英語の勉強を先延ばししてしまうのは怠けのせい?|研究でわかる理由と始め方

左に勉強中にスマホを使っている男性のイラスト、右に集中して勉強をしている男性のイラストが並ぶ。勉強を後回しにしてしまう状態と、勉強に取りかかった状態を表している。 学習動機・継続

英語の勉強を先延ばししてしまうのは怠けのせい?|研究でわかる理由と始め方

英語学び直したいユーイチ
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英語の勉強、毎日「明日やろう」で終わるんです…僕って怠け者ですか?

英語独学好きの助教S
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気持ちはわかります。結論から言うと、先延ばしは心理学で長く研究されてきたテーマで、意志の弱さだけでは説明されていないんですよ。

英語学び直したいユーイチ
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周りはちゃんと続けてる気がして、余計に焦るんですよね…

英語独学好きの助教S
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多くの人がそう感じています。研究の世界では、先延ばしは多くの人に見られるありふれた行動として扱われてきました。あなただけの悩みではありません。

英語学び直したいユーイチ
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研究で分かると言われても、僕にも使えるんでしょうか?

英語独学好きの助教S
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その不安は自然です。研究は先延ばしを根性論ではなく「始め方の設計」の問題として整理してきたので、性格を変えなくても工夫の余地があるんです。

英語学び直したいユーイチ
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じゃあ、具体的には何から始めればいいんですか?

英語独学好きの助教S
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この記事では、先延ばしの心理学研究を順番に紹介し、最後に研究から考えられる始め方の工夫をまとめます。一緒に見ていきましょう。

結論: 先延ばしは心理学で長く研究されてきた、多くの人に見られる行動だ。
Steel (2007) のメタ分析 (= たくさんの研究をまとめた分析) では、課題が嫌なときやごほうびが遠いときに起きやすいとされる。
先延ばしは「今の嫌な気分から一時的に逃げる行動」として説明されている。
先延ばしを減らす対策を試した研究では、全体として先延ばしが減っていた。
先延ばしした自分を許せた大学生ほど、次の先延ばしが少なかったという調査もある。
ただし研究の多くは大学生の勉強が対象で、英語学習で確かめたものはまだ少ない。

この記事でわかること

  • 英語の勉強の先延ばしが、意志の弱さだけでは説明されていない理由
  • 「明日やろう」が起きる仕組みと、英語学習で火種になりやすい気持ち
  • 先延ばしを減らす対策は、研究でどこまで効き目が見られたか
  • 研究から考えられる「始めるハードルを下げる」3 つの工夫

英語の勉強を先延ばしするのは、あなただけではない

英語学び直したいユーイチ
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単語帳を何か月も開いてません。やっぱり性格の問題ですか?

英語独学好きの助教S
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多くの人がそうです。Steel の 2007 年の分析では、性格だけでなく、課題の嫌さやごほうびの遠さも先延ばしと強く関係していました。

単語帳を買ったのに、開かないまま数か月たっている。
そんな自分を「怠け者だ」と責めている人は少なくない。
でも先延ばしは、心理学で長く研究されてきた、ありふれた行動の一つだ。

Steel (= 先延ばしと関係する特徴を、たくさんの研究から分析した研究者) は、2007 年に大きな分析を発表した。
これはメタ分析という方法で行われた。
メタ分析とは、たくさんの研究の結果を集めて全体の傾向を見る方法だ。
1 つのクラスのテストではなく、全国の学校の成績表をまとめて眺めるようなものだ。
この分析では、691 個の関係の強さのデータをもとに、先延ばしと関係する特徴を調べた。

先延ばしと強く関係していたのは、次のような特徴だった。

  • 課題そのものが嫌だと感じること
  • 締め切りやごほうびまでの時間が遠いこと
  • 自己効力感 (= 「自分ならできそう」と思える感覚) が低いこと
  • 衝動性 (= 目の前の誘惑に、つい手が伸びやすい性質) が高いこと
  • 誠実性 (= コツコツ計画的に進める性格) が低いこと

