文字チャットで英語は話せるようになる?|研究で分かった伸びる力・伸びない力

声に出せず、英語を打つ練習ばかりです。これで話せるようになりますか?

気持ちはわかります。実はその疑問は、20年以上前から研究されてきたテーマなんですよ。伸びる力と伸びにくい力を分けて考えるのがコツです。

家族の目も気になるし、電車でも声は出せないんですよね…

多くの人がそうです。外国語学習の研究でも、話す場面を作りにくいことは昔からの悩みで、文字のやりとりはその解決策として調べられてきました。

でも研究の話って、僕みたいな独学の社会人にも当てはまるんですか?

いい疑問です。研究の多くは授業の中で行われたので、条件の違いも正直にお伝えします。そのうえで、使える部分を練習の組み立て方として整理しますね。

最近はAI相手に打つことも多いです。具体的には何から始めれば?

この記事では12本の研究を順番に見ていきます。人どうしの研究とAI相手の研究は分けて読むので、まずは分かっていることから確かめましょう。
結論: 外国語の授業や語学学校で、人どうしで文字を打ち合う練習をした組が、話す力の総合テストでも伸びたという研究があります。一方、ドイツ語学習者を調べた 1 つの研究では、増えたのは話す「量」で、使う単語の幅や文の複雑さは変わりませんでした。発音やその場で返す速さは、仕組みから考えて文字では練習しにくい力です。文字は「話す前の下ごしらえ」として使い、声での仕上げを別に足すのが、研究から考えられる使い方です。相手が AI の場合を直接確かめた研究は、まだ少ない状態です。
この記事でわかること
- 文字で練習した人が、話すテストでどうだったかを調べた研究の結果
- 伸びた力 (話す力の総合評価・話す量・緊張の少なさ) と、変わらなかった力 (単語の幅・文の複雑さ)
- 文字では練習しにくい力 (発音・すぐに返す速さ) と、声で補う使い分け
- 人どうしの研究の結果を、AI 相手の練習にそのまま当てはめてよいか
文字で練習した人は、話すテストでどうだったか

文字を打つだけの練習で、話すテストの点まで変わるんですか?

気持ちはわかります。大学の外国語の授業でチャットを取り入れた組の話す力が、ふだん通りの授業の組より伸びた、という研究があるんですよ。
家では家族の目が気になる。電車では声を出せない。そうして英語を文字で打つ練習ばかりになっている人は多いはずです。
実はこの疑問は、20 年以上前から研究されてきました。調べられたのは「文字チャット」です。これは、同じ時間に画面越しで文字を打ち合う会話のことです (= LINE で友だちとリアルタイムにやりとりするイメージ)。
研究の世界では、これを「同期型 CMC」と呼びます。少し難しい名前ですが、つまり「同じ時間に、コンピュータ越しでやりとりすること」です。
代表的なのが、Payne と Whitney の 2003 年の研究です。これは大学の外国語の授業で、実際の授業をそのまま使って行われた実験です (= 実験室ではなく、ふだんの教室で試した研究)。
この研究では、週 4 時間の授業のうち 2 時間をチャットルームで過ごす組を作りました。比べる相手は、ふだん通りの授業を受ける組です。この比べる相手を「対照群」と呼びます (= 練習を変えなかった場合を映す鏡の役)。
結果は、チャットの組のほうが話す力の伸びが大きく、その差は統計的に有意でした。有意とは「偶然とは考えにくい差」という意味です (= サイコロをふってたまたま出た差ではない、というイメージ)。
もう 1 つ、Blake らの 2008 年の研究も見てみましょう。これはカリフォルニア大学デービス校の、1 年目のスペイン語の授業を比べた研究です。教室で学ぶ組、一部をオンラインで学ぶ組、完全に遠隔で学ぶ組の 3 つです。
遠隔の授業では、声と文字の両方が使えるチャットが使われました。話す力は、電話で受けて自動で採点されるテストで測りました。その結果、3 つの組は 1 年目の時点で同じくらいの話す力に達していました。
ただし、この研究のチャットは文字だけではありません。声も使えます。なので「文字だけで話せた」証拠ではなく、「教室に通わなくても話す力が見劣りしなかった」例として読むのが正確です。
ここまでのまとめ: 文字チャットを授業に取り入れた組が、話すテストでも伸びたという研究があります。ただし声も使えたチャットの研究もあり、「文字だけの効果」とは分けて読む必要があります。
話す量は増えたが、単語の幅や文の複雑さは同じだった研究も

話す力が伸びたって、具体的には何が伸びたんですか?

