小学生が英語を嫌いになるのはなぜ?|研究で分かる理由と親にできること

左に「ABC」と書かれた英語の本を笑顔で読む男の子、右に机でほおづえをついてため息をつく、やる気のない小学生の男の子のイラストが並ぶ。英語が好きな気持ちと、やる気が下がった気持ちの対比を表している。 バイリンガル教育

小学生が英語を嫌いになるのはなぜ?|研究で分かる理由と親にできること

英語学び直したいユーイチ
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甥っ子が最近「英語きらい」と言い出して、姉が心配してるんですよ。

英語独学好きの助教S
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気持ちはわかります。実は、学年が上がると「好き」が下がりやすいことは、昔から多くの研究者が調べてきたテーマなんですよ。

英語学び直したいユーイチ
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僕も中学で英語が嫌いになったんです。よくある話なんですか?

英語独学好きの助教S
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多くの人がそうです。子どものやる気の研究は国内外で重ねられていて、英語だけでなく勉強全体の話として整理されています。

英語学び直したいユーイチ
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でも研究と言われても、親が家でできることってあるんですかね…

英語独学好きの助教S
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研究は「何が起きているか」と「なぜ起きるか」を分けて整理しています。そこから親の関わり方も考えられるんです。

英語学び直したいユーイチ
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先輩も「早く始めすぎたかも」と悩んでて。何から知ればいいですか?

英語独学好きの助教S
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この記事では、米国・日本・欧州の研究を順番に見ていきます。まずは「うちの子だけ?」という疑問から確かめましょう。

結論: 学年が上がると「好き」「できる」という気持ちが下がりやすいことは、米国の長期追跡研究で算数・国語・スポーツでも報告されています。日本の小学 3〜6 年生の調査でも、英語のやる気は上の学年ほど低めでしたが、勉強全般のやる気も同じように低めでした。研究者は、やる気の高さを「自分で選べる」「できる」「つながっている」という 3 つの心の欲求で説明しています。今回の研究から「早く始めたから嫌いになった」とは言えません。

この記事でわかること

  • 学年とともに「好き」が下がるのは英語だけなのか (米国・日本・欧州の研究)
  • 研究者が「やる気の上がり下がり」をどう説明しているか (3 つの心の欲求)
  • 中学・高校でやる気を下げやすいものは何か (年上の学習者の研究)
  • 研究から導ける、親の関わり方の考え方

学年が上がると「好き」が下がるのは英語だけ?

英語学び直したいユーイチ
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「好き」が下がるのって、英語だけの話なんですか?

英語独学好きの助教S
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米国で子ども 761 人を小 1 から高 3 まで追った研究では、算数・国語・スポーツでも「好き」と「できる感じ」が学年とともに下がりました。

まず、親として一番気になる「うちの子だけ?」という疑問から見ていきます。

米国の Jacobs ら (= 子どものやる気の育ち方を調べてきた心理学の研究チーム) の研究があります。米国の子ども 761 人を、小学 1 年生から高校 3 年生まで追いかけました。これは長期追跡研究 (= 同じ子を何年も追って、成長の記録をつけていく研究) です。

調べたのは算数・国語・スポーツの 3 つです。英語 (外国語) は入っていません。それぞれについて、2 つの気持ちを測りました。

  • 「自分はこれが得意だ」という、できる感じ
  • 「これは大事・好き・役に立つ」という気持ち

いちばん目立った結果は、年齢が上がるにつれて、どちらの気持ちも下がったことでした。ただし、下がり方の大きさや速さは教科によって違いました。国語の「できる感じ」は小学校の間に急に下がり、その後は横ばいか少し上がりました。

もう 1 つ大事な結果があります。「できる感じ」が下がると、「大事・好き」という気持ちも一緒に下がる関係が見られました。シーソーの片側が下がると、もう片側もつられるようなイメージです。

これは米国の子どもの研究で、英語の研究ではありません。それでも「学年とともに好きがしぼむのは、英語だけの特別な現象とは限らない」とは言えます。

ここまでのまとめ: 米国で小 1〜高 3 を追った研究では、算数・国語・スポーツでも「できる感じ」と「好き・大事」が学年とともに下がりました。英語だけの現象とは限りません。

日本の小学生の英語のやる気は、学年でどう違うのか

英語学び直したいユーイチ
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内発的動機づけって、何のことですか?