一方で、神経症傾向 (= 不安や落ち込みを感じやすい性格) との結びつきは弱かった。
Steel は Klingsieck (= Steel と組んで、学業の先延ばしの原因を調べ直した研究者) とも研究を行った。
対象は大学の心理学コースの学生 167 人だ。
ここでも「先延ばしする人 = 不安が強い人」という理解は誤解を招きうる、とまとめている。

つまり先延ばしは、性格だけで決まるものとしては扱われていない。
課題の嫌さや、ごほうびの遠さといった「課題の形」とも関係している。
英語の勉強を後回しにする自分を、すぐに「ダメな人間」と決めつける必要はない。

ここまでのまとめ: 先延ばしは多くの人に見られ、課題の嫌さやごほうびの遠さと関係していた。性格だけの問題としては扱われていない。

なぜ「明日やろう」になるのか|嫌な気分から一時的に逃げる仕組み

英語学び直したいユーイチ
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「気分の修理」って何ですか?ピンと来なくて…

英語独学好きの助教S
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今の嫌な気分を手っ取り早く直す心の動きです。Sirois と Pychyl の整理では先延ばしと深く関わります。歯医者の予約を延ばして一瞬ほっとする感じです。

先延ばしは、時間の使い方が下手だから起きる、と思われがちだ。
しかし研究者の Sirois と Pychyl (= 先延ばしと気分の関係を、過去の研究から整理した 2 人) は、別の説明をしている。

2 人によると、先延ばしは「短期の気分の修理」と深く関わる。
気分の修理とは、今の嫌な気分を、手っ取り早く直そうとする心の動きだ。
歯医者の予約を後回しにすると、その瞬間だけほっとするのと似ている。
嫌な課題に向き合ったとき、それを先送りすれば、今の気分は少し楽になる。

ただしそのツケは、たいてい「未来の自分」が払うことになる。
2 人は、今の自分と未来の自分の間にずれがあることが大事だと論じている。
今日の自分は楽をして、明日の自分に面倒を押しつける形だ。
明日になれば、また同じことが起きる。

なお、この論文は研究をまとめたレビュー論文 (= 過去の研究を読み比べて整理した論文) だ。
新しい実験の結果を報告したものではない点に注意したい。

この説明を英語学習に当てはめると、次のように考えられる。
英語を開くと「聞き取れない」「話せない」というもやもやが出てくる。
そのもやもやから逃げるために、スマホを手に取る。
ただし、これは研究からの論理的なつながりであり、英語学習で直接確かめた結果ではない。

ここまでのまとめ: 先延ばしは、今の嫌な気分を手っ取り早く直す行動として説明されている。英語学習ではもやもやが嫌な気分になりうる。

ごほうびが遠いほど後回しになる

英語の上達は、何か月も先にならないと見えにくい。
一方で、スマホや休憩のごほうびは、今すぐ手に入る。
この差が、先延ばしを生みやすい形になっている。

Steel は König (= Steel と組んで、やる気の理論をまとめ直した研究者) と、時間的動機づけ理論という考え方をまとめた。
これは、ばらばらだったやる気の理論を一つにつなごうとした理論だ。
今日もらえるケーキ 1 個と、半年後のケーキ 3 個を思い浮かべてほしい。
頭では後者が得だと分かっていても、心は目の前の 1 個に引っぱられる。
こうした「目の前の報酬に引っぱられる仕組み」が、理論の材料の一つになっている。

Steel の 2007 年の分析でも、ごほうびまでの時間が遠いほど先延ばしと関係していた。
その結果は、時間的動機づけ理論と合っていると述べられている。

英語学習に置き換えると、ごほうびの遠さはとても大きい。
単語 30 個を覚えても、明日いきなり英語で話せるわけではない。
「やった手応え」が遠いので、目の前の楽しみに負けやすい。
ただし、これも理論からの示唆であり、英語学習者で実験したものではない。