ドイツ語学習者の研究では、増えたのは話す量でした。単語の幅や文の複雑さは同じで、ボールに触る回数は増えたけれどパスの種類は同じ、という結果です。
では、文字チャットで話す力の「どこ」が変わったのでしょうか。ここを細かく調べたのが、Abrams の 2003 年の研究です。ドイツ語を学ぶ学習者を 3 つの組に分けて比べました。
組は、ふだん通りの組、リアルタイムの文字チャットの組、時間差でやりとりする組です。時間差のやりとりとは、メールや掲示板のように後で返事を書く形です (= 手紙の交換に近いイメージ)。
1 学期のあいだに 3 回、声で話し合う課題を行い、話しぶりを比べました。測ったのは、話した語の数や意味のまとまりの数、単語の豊かさ、文の構造の複雑さです。
その結果、文字チャットの組は、ほかの 2 組より話す量が多くなっていました。
一方で、使った単語の豊かさや多様さ、文の組み立ての複雑さでは、3 組に有意な差はありませんでした。つまり「量は増えたが、単語の幅と文の複雑さは同じ」です。サッカーで言えば、ボールに触る回数は増えたけれど、使えるパスの種類は増えなかった、という結果です。
なお、この研究は文法の正確さ (= 間違いの少なさ) は測っていません。また、話す力の総合評価が伸びたと報告した研究もあるので、「量しか伸びない」と言い切れるわけではありません。
日本語を学ぶ学習者を調べた研究もあります。Hirotani の 2009 年の研究です。対象は、日本語の授業で 2 年目の後半に入った学習者です。日本人の英語学習者ではない点に注意してください。
ここでは、文字チャットの組、時間差でやりとりする組、対面で話し合う組の 3 つを比べました。1 学期のあいだ毎週話し合いを行い、話す量・文の複雑さ・正確さなどの伸びを調べています。
結果は、3 組の伸びに有意な差はありませんでした。文字の組が対面の組に負けたわけでも、勝ったわけでもない、ということです。
一方で、面白い関係も見つかりました。文字のやりとりでの言葉の使い方と、話すテストのいくつかの伸びとの間に、正の相関があったのです。相関とは「片方が大きいと、もう片方も大きい傾向がある」関係のことです。
たとえば「よく素振りをする人ほど、試合でもよく打てている」という関係です。ただし、素振りが原因で打てるようになったのかは、相関だけでは分かりません。同じように、文字の練習が原因で話す力が伸びたとまでは言えません。
ここまでのまとめ: Abrams の研究では、文字チャットの組は話す量が増えた一方、単語の幅や文の複雑さは変わりませんでした。日本語学習者の研究では、文字・時間差・対面の 3 組の伸びに差はありませんでした。
なぜ文字の練習が話す力につながるのか|研究者の説明
文字の練習が声に移るのはなぜでしょう。Payne と Whitney は、その理由を「作業記憶」で説明しました。作業記憶とは、考えごとをする間だけ情報を置いておく「頭の中のメモ帳」のことです。
話すときは、言いたいことを考え、文に組み立て、口に出す作業を一度にこなします。この時、頭の中のメモ帳はすぐにいっぱいになります。だから、言いたいことがあっても英語が出てこないのです。
文字チャットなら、考える時間があります。そのぶんメモ帳に余裕ができ、文を組み立てる練習を落ち着いて重ねられる、という考え方です。加えて、打った文を送る前に見直せるのも、文字ならではの特徴です。
料理で言えば、文字チャットは「下ごしらえ」にあたります。野菜を切っておけば、本番の調理で慌てずにすみます。同じように、文を組み立てる練習を先にしておけば、話す本番の負担が減る、という説明です。
話す前の準備時間の研究とも、考え方が近いところがあります。英語を話す前の準備は何分がいいかを調べた研究では、準備の長さで伸びる力が違うことを扱っています。
Payne と Ross の 2005 年の研究は、この考え方をさらに広げました。メモ帳の大きさは人によって違います。その違いが、チャットでの言葉の使い方にどう影響するかを調べたのです。
20 回分のチャットを分析した結果、メモ帳の大きさと、発話の量の間につながりが示唆されました。机の広さで作業のしかたが変わるように、メモ帳の大きさで練習の進み方が変わるかもしれない、という見方です。
もう 1 つ、文字のやりとりでは発言が増えやすいという古い報告もあります。Kern の 1995 年の研究です。フランス語を学ぶ 2 学期目の学生が、同じ話題を文字と口頭の両方で話し合いました。
文字のやりとりでは、発言の回数が 2 倍以上、文の数が 2-4 倍になりました。手を挙げて話すのは苦手でも、黒板に書くならたくさん書ける、というイメージです。ただしこれは話す力のテストではなく、発言の量を比べた研究です。
ここで大事な区別があります。「考える時間がある」「見直せる」「メモ帳の負担が軽い」は、研究者の説明です。この仕組みのすべてが実験で確かめられたわけではありません。結果として話す力が伸びたことと、その理由の説明は、分けて読む必要があります。
ここまでのまとめ: 研究者は、文字は考える時間と見直しで「頭の中のメモ帳」の負担を軽くし、文を組み立てる練習になると説明しています。ただしこれは説明の仮説で、仕組みのすべてが確かめられたわけではありません。
文字と声を直接比べた 2 つの研究

