三単現の s をつい忘れるのはなぜ?|話すと抜ける理由を研究で解説

外国人と笑顔で英会話をする男性と、頭に手を当てて「しまった」という顔をする男性のイラストが左右に並ぶ。 文法

三単現の s をつい忘れるのはなぜ?|話すと抜ける理由を研究で解説

英語学び直したいユーイチ
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「He go」と言っちゃうんです。基礎が抜けてるんでしょうか?

英語独学好きの助教S
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気持ちはわかります。実は、この小さな s は言語習得の研究で昔から「なかなか安定しない語尾」として調べられてきたテーマなんですよ。

英語学び直したいユーイチ
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でも中学 1 年で習うことですよね。なんで直らないんですか?

英語独学好きの助教S
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多くの人がそこで自分を責めます。研究の世界では、習った時期の早さと、話す場面で使いこなせるかは別の問題として扱われているんです。

英語学び直したいユーイチ
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理由が分かっても、僕に直せるのか不安です…

英語独学好きの助教S
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その不安は自然です。研究は、s が抜ける理由をいくつかの仕組みに分けて整理しています。仕組みが分かると、手の打ち方も見えてきますよ。

英語学び直したいユーイチ
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じゃあ、具体的には何から考えればいいですか?

英語独学好きの助教S
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この記事では、言語習得の研究を順番に見ながら、s が抜ける理由と付き合い方を一緒に整理していきます。気楽に読んでみてください。

結論: 三単現の s が話すと抜けるのは、基礎ができていないからとは限らない。言語習得の研究では、この小さな語尾は日本語話者にとって気づきにくいものとして調べられてきた。理由として研究から言えるのは 3 つだ。音が小さく目立たないこと、he などで意味が先に分かるので注意が向きにくいこと、日本語に同じ区別が無いことだ。目立ちやすさは、文法の語尾が身につく順番を説明する要因の 1 つとされる。ルールをはっきり教わる指導は文法全体で効果が報告されているが、「意識すれば必ず直る」とまでは言えない。

この記事でわかること

  • 三単現の s が抜ける悩みが、研究でどう扱われてきたか
  • s が後回しになる 3 つの理由 (音・注意・日本語のしくみ)
  • テストでは付けられるのに、話すと抜ける理由
  • 研究から導ける、三単現の s との付き合い方と AI の使いどころ

He go と言ってしまうのは、あなただけではない

オンライン英会話で「He go to the office.」と言い、あとで気づいて落ち込む。
三単現の s は中学 1 年で習うので、「こんな基本もできないのか」と感じやすい。
でも研究の世界では、この s は昔から「なかなか安定しない語尾」として調べられてきた。

Shibuya と Wakabayashi (= 日本語話者が主語と動詞をそろえる力を実験で調べた研究者) の研究がある。
対象は中級の日本語話者で、三単現の s が使えない理由を探ることを目的にしていた。
つまり「中級でも s がうまく使えない」ことが、研究の出発点になっているのだ。

子どもの英語学習者を 2 年間追いかけた Blom らの研究もある。
Blom らは、15 人の子どもの自然な話し言葉を分析した研究チームだ。
三単現の s を付けるかどうかには、動詞の出てくる回数や語彙の量など、複数の要因が関わっていた。
言い換えると、s の身につき方は 1 つの原因では決まらない、ということだ。

文法の語尾には、身につく順番があるという研究も古くからある。
Dulay と Burt (= 1970 年代に子どもの英語の覚え方を調べた研究者) は、母語が違う子どもでも順番がほぼ同じだと報告した。
その後、Goldschneider と DeKeyser のメタ分析が行われた。
メタ分析は、別々の学校でとったテスト結果を 1 冊にまとめて全体の傾向を見るような調べ方だ。
12 本の研究、合計 924 人の話し言葉をまとめ、順番を説明する要因を調べている。

