。Lisker と Abramson の研究(=世界の言語の子音を比べた基礎研究)で確かめられています。

英語で「park」と言ったつもりが「bark」と聞き返された経験はないだろうか。日本語話者の多くは、この違いを「濁っているかどうか」の問題だと感じている。しかし音声学の研究では、ネイティブが実際に使い分けの手がかりにしているのは別のものだと示されている。

その手がかりがVOT(Voice Onset Time、= 唇や舌を離した瞬間から、のどが震え始めるまでの時間の長さ、というイメージ)である。信号が青に変わる前に一瞬だけ点く黄色の時間の長さを測るように、声が出る前に息だけが出ている時間の長さを測る物差しだと考えるとわかりやすい。

この物差しを確立したのが、Lisker と Abramson の研究(= 世界の複数の言語の子音を録音して音響的に比較した基礎研究)である。息が先に出るか、声が先に出るかという連続した目盛りの上で、子音の種類を分類できることを示した。

さらに、この物差しには実は3つの区分があるとする理論もある。Keating の理論(= 声の有無を3段階の目盛りとして説明した考え方)によれば、破裂音(= 口の中で息の通り道を一度ふさいでから開けて出す音。パ・バ・タ・ダ・カ・ガなど)の「声のあり・なし」は、単純な2択ではない。声が先に出る区分、少し遅れて出る区分、大きく遅れて出る区分という、3つの順序づけられた目盛りの上のどこを使うかの違いなのだ。

英語のB・D・Gは主に「少し遅れて出る」目盛り、P・T・Kは「大きく遅れて出る」目盛りを使う。一方、日本語のバ・ダ・ガは「声が先に出る」目盛り、パ・タ・カは「少し遅れて出る」目盛りを使うことが多いとされる。つまり、日本語話者が普段使っている目盛りの位置と、英語のネイティブが期待する目盛りの位置が、少しずれているのである。

目盛りの位置 日本語の例 英語の例
声が先に出る バ・ダ・ガ (あまり使わない)
少し遅れて出る パ・タ・カ B・D・G
大きく遅れて出る (あまり使わない) P・T・K

この表からわかるとおり、日本語のパ行は目盛りの真ん中を使うのに対し、英語のP・T・Kはさらに右側の目盛りまで息を長く保つ必要がある。この「もう一段階、息を長く出す」という感覚のズレこそが、聞き返される原因になりやすい。

ここまでのまとめ: 英語の子音の区別は「濁っているか」ではなく、息を出す前の時間の長さ(VOT)で決まる。目盛りは3段階あり、日本語と英語で使う位置がずれている。

2. 日本語の清音・濁音と英語の有声音・無声音は別の仕組み

日本語を学んだことのある人なら、「か」と「が」の違いを直感的に区別できる。この違いは、のどが震えるかどうか(有声音・無声音の区別。= のどぼとけのあたりが震えるかどうかのイメージ)を主な手がかりにしていると考えられている。

ところが英語のP・B、T・D、K・Gの区別は、のどの震え方だけでなく、息を出し始めるタイミングの長さも重要な手がかりになる。日本語の感覚のまま「濁っているかどうか」だけに意識を向けると、英語ネイティブが聞いている手がかりとズレが生じやすい。

この物差しのズレは、子音だけの問題ではない。母音の聞こえ方にも、同じような「日本語の耳のクセ」が影響する。その仕組みは母音の聞こえ方のクセを扱った記事で紹介されている。あの記事が母音の錯覚を扱うのに対し、本記事は子音そのものの仕組みを扱う。

具体的には、英語の語頭のP・T・Kは、日本語のパ・タ・カよりも息を出し始めるまでの時間が長い傾向がある。逆にB・D・Gは、日本語のバ・ダ・ガよりも息が先に出るタイミングが英語の方で違う位置にある。この「ズレの向き」を知っているだけでも、聞き取りの精度が変わってくる。

なお、日本語には半濁音(パ行)と濁音(バ行)という表記上の区別があるため、「濁点があるかどうか」という文字のイメージが強く残りやすい。しかし英語の耳の使い方は、文字の濁点とは関係のない、息のタイミングという音そのものの特徴に向いている。文字のイメージをいったん脇に置くことが、聞き取りの第一歩になる。

ここまでのまとめ: 日本語は主に「のどの震え」、英語は「息を出す前の時間の長さ」も手がかりにする。仕組みが違うため、日本語の感覚のままでは伝わりにくい。

3. 大人から練習しても、放っておくだけでは変わりにくい

英語学び直したいユーイチ
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やっぱり大人から始めたらもう手遅れですか…?

