AIの読み上げ音声で英語は聞き取れるようになる?|人の声との違いを研究で解説

AIの読み上げ音声で英語を聞いてるんですけど、これで大丈夫なんですか?

気持ちはわかります。実は、機械の声と人の声を学習者が聞き比べた研究があるんです。研究から見えてくるのは「使い方次第」という方向です。

正直、ロボットっぽい発音でくせがつかないか不安で…

多くの人がそう感じます。聞き取りの研究では「どんな声を、どう聞くか」で伸び方が変わるかが長く調べられてきました。声の種類は大事な論点なんです。

研究と言われても、僕みたいな独学でも使えるんですか?

大丈夫です。研究は「どんな条件で聞くと聞き取りの力が伸びるか」を整理しています。その条件を自分の練習にどう当てはめるかを考えればいいんです。

じゃあ、具体的にはどう始めればいいんですか?

この記事では、機械の声と人の声を比べた研究から、聞き取りの力を伸ばす研究まで、12 件の研究を順番に見ていきます。一緒に整理しましょう。
結論: 学習者が機械の読み上げ声と人の声を聞き比べた 2020 年の研究では、わかりやすさは同じくらいで、自然さは人の声が上と評価された。2015 年の研究では声の質は人の声が上だったが、過去形 -ed の聞き取り成績は同じくらいだった。一方、聞き取りの力を伸ばす研究では、1 人の声より何人もの声で練習した方が、初めて聞く話し手にも力が広がった。ただし後者は人の声の研究だ。研究から言えるのは、AI 音声は聞く量を増やす道具として使えそうだが、声の種類を変える工夫が要る、というところまでだ。
この記事でわかること
- 学習者は、機械の読み上げ声と人の声をどう聞き比べたのか
- 聞き取りの力を伸ばすのに「声の多様さ」が大事だとされる理由
- 聞きやすい読み上げ声と、本物の会話の英語のあいだにある差
- AI 音声で「いろいろな声を聞く」条件を満たせるか、どこまで分かっているか
「AI の声で練習して大丈夫?」という不安と、言葉の準備
通勤中にスマホの読み上げ機能で英文を聞く。AI で作った英語音声を家事の合間に流す。そんな練習をしている人もいるだろう。
便利な反面、「人の声じゃなくて大丈夫?」「ロボットっぽい発音に慣れて、変なくせがつかない?」という不安を持つ人もいるかもしれない。
まず言葉をそろえておく。文字を見て声に変える機械を、研究では TTS (text-to-speech) や合成音声と呼ぶ。文章を渡すと代わりに読んでくれる「機械の朗読係」のようなものだ。
注意したいのは、機械の声にも世代があることだ。2015 年ごろの合成音声と、2020 年代の新しい AI 音声はつくり方が違う。
新しい方はニューラル音声と呼ばれる。たくさんの人の声を手本にして学んだ、より人に近い声のことだ。料理でいえば、レシピ通りに組み立てた料理と、名店の味を何千回も食べ比べて覚えた料理くらいの差がある。2022 年には、この方式の声をリスニング教材として人の声と比べた研究も出ている。
そのため、古い研究の結果を今の AI 音声にそのまま当てはめることはできない。この記事では、研究ごとに「いつの機械の声か」を書き添える。
もう一つ区別したいことがある。この記事は「機械が話して聞かせる側」の話だ。機械が学習者の声を聞いて判定する話は別の問題になる。
学習者の発音を機械が聞き取る練習については、音声認識で発音を練習した研究をまとめた記事で扱っている。本記事は、聞く教材としての機械の声に絞る。
ここまでのまとめ: 機械の読み上げ声には世代があり、古い研究を今の AI 音声にそのまま当てはめられない。この記事は「機械が話して聞かせる側」を扱う。
学習者は機械の声と人の声をどう聞き比べたか

機械の声って、人の声より聞き取りにくくないんですか?

