英語の勉強中に音楽はアリ?|研究でわかる「じゃまな曲・平気な曲」

勉強中に音楽を流してるんですけど、これってダメなんですか?

気持ちはわかります。結論から言うと、ダメかOKかの二択ではないんです。研究では、何の作業をしているかで答えが変わると示されています。

でも静かすぎると眠くなるんですよね…どうしたらいいのか。

多くの人がそうです。勉強中の音楽は心理学で長く調べられてきたテーマで、集中を助ける面とじゃまする面の両方が報告されているんですよ。

研究って言われても、僕の勉強に当てはまるんですか?

大丈夫です。研究は「どんな曲を、どんな作業中に流すか」という条件の組み合わせで整理されているので、自分の勉強に置きかえて選べますよ。

じゃあ、具体的にどの曲なら流していいんですか?

この記事では、実験で確かめられた研究を1つずつ順番に見ていきます。読み終わるころには、自分の作業に合った音の選び方が分かりますよ。
結論: BGM (= 勉強中に後ろで流す音楽) の研究をまとめた分析では、音楽の効果は全体で平均するとほぼゼロだった。
ただし作業によって向きが分かれ、読む作業はじゃまされやすく、記憶にも小さな悪影響があった。
特に歌詞のある曲は、言葉の記憶や読解を下げたという研究が複数ある。
英単語の暗記や英文を読むときは、歌詞なしか無音が安全側だ。音楽のよい面は、気分が上がってシャキッとすることにある。
この記事でわかること
- 勉強中の音楽が「あり・なし」の二択ではなく「作業による」と言える理由
- 歌詞のある曲が、英単語の暗記や英文の読解をじゃましやすい仕組み
- 外国語の単語学習を、音楽あり・なしで比べた 2 つの研究の結果と条件の違い
- 好きな曲・速い曲・大きい音の影響と、作業ごとの使い分け
研究をまとめると「音楽の効果は全体ではほぼゼロ」

「メタ分析」って言われても、正直ピンと来なくて…

たくさんの研究を集めて平均を出す方法です。BGMのメタ分析では、プラスとマイナスが打ち消し合って、全体の効果はほぼゼロでした。
勉強中の音楽は、はかどるのか、気が散るのか。
ここで手がかりになるのが、Kämpfe らのメタ分析だ。
メタ分析とは、たくさんの研究結果を集めて全体の傾向を計算する方法のことだ。
つまり、クラス全員のテストを集めて平均点を出すようなものだと考えるとわかりやすい。
この分析の対象は、BGM を聴く大人だ。
BGM とは、作業中に後ろで流れている音楽のことを指す。
全体をまとめると、BGM の効果はゼロだった。
ただし、これは「音楽は何も起こさない」という意味ではない。
よい効果と悪い効果が打ち消し合い、平均するとゼロに見えた可能性が高い、と著者は述べている。
プラス 10 点の人とマイナス 10 点の人がいれば、平均はゼロになるのと同じだ。
BGM あり・なしを比べた研究に絞ると、はっきりした向きが見えてくる。
- 読む過程 (= 文字を目で追って意味をつかむ流れ) は、BGM でじゃまされていた
- 記憶には、小さな悪影響があった
- 一方で、気持ちの反応にはよい影響があり、スポーツの成績も上がっていた
- 曲の速さは、聴きながら行う動きの速さに影響していた
ただし著者自身も、効果の大きさを計算できる研究は少なかったと述べている。
別の実験室の研究でも、音楽の効果は「音楽・作業・やる人」の 3 つで決まると結論している。
同じ曲でも、何をするか、誰がやるかで味方にも敵にもなる、ということだ。
ここまでのまとめ: BGM の効果は全体で平均するとゼロだったが、読む作業や記憶にはマイナス、気分にはプラスと向きが分かれていた。答えは「作業による」だ。
歌詞が英単語の暗記をじゃまする仕組み

歌詞は聞き流してるつもりなんですけど、影響あるんですか?