英語独学好きの助教S
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そこまでではありません。Flege の研究では、大人から学んだ人でも発音は変わりうると分かっています。ただ中間的な音で止まりやすいようです。

「発音は子どものうちにしか身につかない」という思い込みを持つ人は多い。しかし研究が示しているのは、少し違う結論である。

Flege の研究(= 大人になってから外国語を学んだ場合の発音を調べた研究)がある。この研究はスペイン語ネイティブの英語学習者を対象にした。子どもの頃に英語を学んだ人と、大人になってから学んだ人の発音が比較された。子どもの頃に学んだ人のVOTは、英語ネイティブとほとんど差がなかった。一方、大人になってから学んだ人のVOTは、母語と英語の「中間」の値に落ち着きやすかった。

この研究の対象はスペイン語話者であり、日本語話者ではない点には注意が必要だ。それでも、大人から始めても仕組みを理解すれば近づける余地はある。逆に意識しないと、中間的な発音のまま止まりやすい。この点は多くの学習者にとって参考になる知見である。

大人からの発音矯正そのものは、大人の発音矯正を研究で解説した記事で総論的に扱われている。本記事はその中でも、息の長さ(VOT)という一点に絞って掘り下げる位置づけになる。

ここまでのまとめ: 大人から学んだ場合、発音が母語と英語の中間で止まりやすい傾向がある。ただし近づける余地はある。

4. 「時間が解決してくれる」わけではない

英語学び直したいユーイチ
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英語使ってれば、そのうち自然に直りますよね?

英語独学好きの助教S
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実はRiney と Takagi の研究では、3年半使い続けても発音はほぼ変わらなかったと報告されています。意識した練習が必要なようです。

英語を長く使い続けていれば、自然に発音も直っていくと考える人は多い。ところがこの思い込みを覆す研究がある。

Riney と Takagi の研究(= 日本語話者の発音を3年半以上かけて追跡した研究)がある。日本語話者の英語学習者11名(比較のため英語ネイティブ5名も調査)が対象になった。42か月の間隔をあけて2回、英語のP・T・KのVOTが測定された。

結果は、VOTがほとんど変化していなかったというものだった。この安定性は、日本語と英語の音が似ているようで実は違う、という微妙な近さが原因ではないかと考察されている。さらに、VOTの値と外国語なまりの強さの評定との間には関連も見られた。

サンプルはわずか11名であり、この結果をすべての日本語話者に当てはめることはできない。それでも、「英語を話す機会が増えれば自然に直る」という期待だけに頼るのはリスクがある、という示唆は重要だ。意識して練習する対象として扱う方が、研究の裏付けに沿っている。

ここまでのまとめ: 英語を使い続けるだけでは、VOTは自然には変わりにくい傾向が報告されている。意識的な練習が必要になる。

5. なぜ聞き分けにくいのか — 母語の枠組みに当てはめて聞いてしまう仕組み

そもそも、なぜ日本語話者の耳には英語のPとBが同じように聞こえてしまうのか。ここには、耳の良し悪しとは別の仕組みが関わっている。

Best の理論(= 自分の母語で使い慣れた音の引き出しに、外国語の新しい音を当てはめて聞いてしまうという考え方)がある。この理論によれば、聞き手は外国語の音を聞くとき、母語の音のカテゴリーに近いものへ自動的に振り分けてしまう傾向がある。

日本語話者にとって、英語のPとBはどちらも「日本語のパ行・バ行に近い音」というカテゴリーに引き寄せられやすい。そのため、英語ネイティブほど細かく息の長さの違いに注意を向けにくくなる。これは意志や努力の不足ではなく、母語の聞き方のクセによるものだ。

なお、この「母語の枠組みに当てはめる」という考え方は、LとRの聞き分けを扱う別の理論的な枠組みとは異なるものである。破裂音の息のタイミングと、流れるような音(流音)の聞き分けとでは、脳が使っている仕組みそのものが違うと考えられている。

ここまでのまとめ: PとBが同じに聞こえるのは、母語の音の枠組みに当てはめて聞いてしまうという、耳の仕組み上のクセが原因である。

6. 実は「優先順位が低い」とされる音— それでも気になる理由

英語学び直したいユーイチ
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そんなに大事な音なら、なんで今まで話題にならなかったんですか?