2020 年の研究では、わかりやすさ (内容がすっと頭に入るか) は人の声とほぼ同じでした。ただ自然さは人の声が上と評価されています。
Cardoso らの 2015 年の研究は、学会で発表された短い報告だ。当時最新の合成音声を、2 つの段階で評価した。
1 つ目は、声の質の評価だ。人の声と合成音声で読んだ物語や文を聞き、わかりやすさや自然さを 6 段階で点数にした。結果は、人の声の方が高く評価された。
2 つ目は、文法の聞き取りテストだ。16 の文を聞いて、過去形の -ed が付いているかを判定した。こちらは合成音声と人の声で成績が同じくらいだった。
「声の上手さ」では人に負けても、「-ed が聞こえたか」というテストでは機械の声でも同じくらい聞き取れた、ということだ。ただし参加者の人数は要旨 (= 論文の最初に付く短いあらすじ) に書かれていない。
Bione と Cardoso は、2020 年に学術誌でも研究を出している。対象はブラジルの英語学習者 29 名だ。
この 29 名は EFL の学習者だった。EFL とは、ふだん英語を使わない国で外国語として英語を学ぶ人のことで、日本の学習者とよく似た立場だ。
参加者は同じ物語や文を合成音声と人の声で聞き、6 段階で評価した。わかりやすさ (comprehensibility = 内容がどれだけすっと頭に入るか) は、両方の声でほぼ同じだった。
一方、自然さの評価は合成音声の方が不利だった。内容の質問・書き取り・-ed の聞き取りでは、両方の声で成績が比較的近かった。
著者らは、英語に触れる機会が少ない環境では、合成音声が教材として使える可能性があると結論している。ただしこれも 2020 年当時の機械の声の研究だ。
新しい世代の声を調べた研究もある。Young と Shishido の 2022 年の学会論文は、WaveNet という音声を使った。WaveNet はニューラル方式、つまり人の声を大量に手本にして作る方式の合成音声だ。
この研究では、リスニング教材として好ましいかの評価は、合成音声の方が人の声より低かった。それでも著者らは、理解しやすい声なので、聞く量を増やす手段になりうると述べている。
ここまでのまとめ: 2020 年の研究ではわかりやすさが同じくらいだったが、2015 年の研究では声の質全体で人の声が上だった。自然さや教材としての好ましさは人の声が上という評価が並ぶ。
声の種類で「聞く疲れ」も変わる

聞いていて疲れるかどうかも、声で変わるんですか?

雑音の中で聞く 2023 年の実験では、合成音声が最も聞き取りにくく疲れる声でした。静かな部屋で教材として聞く場面とは条件が違う点に注意です。
「わかる」かどうかとは別に、「聞いていて疲れるか」を測った研究もある。Simantiraki らの 2023 年の研究は、4 種類の声を比べた。
4 種類とは、ふつうの声・Lombard 音声・人工的に強調した声・合成音声だ。人工的に強調した声とは、機械で聞き取りやすく加工した人の声のことだ。Lombard 音声とは、うるさい場所で人が自然に出すはっきりした声のことだ。駅のホームで思わず声を張るときの話し方をイメージするとよい。
測ったのは、聞き取れた量と、聞いていて疲れた感じと、瞳孔の開き具合だ。瞳孔は頭が忙しいほど開くので、ここでは頭の疲れのメーター代わりになる。
対象は、英語を母語 (= 生まれて最初に身につけた言葉。日本人なら日本語) とする 26 名と、母語ではない 31 名だった。どちらの聞き手でも、人工的に強調した声が最も聞き取りやすく、疲れも少なかった。合成音声はその逆で、最も聞き取りにくく疲れる声だった。
ただし、これは雑音の中で聞く実験だ。どの合成方式を使ったかも要旨には書かれていない。静かな部屋で教材として聞く場面に、そのまま当てはめることはできない。
ここまでのまとめ: 雑音の中で聞く実験では、合成音声は聞き取りにくく疲れやすかった。ただし静かな環境での教材利用とは条件が違う。
機械の声で、実際に学べたのか
評価だけでなく、機械の声で実際に学べたかを調べた研究もある。Liakin らの 2017 年の研究は、フランス語の学習者が対象だ。
学んだのは liaison (リエゾン) という発音のルールだ。単語の終わりの音と次の単語の始まりがつながる決まりで、英語の an apple が「アナップル」と聞こえるのに似ている。
研究では学習者を 3 つの組に分け、2 か月間の伸びを比べた。比べ方は事前・事後テストで、練習の前と後に同じ種類のテストをして伸びを測る方法だ。
1 つ目の組は、スマホの読み上げアプリで毎週の発音課題をした。課題は、音に気づく・聞いて分ける・聞いてまねる、の 3 つだ。
2 つ目の組は、同じ課題を先生と一緒にした。3 つ目の組は対照群で、発音の指導なしで会話の練習をした。対照群とは、比べるための「何も特別なことをしない組」のことだ。
結果は、時間とともに伸びたのは読み上げアプリの組と先生の組だけだった。スマホの声をお手本にした組も、先生と練習した組も、どちらも伸びたということだ。ただし、伸び幅まで同じだったかは要旨からは分からない。
ただし、これは英語ではなくフランス語の研究だ。しかも測ったのは発音、つまり話す側の力で、英語のリスニングを測った研究ではない。2017 年当時のスマホの声である点も覚えておきたい。
ここまでのまとめ: スマホの読み上げ声をお手本にしたフランス語の発音練習で、先生と練習した組と並んで伸びが見られた。ただし英語のリスニングの研究ではない。
聞き取りの力を伸ばす鍵は「声の多様さ」