ただし、三単現の s が何番目に来るのかまでは、今回確かめた範囲には書かれていない。
文法をどんな順番でやり直すかは、大人の英文法やり直しの順番を言語習得の研究で整理した記事で詳しく扱っている。
この記事では順番ではなく、「なぜ小さな s が後回しになるのか」に絞って見ていく。

ここまでのまとめ: 三単現の s は、中級の日本語話者でも安定しにくい語尾として研究で扱われてきた。抜けるのはあなただけではない。

理由 1:s は音が小さく、耳に飛び込んでこない

英語学び直したいユーイチ
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salience って何ですか?ピンと来なくて…

英語独学好きの助教S
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「どれだけ耳に飛び込んでくるか」のことです。12 本の研究をまとめた分析では、この目立ちやすさも語尾が身につく順番の要因の 1 つでした。

1 つめの理由は、s そのものが目立たないことだ。
goes や likes の最後の音は、短くて弱い。
話す速さの中では、ほとんど聞こえないこともある。

研究では、この目立ちやすさを salience (セイリエンス) と呼ぶ。
salience は「どれだけ目や耳に飛び込んでくるか」という意味の言葉だ。
人混みの中の小さな声は聞き逃しやすいが、大きな声は自然と耳に入る、というイメージに近い。

Goldschneider と DeKeyser のメタ分析は、順番を説明する要因として 5 つを調べた。
目立ちやすさ、意味の複雑さ、形と音の規則性、文法上の種類、出てくる回数の 5 つだ。
この 5 つを組み合わせると、身につく順番のばらつきの「とても大きな部分」が説明できたという。
ここで大事なのは、目立たないこと「だけ」が原因ではない、という点だ。
複数の性質が重なって、後回しになりやすい語尾ができあがっている。

子どもの研究でも、s の音の種類が付けやすさに関わっていた。
s には「ス」「ズ」「イズ」の 3 つの音がある (likes / goes / watches のような違い)。
動詞がどれくらいよく出てくるかも、s の付けやすさに関わっていた。
よく使う動詞ほど付けやすいのだとすれば、通い慣れた道ほど迷わない、というのに近いイメージだ。

ここまでのまとめ: s は音が小さく目立たない。研究では、目立ちやすさを含む複数の性質の組み合わせで、身につく順番が説明されている。

理由 2:he で意味が分かるので、s に注意が向きにくい

英語学び直したいユーイチ
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s が無くても通じるなら、気にしなくていいのでは?

英語独学好きの助教S
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実はそこが落とし穴です。理論研究では、he という目立つ手がかりがあると小さな s に注意が向きにくいとされます。名札があると顔を覚えないのと似ています。

2 つめの理由は、少し意外かもしれない。
s が無くても、意味がほとんど困らないことだ。

「He goes to work every day.」という文を考えてみよう。
he があるので、「1 人の男の人の話だ」とすでに分かる。
every day があるので、「毎日のことだ」とも分かる。
すると、動詞の最後の s は、意味を知るためにはほとんど必要ない。

この仕組みを説明したのが、N. C. Ellis の理論論文だ。
Ellis は、外国語の文法が身につきにくい理由を、学習の心理学の考え方で整理した研究者だ。
論文では、耳に入っているのに身につかない特徴があることを取り上げている。
その理由として、手がかりの取り合い (cue competition) や阻止 (blocking) などを挙げている。

手がかりの取り合いとは、意味を知るヒントが複数あると、目立つほうに注意が集まることだ。
名札があれば、顔を覚えなくても相手の名前に困らないのに似ている。
阻止 (blocking) は、先に覚えた手がかりが、後から来た手がかりを見えなくすることだ。
いつもの近道を知っていると、新しくできた道があっても気づかずに通り過ぎてしまうのに似ている。
he で 1 人と分かる習慣が先にあると、s に目を向ける必要を感じにくくなる、と考えられる。