文字と声、結局どっちで練習すればいいんですか?

文字と声を比べた2つの研究では、話す力はどちらの組でも伸びました。どちらが上かは決めず、緊張が下がったのは文字の組だけ、と覚えてください。
文字と声のどちらで練習すべきかは、よく出る疑問です。これを直接比べたのが、Satar と Özdener の 2008 年の研究です。英語を外国語として学ぶ初級の学習者を、3 つの組に分けました。
文字チャットの組、声で話す音声チャットの組、ふだん通りの組で、各 30 人です。4 週間、2 人 1 組で 40-45 分のチャットを、8 つの課題に沿って行いました。
結果、話す力は文字の組と声の組の両方で伸びていました。そして、英語を話すときの不安 (緊張) が下がったのは、文字の組だけでした。プールで浮き輪をつけて泳ぐと怖さが減る、というイメージです。
この結果は、別の研究チームが確かめ直しています。Namaziandost らの 2021 年の研究です (雑誌への掲載は 2022 年)。イランの私立英語学校の生徒から選ばれた、初中級の英語学習者 81 人が対象でした。
こちらも文字・声・ふだん通りの 3 組 (各 27 人) です。6 週間、2 人 1 組で 60-75 分のチャットを、10 の課題に沿って行いました。
結果は、文字の組と声の組がどちらも、前より後のテストで話す力の成績が良くなっていました。不安が下がったのは、やはり文字の組だけでした。
ここで気をつけたい点があります。どちらの研究も、文字と声の「どちらが話す力をより伸ばしたか」は、論文の要旨 (= 論文の最初に付く短いまとめ) には書かれていません。なので、この記事では「文字の方が上」「声の方が上」とは書きません。
言えるのは、2 つの研究で同じ向きの結果が出たということです。話す力は文字でも声でも伸び、緊張が下がったのは文字の組でした。英語を口に出すのが恥ずかしい人にとっては、文字から始める理由の 1 つになります。
ここまでのまとめ: 文字と声を比べた 2 つの研究では、話す力は両方の組で伸び、緊張が下がったのは文字の組だけでした。どちらがより話す力を伸ばしたかは、この記事では判断しません。
文字では練習しにくいもの|発音とその場で返す速さ

えっ、じゃあ文字だけだと何が足りないんですか?

