- 英単語は手で書くと覚えやすい?|脳の研究で分かったタイピングとの違い
- まず分けて考える|「脳がよく働いた」と「単語を覚えた」は別の話
- 新しい文字の形を覚えるなら、手書きに利点がある研究
- 手で書くと脳の広い範囲が一緒に働く|脳波の研究
- 日本の研究|紙の手帳の実験と、外国語の単語の実験
- テストの点で比べると|「白紙のテスト」と「選ぶテスト」で結果が違った
- 書き写しの落とし穴|写すことに気を取られると、単語を自分で出す力が伸びにくい
- ノートは手書きかパソコンか|研究ごとに結論が揺れている
- 研究から言える使い方|「何のために書くか」で分けて考える
- AI に単語帳を作らせると「自分で書く手間」はどうなるか
- よくある質問
- まとめ
- 参考文献
- この記事を編集した人
英単語は手で書くと覚えやすい?|脳の研究で分かったタイピングとの違い

英単語って、やっぱり手で書かないと覚えられないんですか?

気持ちはわかります。手書きは昔からよく勧められてきましたよね。実は研究を並べてみると、この話は思ったより込み入っているんですよ。

僕、仕事中はずっとパソコンで、ペンを持つことがほぼないんです…

多くの社会人がそうです。研究の世界でも、手書きとキーボードの比べ方は、脳を測る方法やテストの点を見る方法など、いろいろあるんです。

でも研究の話って難しそうで、僕にも使えるか正直不安です。

大丈夫です。研究は「何を測ったか」を分けて読むと、ぐっと分かりやすくなります。読み方さえ押さえれば、自分の勉強に当てはめられますよ。

じゃあ、具体的にはどこから読んでいけばいいですか?

この記事では、手書きとタイピングを比べた研究を一つずつ順番に見ていきます。最後に、生成 AI との付き合い方も研究の範囲で考えますね。
結論: 脳の研究では、手で書いたり絵を描いたりするとき、脳の広い範囲が一緒に働く様子が報告されています。ただし、それで覚えた量が増えたかは測られていない研究が多いです。新しい文字の形を初めて覚える実験では手書きが有利でした。一方、外国語の単語を書き写すと、その単語を自分で言う・書く力がかえって下がった研究もあります。研究から言えるのは、「手書きかタイピングか」だけでは覚えやすさは決まらない、ということです。
この記事でわかること
- 「脳がよく働いた」と「単語をたくさん覚えた」を分けて読むべき理由
- 手書きが有利だった研究と、差が出なかった研究のそれぞれの中身
- 単語を書き写すときに起きやすい落とし穴
- 研究の範囲で言える、手書き・タイピング・スマホ入力の使い分け
まず分けて考える|「脳がよく働いた」と「単語を覚えた」は別の話

「脳が活性化する」なら、覚えやすいってことじゃないんですか?

そう思いますよね。でも日本の研究では、脳の反応に差が出てもテストの点に差が出なかった例があります。汗をかくことと足が速くなることは別なんです。
手書きの話でよく聞くのが「手で書くと脳が活性化するから覚えやすい」という説明です。ところが、この一文には 2 つの別の話が混ざっています。
1 つ目は「脳がどれだけ働いたか」です。これは脳波や脳画像で測ります。
脳波 (EEG) は、頭にのせたセンサーで脳の小さな電気の動きを記録する方法です。脳のどこがどんなリズムで動いているかを、外から聞き取る聴診器のようなものです。
fMRI は、大きな筒状の装置に入り、脳のどこで血の流れが増えたかを画像にする方法です。脳の中で「明かりがついた部屋」を地図にするイメージです。
2 つ目は「単語をどれだけ覚えたか」です。こちらはテストの成績で測ります。
体育の授業でたとえると分かりやすくなります。汗をたくさんかいたことと、足が速くなったことは同じではありません。脳の研究もこれと同じです。脳の活動に違いが出ても、それがそのままテストの点の差を意味するとは限りません。
実際、日本の研究では、脳の反応に差が出てもテストの点には差が出なかった例があります。
ここまでのまとめ: 「脳がよく働いた」と「単語をたくさん覚えた」は別の話です。脳の活動の差は、そのままテストの点の差とは限りません。
新しい文字の形を覚えるなら、手書きに利点がある研究

手で書くと有利だった研究って、どんな実験なんですか?

