英語力の自己評価は当てにならない?|研究でわかるズレのくせとAI採点の使い方

左に鏡を見て悲しそうな顔をしている男性のイラスト、右にテストの採点をしている女性の先生のイラストが並ぶ。自分で見た自分の姿と、外からの採点を表している。 AI英会話・CALL

英語力の自己評価は当てにならない?|研究でわかるズレのくせとAI採点の使い方

英語学び直したいユーイチ
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僕、自分の英語力がどれくらいなのか、正直よく分からないんですよね…

英語独学好きの助教S
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気持ちはわかります。実は、自分の英語力を自分で見積もる力そのものが、言語テストの研究で長く調べられてきたテーマなんですよ。

英語学び直したいユーイチ
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「上手ですね」と言われても、お世辞にしか聞こえなくて。

英語独学好きの助教S
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多くの人がそうです。自分の見積もりと、試験や聞き手の評価がどれくらい合うのかは、研究の世界でも昔から議論されてきた問題なんです。

英語学び直したいユーイチ
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でも研究で分かっても、僕が自分を正しく測れるとは限りませんよね?

英語独学好きの助教S
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その不安は自然です。研究は、見積もりが当たるかを性格の問題ではなく、測り方の作りの問題として整理しています。だから工夫の余地があるんです。

英語学び直したいユーイチ
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じゃあ、具体的には何から考えればいいんですか?

英語独学好きの助教S
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この記事では、いくつもの研究を順番に見ながら、見積もりが当たる条件とズレのくせ、AI の採点との付き合い方まで一緒に確かめていきます。

結論: 世界の研究をまとめた分析では、英語などの外国語の自己評価は、テストの結果と「中くらい」に一致していました。ぴったりではありませんが、当てにならないとまでは言えません。話す力では、力が低めの人ほど高めに、高めの人ほど低めに見積もる向きが報告されています。具体的な基準で見積もると当たりやすく、外の物差しと照らし合わせて使うのが研究と合う考え方です。

この記事でわかること

  • 自分の英語力の見積もりは、全体としてどれくらい当たるのか
  • 見積もりが当たりやすくなる条件と、ズレの向きのくせ
  • 「できない人ほど自信過剰」という話を、どこまで信じてよいか
  • 自分の感覚と、試験・先生・AI の採点が食い違ったときの読み方

「当てにならない」と感じる前に、言葉をそろえておく

先生には「上手ですね」と言われるのに、自分では全然話せていない気がする。逆に、できるつもりだったのに会議で通じなかった。

こうした経験が続くと、自分の見積もりは当てにならないと感じますよね。

まず 2 つの言葉を分けます。1 つ目は自己評価 (= 自分の英語力を自分で採点すること) です。2 つ目は外の物差しで、試験の点数や先生・聞き手の評価を指します。

研究では、この 2 つがどれくらい一緒に動くかを相関 (= 片方が高いと、もう片方も高くなりやすいかを表す数字) で調べてきました。背が高い人ほど体重も重い傾向がある、というような「一緒に動く度合い」のことです。

大事なのは「当たるか、外れるか」の二択で考えないことです。どれくらい当たるのか、どちらにズレやすいのかを見ていきます。

ここまでのまとめ: 自分の見積もり (自己評価) と、試験や人の評価 (外の物差し) は別物です。この記事では両者の「合い方」と「ズレの向き」を研究で確かめます。

全体ではどれくらい当たる? 67 本の研究をまとめた分析

英語学び直したいユーイチ
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「中くらいに一致」って、結局当たってるんですか?