文字を打つとき、口も耳も使いませんよね。紹介したどの研究も、文字チャットで発音が伸びたとは報告していません。発音は声の練習が別に要ります。
文字の練習にも、構造的な弱点があります。それは発音です。文字を打つとき、口も耳も使いません。だから発音・アクセント・リズムは、文字のやりとりの中には入ってきません。
これは研究で確かめた結果ではなく、練習の形から考えた推論です。紹介したどの研究も、文字チャットで発音が伸びたとは報告していません。発音を練習したいなら、声に出す練習を別に用意する必要があります。
発音を声で練習する方法については、音声認識を使って英語の発音を練習した研究で詳しく扱っています。
もう 1 つは、相手の言葉を聞いてすぐ返す速さです。文字チャットの強みは「考える時間がある」ことでした。でも実際の会話では、その考える時間がほとんどありません。
つまり、文字の強みは、そのまま会話の本番とは逆の条件でもあるのです。自転車の補助輪のようなものです。補助輪があるとこぎ方を覚えやすい一方で、外さないとバランスの練習にはなりません。
Abrams の研究で、文字の組の話す量が増えても、単語の幅や文の複雑さは変わらなかったことも思い出してください。文字の練習だけで、会話のすべての力がそろうわけではない、ということです。
ここまでのまとめ: 発音・アクセント・リズムと、聞いてすぐ返す速さは、仕組みから考えて文字では練習しにくい力です。「声に出さなくても大丈夫」とは言えません。
研究の限界|授業の中・小規模・人どうしの研究
ここまでの研究には、はっきりした限界があります。まず、対象の多くは外国語の授業や語学学校で学ぶ学習者でした。数十人規模で、練習期間も 4 週間から 1 年ほどです。
30 代の社会人が、仕事の合間に独学で練習する条件とは大きく違います。授業では先生が課題を用意し、相手の学習者も決まっています。独学では、それを自分で整える必要があります。
次に、研究が測った力も限られています。会話全体の力ではなく、話す量や、決められたテストの点数です。
大きなまとめ研究も見ておきましょう。メタ分析という方法があります。同じテーマの研究をたくさん集めて、平均すると結局どうなのかを出す方法です (= クラス全員のテストを集計して平均点を出すようなもの)。
Lin の 2015 年のメタ分析は、コンピュータ越しのやりとりの研究 59 本をまとめました。全体として中程度のプラスの効果があり、いちばん効果が大きかったのは書く力でした。練習した形に一番近い力が、一番伸びやすいのかもしれません。
Ziegler の 2016 年のメタ分析では、画面越しのやりとりと対面のやりとりの間に、統計的に有意な差はありませんでした。画面越しの学習全般については、オンライン留学と画面越しの交流を調べた研究で詳しく扱っています。
そして最も大事な限界は、紹介した研究がすべて「人どうし」のやりとりだったことです。相手が AI のときに同じ結果になるかは、別に確かめる必要があります。この点は後の節で扱います。
ここまでのまとめ: 紹介した研究の多くは外国語の授業での小規模な研究で、すべて人どうしのやりとりでした。30 代社会人の独学や、AI 相手の練習とは条件が違います。
研究から考える使い分け|文字で下ごしらえ、声で仕上げ

声を出せる時間なんて、ほとんど無いんですよね…

多くの人がそうです。研究者は文字の強みを、考える時間と見直しだと説明しています。電車で打った同じ文を、散歩中に声に出すところから始めましょう。
では、声を出せない時間が多い人は、どう練習を組み立てればよいでしょうか。ここからは、研究から考えた提案です。順番や時間配分そのものを確かめた研究ではない点に注意してください。
まず、声を出せない時間は、文字で「言いたいことを組み立てる」練習にあてます。通勤電車の中で、今日話したいことを英語で打ってみる。打った文を見直して、言い回しを直す。これは研究者が説明した、考える時間と見直しを使う練習です。
次に、声を出せる時間を少しでも作ります。一人の部屋や散歩の途中で、電車で打った同じ内容を声に出してみます。下ごしらえした材料を、本番で調理するイメージです。
同じ内容を使うのがポイントです。文字の段階で文はもうできているので、声に出すときは発音やなめらかさに集中できます。これは「頭の中のメモ帳」の負担を分けて減らす、という考え方とも合います。
緊張が強い人は、まず文字で慣れるのも一つの手です。文字と声を比べた 2 つの研究では、緊張が下がったのは文字の組でした。ただし、いずれは声の練習に移ることが前提です。
ここまでを短くまとめると、次のようになります。
- 声を出せない時間: 文字で文を組み立て、見直す (下ごしらえ)
- 声を出せる時間: 同じ内容を声に出す (仕上げ)
- 発音・すぐに返す速さ: 声の練習でしか補えないと考える
ここまでのまとめ: 研究から考えると、声を出せない時間は文字で文を組み立てて見直し、声を出せる時間に同じ内容を声に出す組み合わせが合理的です。ただしこの順番や配分は検証済みではありません。
相手が AI でも、同じ条件はそろうのか