Ellis と Sagarra (= 大人が外国語の語尾に注意を向けるかを実験で調べた研究者) は、これを確かめた。
扱ったのはラテン語とスペイン語の「いつのことか」を表す手がかりで、英語の s ではない。
学び始めの大人は、動詞の語尾より、yesterday のような単語のほうに注意を向けた。
単語のほうが目立ち、意味との対応が単純だから、と説明されている。
yesterday という大きな看板があると、動詞の語尾という小さな張り紙は見なくても迷わない状態だ。

三単現の s を直接調べた実験ではないので、当てはめは慎重にしたい。
それでも he という大きな手がかりと、s という小さな手がかりの関係は、同じ仕組みで説明できる可能性がある。

ここまでのまとめ: he や every day で意味が先に分かると、脳は小さな s に注意を向けにくい。時制の実験から見えた仕組みで、三単現の s も同じ仕組みで説明できる可能性がある。

理由 3:日本語には「1 人か、2 人以上か」で形を変える決まりが無い

英語学び直したいユーイチ
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やっぱり日本人だから苦手なんですか?

英語独学好きの助教S
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「だからできない」ではありません。複数形の s の研究では、母語に同じ区別が無いと、上級者でも誤りに目が止まりにくいと報告されています。

3 つめの理由は、日本語のしくみだ。
日本語では「彼が行く」「私が行く」「彼らが行く」で、動詞の形は変わらない。
英語の三単現の s は、主語が 1 人か複数かなどで動詞の形を変える決まりだ。
日本語に無い区別なので、意識しないと見えにくい。

Luk と Shirai (= 母語の違いによる英語の文法の覚え方を調べた研究者) は、過去の研究をまとめ直した。
対象は、日本語・韓国語・中国語・スペイン語を母語とする学習者だ。
日本語・韓国語・中国語の話者は、複数形の s と冠詞 (= a や the のように名詞の前に付く小さな語) を予測より遅く身につけることが多かった。
母語に同じ区別があるかどうかで、身につく早さが変わりうると結論している。
先ほどの「順番は母語に関係なくほぼ同じ」という古い報告を、見直す結果だ。
扱ったのは複数形の s などで、三単現の s ではない点には注意したい。

Jiang らの研究チームは、上級の学習者で同じ問題を調べた。
調べたのは、形態的一致仮説 (= 母語に似た語尾があると、外国語でもその語尾が身につきやすいという考え) だ。
英文を 1 語ずつ自分のペースで読んでもらい、複数形の誤りで読む速さが落ちるかを測った。
これは、文の中の間違いに思わず「おや?」と止まるかどうかを見る方法だ。
ロシア語話者は誤りで読む速さが落ちたが、日本語話者は落ちなかった。
ふだん使わない記号には、上級者でも目が止まらない、というイメージだ。
これも複数形の s の研究で、話すときの抜けを直接測ったものではない。

三単現の s を直接扱ったのが、先ほどの Shibuya と Wakabayashi の実験だ。
「Tim and Paul」や「these two」のように複数がはっきり見える主語なら、s の付けすぎに気づけた。
一方、「The chefs」のように名詞の s だけで複数を示すと、気づけなかった。
著者は、難しさは主語の「1 つか複数か」を拾うところにあるのでは、と提案している。
これは確定した結論ではなく、研究者の見立てとして受け取るのがよい。

冠詞 a と the が身につきにくいのも、同じ「日本語に無い区別」の問題として研究されている。

ここまでのまとめ: 日本語には「1 人か複数か」で形を変える決まりが無い。母語に無い区別の語尾は、上級者でも気づきにくいことが複数形の研究で示されている。

テストでは付けられるのに、話すと抜けるのはなぜか

英語学び直したいユーイチ
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テストでは付けられるのに、なんで話すと抜けるんですか?