英語独学好きの助教S
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結論から言うと「だいたい合う」です。67 本の研究のまとめでは、体重計なしで体重を当てるくらいの合い方で、技能の違いでははっきり変わりませんでした。

いちばん大きな手がかりは、Li と Zhang (= 外国語の自己評価の研究をまとめた研究者) の 2021 年の研究です。

これはメタ分析 (= たくさんの研究の結果を集めて、全体の傾向を出す方法) です。クラス全員のテスト結果を集めて平均を出すようなものだと考えてください。

この分析は、67 本の研究、97 のグループ、合計 68,500 人を超える参加者のデータをまとめています。

その結果、自己評価と実際の言語の成績の相関は r = .466 でした。r は 0 なら無関係、1 ならぴったり一致を表す数字です。

0.47 くらいは、体重計を見ずに自分の体重を当てると「だいたい合うが、数キロずれる人も多い」くらいの合い方です。

では、何によって当たりやすさが変わったのでしょうか。この分析では、次の 6 つが相関の強さを左右していました。

  • 自己評価の基準の種類
  • 基準があるかどうかと、その示し方
  • 自己評価に使う道具 (質問紙など)
  • 自己評価のトレーニングを受けたか
  • 質問項目の数
  • 自己評価の道具の信頼性 (= 何度測っても同じような結果が出るか)

一方で、読む・聞く・話す・書くという技能の違いは、当たりやすさをはっきり左右しませんでした。外部テストの種類も同じでした。

つまり効いていたのは技能の違いではなく、「どう見積もるか」の作り方でした。

さらに古い 1998 年の Ross (= 自己評価の研究を早い時期にまとめた研究者) の分析も、60 の相関の数字をまとめています。

Ross の後半の調査では、授業を終えたばかりの 236 人の EFL 学習者 (= 英語を外国語として学ぶ人) が自己評価をしました。担当の先生も 1 人ずつ評価しました。

その結果、見積もりの当たり方は、その技能を実際にどれだけ使ってきたかで違いました。毎日乗る自転車の腕前は分かるが、年に 1 回のスキーは分かりにくい、というのに似ています。

Ross の研究と、できることのリストでレベルを測る方法は、自分の英語レベルを「できること」で測る方法をまとめた記事で詳しく扱っています。

ここまでのまとめ: 67 本の研究のまとめでは、自己評価とテスト結果は中くらいに一致しました。当たりやすさを変えたのは技能の違いではなく、基準の示し方やトレーニングなど、見積もり方の作りでした。

「具体的な物差し」があると、見積もりは当たりやすい

英語学び直したいユーイチ
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自分で「10 点中 6 点」と付けるのって、意味ないんですか?

英語独学好きの助教S
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意味がないわけではありません。ただ研究では、5 段階で何点かを付けるより、できることを具体的に書いた質問のほうが正確に見積もれたんです。

基準の示し方が効くことを、別の角度から見た研究があります。Brantmeier ら (= 学習者の自己評価を調べた研究チーム) の 2012 年の研究です。

この研究の参加者は 276 人で、初級・中級・上級の 3 つの段階にまたがっていました。読む・聞く・話す・書くの 4 つの力を、授業に合わせた道具で自己評価しました。

上級の学習者については、自己評価と、インターネットで受ける能力テストの成績との関係を確かめています。

研究者たちは、上級の学習者は具体的な基準を与えられると自分を評価できる、という点を大事な示唆として挙げています。

同じ研究者たちの以前の結果も紹介されています。「5 段階で何点?」のような尺度で付けた読む力の自己評価は、後の成績をうまく予想できませんでした。

ところが、できることを具体的に書いた質問項目では、正確に見積もれたそうです。

「料理は得意?」より「卵焼きを 1 人で作れる?」のほうが正直に答えやすいですよね。

英語でも「リスニングは 10 点中 6 点」より、「ゆっくり話す相手の道案内なら聞き取れる」と場面で考えるほうが研究の条件に近づきます。

ここまでのまとめ: あいまいに点数を付けるより、できることを具体的に書いた項目で見積もるほうが当たりやすい、と研究は示しています。特に上級者では、具体的な基準があると自分を評価できました。

話す力のズレには「向き」がある

英語学び直したいユーイチ
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話せてないと思うのに褒められるのは、なぜなんですか?