同じ声を何度も聞く方が、慣れて良さそうですけど…

そう感じますよね。1993 年の研究では、1 人の声だけの練習は新しい話し手に効果が広がらず、何人もの声で練習すると広がったんです。
ここからは機械の声から離れ、「どんな聞き方で聞き取りの力が伸びるか」の研究を見る。これが AI 音声の使い方の土台になる。
日本人が英語の r と l を聞き分けにくいことは、よく知られている。right と light の区別のような話だ。英語の経験が長くても難しいことが、研究で報告されている。
Logan らの 1991 年の研究は、この聞き分けを練習で伸ばせるかを調べた。この研究の要旨には、それ以前の研究への反省が書かれている。
それまでの訓練は、機械で作った音を使っていた。ところが、実際の人の声を聞く場面ではあまり役に立たなかった、と述べている。
そこでこの研究は、いろいろな単語・いろいろな録音の、人の声で練習させた。結果は 6 名で、練習の前と後に小さいが確かな差が出た。
続く Lively らの 1993 年の研究は、話し手の数に注目した。1 つ目の実験では、何人もの話し手の声で r と l の聞き分けを練習した。
すると正答率が上がり、答えるまでの時間も短くなった。しかも、練習で聞いていない新しい話し手の声にも効果が広がった。これを一般化という。練習した範囲の外にも力が届くことだ。
2 つ目の実験では、別の人たちを 1 人の話し手の声だけで練習させた。練習中は伸びたが、新しい話し手の声には効果が広がらなかった。
1 人の先生の声だけで練習すると、その先生の声なら分かる。でも、初めて会う人の声だと聞き分けられない。いろいろな人の字を読み慣れると初めて見るくせ字も読みやすくなるのと、似た話だ。
このように、何人もの声で聞き分けを練習するやり方を、高変動音声訓練 (HVPT) と呼ぶ。「変動」は声のばらつきのことだ。
この訓練の研究をまとめたのが、Uchihara らの 2025 年のメタ分析だ。メタ分析とは、世界中の研究を集めて全体の傾向を出す研究のことだ。79 本の研究がまとめられている。
結果は、練習の前と後の比較で g = 0.92、練習した組としない組の比較で g = 0.67 だった。g は効果の大きさを表す数字だ。0.67 は、練習した組の平均が、しなかった組の 4 人に 3 人くらいより上に来る程度の、はっきりした差というイメージだ。
伸びは長く保たれ、新しい音への広がりも「ある程度」示された。効果を左右する要因の一つに話し手の人数も挙がっている。ただし、人数が多いほどよいのかどうかは要旨に書かれていない。
r と l の具体的な練習の仕方は、LとRが聞き分けられない理由と練習のコツをまとめた記事にまとめている。ここで大事なのは、これらがすべて人の声の研究で、AI 音声の研究ではない点だ。
ここまでのまとめ: 1 人の声だけで練習すると新しい話し手に効果が広がらず、何人もの声で練習すると広がった。いずれも人の声を使った研究だ。
なまりに慣れる力も、何人も聞くと広がる