英語独学好きの助教S
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矛盾ではないんです。17 の文法項目を調べた研究では、ルールを説明できる知識と考えずに使える力は別の力でした。自転車の説明とこぎ方の違いです。

「テストなら正しく付けられるのに」という悩みも多い。
これは、ルールを知る力と、話す速さで自然に出る力が別だからだと考えられる。

R. Ellis (= 先ほどの N. C. Ellis とは別の研究者で、文法の知識の測り方を調べた) は、2 つの知識を分けて測った。
1 つは明示的な知識 (= ルールとして説明できる知識) だ。
もう 1 つは暗黙の知識 (= 考えずにすぐ使える力) だ。
自転車のこぎ方を説明できることと、考えずにこげることは別、というのに近い。

この研究では、5 種類のテストで英語の 17 の文法項目を調べた。
聞いた文をまねして言う課題、話の語り、時間制限のある文法判断は、同じグループにまとまった。
一方、時間制限のない判断とルールの知識テストは、別のグループにまとまった。
つまり、急いで答える・話す課題と、じっくり考える課題では、別の力が測られていた。
17 項目に三単現の s が入るかは確かめられていないので、一般的な整理として受け取ってほしい。

テストや書くときは、見直す時間がある。
会話では、話す内容を考えながら、その場で言葉を出す必要がある。
そこで、意味の上では困らない小さな s が、注意の外にこぼれやすいのだ。
能力が無いのではなく、注意を向ける余裕の差として考えるほうが、研究とはなじむ。

「分かるのに出てこない」は、三単現に限らない英文法全体の悩みでもある。
こちらは英文法が分かるのに話すと出てこない理由を記憶と練習の研究で解説した記事にまとめている。

ここまでのまとめ: ルールを説明できる知識と、話す速さで出る力は、研究では別のものとして測られている。テストで付けられて会話で抜けるのは、矛盾ではない。

ルールをはっきり教わると効くのか

英語学び直したいユーイチ
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じゃあルールを覚え直せば、会話でも直りますか?

英語独学好きの助教S
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41 本の研究をまとめた分析では、ルールをはっきり教える指導のほうが文法全体で効果が大きいと出ました。ただ、三単現だけの結果ではないんですよ。

では、三単現の s はルールを学び直せば直るのだろうか。
これに関わるのが、Spada と Tomita (= 文法の教え方の効果を比べた研究者) のメタ分析だ。

この研究は 41 本の研究をまとめ、2 種類の教え方を比べた。
明示的な指導は、ルールをはっきり説明してから練習する教え方だ。
暗示的な指導は、説明をせず、たくさんの例に触れさせる教え方だ。
ゲームのルールを最初に聞いてから遊ぶか、遊びながら察するか、の違いに似ている。

結果は、単純な文法でも複雑な文法でも、明示的な指導のほうが効果が大きかった。
さらに、じっくり考えて使う知識だけでなく、その場で自然に使うことにもプラスに働く可能性が示された。

ただし、これは英語の文法項目全体の傾向だ。
三単現の s だけの結果ではないし、s がどちらの分類だったかもここでは確かめられていない。
「ルールを覚え直せば会話で抜けなくなる」とまでは、この研究からは言えない。

先ほどの Ellis と Sagarra の実験には、別のヒントもある。
語尾を前もって見せておくか、文字を強調して目立たせると、語尾への注意が高まった。
単語に頼りすぎる傾向も、これで防げたという。
小さな張り紙に、あえて蛍光ペンで印を付けるようなものだ。

ここまでのまとめ: ルールをはっきり教わる指導は、文法全体で効果が報告されている。語尾を目立たせる工夫は、時制の実験で注意を高めた。どちらも三単現だけの結果ではない。

研究から導ける、三単現の s との付き合い方

ここまでの研究から、付き合い方を 3 つに整理する。
どれも研究の仕組みから導ける範囲で、「何日で直る」という効果を約束するものではない。

1 つめは、自分を責めすぎないことだ。
s は中級の日本語話者でも安定しにくい語尾として研究されてきた。
抜けたからといって、中学英語を全部やり直す必要があるとは、研究からは言えない。

2 つめは、「s だけを見る時間」を別に作ることだ。
会話中は he や every day で意味が分かるので、s に注意が向きにくい。
それなら、話し終わったあとに自分の録音を聞き直す時間を取るとよい。
書き起こした文の動詞に、蛍光ペンで印を付けるのも 1 つの方法だ。
語尾を目立たせると注意が高まったという実験と、同じ方向の工夫になる。
ただし、この練習法そのものの効果を測った研究は、今回確かめた中には無い。