英語独学好きの助教S
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実は珍しくないんですよ。話す力の研究では、聞き手の評価が高い人ほど自分を低めに見積もる向きがありました。うまい人ほど「まだまだ」と思うんです。

Trofimovich ら (= 第二言語の発音や聞き取りやすさを研究するチーム) の 2016 年の研究です。対象は第二言語 (= 母語の次に学ぶ言葉) の話し手で、2 つの実験の合計 134 人でした。

この研究は、話し手自身の評価と、聞き手の評価を比べました。比べたのは、なまりの強さと分かりやすさ (= 聞き手がどれだけ楽に意味を取れるか) の 2 つです。

結果、話し手の自己評価はおおむね不正確でした。そしてズレ方には、はっきりした向きがありました。

聞き手の評価が低かった話し手は、自分を高めに見積もりました。逆に、聞き手の評価が高かった話し手は、自分を低めに見積もりました。

カラオケに似ています。点が低い人ほど自分はうまいと思い、うまい人ほど「まだまだ」と思いがちです。話す英語の見積もりにも、これと似た向きのズレが見られたわけです。

ズレの大きさは、聞き手が評価した発音の正確さと流ちょうさに関係していました。一方、語彙や文法、話の組み立てとは関係していませんでした。

「話せていない」と強く感じる人の中には、聞き手から見れば十分分かりやすい人もいる可能性があります。厳しすぎる自己評価もズレの一種です。

次は Dolosic ら (= 自己評価と話す力の関係を調べた研究チーム) の 2016 年の研究です。

対象は英語ではなくフランス語のサマーキャンプに参加した、10 代の生徒 24 人です。教室の中でも外でもフランス語に囲まれる環境でした。社会人の英語学習者の研究ではない点に注意してください。

キャンプの後、生徒たちの話す力は伸びました。そして到着したときは、自己評価と話す力のテスト結果は一致していませんでした。

ところがキャンプの後には、両者がはっきり一致するようになっていました。研究者たちは、実際に必要に迫られたやり取りをたくさん経験した後のほうが、自分を評価しやすくなる可能性を示しています。

初めての部活では、自分がうまいかどうか分かりませんよね。何週間か練習試合をこなすと、自分の実力がつかめてくるのと似ています。

ここまでのまとめ: 話す力では、聞き手の評価が低い人ほど高めに、高い人ほど低めに見積もる向きが報告されています。実際に話す経験を重ねると、見積もりが当たりやすくなる可能性も示されています。

「できない人ほど自信過剰」は英語でも本当か

英語学び直したいユーイチ
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できない人ほど自信過剰って、僕のことかも…

英語独学好きの助教S
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多くの人がそう心配します。ただ有名なダニング=クルーガー効果 (苦手な人ほど自分を高く見積もる説) は英語学習の研究ではなく、統計の面で異論もあるんです。

自己評価の話になると、よく出てくるのがダニング=クルーガー効果 (= 苦手な人ほど自分を高く見積もりやすい、という心理学の説) です。

元になったのは、Kruger と Dunning (= 自己評価のズレを調べた心理学者) の 1999 年の研究です。ただし、これは英語学習の研究ではありません。一般の心理学の研究です。

この研究は 4 つの調査で、ユーモア・文法・論理のテストを使いました。ここでの文法は、外国語として学ぶ英語の力を測ったものではありません。

成績が下から 4 分の 1 の参加者は、自分の成績と能力を大きく高めに見積もりました。

実際の成績は 12 パーセンタイルでした。パーセンタイルは、100 人を成績順に並べたときに下から何番目かを表す数字です。下から 12 番目くらいの人が、自分は 62 番目くらいだと見積もったのです。

研究者たちはこのズレを、メタ認知 (= 自分の答えが合っているかを見分ける力) の不足と結びつけています。ルールをよく知らないと、自分の反則にも気づけない、という考え方です。

ところが、この効果の解釈には異論もあります。Gignac と Zajenkowski (= 知能と自己評価を調べた研究者) による 2020 年の研究です。

よくある検証方法では、平均への回帰 (= たまたま悪かった人は、次は少し上がりやすいような数字のくせ) が混ざる、と批判されてきました。

この研究は、一般の地域住民 929 人のデータを別の統計の方法で分析しました。参加者は知能を自己評価し、Raven 検査 (= 図形のパズルで考える力を測るテスト) を受けています。

結果、「能力が低い人ほどズレが大きい」というパターンは統計的に確認されませんでした。研究者たちは、効果があるとしても従来の報告より小さい可能性があると結論しています。

ですから「英語ができない人は必ず自信過剰になる」という法則のように受け取るのは行き過ぎです。研究ごとに、何をどう測ったかが違います。

ここまでのまとめ: ダニング=クルーガー効果は英語学習の研究ではなく、解釈には統計上の異論もあります。英語の自己評価にそのまま当てはまる法則として扱わないのが安全です。

ズレは練習で直せるのか

英語学び直したいユーイチ
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見積もりのズレって、練習で直るものなんですか?