ChatGPT相手に打つ練習でも、同じ効果が出るんですか?

正直に言うと、まだ分かりません。紹介した研究はすべて人どうしです。会話プログラムの研究をまとめた分析でも、文字で練習して話すテストで測った効果は小さめでした。
AI 英会話アプリや ChatGPT に、文字で英語を打つ練習もよく見かけます。人どうしの研究が示した結果は、話す力の伸びと、発言の増加・緊張の低下でした。研究者はその理由として、考える時間と見直しを挙げていました。
では、この条件は AI 相手でもそろうのでしょうか。考える時間と見直しは、AI 相手でも確保できそうです。一方、相手が人でないことや、AI の返事が長すぎて自分で文を組み立てる場面が減ることが、練習の質をどう変えるかは分かっていません。
AI 相手の研究には、Bibauw らの 2022 年のメタ分析があります。対話システム (= 話しかけると返事をくれるプログラム) の研究 17 本をまとめ、全体の効果は d=0.58 でした。これは「練習した組の約 7 割が、しなかった組の平均を上回る」くらいの強さです。文字で打つ型と声で話す型の効果は、どちらも d=0.59 で同じでした。
ただ、文字で練習して話すテストで測った効果は d=0.29 でした。声で練習した場合の d=0.84 の 3 分の 1 ほどで、効き目ゼロの可能性も残ります。サッカーの練習が試合に一番効くように、練習と同じ形のテストで効果が大きい傾向が報告されています。
ただしこの研究の対象は、ChatGPT のような生成 AI が広まる前の対話システムです。相手が機械だと話す気持ちが楽になった研究もありますが、声の練習で、話す力自体は測っていません。生成 AI 相手の文字入力が話す力に移るかを直接確かめた研究は、まだ少ないのが現状です。
ここまでのまとめ: AI 相手でも考える時間と見直しは確保できそうですが、文字の練習が話す力に移る効果は小さめでした。生成 AI 相手で確かめた研究は、まだ少ない状態です。
よくある質問
Q1. 文字チャットだけで英語を話せるようになりますか?
そう言える研究はありません。文字の組が話す力の総合テストでも伸びた研究はあります。ただし、ある研究では増えたのは話す量で、単語の幅や文の複雑さは変わりませんでした。発音などは声の練習が別に必要です。
Q2. 文字と声、どちらで練習するのがよいですか?
比べた 2 つの研究では、話す力は両方の組で伸びました。どちらがより伸ばしたかは、この記事では判断しません。緊張が下がったのは文字の組だけでした。
Q3. 声に出さない練習でも、意味はありますか?
文を組み立てて見直す練習としては、意味があると考えられます。ただし発音とすぐに返す速さは、声に出さないと練習しにくい力です。研究から考えると、少しでも声を出す時間を足すのが合理的です。
Q4. ChatGPT と文字でやりとりするだけで、話す力は伸びますか?
それを直接確かめた研究は、まだ少ない状態です。生成 AI 以前の対話システムの研究では、文字で練習して話すテストで測った効果は小さく、ゼロの可能性も残りました。
Q5. 紹介された研究は、日本人の社会人にも当てはまりますか?
研究の多くは、外国語の授業を受ける学習者が対象です。日本人の英語学習者や、30 代社会人の独学を調べたものではありません。当てはまるかは確かめられていません。
まとめ
- 文字チャットを取り入れた組が、話すテストでも伸びたという研究がある
- ただし、ある研究では増えたのは話す量で、単語の幅や文の複雑さは変わらなかった
- 理由として「考える時間」「見直し」「頭の中のメモ帳の負担が軽い」が挙げられるが、説明の仮説である
- 文字と声を比べた研究では、話す力は両方で伸び、緊張が下がったのは文字の組だけだった
- 発音とすぐに返す速さは、仕組みから考えて文字では練習しにくい
- 声を出せない時間は文字で下ごしらえし、声を出せる時間に同じ内容を声で仕上げるのが、研究から考えられる使い方
- 相手が AI の場合、とくに生成 AI で確かめた研究はまだ少ない
参考文献
- Payne, J. S., & Whitney, P. J. (2003). Developing L2 Oral Proficiency through Synchronous CMC: Output, Working Memory, and Interlanguage Development. CALICO Journal, 20(1), 7-32. https://doi.org/10.1558/cj.v20i1.7-32
- Payne, J. S., & Ross, B. M. (2005). Synchronous CMC, Working Memory, and L2 Oral Proficiency Development. Language Learning & Technology, 9(3), 35-54. https://doi.org/10.64152/10125/44031
- Abrams, Z. I. (2003). The Effect of Synchronous and Asynchronous CMC on Oral Performance in German. The Modern Language Journal, 87(2), 157-167. https://doi.org/10.1111/1540-4781.00184