課題の嫌さには、退屈さも含まれうる。
英語の勉強がつまらないと感じるときの「退屈」の研究では、退屈そのものの正体を扱っている。
本記事では、その手前にある「始める前の気持ち」に話を絞る。

ここまでのまとめ: ごほうびが遠いほど、先延ばしが起きやすいと報告されている。英語は上達が遠く見えるため、この形に当てはまりやすいと考えられる。

先延ばしは後で何をもたらすか

英語学び直したいユーイチ
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先延ばしすると、その場は楽なんですけどね…

英語独学好きの助教S
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実はそこが落とし穴です。Tice と Baumeister が学生を学期を通して追った研究では、初めは楽でも、学期末にはストレスや体調不良が増えていました。

先延ばしは、その場では楽になる。
では、後で何が起きるのだろうか。

Tice と Baumeister (= 先延ばしの得と損を、時間を追って調べた研究者) は、学生を学期を通して調べた。
これは縦断研究という方法だ。
縦断研究とは、同じ人を時間をかけて追いかけ、変化を見る調べ方だ。
夏休みの宿題を最後に回す子を、7 月と 8 月末の両方で観察するようなものだ。

結果は、学期の初めと終わりで正反対だった。

  • 学期の初め: 先延ばしする学生のほうが、ストレスが低く体調不良も少なかった
  • 学期の終わり: 先延ばしする学生のほうが、ストレスが高く体調不良も多かった
  • 成績: 先延ばしする学生は、すべての課題で成績が低かった

著者らは先延ばしを「短期の得と長期の損」を持つ行動パターンとまとめた。
ただし対象は大学の授業を受ける学生で、社会人の英語学習ではない。

先延ばしと成績の関係をまとめたメタ分析もある。
Kim と Seo (= 先延ばしと成績の関係をまとめ直した研究者) が、33 件の研究、約 3 万 8 千人分を集めた。
その結果、先延ばしが多い人ほど成績が低めという関係が見られた。
原論文ではなく、この論文を紹介した解説記事によれば、関係の強さは小さいとされる。
クラス全体で見ると、うっすら右下がりになる程度のつながりだ。

ここで大事なのは、これが相関だという点だ。
相関とは、片方が多いともう片方も多い (または少ない)、という関係のことだ。
傘を持つ人が多い日は道がぬれているが、傘が雨を降らせたわけではない。
同じように、先延ばしが成績を下げる原因だと示したものではない。

ここまでのまとめ: 先延ばしは、初めは楽でも後でストレスや体調の面で損が出ていた。成績との関係は小さく、原因とは限らない。

英語学習ならではの先延ばしの火種

英語学び直したいユーイチ
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英語を開くと「わからない」が怖くて、つい後回しに…

英語独学好きの助教S
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気持ちはわかります。中国の大学生 1,079 人の調査では、先延ばしが多い人ほど英語の授業での不安も高めでした。ただ、どちらが先かはまだ不明です。

英語の勉強には、他の勉強にはない気持ちがからみやすい。
「わからない」「間違えたら恥ずかしい」という気持ちだ。
こうした気持ちは、始める前の嫌な気分を大きくしうる。

英語学習の先延ばしを調べた研究も、少しずつ出てきている。
Jiang (= 英語の授業の不安と先延ばしの関係を調べた研究者) は、2024 年に調査を発表した。
対象は、英語を専攻していない中国の大学生 1,079 人だ。
その結果、先延ばしが多い学生ほど、英語の授業での不安も高い傾向が見られた。

ただしこれは、1 回のアンケートで見えた相関だ。
「先延ばしが不安を生む」のか「不安が先延ばしを生む」のかは、まだ分からない。
また、学習への取り組み方が、この関係の一部を説明していた。