英語独学好きの助教S
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気持ちはわかります。韓国の小学 6 年生の研究では、1 学期間自己評価を続けると見積もる力が伸びました。ただ子どもの結果なので、大人には参考程度にしてください。

見積もりがズレるなら、ズレを小さくすることはできるのでしょうか。教育心理学 (= 学び方や教え方を心理学で調べる分野) の研究を見てみます。

まず、Panadero ら (= 自己評価の研究を整理した研究チーム) の 2016 年の総説です。総説は、研究を広く集めて分かっていることを整理した論文です。

この総説によると、自己評価の研究で最もよく調べられてきたのは、正確さでした。

そして、課題についてある程度分かっていること自体が、正確な自己評価の前提かもしれない、と述べています。

将棋のルールを知らない人は、自分の指し手がうまいかどうかも判断できません。ある程度分かってこそ、自分を採点できるわけです。

一方で、成績が低い学習者の自己評価を支える難しさも論じられています。

英語の例として、Butler と Lee (= 子どもの英語学習を研究する研究者) の 2010 年の研究があります。対象は韓国の小学 6 年生 254 人で、大人ではありません。

子どもたちは 1 学期の間、英語の授業で定期的に自己評価をしました。すると、時間とともに自分の成績を自己評価する力が伸びました。

自己評価は、英語の成績と自信にもプラスの効果を示しましたが、その効果はかなり小さいものでした。

毎週の小テストの前に「何点取れそう?」と予想して答え合わせを続けると、予想がだんだん当たるようになる。そんなイメージです。ただし子どもの結果なので、社会人にそのまま当てはまるとは言えません。

ここで、Brown ら (= 生徒の自己評価の正確さを論じた研究者) の 2015 年の論文の注意点も大切です。

この論文は、自己評価が形成的評価 (= 学びの途中で、次に何をすればよいかを知るための評価) の中心だと位置づけています。

そのうえで、正確さを点数にすることに偏ると、本来の目的が損なわれる落とし穴があると注意しています。

自己評価は「成績表」ではなく「練習ノートのメモ」です。ぴったり当てる点数当てゲームにすると、意味が変わってしまいます。

ここまでのまとめ: 自己評価の正確さは固定ではなく、経験や練習で変わりうることが示されています。ただし目的は当てることではなく、次の練習に生かすことです。

自分の感覚と外の物差しが食い違ったときの読み方

ここまでの研究から導ける範囲で、食い違いの読み方をまとめます。なお、この手順そのものを社会人で確かめた研究ではありません。

1. 点数ではなく、場面ごとに見積もる

「英語力は 10 点中 5 点」ではなく、「会議で自分の意見を 1 分話せる」のように具体的な場面で考えます。基準が具体的なほど当たりやすいという結果と合う方法です。