英語独学好きの助教S
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ごほうびが無くても、面白いからやりたい気持ちです。日本の小 3〜6 年生の調査では、英語も勉強全般も上の学年ほど低めでした。

では、日本の小学生の英語はどうでしょうか。

Carreira (= 日本の小学生の英語のやる気を調べた研究者) の 2011 年の研究があります。日本の公立小学校 1 校で、3〜6 年生 268 人にアンケートをとりました。測ったのは 2 つです。

  • 英語を学ぶやる気
  • 勉強全般への内発的動機づけ (= ごほうびが無くても、面白いからやりたいという気持ち)

内発的動機づけは、誰にも言われないのにゲームを続けてしまうときの、あのやる気に近いものです。

結果は、英語のやる気も勉強全般のやる気も、3 年生から 6 年生にかけて全体として低くなっていました。ここで大事なのは、英語だけが下がっていたのではない点です。著者は「勉強全般のやる気が発達とともに下がることが、英語の授業にも影響しているかもしれない」と示唆しています。これは推測であり、証明ではありません。

注意したいのは、この研究は同じ子を追ったものではないことです。3 年生と 6 年生という別々の子を、同じ時期に比べています。また、学校は 1 校だけで、下がった幅の数字も示されていません。

全国の数字もあります。文部科学省と国立教育政策研究所の全国学力・学習状況調査 (= 全国の小 6 と中 3 が毎年受けるテストとアンケート) です。2023 年度は「英語の勉強は好き」と答えた中 3 の割合が、小 6 より約 17 ポイント少なくなっていました。100 人に聞いたら、好きと答える子が 17 人ほど少ないイメージです。

ただし、これも同じ子を追った数字ではありません。同じ年の小 6 と中 3 という、別々の子どもを比べたものです。「この子たちが 3 年で 17 ポイント下がった」という意味ではない点に注意してください。

日本の小学生の英語のやる気の研究をまとめた本の章 (Nishida 2013、= 日本の小学生の英語のやる気を調べてきた研究者) もあります。こうしたまとめが作られる程度には、研究が重ねられてきた分野です。

ここまでのまとめ: 日本の小学 3〜6 年生の調査では、英語のやる気は上の学年ほど低めでしたが、勉強全般も同じでした。全国調査の小 6 と中 3 の差も、別々の子を比べた数字です。

やる気を支える「3 つの心の欲求」とは

英語学び直したいユーイチ
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自己決定理論と言われても、ピンと来なくて…

英語独学好きの助教S
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Ryan と Deci の理論で、ゲームなら「キャラを選べる」「レベルが上がる」「友だちと遊べる」の 3 つがそろうとやる気が続く、という考え方です。

研究者は、やる気の上がり下がりをどう説明しているのでしょうか。よく使われるのが自己決定理論 (= 人がどんなときに自分から動きたくなるかを説明する考え方) です。

この理論の中心にいる Ryan と Deci (= やる気の心理学を長く研究してきた 2 人の研究者) の論文があります。そこでは、人には生まれつき 3 つの心の欲求がある、と考えます。

  • 自律性: 自分で選べている、やらされていないという感じ
  • 有能感: できる、上手になっているという感じ
  • 関係性: 先生や友だちとつながっているという感じ

ゲームで言えば「自分でキャラを選べる」「レベルが上がる」「友だちと一緒に遊べる」の 3 つです。この 3 つがそろうと、人は言われなくても続けたくなる、というのが理論の考え方です。満たされるとやる気が高まり、妨げられると下がるとされています。

ここで気をつけたいのは、これは研究者の説明の枠組みだという点です。英語を学ぶ小学生で直接確かめた論文ではありません。

日本の小学生で、この 3 つを調べた研究もあります。Carreira の 2012 年の研究では、公立小学校の 5・6 年生 505 人にアンケートをとりました。

やる気は「楽しいからやる」「やるべきだから・大事だからやる」「言われるから・ごほうびのためにやる」の 3 種類にまとまりました。そして 3 つの心の欲求は、「楽しいからやる」というやる気と、より強く結びついていました。