大人が初めて見る文字の形を覚える実験です。手で書いた人のほうが、左右反対の形を見分けやすかったんですよ。指が形を覚えているイメージです。
最初に見るのは「見たことのない文字の形を覚える」実験です。ここでは手書きに利点が出ています。
Longcamp らの研究 (2008 年) は、大人に新しい文字の書き方を教えた実験です。文字は、紙とペンで手書きするか、キーボードで打つかのどちらかの方法で覚えました。
そのあと、正しい形の文字と、鏡に映したように左右が反対の形を見分けるテストをしました。
結果は、手で書いて覚えた文字のほうが、向きを見分ける力が強いというものでした。その差は数週間続いたと報告されています。
脳画像 (fMRI) では、手書きで覚えた文字を見分けるとき、動作に関わる脳の部位の活動が大きかったとされます。指が形を覚えていて、見比べるときの手がかりになる、というイメージです。
Wiley と Rapp の研究 (2021 年) では、アラビア文字を知らない大人 42 人が 20 字を学びました。練習方法はタイピング・見るだけ・手書きの 3 つです。
手書きで練習した人は、ほかの方法の人に比べて覚えるのが速かったと報告されています。練習していない課題、たとえば読みやつづりへの広がりも大きかったとされます。
ただし注意があります。2 つとも「まったく新しい文字の形」を覚える研究です。すでに知っているアルファベットで、英単語の意味を覚える場面とは違います。
日本人の大人が英単語を覚えるとき、a や b の形はもう知っています。ですから、この結果を「英単語も手書きで覚えるべき」とそのまま読むことはできません。
ここまでのまとめ: 大人が新しい文字の形を覚える実験では、手書きが有利でした。ただし、英単語の意味を覚える場面とは別の話です。
手で書くと脳の広い範囲が一緒に働く|脳波の研究

脳波って聞くとすごそうですけど…そもそも何なんですか?

頭にのせたセンサーで脳の電気の動きを記録する方法です。手書きでは脳の広い範囲が一緒に働きましたが、覚えた量までは測っていない研究が多いんです。
次は、手書きの話でよく引用される脳波の研究です。ノルウェーの研究グループによる 3 本を順に見ます。
2017 年の研究は、若い大人の脳波を 256 個のセンサーで記録しました。
この研究で比べたのは、文字の手書きではありません。タブレットにペンで絵を描く場合と、キーボードで単語を打つ場合でした。
絵を描くときは、学習に向いているとされるリズムの脳活動が、頭のてっぺんから後ろの部分で見られました。キーボードでは別の活動が見られましたが、学習との関係ははっきりしないと著者ら自身が書いています。
2020 年の研究は、若い大人 12 人と 12 歳の子ども 12 人が対象です。単語を、デジタルペンの筆記体・キーボード・絵の 3 通りで書いてもらいました。
大人では、ペンで書くとき、脳のあちこちが同じリズムでそろって動く様子が見られました。オーケストラの音がそろうのを見たようなものです。
子どもでも同じパターンが見られましたが、大人より弱かったとされます。参加者は合計 24 人と少ない点にも注意が必要です。
2024 年の研究は、大学生 36 人が対象です。単語をデジタルペンで手書きする場合と、キーボードで打つ場合の脳波を比べました。
手書きのときは、脳の部分どうしのつながりがずっと複雑でした。脳の中の町どうしを結ぶ道が、たくさん使われていたようなイメージです。
ここで大事なのは、3 本とも測ったのは脳の活動だという点です。単語をどれだけ覚えたかという成績は、要約では報告されていません。
「学習に有利」という判断は、ほかの研究の知見をもとにした著者らの解釈です。町の道がにぎわっていても、町が豊かになったかはまだ測っていない段階です。
ここまでのまとめ: 手で書くと脳の広い範囲が一緒に働く様子が、脳波の研究で示されています。ただし、覚えた量の差までは測っていません。
日本の研究|紙の手帳の実験と、外国語の単語の実験

日本の研究だと、手書きとキーボードで結果は違ったんですか?