なまりのある英語って、聞いていれば慣れるんですか?

2008 年の研究では、なまりのある話し手を何人も聞くと、初めて聞く話し手にも慣れが広がりました。ただし聞き手は英語を母語とする人たちです。
声の多様さが効くという話は、r と l だけではない。Bradlow と Bent の 2008 年の研究は、外国なまりの英語に耳が慣れていく様子を調べた。
研究ではこれを知覚的適応と呼ぶ。初めは聞きにくい話し方でも、聞くうちに耳が合わせていくことだ。初対面の人の早口が、話しているうちに分かってくる感覚に近い。
1 つ目の実験では、中国語なまりの話し手 1 人の英語を聞き続けた。聞き手はだんだんなまりに慣れていった。慣れる速さと程度は、話し手の元々の聞き取りやすさで違った。
2 つ目の実験では、中国語なまりの話し手を何人も聞いた。すると、初めて聞く中国語なまりの話し手にも、慣れが広がった。
ただし、この研究の聞き手は英語を母語とする人たちだ。日本人の英語学習者を調べた研究ではない。人の声の研究で、AI 音声の研究でもない。
それでも、r と l の研究と同じ向きの結果が出ている点は注目できる。ここから考えられるのは、いつも同じ 1 つの声だけを聞き続けると、その声には強くなっても、ほかの人の声への対応は育ちにくいかもしれない、ということだ。
これは研究から考えられることで、AI 音声で直接確かめた結果ではない。「AI 音声で変なくせがつく」と示した研究も、今回確認した範囲には無かった。
ここまでのまとめ: 何人分ものなまりを聞くと、初めての話し手にも慣れが広がった。聞き手は英語の母語話者で、人の声の研究である。
聞きやすい声と、本物の会話のあいだ

ゆっくりはっきり話してもらえば、聞き取れますよね?