3 つめは、話す最中は内容に集中し、確認は後に回すことだ。
話しながら s ばかり気にすると、言いたいことが出てこなくなりやすい。
ルールを知る力と話す力は、研究では別の力として測られているので、確認の時間を分けるほうが自然だ。
主語が 1 人か複数かを意識して拾う練習も、研究者の見立てと合う考え方だ。

ここまでのまとめ: 自分を責めすぎず、s だけを見る時間を会話とは別に作る。効果の大きさや期間は、研究からはまだ言えない。

AI の文法チェックで「s に気づく機会」は増やせるか

英語学び直したいユーイチ
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AI に直してもらえば、s は抜けなくなりますか?

英語独学好きの助教S
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期待したくなりますよね。66 人の研究では、直すタイミングを変えても文法の伸びに差は出ませんでした。AI で s が減るかを確かめた研究はまだ少ないんです。

研究が示した条件は、小さな語尾に気づく機会を増やすことだった。
では、AI の文法チェックや AI 英会話の訂正で、この条件は満たせるのだろうか。

自動の添削ツールを調べた Ranalli と Yamashita の研究がある。
2 人は、機械で文法を直すツールの性能を調べた研究者だ。
調べたのは、機械学習を使う添削ツールだ。機械学習は、たくさんの文の例から、コンピューターが間違いの型を自分で覚えるしくみのことだ。このツールは、学習者によくある誤りの「種類」を、Word に入っている文法チェックの 10 倍多く指摘できた。
一方で、指摘は平均 17.5 秒遅れて出て、書く流れを乱すおそれがあるとされた。
ただし、これは「誤りを見つけられるか」の研究で、学習者の文法が伸びたかは測っていない。

大規模言語モデル (= 大量の文章から言葉の続きを予想する AI) のチャット相手を使った研究もある。
Kamelabad らは、66 人の学習者を、会話中に直されるグループと会話後に直されるグループに分けた。
文法の伸びには、2 つのグループで差が出なかった。
会話中に直されたほうが、使い心地はよかったという。
比べたのは直すタイミングどうしで、AI を使わない場合との比較ではない。

まとめると、AI の訂正で三単現の s の抜けが減るかを、直接確かめた研究はまだ少ない。
それでも、録音の書き起こしを AI に見てもらい、s の抜けに印を付けてもらう使い方は考えられる。
これは「s だけを見る時間を作る」という研究の条件を、AI で満たせるかという試みだ。
直され方そのものの研究は、英語の間違いを直してもらうと伸びるのかを研究で整理した記事で詳しく紹介している。

ここまでのまとめ: AI は小さな誤りを見つける手伝いはできるが、それで s の抜けが減るかを確かめた研究はまだ少ない。

よくある質問

Q1. 三単現の s を話すと忘れるのは、基礎ができていないからですか?
A. そうとは限りません。三単現の s は、中級の日本語話者でも使いこなしにくい語尾として研究されてきました。音が小さく目立たず、he で意味が分かるので注意が向きにくいことなど、複数の理由が考えられます。

Q2. 中学英語から全部やり直したほうがいいですか?
A. 研究からは、全部やり直す必要があるとは言えません。ルールを知っていても、話す速さで出せる力は別の力だと考えられています。録音を聞き直すなど、s だけを確認する時間を別に作るほうが、研究の仕組みとは合っています。

Q3. 日本人だから三単現の s が苦手なのですか?
A. 「日本人だからできない」わけではありません。日本語には、主語が 1 人か複数かで動詞の形を変える決まりがありません。研究では、母語に無い区別の語尾は気づきにくいことが、複数形の s などで報告されています。

Q4. 三単現の s が抜けても、相手に通じますか?
A. he や every day などで、意味は他の語から伝わることが多いと考えられます。ただ、s が抜けたときに聞き手がどう受け取るかを調べた研究は、この記事では確かめていません。「全く問題ない」とまでは言えません。