ただし、これは相関 (= 2 つのことが一緒に動く関係。原因と結果とは限らない) の研究です。「欲求を満たせば英語好きになる」とまでは示していません。また、この研究は学年による変化を調べたものではありません。

大人の英語学習で同じ理論を使った話は、英語学習のモチベーションが続かない理由を心理学で整理した記事でも扱っています。

ここまでのまとめ: 研究者は、やる気を「自分で選べる・できる・つながっている」の 3 つで説明します。日本の小 5・6 では、この 3 つが「楽しいからやる」気持ちと結びついていました。

先生の授業は、やる気を下げているのか

英語学び直したいユーイチ
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やっぱり学校の教え方が悪いんですかね…

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気持ちはわかります。ただ、日本の小 5 を 1 年追った研究では、先生の支えを感じることとやる気がプラスに結びついていました。

「学校の教え方が悪いのでは」と心配する親もいるでしょう。これに関わる日本の研究を見てみます。

Oga-Baldwin ら (= 日本の小学校の外国語の授業を研究してきたチーム) の 2017 年の研究です。西日本の公立小学校 7 校・16 クラスの 5 年生 515 人を、1 学年度にわたって追いかけました。

この研究は、子ども本人のアンケートだけに頼っていません。外部の観察者が授業の様子を評価し、担任の先生も評価しました。調べたのは、やる気、先生の支えの受け止め方、授業へのエンゲージメントです。エンゲージメントは、授業に気持ちも体も向いている度合いのことです。手を挙げる、うなずく、楽しそうにしている、の合計点のようなものです。

結果は、やる気・先生の支えの受け止め方・授業への取り組みが、互いにプラスに影響し合っていました。著者らは、これらの授業が子どもの外国語のやる気を支えていた、と述べています。

つまりこの研究は「授業でやる気が下がった」と報告したものではありません。むしろ、先生の支えを感じられる授業とやる気が結びついている方向を示しています。1 年間・5 年生だけの研究である点には注意が必要です。

同じ研究者による、授業への取り組み・性別・やる気の関係を調べた研究もあります。こちらは論文の要約を確認できていないため、結果はここでは紹介しません。

ここまでのまとめ: 日本の小 5 を 1 年追った研究では、先生の支えの受け止め・やる気・授業への取り組みがプラスに結びついていました。「先生のせいで嫌いになる」と読める結果ではありません。

日本以外でも同じことが起きているのか

欧州の研究も見てみましょう。欧州では、日本とは開始学年も授業のやり方も違う国が多くあります。

Mihaljević Djigunović (= 欧州の子どもの外国語学習を長く調べてきた研究者) のレビュー論文があります。レビュー論文は、たくさんの研究を集めて全体の傾向を整理した論文のことです。

この論文は、欧州の主要な研究をもとに、幼い外国語学習者の態度とやる気を整理しています。とくに、同じ子を追う研究を詳しく紹介しています。学習の過程がよく分かるからです。

結論は「幼い学習者の態度ややる気は固定したものではなく、時間とともに変化する」というものでした。子どもの「英語が好き」は天気のようなものです。晴れの日も曇りの日もあり、一度決まったらずっと同じではありません。

ここで大事なのは、この論文が「学年とともに下がる」とは言っていないことです。言っているのは「変わる」までです。上がる時期も下がる時期もありうる、と読むのが正確です。

ここまでのまとめ: 欧州の研究をまとめた論文は、子どもの英語への態度は「時間とともに変わる」と結論づけています。「必ず下がる」とは言っていません。

中学・高校でやる気を下げやすいもの (参考)

英語学び直したいユーイチ
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僕も英語そのものが嫌いだったのかな…

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インドネシアの中学生の研究では、英語そのものへの気持ちは保たれ、学校の授業を受ける体験への気持ちが悪くなる傾向がありました。

ここからは、小学生より年上の学習者の研究です。小学生にそのまま当てはめず、「この先に何が起きやすいか」の参考として読んでください。

Lamb (= 学校と英語のやる気の関係を調べた研究者) の、インドネシアでの研究があります。中学生の英語のやる気を、入学から 20 か月にわたって追いかけました。数字のアンケートと聞き取りを組み合わせた、混合研究法 (= 数と言葉の両方から確かめるやり方) の研究です。