別の研究では、英語を学ぶ中国の大学生 239 人を調べた。
時間の使い方や「しんどくても少し続ける」工夫ができる学生ほど、先延ばしが少なかった。
そして先延ばしが少ない学生ほど、学業の成果もよい傾向があった。
これも 1 回の調査で、工夫を教えて変化を見た実験ではない。

どちらも中国の大学生が対象で、日本の社会人ではない。
英語学習に限って先延ばしを確かめた研究は、まだ少ないのが現状だ。

「話せない自分が恥ずかしい」という気持ちが強い人もいるだろう。
英語が話せない自分が恥ずかしいと感じる心の壁の研究では、その気持ちの扱い方を整理している。

ここまでのまとめ: 英語学習では、不安と先延ばしが一緒に見られた調査がある。どちらが先かは分かっておらず、英語に限った研究はまだ少ない。

研究で試されてきた対策とその効き目

では、先延ばしは減らせるのだろうか。
van Eerde と Klingsieck (= 先延ばし対策の研究を集めて効き目を調べた研究者) が、これを調べた。
先延ばしを減らす対策を試した 24 の研究、合計 1,173 人分をまとめたメタ分析だ。

比べられた対策は、大きく 4 種類だった。

  • 自己調整: 自分の行動を記録したり、計画を立てて管理したりする工夫
  • 認知行動療法: 考え方のくせと行動のくせを、少しずつ直していく練習
  • その他の治療的なアプローチ
  • その人の強みや使える力に注目する方法

全体として、対策の後には先延ばしの大きな減少が見られた。
しばらく後に測り直したときも、その効き目は保たれていた。
中でも、この考え方のくせを直す練習が、他より強く先延ばしを減らした可能性が示されている。
これは、「どうせ無理」という頭の中の口ぐせに気づき、言い直す練習のようなものだ。

ただし、著者ら自身が、証拠をより強くするための研究が今後も必要だと述べている。
「この方法をやれば先延ばしが治る」とまで言える段階ではない。

大規模に試すと、効き目が小さくなる例もある。
オンライン講座の約 25 万人に、学習計画を立てさせる等の短い対策を試した実験がある。
最初の数週間の取り組みは上がったが、最後まで修了する人は増えなかった。
小さな規模で効いた工夫が、そのまま大人数で効くとは限らないということだ。

計画の立て方の一つに、「もし〜したら、〜する」と決めておく方法がある。
英語学習が 3 日で終わる理由を習慣の科学で整理した記事で、続け方の工夫を扱っている。

ここまでのまとめ: 先延ばしを減らす対策は、全体として効き目が見られた。ただし研究は発展途上で、「治る」と言える段階ではない。

先延ばしした自分を許すと次が変わる?

英語学び直したいユーイチ
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サボった日は、つい自分を責めちゃうんですよね…

英語独学好きの助教S
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多くの人がそうです。Wohl らの調査では、先延ばしした自分を許せた大学生ほど、次の試験前の先延ばしが少なかったんです。責めすぎなくて大丈夫です。

先延ばしをした後、多くの人は自分を責める。
しかし、責めることが次の行動を助けるとは限らない、という研究がある。

Wohl ら (= 同じ学生を 2 回の試験にわたって追いかけた研究者たち) が、2010 年に報告した。
対象は、カナダの大学の入門心理学の授業を受ける 1 年生 134 人だ。
1 回目の中間試験から 2 回目の中間試験の後まで、同じ学生を追いかけた。

1 回目の試験前、学生は勉強をどれだけ先延ばししたかを答えた。
あわせて、その先延ばしをどれだけ自分で許せたかも答えた。
その結果、自分を許せた学生ほど、その後の嫌な気分が少なかった。
そして 2 回目の試験前の先延ばしも少なかった。
転んだ自分を責め続けると足がすくむが、「次がある」と思えると走り出せる、というイメージだ。