英語独学好きの助教S
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実は研究上、この音の誤りは伝わらなさ全体への影響としては優先順位が低いとされています。ただ体感するもどかしさは別問題のようです。

ここまで読んで、「そんなに大事な音の違いなら、なぜ今まで扱われてこなかったのか」と感じた人もいるかもしれない。実はここに、研究と実感のギャップがある。

音の優先順位を研究でまとめた記事で紹介されている研究の整理がある。それによれば、聞き手が意味を取り損ねる原因のうち、個々の子音の誤りは優先順位が比較的低いとされている。単語のアクセント位置や母音の質のズレの方が、伝わらなさへの影響は大きいという。

つまり、P・B・T・D・K・Gの息の長さだけを完璧に直しても、それだけで劇的に伝わりやすくなるとは限らない。この点は正直に伝えておきたい。

それでも、多くの学習者が「伝わらないもどかしさ」として真っ先に体感するのは、この音の違いであることが多い。理由は単純で、聞き返されたときに「え、パって言ったのに」と直接的に気づきやすいからだ。研究上の優先順位と、本人が体感する悔しさは、必ずしも一致しない。両方を知っておくことが、練習の力の入れどころを見誤らないコツになる。

ここまでのまとめ: 個々の子音の誤りは、伝わらなさ全体への影響としては優先順位が低いとされる。ただし体感しやすい悩みではある。

7. 今日からできるセルフチェック法

英語学び直したいユーイチ
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特別な練習道具とか、必要なんですか…?

英語独学好きの助教S
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いいえ、紙が1枚あれば十分です。息の量を目で確かめながら練習する方法が、研究に基づく教科書でも紹介されています。

ここからは、特別な機材や教材を使わない、具体的な練習方法を紹介する。

1. 紙を口の前にかざして息の量を確認する。英語のP・T・Kを発音するとき、日本語のパ・タ・カよりも強く長く息が出ているかを、紙が揺れるかどうかで確認する。息の量が足りない場合は、意識して長めに息を出す練習をする。

2. B・D・Gは息を抑えて、声を先に出す。逆にB・D・Gは、息を強く出しすぎず、のどの震えを先に感じられるかを意識する。P・Bを交互に発音し比べると、違いを体感しやすい。

3. 1つの音に絞って練習する。Thomson と Derwing のレビュー研究(= 75件の発音指導の研究をまとめて調べた研究)がある。それによれば、あれもこれも直そうとするより、1つの音の特徴だけに絞った練習の方が、短い期間で変化が出やすい傾向があった。まずはPとBだけに絞って1週間続けてみるとよい。

4. 録音して自分の耳で確認する。自分の発音を録音し、聞き返してみることで、思っているよりも息の量が足りているかどうかを客観的に確認できる。発音指導の定番の教科書(= 発音指導の先生たちが長年使ってきた教育書)でも、こうした対照に基づく練習法が体系的にまとめられている。

5. 最小対で聞き分ける練習をする。最小対(= 1か所だけ違う双子の単語、というイメージ)とは、1つの音だけが違う単語のペアのことだ。「park」と「bark」、「time」と「dime」がその例にあたる。こうした対を聞き比べる練習も効果的とされる。発音指導の定番の教科書でも、この対の練習が体系的に紹介されている。

なお、海外生活の経験があっても、発音の直り方は人によって一様ではないことも報告されている。焦らず、自分のペースで続けることが大切だ。

ここまでのまとめ: 紙で息の量を確認する、B・D・Gは声を先に出す、1つの音に絞る、録音して確認する。この4つが今日からできる練習法になる。

8. よくある誤解と正しい心構え

最後に、この音の違いをめぐってよくある誤解を整理しておく。

誤解1「大きな声で言えば伝わる」。声の大きさは、息を出すタイミングの長さとは別の要素である。大きな声でも、タイミングがずれていれば別の音に聞こえてしまう。

誤解2「たくさん話せば自然に直る」。前述のとおり、自然に使い続けるだけではVOTはほとんど変化しないと報告されている。量よりも、意識の向け方が重要になる。

誤解3「耳が悪いから聞き分けられない」。聞き分けにくさの多くは、母語の音の枠組みに当てはめて聞いてしまうという、誰にでも起こる仕組みによるものである。耳そのものの良し悪しの問題ではない。

正しい心構えは、「息の長さという物差しの存在を知り、意識して練習する」という一点に尽きる。仕組みを知っているだけで、練習の効果は変わってくる。

ここまでのまとめ: 声の大きさや練習量だけでは解決しない。息の長さという物差しを意識することが、直り方の分かれ目になる。

よくある質問(FAQ)

Q1. VOTって結局何のことですか?
A. 唇や舌を離した瞬間から、声帯が震え始めるまでの時間の長さのことである。息だけが出ている時間の長さ、とイメージするとわかりやすい。