インドネシア語の単語を学んだ研究では、脳の反応には差が出ましたが、テストの点は書く道具で変わりませんでした。手書き中は気分が前向きだったそうです。
1 本目は、東京大学の研究グループによる Umejima らの研究 (2021 年) です。紙の手帳とデジタル機器で書いた内容を、あとで思い出すときの脳を調べました。
参加者は、紙の手帳・タブレット・スマホのどれかで予定を書き込みました。約 1 時間後、予定を思い出すテストを fMRI の中で受けました。
紙の手帳のグループは、書き込む時間が短く、比較的やさしい問題の正答率が大きく高かったと報告されています。
思い出すときの脳では、海馬 (= 記憶の「入り口」にあたる部分) などの活動が、紙のグループで高かったとされます。一方、全体の課題成績はグループ間で同じくらいでした。
ただし、これは予定を書き留める実験で、英単語の学習ではありません。
2 本目は、Ihara らの研究 (2021 年) です。日本語を母語とする大人が、知らない外国語であるインドネシア語の単語を学びました。
学び方は、紙にペンで書く・タブレットにデジタルペンで書く・キーボードで打つの 3 通りでした。
学んだ直後に、N400 という脳波を測りました。N400 は、言葉の意味に脳が反応したときに出る小さな電気の波です。脳の中の「ピンときたサイン」のようなものです。
デジタルペンに慣れた人では、ペンで学んだ単語のほうがキーボードより N400 の反応が大きかったとされます。慣れていない人では、インクのペンのほうがキーボードより大きかったそうです。
ところが、テストの成績は書く道具によって変わりませんでした。脳の反応には差が出たのに、点数には差が出なかったのです。
さらに、手書き中は前向きな気分がタイピング中より高かったと報告されています。著者らは、手書きの利点は気分による可能性もあると述べています。
ここまでのまとめ: 日本の研究でも、紙とデジタル機器、ペンとキーボードで、脳の活動には差が見られました。ただし外国語の単語の研究では、テストの成績に差は出ていません。
テストの点で比べると|「白紙のテスト」と「選ぶテスト」で結果が違った
Mangen らの研究 (2015 年) は、19-54 歳の女性 36 人が対象です。読み上げられた単語を、紙に手書き・ノートパソコン・iPad の画面キーボードで書き取りました。
そのあと、何も見ずに思い出す「白紙のテスト」と、リストを見て選ぶ「選択肢つきのテスト」を受けました。
白紙のテストでは、手書きした単語のほうが、ノートパソコンと iPad の画面キーボードという 2 種類のキーボード入力より有意によく思い出せました。「有意に」とは、偶然とは考えにくい差だった、という意味です。
一方、選ぶテストでは、書き方による差はありませんでした。
この研究で書き取ったのは、すでに知っている母語の単語です。外国語の新しい単語を覚える研究ではない点に注意が必要です。
ここまでのまとめ: 知っている単語を書き取った実験では、白紙のテストだけ手書きが有利でした。選ぶテストでは差はありませんでした。
書き写しの落とし穴|写すことに気を取られると、単語を自分で出す力が伸びにくい

えっ、単語を書き写すと、逆に覚えにくくなるんですか?