結果は 2 つに分かれました。英語という言葉そのものへの前向きな気持ちは、この期間ずっと保たれていました。一方で、学校の授業を受ける体験への気持ちは悪くなる傾向がありました。「サッカーは好きなのに、部活の練習はつまらない」に近い状態です。

日本の高校生の研究もあります。Sakai と Kikuchi (= 日本の英語教育を研究する 2 人) は、高校生 656 人にアンケートをとりました。やる気を下げる要因は、自転車のブレーキのようなものです。こぐ力があっても、ブレーキがかかると進みにくくなります。

見つかったブレーキは 5 つでした。

  • 学習内容と教材
  • 先生の力量と教え方
  • 学校の設備の不足
  • 内発的動機づけの不足
  • テストの点数

とくに強かったのは「学習内容と教材」と「テストの点数」でした。一方で、「先生の教え方」はそれらほど強い要因ではありませんでした。

Kikuchi の別の研究は、大学生に高校時代の英語の授業を振り返ってもらったものです。5 人への聞き取りと、42 人への自由記述 (= 選択肢ではなく自分の言葉で書いてもらう形) のアンケートです。挙がった要因は 5 つでした。

  • 授業での一人ひとりの先生のふるまい
  • 文法訳読式の授業 (= 英文を 1 語ずつ日本語に置き換えて意味をとる授業)
  • テストと大学入試
  • 暗記中心の単語学習
  • 教科書・参考書の問題

文法訳読式は、パズルを解くような授業で、話す・聞く楽しさは感じにくいものです。これは少人数の振り返りの研究で、高校生本人に聞いたものではありません。

日本の全国学力調査にも関連する数字があります。原稿なしで英語で考えを伝え合う活動があったと答えた中学生では、「英語の勉強は好き」と答えた割合が 41.8% でした。ただしこれはクロス集計 (= 2 つの質問の答えを掛け合わせて表にしたもの) で、結びつきを示すだけです。活動をしたから好きになった、とまでは言えません。

ここまでのまとめ: 年上の学習者の研究では、英語そのものより授業の受け方・教材・テストへの気持ちが下がりやすいことが報告されています。小学生にそのまま当てはめないでください。

「早く始めたせい」なのか

「早く英語を始めすぎたから嫌いになったのでは」と悩む親は少なくありません。

ここで分けて考えたいのは、「どれだけできるか」と「好きかどうか」は別の軸だという点です。開始年齢と英語の力の関係は、英語は早く始めた方が有利なのかを世界の研究で整理した記事で扱っています。この記事が扱うのは、もう片方の「好きかどうか」の軸です。

今回紹介した研究は、開始年齢を比べたものではありません。ですから「早く始めたから嫌いになった」とは言えません。同じように「早く始めれば好きでいられる」とも言えません。

むしろ研究が示しているのは、もっと広い傾向です。米国の研究では英語以外でも学年とともに「好き」が下がっていました。日本の調査でも、英語と勉強全般が一緒に低めでした。開始時期だけに原因を求めるのは、研究からは難しいと言えます。

ここまでのまとめ: 今回の研究群は開始年齢を比べていないため、「早く始めたせい」とも「早く始めれば大丈夫」とも言えません。到達度と気持ちは別の軸で考えます。

研究から導ける、親の関わり方

英語学び直したいユーイチ
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姪に何かしてあげるなら、何がいいんでしょう?

英語独学好きの助教S
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研究が直接確かめた方法ではありませんが、3 つの心の欲求の説明からは、選ばせる・小さな「できた」を確かめる・比べない、が考えられます。

最後に、親にできることを考えます。ここからは研究が直接確かめた方法ではありません。3 つの心の欲求という研究者の説明から導いた提案です。

1. 自分で選べる場面をつくる (自律性)

「今日は英語の歌と絵本、どっちにする?」のように、小さな選択肢を渡す方法です。やらされている感じを減らすのがねらいです。何をやるかを親が全部決めると、選べる感じは育ちにくいと考えられます。

2. 小さな「できた」を一緒に確かめる (有能感)

米国の研究では、「できる感じ」が下がると「好き」も一緒に下がる関係がありました。テストの点より、「この単語、先月は言えなかったね」のような変化を一緒に見つける方法が考えられます。