Q2. 大人からでも本当に直りますか?
A. 完全にネイティブと同じになるとは限らないが、近づける余地はあると研究で示されている。放置ではなく、意識した練習が前提になる。

Q3. PとBを間違えているつもりはないのに、なぜ聞き返されるのですか?
A. 本人の感覚と、実際に出ている息の長さがずれていることが多い。録音して確認すると気づきやすい。

Q4. L・Rの聞き分けと同じ練習をすればよいですか?
A. 使われている仕組みが異なるため、同じ練習法がそのまま当てはまるとは限らない。まずは息の長さに絞った練習から始めるとよい。

Q5. この練習だけで発音は劇的に良くなりますか?
A. 個々の子音の誤りは、伝わらなさ全体への影響としては優先順位が比較的低いとされている。過度な期待は禁物だが、体感的なもどかしさの解消には役立つ。

Q6. 優先順位が低いなら、練習する意味は薄いのでは?
A. 伝わらなさ全体で見れば影響は小さくても、聞き返される体験そのものが練習のやる気を削ってしまうことは多い。もどかしさの正体を知り、負担の少ない方法で対処できるなら、練習する価値は十分にある。

まとめ

英語のP・B、T・D、K・Gが同じ音に聞こえるのは、日本語の「濁っているかどうか」とは別の物差し、息を出し始めるタイミングの長さ(VOT)が原因である。この物差しは3段階の目盛りからなり、日本語と英語では使う位置が違う。

大人から学んでも近づける余地はあるが、自然に使い続けるだけでは変わりにくいと報告されている。母語の音の枠組みに当てはめて聞いてしまうという、誰にでも起こる仕組みも影響している。

伝わらなさ全体への影響としては優先順位が低いとされる音ではあるが、多くの学習者が最初に体感するもどかしさでもある。紙で息の量を確認する、1つの音に絞って練習する、録音して聞き返す。この積み重ねが、意識して直すための第一歩になる。

参考文献

  1. Lisker, L., & Abramson, A. S. (1964). A Cross-Language Study of Voicing in Initial Stops: Acoustical Measurements. Word, 20(1), 384-422. https://doi.org/10.1080/00437956.1964.11659830
  2. Flege, J. E. (1991). Age of learning affects the authenticity of voice-onset time (VOT) in stop consonants produced in a second language. Journal of the Acoustical Society of America, 89(1), 395-411. https://doi.org/10.1121/1.400473
  3. Riney, T. J., & Takagi, N. (1999). Global Foreign Accent and Voice Onset Time Among Japanese EFL Speakers. Language Learning, 49(2), 275-302. https://doi.org/10.1111/0023-8333.00089
  4. Best, C. T. (1994). Perceptual Learning of Nonnative Speech Contrasts: Implications for Theories of Speech Perception. In The Development of Speech Perception. https://doi.org/10.7551/mitpress/2387.003.0010
  5. Thomson, R. I., & Derwing, T. M. (2015). The Effectiveness of L2 Pronunciation Instruction: A Narrative Review. Applied Linguistics, 36(3), 326-344. https://doi.org/10.1093/applin/amu076
  6. Nakashima, H. (1996). Voice onset time of Japanese and English stop consonants uttered by the returnees (Japanese-English bilinguals). Journal of the Acoustical Society of America, 100(4), 2637. https://doi.org/10.1121/1.417033
  7. Keating, P. A. (1984). Phonetic and Phonological Representation of Stop Consonant Voicing. Language, 60(2), 286-319. https://doi.org/10.2307/413642
  8. Celce-Murcia, M., Brinton, D. M., & Goodwin, J. M. (2010). Teaching Pronunciation: A Course Book and Reference Guide (2nd ed.). Cambridge University Press. https://openlibrary.org/works/OL15596277W

最終更新日: 2026-09-12
著者: 中村 拓(Taku Nakamura)(greencafe 編集部 編集責任者・非ネイティブ話者)。公開された8件の研究エビデンス(tier 1=6件 / tier 2=1件 / tier 3=1件)を横断分析・再構成した。
画像: いらすとや (https://www.irasutoya.com/) より

この記事を編集した人

中村 拓(Taku Nakamura)のポートレート

(編集責任者 / 応用言語学・第二言語習得 エディター(非ネイティブ話者))

応用言語学のバックグラウンドを持つ英語学習分野のエディターで、査読済み SLA 論文・応用言語学ジャーナル・公的機関資料の横断要約と再構成を担当する編集責任者です。非ネイティブ英語話者で、大人の英語学び直しを研究の視点で編集しています。

編集した記事: 119 本

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