実はそう単純でもないんです。2002 年の研究では、はっきりした話し方の得は、英語を母語としない聞き手では母語話者より小さかったんですよ。
読み上げ音声は、一定の速さで、整った発音になりやすい。では、聞きやすい声で練習すれば十分なのだろうか。
Bradlow と Bent の 2002 年の研究は、はっきりした話し方 (clear speech) の効き方を調べた。clear speech とは、相手に伝わるよう意識してゆっくり丁寧に話すことだ。電話で住所を伝えるときの話し方に近い。
対象は、英語を母語としない 32 名と、母語とする 32 名だ。ふだんの会話調とはっきりした話し方の英文を、2 段階の強さの雑音の中で聞いてもらった。
母語話者は、はっきりした話し方で大きく得をした。キーワードの正答が約 16 rau 良くなった。rau は正答率を比べやすくならした点数の単位で、ここではおおよそ正答率の差と考えてよい。
一方、母語としない聞き手の得は約 5 rau と小さかった。著者らは、はっきり話す効果は、その言語の音の仕組みに慣れた聞き手ほど大きいと解釈している。
つまり、聞きやすく話してもらうだけでは、学習者は思ったほど楽にならない可能性がある。これは人の声の研究で、合成音声の研究ではない。
本物の会話はもっと厳しい。速さが変わり、音が消えたりつながったりする。この仕組みは、英語が速すぎて聞き取れない理由を音声知覚の研究から説明した記事で詳しく扱っている。
整った読み上げ声に慣れることは入口になりうる。ただ、それだけで本物の会話が聞けるようになるとは、研究からは言えない。
ここまでのまとめ: はっきりした話し方の得は、学習者では母語話者より小さかった。聞きやすい声と本物の会話のあいだには、段階的に埋める差がある。
研究から考えられる、AI 音声との付き合い方
ここまでの研究を、AI 音声の使い方に当てはめて整理する。以下は、研究で直接確かめたことではなく、研究から考えられることだ。
1 つ目は、聞く量を増やす道具として使うことだ。2020 年の研究ではわかりやすさが人の声と同じくらいと評価され、聞く量を増やす手段になるという見方もある。
2 つ目は、声の種類を変えることだ。人の声の研究では、1 人の声より何人もの声で練習した方が新しい話し手に強くなった。AI 音声でも、男性・女性・年齢・地域の違う声を混ぜる方が、研究の条件に近い。
3 つ目は、速さと自然さの段階を上げていくことだ。聞きやすい声だけでは、学習者は思ったほど得をしない可能性がある。慣れてきたら速さを上げ、人の声の会話教材にもつなげたい。
4 つ目は、ただ流すだけにしないことだ。研究の練習は、音に気づき、聞き分けて答える形だった。聞きっぱなしより、聞いて確かめる手順を入れる方が研究のやり方に近い。
ただし、AI 音声ならではの注意もある。雑音の中では合成音声が聞き取りにくく疲れやすい、という実験がある。騒がしい電車の中では、声の種類による差が出やすいかもしれない。
ここまでのまとめ: AI 音声は聞く量を増やす道具として使い、声の種類を変え、速さを上げ、聞いて確かめる手順を入れる。どれも研究から考えられる目安だ。
「いろいろな人の声」を、AI 音声で用意できるか

AIならいろんな声を簡単に作れますよね? 効果あるんですか?