実はあるんです。歌入りの曲を流して数字を覚えた実験では、楽器だけの曲よりじゃまが大きくなりました。歌詞が頭の「言葉のメモ帳」に勝手に入るからです。
では、なぜ言葉の作業は音楽にじゃまされやすいのか。
鍵になるのが「作業記憶」という頭のはたらきだ。
作業記憶とは、言葉や数字を一時的に頭の中に置いておく場所のことだ。
言い換えると、頭の中にある小さな「言葉のメモ帳」のようなものだ。
このメモ帳のじゃまをするのが「無関係音効果」だ。
聞かなくていい音でも、言葉っぽい音だと、メモ帳に勝手に書きこまれてしまう現象を指す。
聞いていない話し声でも、外国語の話し声でも、目で見た言葉の記憶はじゃまされる。
一方、ザーッという雑音では、はっきりした低下は起きないとされる。
Salamé と Baddeley の実験 (= 歌や雑音を流しながら数字を覚えてもらった実験) は、これを音楽で確かめた。
課題は、画面に出る 9 けたの数字を順番どおりに思い出すことだ。
- 実験 1: 歌入りの音楽も楽器だけの音楽も、無音より成績を下げた。歌入りのほうがじゃまは大きかった
- 実験 2: 練習を積んだ人では、楽器だけの音楽は無音とはっきりした差がなかった
- 実験 3: じゃまの大きさは「話し声 > 楽器だけの音楽 > 雑音 ≒ 無音」の順だった
つまり、音が「言葉に近いほど」記憶へのじゃまが大きくなる、という並びだ。
ただし、この課題は数字の記憶で、英単語の暗記そのものではない点に注意したい。
もっと新しい研究でも、同じ向きの結果が出ている。
Souza らの実験 (= 大学生に 4 種類の課題を 3 つの音の条件でやってもらった実験) だ。
- 歌詞のある音楽は、言葉の記憶・見た物の記憶・読解を下げた
- その差は d ≈ -0.3 (= クラスの平均点が少しだけ下がる、くらいの「小さめだが無視できない差」) だった
- 楽器だけの音楽 (lo-fi ヒップホップ = ゆったりしたリズムの、歌のない作業用の曲) は、成績をはっきり上げも下げもしなかった
計算の課題への悪影響 (d = -0.19) は、確かとは言えなかった。
ここまでのまとめ: 歌詞のような言葉っぽい音は、頭の中の「言葉のメモ帳」を勝手に使ってしまう。歌詞のある音楽は、言葉の記憶や読解を下げていた。
英文を読むときに英語の歌はもっとじゃまになる

洋楽なら英語の勉強も兼ねられると思ってました…

多くの人がそう考えます。大学生の実験では、読む文章と同じ言語の歌ほど読解の点が下がりました。2人に同時に話しかけられるような状態です。
「洋楽を聴きながらなら、英語の勉強も兼ねられるのでは」と考える人もいる。
これに近い問いを調べたのが、Sun らの実験 (= 歌の言語を変えて読解を比べた実験) だ。
対象は中国東部の大学生 90 人だ。
中国語のポップス・英語のポップス・音楽なしの 3 つのグループに、30 人ずつランダムに分けた。
ランダムとは、くじ引きのように偶然でグループを決めることだ。
そのうえで、中国語と英語の文章を読ませた。
- 歌詞のある音楽は、音楽なしに比べて読解の成績を下げた
- 読んでいる文章と同じ言語の歌詞のほうが、読解をより大きく下げた
- 普段音楽を聴きながら読む人・聴かない人のどちらでも、母語である中国語の歌詞の条件で正答率が最も低かった
英語の文章を読みながら英語の歌を聴くのは、2 人に同時に話しかけられるようなものだ。
同じ言語どうしだと、頭の中で混線しやすい。
日本の読者に当てはめると、英文を読むときの洋楽はぶつかりやすく、日本語の歌も安心とは言えない。
ただし対象は中国の大学生で、1 回の実験での結果だ。
同じ研究では、普段から音楽を聴きながら読む人も調べている。
その人たちは、聴かない人よりじゃまが小さかった。
ここまでのまとめ: 歌詞のある曲は読解を下げ、読む文章と同じ言語の歌詞ほどじゃまが大きかった。英文を読みながらの洋楽は、勉強を兼ねるどころかぶつかりやすい。
外国語の単語学習を音楽あり・なしで比べた 2 つの研究

覚えた単語が残らないのって、音楽のせいですか?