スペイン語の単語の研究では、書き写した単語のほうが自分で言う・書く力が低かったんです。下がったのは意味の記憶ではなく、形を自分で出す力です。
Barcroft の研究 (2006 年) は、スペイン語を学ぶ英語話者が対象です。単語と絵のペアを見ながら、スペイン語の名詞 24 語を覚えました。
24 語のうち 12 語は書き写し、残りの 12 語は何も書きませんでした。
テストで調べたのは、その単語を自分で言える・書けるかです。単語帳の日本語を見て、英語を自分で口に出せるかを試すようなものです。
結果は、直後も 2 日後も、書き写さなかった単語のほうが成績が高かったのです。
ここで下がったのは「意味の記憶」ではありません。単語の形 (つづりや音) を、自分で出す力です。
著者は、意味に注意を向けないまま書かされる作業が、新しい単語の形を覚える頭の余力を使い果たすと解釈しています。
漢字の書き取りで手を動かすのに精一杯になり、ほかに頭が回らなくなる感覚に近いです。
ただし、ここで書いたのは「書き写し」で、書くこと全般が無駄という結論ではありません。
Candry らの研究 (2018 年) は、ドイツ語を学ぶオランダ語話者 67 人が対象です。知らないドイツ語 24 語を学びました。
学び方は、書いて繰り返す・声に出して繰り返す・比較用の条件の 3 つでした。比較用の条件とは、2 つのやり方と比べるための「ものさし役」のグループです。
直後のテストでは、単語の形を思い出す成績が、書いたほうがわずかに良かったとされます。しかし、その差は 1 週間後には消えていました。
意味を思い出す力では、書く・声に出すの間に差はありませんでした。引き分けに近い結果です。
声に出して覚えるやり方については、英単語を声に出して覚える効果を研究で確かめた記事で詳しく扱っています。
ここまでのまとめ: 外国語の新しい単語を書き写すと、その単語を自分で言う・書く力がかえって下がった研究があります。書く・声に出すの差は、1 週間後には消えました。
ノートは手書きかパソコンか|研究ごとに結論が揺れている