このつながりは、嫌な気分が減ることで説明されていた。
また、この関係が見られたのは、1 回目にたくさん先延ばしした学生だけだった。

ここで注意したいのは、これが調査だという点だ。
学生に「自分を許しなさい」と指示して比べた実験ではない。
だから「自分を許せば先延ばしが治る」とは言えない。

それでも、気分の修理の説明とつなげると、筋の通った見方ができる。
自分を責めると、英語を開く前の嫌な気分がさらに増える。
嫌な気分が増えるほど、また逃げたくなる。
この悪い流れを止める一つの方法として、自分を許すことが考えられる。

ここまでのまとめ: 先延ばしを許せた大学生ほど、次の先延ばしが少なかった。ただし調査であり、許すことが原因だとまでは言えない。

研究から考えられる「始めるハードルを下げる」工夫

ここまでの研究から、始めるハードルを下げる工夫を 3 つ考えてみる。
これらは研究から導いた工夫であり、英語学習で実験して確かめた対策ではない。
その点を分けて読んでほしい。

工夫 1: 最初の 1 歩を 2 分で終わる大きさにする

研究では、課題の嫌さが先延ばしと強く関係していた。
「1 時間勉強する」は重いが、「単語を 3 つ見るだけ」なら嫌さは小さい。
音声を 1 本だけ聞く、例文を 1 つだけ音読する、でもよい。
階段の 1 段目を低くしておけば、足をかけやすくなるのと同じだ。

工夫 2: 始める前の嫌な気分を言葉にする

先延ばしは、嫌な気分から逃げる行動として説明されていた。
そこで、気分の正体を一言で書き出してみる。
「聞き取れなかったら落ち込みそう」と書けば、ぼんやりした不安が小さく見えてくる。
これは研究で直接確かめた方法ではなく、仕組みから考えた工夫だ。

工夫 3: 先延ばしした日を責めず、翌日の再開を決めておく

自分を許せた学生ほど、次の先延ばしが少なかった。
やれなかった日は「今日はできなかった。明日の朝 2 分やる」とだけ決める。
長い反省会ではなく、再開の約束を短く決める形にしておく。
研究が直接比べたわけではないが、許すことの調査とは方向がそろう。

ここまでのまとめ: 1 歩を小さくする、気分を言葉にする、責めずに再開を決める、の 3 つが研究から考えられる。実験で確かめた対策ではない。

アプリの通知やAI英会話は、始める前の嫌な気分を小さくできるか

学習アプリの通知や、すぐ始められる AI 英会話は、先延ばしの助けになるのだろうか。
研究が示した仕組みから考えると、問いは「始める前の嫌な気分を小さくできるか」になる。

ある語学アプリでは、通知の文面を自動で毎日選び分ける仕組みが試された。
その結果、アプリを使う人がわずかに増え、新しい利用者の継続も約 2% 増えた。
毎日同じ「勉強しよう!」だと聞き流すが、言い方を変えると少し戻ってくる、というイメージだ。
ただしこれは通知の文面の選び方を比べた研究で、通知あり・なしを比べたものではない。
また、アプリを開いたかを測っており、先延ばしの度合いそのものは測っていない。

オンライン講座の大規模な実験では、機械学習 (= データから自動で傾向を学ぶ仕組み) で対策を人に合わせる効果もほとんど見られなかった。
AI や通知が先延ばしそのものを減らすかを、英語学習者で確かめた研究はまだ少ない。
AI 英会話を使う場合も、「嫌な気分を小さくする 2 分の入り口」として設計できるかを試す、という姿勢が研究と整合する。

ここまでのまとめ: 通知の工夫で戻ってくる人はわずかに増えた。ただし AI や通知が先延ばしそのものを減らすかは、まだ確かめられていない。

よくある質問 (FAQ)

Q1. 英語の勉強を先延ばしするのは、意志が弱いからですか?