2. 先に見積もりを書き、あとで外の物差しと比べる

試験や先生の評価を見る前に、自分の見積もりを書いておきます。外の物差しには、試験の点数、先生のコメント、自分の録音を聞き直した印象などがあります。

3. ズレの向きを記録する

高めにズレたのか、低めにズレたのかを残しておきます。話す力では、ズレに向きがあることが報告されています。

自分がどちら向きにズレやすいかが分かれば、次の見積もりで少し補正できます。

4. 外の物差しにもブレがあると知っておく

試験の点数も毎回同じではありません。1 回の点数だけで見積もりが外れたと決めつけないことも大切です。

試験の点数のブレについては、TOEIC の点が下がっても実力が落ちたとは限らない理由をまとめた記事で解説しています。

ここまでのまとめ: 場面ごとに見積もり、先に書いてから外の物差しと比べ、ズレの向きを記録する。これが研究から導ける、自己評価の使い方の一案です。

AI の採点は、自己評価の「答え合わせ役」になれるか

英語アプリの発音スコアや作文の自動採点 (= 機械が文章や発音を点数にする仕組み) は、先生や試験が身近にない社会人の「外の物差し」になりうるでしょうか。

関連する研究に、Lee ら (= 自動フィードバックを研究するチーム) の 2025 年の研究があります。対象は、英語を追加の言語として使う留学生の大学院生 50 人です。

参加者はくじ引きのように 2 つに分けられました。BERT (= 文章の意味を読み取る AI の仕組みの一種) による自動の採点と助言を受ける組と、自己評価をする組です。

自動フィードバックのグループは、課題の達成や文章の構成、合計点で上回りました。一方、語彙と文法では差が出ませんでした。また、作文への自信は下がったと報告されています。

体重計の数字が正確でも、毎日見るとへこむことがあるのと似ています。

自己評価の正確さそのものを測った研究として、Chen と Chen (= AI の助言と自己評価を調べた研究者) の 2025 年の研究もあります。大学の作文で、AI の助言が自己評価の正確さを変えるかを調べました。

全体では差が出ませんでしたが、もともと見積もりがズレていた学生は大きく改善しました。ただし、作文の言語や人数は論文の要旨に書かれておらず、英語学習者の研究とは言えません。

自動採点の結果で自己評価の答え合わせをして、英語学習者のズレが直るか。この点を直接確かめた研究は、調べた範囲ではまだ少ないのが現状です。

ですから「AI に採点させれば本当の実力が分かる」とは言えません。自動採点も 1 つの物差しで、精度には限界があります。精度については英語アプリの発音スコアの得意と苦手を調べた記事で扱っています。

研究と整合する問いの立て方は、こうなります。先に自分の見積もりを書き、AI の点と比べてズレの向きを記録する。その使い方で、ズレは小さくなるのか、ということです。

ここまでのまとめ: AI の採点は外の物差しの 1 つにはなりえますが、自己評価のズレを直せるかを英語学習者で確かめた研究はまだ少ないです。

よくある質問

Q1. 自分の英語力の自己評価は、結局当てにならないのですか?

A. 67 本の研究のまとめでは、自己評価とテスト結果は中くらいに一致していました。ぴったりではありませんが、当てにならないとまでは言えません。具体的な基準で見積もるほど当たりやすくなります。

Q2. 読む力と話す力では、どちらが当たりやすいですか?

A. 大きなメタ分析では、技能の違いは当たりやすさをはっきり左右しませんでした。差が出たのは、基準の示し方やトレーニングなど見積もり方の作りでした。

Q3. 「話せない」と思っているのに褒められるのはお世辞ですか?

A. お世辞とは限りません。話す力の研究では、聞き手の評価が高い人ほど自分を低めに見積もる向きが報告されています。録音を聞き直すなど、別の物差しで確かめてみましょう。

Q4. ダニング=クルーガー効果は英語学習にも当てはまりますか?

A. 元の研究は英語学習ではなく一般の心理学の研究で、統計のくせで説明できる部分があるという異論もあります。英語学習の法則として扱わないほうが安全です。

Q5. 自己評価の精度は練習で上がりますか?

A. 韓国の小学生の研究では、1 学期間くり返し自己評価をした子どもたちの、自分を評価する力が伸びていました (この研究は子どもが対象です)。フランス語キャンプの 10 代の研究では、キャンプの後の方が見積もりと話す力のテスト結果がそろっていました。社会人で同じになるかは、まだ確かめられていません。

まとめ

  • 自分の英語力の見積もりは、テストの結果と中くらいに一致します。当てにならないのではなく、ズレ方にくせがあります。
  • 当たりやすさを変えたのは技能の違いではなく、基準の示し方やトレーニングなど、見積もり方の作りでした。
  • 話す力では、聞き手の評価が低い人ほど高めに、高い人ほど低めに見積もる向きが報告されています。
  • 「できない人ほど自信過剰」は英語学習の法則ではなく、解釈には異論もあります。
  • 場面ごとに見積もり、先に書いてから外の物差しと比べ、ズレの向きを記録する。AI の採点もその物差しの 1 つとして使えますが、効果を確かめた研究はまだ少ないです。