ノートは手書きのほうがいいって、よく聞きますけど…

有名な研究はそう報告しました。ただ、同じ実験をやり直した追試では、はっきりした差は出ませんでした。1 本の研究だけで決めつけないことが大切です。
出発点は、Mueller と Oppenheimer の研究 (2014 年) です。大学生が講義を聞いてノートを取り、そのあと内容のテストを受けました。
3 つの研究で、パソコンでノートを取った学生は、理解を問う問題の成績が悪かったと報告されました。
パソコン組は講義を一言一句そのまま打ち込む傾向がありました。自分の言葉で言い換えないぶん理解が浅くなる、と著者らは説明しています。
ところが、この研究には追試が行われました。追試とは、話題になった実験を同じやり方でやり直し、同じ結果が出るか確かめることです。料理のレシピを別の人が作って、同じ味になるか試すようなものです。
Urry らの追試 (2021 年) では、パソコン 74 人、手書き 68 人がノートを取りました。パソコン組がそのまま写す語が多い点は、元の研究と同じでした。
しかし直後のクイズの成績では、元の研究のような手書きの利点ははっきり出ませんでした。似た研究 8 本をまとめた分析も同じ傾向でした。
一方、2024 年の Flanigan らのメタ分析は、また違う向きの結論です。メタ分析は、たくさんの研究の結果を集めて全体の傾向を見る方法です。
大学生を対象にした 24 の研究をまとめた結果、手書きのノートを取って見直すほうが成績が高かったとされます。
効果の大きさは g = 0.248 でした。これは「小さめだが確かにある差」で、クラスの平均点がほんの少し上がる程度のイメージです。
測ったものも違います。追試は「直後のクイズ」、メタ分析は「ノートを取って見直す」ことを含む成績でした。
どちらも講義のノートの研究で、英単語の学習の研究ではありません。1 本の有名な研究だけで結論を決めず、ほかの研究で確かめられるまで待つ姿勢が大切です。
ここまでのまとめ: ノートの手書きの利点は、追試ではっきりせず、メタ分析では小さく有利と、研究ごとに結論が揺れています。
研究から言える使い方|「何のために書くか」で分けて考える
ここまでの研究を、英単語の学習に引き寄せて整理します。ただし、研究の対象者と社会人の学習は同じではありません。
1 つ目は、見たことのない文字の形を覚える場面です。この場面では、手書きの利点が報告されています。
ただし、研究の参加者は、その文字を初めて見る大人でした。英単語のつづりを手書きで覚える場面で確かめた研究ではありません。
2 つ目は、知っているアルファベットで外国語の単語を書き写す場面です。意味に注意を向けない書き写しでは、単語を自分で出す力が下がった例があります。
「とにかく何十回も写す」という覚え方には、注意が要ると言えます。
3 つ目は、書くか声に出すかを選ぶ場面です。書く反復と声に出す反復の差は、1 週間後には消えていました。
どちらか一方にこだわる理由は、この研究からは見えません。
4 つ目は、スマホやパソコンで学ぶ場面です。外国語の単語を覚えた Ihara らの研究では、キーボードでもテストの成績は変わりませんでした。
「手書きでないと覚えられない」「タイピングは脳に悪い」と示した研究は、今回の調査にはありません。
なお、写す代わりに「見ないで思い出してから書く」方法もあります。ただし、これを書き写しと比べた研究は、この記事で扱った研究の中にはありません。
思い出す練習そのものについては、覚えたはずの英単語が口から出てこない理由を研究で解いた記事で、別の研究をもとに整理しています。
ここまでのまとめ: 初めて見る文字の形を覚える場面では手書きに利点がありました。一方、写すだけの繰り返しには注意が要り、書く・声に出すの差は 1 週間で消えました。
AI に単語帳を作らせると「自分で書く手間」はどうなるか
手書きの研究で差が出たのは、文字の形に注意を向け、自分の手で形を生み出す場面でした。一方、意味を考えずに写すだけの作業は、かえって不利な場合がありました。
生成 AI (= 文章を作れる AI、ChatGPT など) に単語リストや例文を作らせると、自分で選んで書く手間の一部が省けます。では、研究が示した条件を、AI を使った学び方でも満たせるのでしょうか。
近い領域の査読済み研究に、高校生約 1,000 人が数学の練習で AI を使った実験があります。AI を使っている間は成績が上がりました。
しかし、制限のない AI を使っていた生徒は、AI を外した試験で、使わなかった生徒より成績が 17% 低かったと報告されています。
学習を守る工夫をした AI では、このマイナスはおおむね抑えられました。自転車の補助輪をつけたままだと、外したときにうまく乗れないのに似ています。
作文で AI を使うと脳のつながりが弱かったという報告もあります。ただし、これは専門家のチェック (査読) を経ていない段階の論文で、根拠としては扱えません。
英単語の記憶に AI がどう影響するかを確かめた研究は、まだ少ないのが現状です。AI で覚えるのが速くなるとも、記憶力が落ちるとも、言える段階ではありません。
今回の研究から立てられる問いは、AI に作らせた単語帳でも、単語の形に自分で注意を向け、自分の手で書いて生み出す場面を残せるか、です。AI の練習全般はChatGPT で英語を勉強する効果を研究で整理した記事も参考になります。
ここまでのまとめ: AI が英単語の記憶にどう影響するかを確かめた研究は、まだ少ない段階です。AI に任せる部分と、自分で形を生み出す部分を分けられるかが問いになります。
よくある質問
Q1. 英単語は手で書かないと覚えられませんか?
そう示した研究は、今回の調査にはありません。新しい文字の形を覚える実験では手書きが有利でしたが、知っているアルファベットで書く英単語とは場面が違います。
Q2. 英単語を何度も書き写すのは意味がないのですか?
書き写した単語のほうが、あとで自分で言う・書く力が低かった研究はあります。ただし書くこと全般が無駄という結論ではなく、書く・声に出すの差が 1 週間で消えた研究もあります。
Q3. 手書きで脳が活性化するなら、やはり手書きが有利では?
脳の広い範囲が働くことは示されていますが、覚えた量の差までは測られていない研究が多いです。脳の活動と成績は分けて考える必要があります。
Q4. スマホの単語アプリで覚えても大丈夫ですか?
アプリそのものの効果を比べた研究は、今回の調査の範囲にはありません。外国語の単語を手書きとキーボードで学んだ研究では、テストの成績に差は出ませんでした。
Q5. 講義やセミナーのノートは手書きとパソコンのどちらがいいですか?
研究の結論は揺れていて、追試では差がはっきりせず、メタ分析では手書きを見直す方が小さく有利でした。どちらも大学生の講義ノートの研究です。
まとめ
- 「脳がよく働いた」と「単語をたくさん覚えた」は別の話で、脳波の研究の多くは成績を測っていない
- 大人が初めて見る文字の形を覚える実験では、手書きが有利だった
- 外国語の単語を手書きとキーボードで学んだ日本の研究では、脳の反応に差が出たが成績には差がなかった
- 外国語の新しい単語を書き写すと、その単語を自分で言う・書く力がかえって下がった研究がある