A. 研究では、先延ばしは課題の嫌さやごほうびの遠さとも関係していた。意志の強さだけの問題としては扱われていない。

Q2. 先延ばしすると、必ず成績が下がりますか?

A. 先延ばしが多い人ほど成績がやや低めという、小さな関係が見られた。ただし相関であり、「必ず下がる」とは言えない。

Q3. 先延ばしの癖は、研究で治せると分かっていますか?

A. 対策を試した研究のまとめでは、全体として先延ばしの大きな減少が見られた。ただし証拠はまだ発展途上で、「治る」とまでは言えない。

Q4. 先延ばしした自分を責めるのは逆効果ですか?

A. 先延ばしを自分で許せた大学生ほど、次の先延ばしが少なかったという調査がある。調査なので、許したことが原因で先延ばしが減ったのかまでは分かっていない。

Q5. 英語学習に限った先延ばしの研究はありますか?

A. 中国の大学生で、先延ばしと英語の授業不安が一緒に見られた調査がある。どちらが先かは分からず、英語に限った研究はまだ少ない。

まとめ

英語の勉強を先延ばししてしまうのは、あなただけの問題ではない。
先延ばしは多くの人に見られ、課題の嫌さやごほうびの遠さと関係していた。
そして、今の嫌な気分から一時的に逃げる行動として説明されている。

その場では楽でも、後でストレスや体調の面で損が出ていた研究がある。
対策を試した研究では全体として先延ばしが減っていたが、研究はまだ発展途上だ。
自分を許せた学生ほど次の先延ばしが少なかった、という調査もある。

今日できるのは、最初の 1 歩を 2 分の大きさにすることだ。
やれなかった日は責めずに、翌日の再開だけを決めておこう。

参考文献

  1. Steel, P. (2007). The nature of procrastination: A meta-analytic and theoretical review of quintessential self-regulatory failure. Psychological Bulletin, 133(1), 65-94. https://doi.org/10.1037/0033-2909.133.1.65
  2. Sirois, F., & Pychyl, T. (2013). Procrastination and the priority of short-term mood regulation: Consequences for future self. Social and Personality Psychology Compass, 7(2), 115-127. https://doi.org/10.1111/spc3.12011
  3. Tice, D. M., & Baumeister, R. F. (1997). Longitudinal study of procrastination, performance, stress, and health: The costs and benefits of dawdling. Psychological Science, 8(6), 454-458. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.1997.tb00460.x
  4. Kim, K. R., & Seo, E. H. (2015). The relationship between procrastination and academic performance: A meta-analysis. Personality and Individual Differences, 82, 26-33. https://doi.org/10.1016/j.paid.2015.02.038
  5. van Eerde, W., & Klingsieck, K. B. (2018). Overcoming procrastination? A meta-analysis of intervention studies. Educational Research Review, 25, 73-85. https://doi.org/10.1016/j.edurev.2018.09.002
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  12. Kizilcec, R. F., Reich, J., Yeomans, M., et al. (2020). Scaling up behavioral science interventions in online education. Proceedings of the National Academy of Sciences, 117(26). https://doi.org/10.1073/pnas.1921417117

最終更新日: 2026-10-20

著者: 中村 拓(Taku Nakamura)(greencafe 編集部 編集責任者・非ネイティブ話者)。公開された 12 件の研究エビデンス(tier 1=11 件 / tier 2=1 件)を横断分析・再構成した。

画像: いらすとや (https://www.irasutoya.com/) より

この記事を編集した人

中村 拓(Taku Nakamura)のポートレート

(編集責任者 / 応用言語学・第二言語習得 エディター(非ネイティブ話者))

応用言語学のバックグラウンドを持つ英語学習分野のエディターで、査読済み SLA 論文・応用言語学ジャーナル・公的機関資料の横断要約と再構成を担当する編集責任者です。非ネイティブ英語話者で、大人の英語学び直しを研究の視点で編集しています。

編集した記事: 149 本

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