心配になりますよね。知っている言語の歌を流して単語を覚えた実験では、直後のテストは下がりましたが、1週間後には差が消えていました。
では、外国語の単語を覚えること自体は、音楽でどう変わるのだろうか。
ここでは結果の向きが違う 2 つの研究を、条件の違いとして並べる。
知っている言語の歌は、その日は覚えにくいが 1 週間後には差が消えた
1 つ目は de Groot と Smedinga の研究 (= 歌の言語を変えて外国語の単語を覚えてもらった実験) だ。
参加者は、外国語の単語と意味をペアで覚えた。
単語カードの表と裏をセットで覚えるようなやり方だ。
音の条件は次の 3 つだった。
- 無音
- 知っている言語の歌詞の、歌入り音楽
- 知らない言語の歌詞の、歌入り音楽
学習中と直後のテストでは、知っている言語の歌詞の条件が、他の 2 つより成績が悪かった。
ところが、この悪影響は短い間だけで、1 週間後のテストでは見られなくなった。
著者は、このじゃまを「音韻ループ」のはたらきで説明している。
音韻ループとは、さきほどの「言葉のメモ帳」の中で、音を口の中でくり返して保つ部分のことだ。
意味がわかる歌詞ほど、このくり返しに割りこみやすい、というイメージだ。
教材の伴奏音楽は、中国語では助けになった
2 つ目は Kang と Williamson の研究 (= 2 週間、音楽つきの教材で外国語を学んでもらった研究) だ。
参加者は、初心者向けの CD 教材で中国語またはアラビア語を学んだ。
年齢・性別・音楽経験・作業記憶の力などをそろえたグループを、くじ引きのように 2 つに分けた。
一方は伴奏音楽入りの CD、もう一方は音楽なしの CD だ。
- 中国語の学習者では、音楽入りの CD のほうが、思い出すテストと翻訳のテストで成績がよかった
- アラビア語の学習者や、中国語の発音の力には、音楽の効果は見られなかった
なお、歌詞があったかどうかは、論文の要約には書かれていない。
学ぶ言語は参加者が自分で選んでおり、中国語を選んだ人はすべてのテストで成績がよかった。
2 つの研究は「矛盾」ではなく「条件の違い」
2 つの研究は、音楽の種類も学び方も測った時期も違う。
| 比べる点 | de Groot と Smedinga | Kang と Williamson |
|---|---|---|
| 音楽 | 歌入り (歌詞の言語を変えた) | 教材に付いた伴奏音楽 |
| 学び方 | 実験室で単語のペアを覚える | CD 教材で 2 週間学ぶ |
| 結果 | 知っている言語の歌で直後だけ低下 | 中国語だけ思い出しと翻訳が向上 |
片方だけで「音楽は敵」「音楽は味方」とは言い切れない。
言えるのは、「どんな音楽で、どんな学び方を、いつ測ったか」で結果が変わる、ということだ。
de Groot と Smedinga の研究では、歌の悪影響は 1 週間後には消えていた。
単語が長く残るかどうかには、復習のタイミングという別の要因も関わる。
その点は英単語が1週間で消えるのはなぜ?|忘却曲線で分かった「定着する人だけがやっている復習タイミング」で詳しく扱っている。
ここまでのまとめ: 知っている言語の歌詞は単語学習を直後だけ下げ、教材の伴奏音楽は中国語で助けになった。結果の違いは、音楽の種類・学び方・測った時期の違いとして読むのが正確だ。
「好きな曲なら大丈夫?」に答える