Q5. AI 英会話を使えば、三単現の s は抜けなくなりますか?
A. そうとは言えません。AI の訂正で s の抜けが減るかを直接確かめた研究は、まだ少ないのが現状です。AI に書き起こしを見てもらい、s の抜けに気づく機会を増やす使い方を試す、という位置づけが現実的です。

まとめ

三単現の s が話すと抜けるのは、基礎不足とは限りません。
研究から見えてきた理由は 3 つです。
1 つめは、s の音が小さく目立たないこと。
2 つめは、he などで意味が先に分かるので、脳が s に注意を向けにくいこと。
3 つめは、日本語に「1 人か複数か」で形を変える決まりが無いことです。
テストで付けられて会話で抜けるのは、ルールを知る力と話す力が、研究では別の力として測られているからだと考えられます。
ルールをはっきり教わる指導は効果が報告されていますが、三単現だけの結果ではありません。
まずは次の英会話を録音し、動詞の s だけを聞き直す時間を 5 分作ってみましょう。

参考文献

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  2. Luk, Z. P., & Shirai, Y. (2009). Is the acquisition order of grammatical morphemes impervious to L1 knowledge? Evidence from the acquisition of plural -s, articles, and possessive ‘s. Language Learning, 59(4), 721-754. https://doi.org/10.1111/j.1467-9922.2009.00524.x
  3. Jiang, N., Novokshanova, E., Masuda, K., & Wang, X. (2011). Morphological congruency and the acquisition of L2 morphemes. Language Learning, 61(3), 940-967. https://doi.org/10.1111/j.1467-9922.2010.00627.x
  4. Shibuya, M., & Wakabayashi, S. (2008). Why are L2 learners not always sensitive to subject-verb agreement? EUROSLA Yearbook, 8, 235-258. https://doi.org/10.1075/eurosla.8.13shi
  5. Ellis, N. C. (2006). Selective attention and transfer phenomena in L2 acquisition: Contingency, cue competition, salience, interference, overshadowing, blocking, and perceptual learning. Applied Linguistics, 27(2), 164-194. https://doi.org/10.1093/applin/aml015
  6. Ellis, N. C., & Sagarra, N. (2010). Learned attention effects in L2 temporal reference: The first hour and the next eight semesters. Language Learning, 60(s2), 85-108. https://doi.org/10.1111/j.1467-9922.2010.00602.x
  7. Blom, E., Paradis, J., & Sorenson Duncan, T. (2012). Effects of input properties, vocabulary size, and L1 on the development of third person singular -s in child L2 English. Language Learning, 62(3), 965-994. https://doi.org/10.1111/j.1467-9922.2012.00715.x
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  9. Spada, N., & Tomita, Y. (2010). Interactions between type of instruction and type of language feature: A meta-analysis. Language Learning, 60(2), 263-308. https://doi.org/10.1111/j.1467-9922.2010.00562.x
  10. Dulay, H. C., & Burt, M. K. (1974). Natural sequences in child second language acquisition. Language Learning, 24(1), 37-53. https://doi.org/10.1111/j.1467-1770.1974.tb00234.x
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最終更新日: 2026-11-08
著者: 中村 拓(Taku Nakamura)(greencafe 編集部 編集責任者・非ネイティブ話者)。公開された 12 件の研究エビデンス(tier 1=12 / tier 2=0)を横断分析・再構成した。
画像: いらすとや (https://www.irasutoya.com/) より

この記事を編集した人

中村 拓(Taku Nakamura)のポートレート

(編集責任者 / 応用言語学・第二言語習得 エディター(非ネイティブ話者))

応用言語学のバックグラウンドを持つ英語学習分野のエディターで、査読済み SLA 論文・応用言語学ジャーナル・公的機関資料の横断要約と再構成を担当する編集責任者です。非ネイティブ英語話者で、大人の英語学び直しを研究の視点で編集しています。

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