2025 年の研究では、合成音声で声を変えて練習した組の方が発音の評価が良かったんです。ただ、聞き取りの力で確かめた研究はまだ少ないんです。
研究が示した条件の中心は、何人もの違う声を聞くことだった。では、この条件を AI 音声で満たせるのだろうか。
AI 音声は、声の種類や速さを切り替えやすい。何人分もの人の声を録音するのは大変だが、機械なら簡単に声を変えられる。理屈の上では、高変動音声訓練に向いた道具に見える。
実際に試した研究がある。Al-Shami と Cardoso の 2025 年の研究は、合成音声で高変動音声訓練を再現した。クウェートの英語学習者 30 名を、いろいろな声を聞く組と 1 つの声だけの組に分け、4 週間練習した。
教師による評価では、いろいろな声を聞いた組の方が、わかりやすさとなまりの強さの評価が良かった。ただしここで測ったのは発音、つまり話す側の評価だ。聞き取りの力そのものは測っていない。
AI が作った音声でリスニングを練習した研究もある。Sandamali の 2026 年の研究は準実験だ。準実験とは、くじ引きで組を分けずに比べる、少しゆるい形の実験のことだ。
スリランカの 9 年生 (日本でいえば中学生くらい) 30 名のうち 15 名が、AI が作ったラジオ番組風の英語音声を授業前に繰り返し聞いた。この 15 名の点数は、聞く前より平均 6.6 点上がった。ただし要旨にあるのはこの組の前後の比較だけで、対照群との差は書かれていない。
まとめると、AI 音声で何人もの声を聞く練習をして、聞き取りの力が伸びるかを確かめた研究は、まだ少ない。研究が示した条件を AI 音声で満たせそうか、と問われれば「満たせる道具はそろってきたが、効果の確認はこれから」というのが今の答えだ。
ここまでのまとめ: AI 音声で声の種類を変える練習は発音で効果が報告されたが、聞き取りの力で確かめた研究はまだ少ない。
よくある質問
Q1. AI の読み上げ音声でリスニング練習をしても大丈夫ですか?
A. 聞く量を増やす道具としては使えそうです。2020 年に学習者が機械の声と人の声を聞き比べた研究では、わかりやすさは同じくらいでした。ただし自然さは人の声が上と評価されたので、人の声の教材と組み合わせるのが無難です。
Q2. 機械の声ばかり聞いていると、変なくせがつきますか?
A. 「機械の声でくせがつく」と示した研究は、今回確認した中にはありませんでした。ただ、人の声の研究では、1 人の声だけで練習すると新しい話し手に効果が広がりませんでした。声の種類を変えて聞く方が、研究の条件に近いと考えられます。
Q3. いろいろな人の声を聞くと、なぜよいのですか?
A. 何人もの声で練習すると、練習で聞いていない話し手の声にも聞き取りの力が広がった、という研究があるからです。日本人が r と l を聞き分ける練習の研究や、なまりへの慣れの研究で、同じ向きの結果が出ています。
Q4. AI の声は聞き取りやすいのに、ネイティブの会話が聞き取れないのはなぜですか?
A. 読み上げ音声は整った話し方になりやすい一方、本物の会話は速さが変わり、音が消えたりつながったりするからです。はっきりした話し方の得は、学習者では母語話者より小さかったという研究もあります。
Q5. AI 音声の方が、人の声より学習効果は高いですか?
A. そう言える研究はありません。AI が作った音声で点数が上がった小さな研究はありますが、聞かなかった組との差は要旨に書かれておらず、人の声の教材と比べた研究でもありません。今の研究で言えるのは、使い方次第で役立ちうる、というところまでです。
まとめ
AI の読み上げ音声で英語を聞くことは、研究から見て「だめ」でも「それだけで十分」でもない。2020 年の学習者の評価では、わかりやすさは人の声と同じくらいで、自然さは人の声が上だった。2015 年の研究では声の質は人の声が上だったが、-ed の聞き取り成績は同じくらいだった。
聞き取りの力を伸ばす研究では、1 人の声より何人もの声で練習した方が、初めての話し手にも力が広がった。ただし、これらは人の声を使った研究だ。
AI 音声は、声の種類や速さを変えやすい。研究が示した「いろいろな声を聞く」条件に近づける道具になりうる。一方で、それを聞き取りの力で確かめた研究はまだ少ない。
聞く量を増やす道具として使い、声を変え、速さを上げ、人の声の教材ともつなぐ。それが今の研究から言える、いちばん確かな付き合い方だ。
参考文献
- Bione, T., & Cardoso, W. (2020). Synthetic voices in the foreign language context. Language Learning & Technology, 24(1), 169-186. https://doi.org/10.64152/10125/44715
- Cardoso, W., Smith, G., & Garcia Fuentes, C. (2015). Evaluating text-to-speech synthesizers. In Critical CALL – Proceedings of the 2015 EUROCALL Conference (pp. 108-113). Research-publishing.net. https://doi.org/10.14705/rpnet.2015.000318
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- Liakin, D., Cardoso, W., & Liakina, N. (2017). The pedagogical use of mobile speech synthesis (TTS): Focus on French liaison. Computer Assisted Language Learning, 30(3-4), 325-342. https://doi.org/10.1080/09588221.2017.1312463
- Logan, J. S., Lively, S. E., & Pisoni, D. B. (1991). Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/: A first report. The Journal of the Acoustical Society of America, 89(2), 874-886. https://doi.org/10.1121/1.1894649
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- Bradlow, A. R., & Bent, T. (2008). Perceptual adaptation to non-native speech. Cognition, 106(2), 707-729. https://doi.org/10.1016/j.cognition.2007.04.005
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- Sandamali, D. (2026). Developing listening skills among English as a second language learners through AI-generated podcasts: A quasi-experimental study. Computer-Assisted Language Learning Electronic Journal, 27(2), 23-45. https://doi.org/10.54855/callej.262722
最終更新日: 2026-11-03
著者: 中村 拓(Taku Nakamura)(greencafe 編集部 編集責任者・非ネイティブ話者)。公開された 12 件の研究エビデンス(tier 1=9 / tier 2=3)を横断分析・再構成した。
画像: いらすとや (https://www.irasutoya.com/) より
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