好きな曲なら集中できる気がするんですけど…

その感覚はよくわかります。ある実験では、好きな曲と無音で読解の点は変わらず、聴きたくない曲のときだけ点が下がっていました。
「好きな曲なら集中できるから平気」と感じる人は多い。
この疑問に近いのが、Johansson らの実験 (= 曲の好みを変えて読解と目の動きを調べた実験) だ。
大学生 24 人が、4 つの条件で文章を読み、毎回読解テストを受けた。
- 勉強中に聴きたい、好きな音楽
- 勉強中には聴きたくない音楽
- カフェの雑音の録音
- 無音
結果は、聴きたくない音楽のときだけ、無音より読解の点数がはっきり低かった。
好きな音楽・カフェの雑音・無音の間には、はっきりした差は見られなかった。
ただし「好きな曲なら成績が上がる」ではなく、好きな曲は無音と差がなかった、という結果だ。
さらに、目の動きには条件による差がなかった。
著者は、聴きたくない曲でじゃまされていることに本人が気づかず、読み方を変えないためだと考えている。
苦手な曲が流れていると、普段どおり読めているつもりでも点が下がっている、ということだ。
一方で、歌詞については逆の傾向も報告されている。
Souza らの実験では、参加者は歌詞が悪影響を与えることに気づいていた。
そして、楽器だけの音楽は「役に立った」と感じられることがあった。
つまり、「集中できる気がする」という感覚は、ときどきテストの結果とずれる。
自分の感覚が悪いわけではないので、一度だけ無音の日と比べてみるとよい。
ここまでのまとめ: 好きな曲は無音と差がなく、聴きたくない曲で読解が下がった。「集中できている」という感覚と実際の成績は、ずれることがある。
速くて大きい曲は、読む力を落としやすい

えっ、曲の速さまで関係あるんですか?