3. 比べずに、一緒に楽しむ (関係性)

きょうだいや友だちと比べると、つながりより競争の感じが強くなりがちです。親も一緒に歌ったり、知らない単語を一緒に調べたりする関わり方が、関係性の欲求に沿っています。

また、インドネシアの中学生の研究では、英語そのものは好きでも、授業の受け方だけが嫌になっていく様子が見られました。小学生でも同じことが起きている可能性はあります。「英語きらい」と言われたら、何が嫌なのかを聞いてみる価値があります。教材やテストなのか、英語そのものなのかで、受け止め方は変わってきます。

特定の教材や塾、検定試験を「これで英語好きになる」と示した研究は、今回の中にはありません。

ここまでのまとめ: 選ばせる・小さなできたを一緒に確かめる・比べずに楽しむ、は研究から導いた提案です。まず「英語の何が嫌なのか」を聞くことから始められます。

AI の会話相手は「3 つの心の欲求」を満たせるのか

最近は、子ども向けの AI 英会話やチャットボット (= 文字や声で自動的に返事をしてくれる会話プログラム) もあります。ここでは「研究が示した 3 つの欲求を、AI で満たせるのか」という問いとして考えます。

韓国の小学生 36 人を調べた Jeon (= 子どもとチャットボットの研究者) の研究では、16 週間の授業の後に聞き取りをしました。見つかったのは、チャットボットが学びに差し出すアフォーダンス (= 道具が「こう使えるよ」と差し出してくれる手がかり) でした。同じ手がかりでも、子どもによって学ぶチャンスにも、制約にもなりました。同じ縄跳びでも、楽しい子もいれば嫌になる子もいるのと似ています。

韓国の 10〜15 歳 314 人を調べた Yang ら (= 授業用の会話ロボットを作った研究チーム) の研究もあります。1 回の練習で平均 9.63 ターン (= 会話のキャッチボールの回数) のやり取りが起きました。ただし、比べる相手の集団 (対照群) が無く、授業より効果があるとは言えません。

どちらの研究も短い期間で、やる気が長く続くかは測っていません。新しさが切れた後にどうなるか、AI 相手で「つながり」の欲求が満たされるのかを確かめた研究は、まだ少ないのが現状です。大人の例ですが、AI 英会話が飽きやすい理由と新しさの切れ方を扱った記事も参考になります。

ここまでのまとめ: 韓国の子どもとチャットボットの研究はありますが、短い期間で対照群も無く、やる気が続くか・つながりの欲求が満たされるかは分かっていません。AI でも同じように下がるのかは、これから確かめる問いです。

よくある質問

Q1. 小学生が英語を嫌いになるのは、よくあることですか?

A. 学年とともに「好き」が下がる傾向は、米国の研究では算数・国語・スポーツでも報告されています。日本の小学 3〜6 年生でも、英語と勉強全般のやる気が上の学年ほど低めでした。

Q2. 早く英語を始めたのが原因ですか?

A. 今回の研究は開始年齢を比べていないため、そうとは言えません。到達度と「好きかどうか」は別の軸で考える必要があります。

Q3. 学校の先生の教え方が悪いのでしょうか?

A. 日本の小 5 を追った研究では、先生の支えの受け止めとやる気がプラスに結びついていました。日本の高校生の研究でも、教え方は教材やテストほど強い要因ではありませんでした。

Q4. 親は何をすればいいですか?

A. 研究から導ける提案として、選ばせる・小さなできたを一緒に確かめる・比べずに楽しむ、があります。研究が直接確かめた方法ではない点に注意してください。

Q5. AI 英会話を使えば英語を嫌いにならずにすみますか?