- 書いて繰り返すのと声に出して繰り返すのの差は、1 週間後には消えた
- ノートの手書きの利点は、追試とメタ分析で結論が揺れている
- 研究の多くは大学生・新しい文字・母語の単語が対象で、社会人の英単語学習にそのまま当てはまるとは言えない
- 「手書きかタイピングか」だけでは覚えやすさは決まらず、何のために書くかで研究の結果が変わる
参考文献
- Longcamp, M., Boucard, C., Gilhodes, J.-C., Anton, J.-L., Roth, M., Nazarian, B., & Velay, J.-L. (2008). Learning through Hand- or Typewriting Influences Visual Recognition of New Graphic Shapes: Behavioral and Functional Imaging Evidence. Journal of Cognitive Neuroscience, 20(5). https://doi.org/10.1162/jocn.2008.20504
- Wiley, R. W., & Rapp, B. (2021). The Effects of Handwriting Experience on Literacy Learning. Psychological Science, 32(7). https://doi.org/10.1177/0956797621993111
- van der Meer, A. L. H., & van der Weel, F. R. (2017). Only Three Fingers Write, but the Whole Brain Works: A High-Density EEG Study Showing Advantages of Drawing Over Typing for Learning. Frontiers in Psychology, 8. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2017.00706
- Ose Askvik, E., van der Weel, F. R., & van der Meer, A. L. H. (2020). The Importance of Cursive Handwriting Over Typewriting for Learning in the Classroom: A High-Density EEG Study of 12-Year-Old Children and Young Adults. Frontiers in Psychology, 11. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2020.01810
- Van der Weel, F. R., & Van der Meer, A. L. H. (2024). Handwriting but not typewriting leads to widespread brain connectivity: a high-density EEG study with implications for the classroom. Frontiers in Psychology, 14. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2023.1219945
- Umejima, K., Ibaraki, T., Yamazaki, T., & Sakai, K. L. (2021). Paper Notebooks vs. Mobile Devices: Brain Activation Differences During Memory Retrieval. Frontiers in Behavioral Neuroscience, 15. https://doi.org/10.3389/fnbeh.2021.634158
- Ihara, A. S., Nakajima, K., Kake, A., Ishimaru, K., Osugi, K., & Naruse, Y. (2021). Advantage of Handwriting Over Typing on Learning Words: Evidence From an N400 Event-Related Potential Index. Frontiers in Human Neuroscience, 15. https://doi.org/10.3389/fnhum.2021.679191
- Mangen, A., Anda, L. G., Oxborough, G. H., & Brønnick, K. (2015). Handwriting versus keyboard writing: Effect on word recall. Journal of Writing Research, 7(2). https://doi.org/10.17239/jowr-2015.07.02.1
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- Bastani, H., Bastani, O., Sungu, A., Ge, H., Kabakcı, Ö., & Mariman, R. (2025). Generative AI without guardrails can harm learning: Evidence from high school mathematics. Proceedings of the National Academy of Sciences, 122(26). https://doi.org/10.1073/pnas.2422633122
- Kosmyna, N., Hauptmann, E., Yuan, Y. T., Situ, J., Liao, X.-H., Beresnitzky, A. V., Braunstein, I., & Maes, P. (2025). Your Brain on ChatGPT: Accumulation of Cognitive Debt when Using an AI Assistant for Essay Writing Task. arXiv preprint arXiv:2506.08872 (査読前). https://doi.org/10.48550/arXiv.2506.08872
最終更新日: 2026-10-21
著者: 中村 拓(Taku Nakamura)(greencafe 編集部 編集責任者・非ネイティブ話者)。公開された 15 件の研究エビデンス(tier 1=14 件 / tier 2=0 件、ほか査読前論文 1 件)を横断分析・再構成した。
画像: いらすとや (https://www.irasutoya.com/) より
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