関係します。楽器だけの曲でも、速くて大きい音の条件では読解の点が無音より下がった実験があります。横で早口の大声がする感じです。
次に、曲の速さと音の大きさを見てみよう。
Thompson らの実験 (= 曲の速さと音量を組み合わせて読解を比べた実験) が手がかりになる。
テンポとは、曲の速さのことだ。
この実験では、楽器だけの音楽を、テンポと音量で 4 つの条件に分けた。
- 遅くて小さい
- 遅くて大きい
- 速くて小さい
- 速くて大きい
各条件で 25 人が 4 分間で文章を読み、3 分間で 6 問の選択問題に答えた。
比べる基準は、別の人たちが無音で受けたときの成績だ。
結果は、速くて大きい条件のときに、読解が無音の基準よりはっきり低かった。
速くて大きい音楽は、横で誰かが早口の大声で話しているようなものだ。
注意したいのは、遅い曲や小さい音が無音より「よかった」とは書かれていない点だ。
「遅くて静かな曲なら読解が伸びる」ではなく、「速くて大きい曲は避けたほうが無難」が正確だ。
日常に置きかえると、カフェで読むときの店内 BGM や、通勤中に大きめの音で聴くイヤホンが近い。
通勤時間に何をするかは、通勤時間の英語は結局どれが効くのか|シャドーイング・音読・ながら聞きを研究で線引きで整理している。
ここまでのまとめ: 楽器だけの音楽でも、速くて大きいときは読解が下がった。音楽を流すなら、遅めで小さめにしておくのが無難だ。
音楽のよい面は「頭がよくなる」ではなく「気分とシャキッと感」
では、音楽によい面はないのだろうか。
有名なのが「モーツァルト効果」だ。
モーツァルトの曲を聴いたあとに、図形などの課題の成績がよくなる、という主張のことだ。
これを調べたのが、Thompson らのもう 1 つの実験 (= 明るい曲と悲しい曲を聴いたあとの成績を比べた実験) だ。
参加者は、音楽を聴いたあとか、無音で座ったあとに、空間の課題 (= 図形を頭の中で思い浮かべて考える問題) を受けた。
音楽は、明るく元気なモーツァルトか、遅く悲しいアルビノーニの曲だった。
- 音楽を聴いたあとのほうが成績はよかったが、それはモーツァルトを聴いた人だけだった
- 2 つの曲は、楽しさ・覚醒 (= 目が覚めてシャキッとしている度合い)・気分に違いを生んでいた
- その違いを計算でそろえると、モーツァルト効果は消えた
つまり、モーツァルトで頭がよくなったのではなく、元気な曲で気分が上がった結果だ、という説明だ。
メタ分析でも、BGM は気持ちの反応にはよい影響があった。
また、複雑な音楽は単純な作業の成績を上げた、という実験もある。
料理しながらの鼻歌はよくても、計算ドリルでは逆効果になりやすい、というイメージだ。
ここから考えられるのは、「勉強の前や休憩中に、明るく元気な曲で気分を上げる」という使い方だ。
ただしこれは研究からの示唆で、英語学習で効果が確かめられた方法ではない。
実験の課題は空間の課題で、しかも音楽は課題の「前」に聴いていた。
ここまでのまとめ: モーツァルト効果は、気分と覚醒による見かけの効果だった。音楽のよい面は「頭がよくなる」ではなく、気分を上げてシャキッとさせることにある。
作業ごとの使い分けと、研究がまだ言えていないこと
ここまでの研究から、作業ごとに言える範囲を整理してみよう。
| 作業 | 研究から言える範囲 |
|---|---|
| 英単語の暗記 | 歌詞のある曲、特に意味がわかる歌は避ける。歌詞なしか無音が安全側 |
| 英文の読解 | 歌詞のある曲、特に英語の歌は避ける。速くて大きい曲も避ける |
| リスニング | 英語の音声に別の音楽を重ねない (研究からの示唆) |
| 単語カード作りなど単純作業 | 複雑めの音楽を流してもよい可能性がある |
| 勉強の前・休憩中 | 明るく元気な曲で気分を上げる使い方が考えられる |
リスニングは、耳から入る英語そのものを「言葉のメモ帳」に入れる作業だ。
そこに別の音楽を重ねると、同じ通り道に 2 つの音を通すことになる。
これは作業記憶の考え方からの示唆で、リスニング中の音楽を直接調べた研究ではない。
聞く練習で集中が続かない理由は、英語リスニングの集中力が続かない理由|脳の仕組みで分かる15分の壁でも扱っている。
音読やシャドーイングのように、自分の声を出す作業は、ここで紹介した研究では調べられていない。
自分の声と歌詞が重なる作業なので、歌詞のある曲は止めておくのが無理のない選び方だと考えられる。
一方で、研究がまだ言えていないこともはっきりさせておきたい。
- 研究の多くは、大学生を対象にした短い時間の実験だ
- 日本の社会人が毎日の英語学習で BGM を長く使った効果を確かめた研究は、ここで集めた中には無い
- 「洋楽を聴けば英語の勉強になる」は、歌で英語を学ぶ別の研究の話で、この記事の範囲外だ