- Hirotani, M. (2009). Synchronous Versus Asynchronous CMC and Transfer to Japanese Oral Performance. CALICO Journal, 26(2), 413-438. https://doi.org/10.1558/cj.v26i2.413-438
- Blake, R., Wilson, N. L., Cetto, M., & Pardo-Ballester, C. (2008). Measuring oral proficiency in distance, face-to-face, and blended classrooms. Language Learning & Technology, 12(3), 114-127. https://doi.org/10.64152/10125/44158
- Kern, R. G. (1995). Restructuring Classroom Interaction with Networked Computers: Effects on Quantity and Characteristics of Language Production. The Modern Language Journal, 79(4), 457-476. https://doi.org/10.1111/j.1540-4781.1995.tb05445.x
- Satar, H. M., & Özdener, N. (2008). The Effects of Synchronous CMC on Speaking Proficiency and Anxiety: Text Versus Voice Chat. The Modern Language Journal, 92(4), 595-613. https://doi.org/10.1111/j.1540-4781.2008.00789.x
- Namaziandost, E., Razmi, M. H., Hernández, R. M., Ocaña-Fernández, Y., & Khabir, M. (2021, オンライン公開 / 2022 年掲載). Synchronous CMC text chat versus synchronous CMC voice chat: impacts on EFL learners’ oral proficiency and anxiety. Journal of Research on Technology in Education, 54(4), 599-616. https://doi.org/10.1080/15391523.2021.1906362
- Ziegler, N. (2016). Synchronous computer-mediated communication and interaction: A meta-analysis. Studies in Second Language Acquisition, 38(3), 553-586. https://doi.org/10.1017/s027226311500025x
- Lin, H. (2015). A meta-synthesis of empirical research on the effectiveness of computer-mediated communication (CMC) in SLA. Language Learning & Technology, 19(2), 85-117. https://doi.org/10.64152/10125/44419
- Bibauw, S., Van den Noortgate, W., François, T., & Desmet, P. (2022). Dialogue systems for language learning: A meta-analysis. Language Learning & Technology, 26(1), 1-24. https://doi.org/10.64152/10125/73488
- Tai, T.-Y., & Chen, H. H.-J. (2023). The impact of Google Assistant on adolescent EFL learners’ willingness to communicate. Interactive Learning Environments, 31(3), 1485-1502. https://doi.org/10.1080/10494820.2020.1841801
最終更新日: 2026-10-23
著者: 中村 拓(Taku Nakamura)(greencafe 編集部 編集責任者・非ネイティブ話者)。公開された 12 件の研究エビデンス(tier 1=12 件 / tier 2=0 件)を横断分析・再構成した。
画像: いらすとや (https://www.irasutoya.com/) より
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