A. そう言える研究はありません。子どもがチャットボットを使った研究では、チャンスにも制約にもなりました。長く続くやる気への効果は、まだ確かめられていません。

まとめ

子どもの「英語きらい」には、3 つの層があります。

1 つめは、何が起きているかです。学年とともに「好き」が下がる傾向は英語以外でも見られ、日本の小学生でも勉強全般と一緒に低めでした。

2 つめは、研究者の説明です。やる気は「自分で選べる・できる・つながっている」という 3 つの心の欲求と結びついていると考えられています。

3 つめは、親にできることです。研究から導いた提案として、選ばせる・小さなできたを一緒に確かめる・比べずに楽しむ、があります。

「早く始めたせい」と自分を責める前に、子どもが英語の何を嫌がっているのかを聞いてみてください。英語そのものは好きなままのこともあります。

参考文献

  1. Jacobs, J. E., Lanza, S., Osgood, D. W., Eccles, J. S., & Wigfield, A. (2002). Changes in children’s self-competence and values: Gender and domain differences across grades one through twelve. Child Development, 73(2), 509-527. https://doi.org/10.1111/1467-8624.00421
  2. Carreira, J. M. (2011). Relationship between motivation for learning EFL and intrinsic motivation for learning in general among Japanese elementary school students. System, 39(1), 90-102. https://doi.org/10.1016/j.system.2011.01.009
  3. Carreira, J. M. (2012). Motivational orientations and psychological needs in EFL learning among elementary school students in Japan. System, 40(2), 191-202. https://doi.org/10.1016/j.system.2012.02.001
  4. Oga-Baldwin, W. L. Q., Nakata, Y., Parker, P., & Ryan, R. M. (2017). Motivating young language learners: A longitudinal model of self-determined motivation in elementary school foreign language classes. Contemporary Educational Psychology, 49, 140-150. https://doi.org/10.1016/j.cedpsych.2017.01.010
  5. Oga-Baldwin, W. L. Q., & Nakata, Y. (2017). Engagement, gender, and motivation: A predictive model for Japanese young language learners. System, 65, 151-163. https://doi.org/10.1016/j.system.2017.01.011
  6. Nishida, R. (2013). A comprehensive summary of empirical studies of motivation among Japanese elementary school EFL learners. In M. T. Apple, D. Da Silva, & T. Fellner (Eds.), Language Learning Motivation in Japan (pp. 93-109). Multilingual Matters. https://doi.org/10.21832/9781783090518-008
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  8. Sakai, H., & Kikuchi, K. (2009). An analysis of demotivators in the EFL classroom. System, 37(1), 57-69. https://doi.org/10.1016/j.system.2008.09.005
  9. Kikuchi, K. (2009). Listening to our learners’ voices: What demotivates Japanese high school students? Language Teaching Research, 13(4), 453-471. https://doi.org/10.1177/1362168809341520
  10. Lamb, M. (2007). The impact of school on EFL learning motivation: An Indonesian case study. TESOL Quarterly, 41(4), 757-780. https://doi.org/10.1002/j.1545-7249.2007.tb00102.x
  11. Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000). Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being. American Psychologist, 55(1), 68-78. https://doi.org/10.1037/0003-066X.55.1.68
  12. 文部科学省・国立教育政策研究所 (2023). 令和5年度 全国学力・学習状況調査 調査結果のポイント (質問紙調査). https://www.nier.go.jp/23chousakekkahoukoku/report/data/23summary_shitumon.pdf
  13. Jeon, J. (2024). Exploring AI chatbot affordances in the EFL classroom: Young learners’ experiences and perspectives. Computer Assisted Language Learning, 37(1-2), 1-26. https://doi.org/10.1080/09588221.2021.2021241
  14. Yang, H., Kim, H., Lee, J. H., & Shin, D. (2022). Implementation of an AI chatbot as an English conversation partner in EFL speaking classes. ReCALL, 34(3), 327-343. https://doi.org/10.1017/S0958344022000039

最終更新日: 2026-10-24

著者: 中村 拓(Taku Nakamura)(greencafe 編集部 編集責任者・非ネイティブ話者)。公開された 14 件の研究エビデンス(tier 1=13 件 / tier 2=1 件)を横断分析・再構成した。

画像: いらすとや (https://www.irasutoya.com/) より

この記事を編集した人

中村 拓(Taku Nakamura)のポートレート

(編集責任者 / 応用言語学・第二言語習得 エディター(非ネイティブ話者))

応用言語学のバックグラウンドを持つ英語学習分野のエディターで、査読済み SLA 論文・応用言語学ジャーナル・公的機関資料の横断要約と再構成を担当する編集責任者です。非ネイティブ英語話者で、大人の英語学び直しを研究の視点で編集しています。

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