参考文献

  1. Li, M., & Zhang, X. (2021). A meta-analysis of self-assessment and language performance in language testing and assessment. Language Testing, 38(2), 189-218. https://doi.org/10.1177/0265532220932481
  2. Ross, S. (1998). Self-assessment in second language testing: a meta-analysis and analysis of experiential factors. Language Testing, 15(1), 1-20. https://doi.org/10.1177/026553229801500101
  3. Brantmeier, C., Vanderplank, R., & Strube, M. (2012). What about me?: Individual self-assessment by skill and level of language instruction. System, 40(1), 144-160. https://doi.org/10.1016/j.system.2012.01.003
  4. Trofimovich, P., Isaacs, T., Kennedy, S., Saito, K., & Crowther, D. (2016). Flawed self-assessment: Investigating self- and other-perception of second language speech. Bilingualism: Language and Cognition, 19(1), 122-140. https://doi.org/10.1017/S1366728914000832
  5. Dolosic, H. N., Brantmeier, C., Strube, M., & Hogrebe, M. C. (2016). Living language: Self-assessment, oral production, and domestic immersion. Foreign Language Annals, 49(2), 302-316. https://doi.org/10.1111/flan.12191
  6. Butler, Y. G., & Lee, J. (2010). The effects of self-assessment among young learners of English. Language Testing, 27(1), 5-31. https://doi.org/10.1177/0265532209346370
  7. Brown, G. T. L., Andrade, H. L., & Chen, F. (2015). Accuracy in student self-assessment: directions and cautions for research. Assessment in Education: Principles, Policy & Practice, 22(4), 444-457. https://doi.org/10.1080/0969594X.2014.996523
  8. Panadero, E., Brown, G. T. L., & Strijbos, J.-W. (2016). The future of student self-assessment: A review of known unknowns and potential directions. Educational Psychology Review, 28(4), 803-830. https://doi.org/10.1007/s10648-015-9350-2
  9. Kruger, J., & Dunning, D. (1999). Unskilled and unaware of it: How difficulties in recognizing one’s own incompetence lead to inflated self-assessments. Journal of Personality and Social Psychology, 77(6), 1121-1134. https://doi.org/10.1037/0022-3514.77.6.1121
  10. Gignac, G. E., & Zajenkowski, M. (2020). The Dunning-Kruger effect is (mostly) a statistical artefact: Valid approaches to testing the hypothesis with individual differences data. Intelligence, 80, 101449. https://doi.org/10.1016/j.intell.2020.101449
  11. Lee, M.-H., Jang, E. E., & Hannah, L. (2025). Automated diagnostic feedback vs. self-assessment: Rethinking feedback mechanisms on academic writing development. TESOL Quarterly, 59(S1). https://doi.org/10.1002/tesq.70032
  12. Chen, S.-Y., & Chen, W.-C. (2025). AI-driven intelligent feedback system for enhancing self-assessment accuracy in higher education writing. Expert Systems, 43(1), e70184. https://doi.org/10.1111/exsy.70184

最終更新日: 2026-10-30

著者: 中村 拓(Taku Nakamura)(greencafe 編集部 編集責任者・非ネイティブ話者)。公開された 12 件の研究エビデンス(tier 1=11 / tier 2=1)を横断分析・再構成した。

画像: いらすとや (https://www.irasutoya.com/) より

この記事を編集した人

中村 拓(Taku Nakamura)のポートレート

(編集責任者 / 応用言語学・第二言語習得 エディター(非ネイティブ話者))

応用言語学のバックグラウンドを持つ英語学習分野のエディターで、査読済み SLA 論文・応用言語学ジャーナル・公的機関資料の横断要約と再構成を担当する編集責任者です。非ネイティブ英語話者で、大人の英語学び直しを研究の視点で編集しています。

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