ここまでのまとめ: 言葉を覚える・読む作業では歌詞を避ける、が研究から言える使い分けだ。単純作業では音楽が助けになることもあり、休憩中に気分を上げる使い方は研究からの示唆にとどまる。リスニング中に音楽を重ねないのは、研究からの示唆にとどまる。社会人の長い期間の効果はまだ確かめられていない。
勉強用の音楽を AI で作れば、研究の条件を満たせるか
ここまでの研究で、言葉の作業にじゃまになりにくい音の条件が見えてきた。
「歌詞がない」「速すぎず大きすぎない」「周りの話し声が少ない」という条件だ。
では、生成 AI で歌詞のない勉強用の曲を作れば、この条件を満たして勉強がはかどるのだろうか。
生成 AI とは、指示を出すと文章や音楽を新しく作ってくれる仕組みのことだ。
これに近い点を調べた小さな研究が 1 つある。
17 人が、AI が作った 3 種類の音楽と無音で、数字の記憶と画像の記憶の課題を行った。
数字の記憶では無音が最も正確で、画像の記憶では明るい曲が成績の向上と結びついていた。
集中向けの曲が長い勉強で最も好まれたが、著者自身が「予備的な証拠」(= 確かめ始めたばかりの、まだ弱い手がかり) と位置づけている。
また、AI が作った曲と人が作った曲を比べた研究ではないので、「AI 製だから効く」とは言えない。
周りの話し声を減らす方法としては、ノイズキャンセリングもある。
周りの音と逆の波をぶつけて、音を打ち消して小さくする機能のことだ。
オフィスの話し声の中で調べた研究では、この機能は「静かに感じる」評価を上げた。
しかし、順番どおり思い出すテストの成績は変わらなかった。
静かに感じることと、点が上がることは別だった、ということだ。
つまり、AI で歌詞のない曲を作ることはできても、それで英単語の暗記や読解がはかどるかは別の問いだ。
この点を AI で確かめた研究は、まだ少ない。
今の研究とつじつまが合うのは、言葉の作業中は無音を基本にし、AI の曲は単純作業や休憩で試す使い方だ。
ここまでのまとめ: AI が作った音楽でも、数字の記憶では無音が最も正確だった。英語の学習で AI の曲を確かめた研究はまだ少なく、効果は言い切れない。
よくある質問
Q1. 歌詞のない曲なら、英単語の暗記中に流しても大丈夫ですか?
A. 楽器だけの音楽は、歌入りよりじゃまが小さかったという研究が複数あります。ただし速くて大きい曲は読解を下げたので、遅めで小さめが安全側です。
Q2. 日本語の歌なら英語とぶつからないので平気ですか?
A. 平気とは言えません。知っている言語の歌詞は、外国語の単語学習を直後に下げました。読解でも、母語の歌詞の条件で正答率が最も低い研究があります。
Q3. 洋楽を聴きながら勉強すれば、英語の勉強も兼ねられますか?
A. 英文を読むときは、同じ言語の歌詞ほど読解を下げました。歌で英語を学ぶのは別の研究の話なので、読む・覚える作業とは分けたほうが無理がありません。
Q4. 普段から音楽を聴きながら勉強していれば、慣れて平気になりますか?
A. 普段から聴く人は、じゃまが小さかった研究があります。ただしその人たちでも、母語の歌詞の条件で正答率が最も低くなっていました。
Q5. モーツァルトを聴くと英語の成績が上がりますか?
A. そうとは言えません。モーツァルト効果は、気分とシャキッと感で説明できる見かけの効果でした。英語の学習で確かめた研究でもありません。
まとめ
BGM の研究をまとめると、音楽の効果は全体では平均してゼロに近い。
ただし作業によって向きが分かれ、読む作業や記憶はじゃまされやすく、気分にはよい影響がある。
歌詞のある曲は、言葉の記憶や読解を下げた。
外国語の単語学習では、知っている言語の歌が直後だけ成績を下げ、教材の伴奏音楽は中国語で助けになった。
好きな曲は無音と差がなく、速くて大きい曲は読解を下げた。
英単語の暗記や英文を読むときは歌詞なしか無音、単純な作業では音楽を使ってもよく、休憩中に気分を上げる使い方も考えられる。
これが、今の研究から言える範囲と、そこからの示唆での使い分けだ。
社会人の長い期間の効果はまだ確かめられていないので、自分でも無音の日と比べて確かめてほしい。
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最終更新日: 2026-10-09
著者: 中村 拓(Taku Nakamura)(greencafe 編集部 編集責任者・非ネイティブ話者)。公開された 12 件の研究エビデンス(tier 1=11 件 / tier 2=1 件)を横断分析・再構成した。
画像: いらすとや (https://www.irasutoya.com/) より
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